特定譲渡制限付株式による給与の会計処理と申告調整

Q.特定譲渡制限付株式を交付した場合、会計処理はどのようにすればよいですか。また、これが事前確定届出給与に該当するときの申告調整についても説明してください。

A.特定譲渡制限付株式を交付した場合の会計処理と、事前確定届出給与に該当する際の申告調整について、以下の設例をもとに説明します。なお、この説明において決算日は3月31日と仮定します。

設例1では、取締役に3600万円の報酬債権を支給し、これを現物出資として3000株の特定譲渡制限付株式を交付します。株式の払込金額は1株あたり12,000円。株式付与日はX1年7月1日、譲渡制限の解除日はX4年7月1日で、条件は3年間の継続勤務です。取締役が条件を満たしたため、譲渡制限が解除され、その時点での株価は1株15,000円です。

設例2では、3年間の職務執行の対価として、取締役に特定譲渡制限付株式3000株を無償発行し交付します。交付時の株価は1株12,000円。株式付与日はX1年7月1日、譲渡制限の解除日はX4年7月1日で、条件は3年間の継続勤務です。取締役が条件を満たしたため、譲渡制限が解除され、その時点での株価は1株15,000円です。

会計処理について、X5年3月期までの処理は以下の通りです。設例1では株式の交付時に前払費用として3600万円、報酬債務として3600万円が計上されます。X2年からX4年にかけて、各年度に株式報酬費用が発生し、X5年3月期に最終的な調整が行われます。設例2では株式の交付時に会計処理はなく、X2年からX5年にかけて株式報酬費用が計上されます。譲渡制限解除時には両例とも会計処理はありません。

申告調整については、法人税での損金算入時期は譲渡制限解除時であり、損金算入額は設例1の場合報酬債権の額、設例2の場合交付時の価額となります。従って、X2年からX4年は株式報酬費用を加算し、X5年には減算する必要があります。役員の所得税の計算では、譲渡制限解除時の株式の価額が収入金額とされます。

この会計処理は、経済産業省が公表している資料と企業会計基準委員会の実務対応報告に基づいたものです。

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