家事消費時の消費税処理

Q.個人事業者が事業用資産を家事消費した場合の消費税はどのように処理されますか?

A.個人事業者が事業用資産を家事消費する場合、それは資産の譲渡と見なされ、消費税が課税されます。この時、資産価額は通常の販売価額に基づいて決定されます。ただし、棚卸資産の場合、特定の条件下では課税標準額を認定した取得価額または通常の販売価額の50%以上の金額として計上できます。

(1) 家事消費した棚卸資産(取得価額6万円、販売価額10万円)の場合、6万円を課税取引として計上したため、この金額が消費税の課税標準額になります。

(2) 事業用資産を家事消費した場合(取得価額50万円、時価40万円)、棚卸資産の特例は適用されず、消費時の価額40万円が消費税の課税対象となります。

(3) 事業用自動車を偶然家事使用した場合は、専ら家事用途でなければ消費税の課税対象外です。しかし、事業と家事の両用目的で購入した場合、家事使用分は課税対象になりません。

参考:法 4⑤、28③一、基通10-1-18、 所基通39-1、 39-2

安値販売の場合の課税標準

Q.事業者が通常より安い値段で他に販売した場合の消費税の課税標準はどのようになりますか?

A.事業者が通常より安い値段で販売した場合でも、その販売価格が消費税の課税標準になります。この価格には、受け取ったり受け取るべきすべての金銭や金銭以外の物、権利、その他経済的利益の額を含みますが、消費税額自体やその消費税額に基づく地方消費税額は含まれません。ただし、法人が役員に非常に低い価格で資産を譲渡した場合は例外で、その資産の通常価格(時価)が課税標準になります。著しく低い価格とは、譲渡価格が通常の販売価格の約50%にも満たない場合を指します。

参考:法28①、基通10-1-1、10-1-2

代物弁済

Q.当社が建物及びその敷地を担保にして借入れた資金の返済に困り、代わりに担保物件を引き取ってもらった場合、消費税の課税関係はどうなりますか?

A.代物弁済とは、債務の返済のために別の給付をすることを指し、これにより債務が消滅し、返済と同じ効果が発生します。つまり、資産を債権者に渡してその資産の価値で借入金を返済したことになり、この場合、資産の譲渡と見なされます。このように、資産の譲渡として扱われるため、消費税法上も資産の譲渡等に含まれます。代物弁済による資産の譲渡対価は、消滅する債務の額に相当する金額とされ、建物には消費税が課税されます。このケースでは、建物の譲渡対価は4,400万円、土地の譲渡対価は1億7,600万円となり、建物の対価には消費税が含まれます。

参考:法2①八、令45②一、③

源泉所得税がある場合の課税標準

Q.役務の提供として所得税の源泉徴収をされた金額を受け取る時、その役務の提供に関する消費税額の計算は、実際に受け取った金額を基にしてもよいのでしょうか?

A.消費税の課税標準は、課税される資産の譲渡などに関する対価の額を基にされています。源泉徴収される前の金額、つまり所得税が控除される前の金額が消費税の課税標準となります。例えば、弁護士の報酬について源泉徴収を行う際は、報酬料金に加えて消費税と地方消費税の合計額が源泉徴収の対象とされます。請求書等で報酬料金と消費税および地方消費税が明確に分けられている場合は、その分けられた報酬料金が源泉徴収の対象金額になります。

参考:法28①、基通10-1-13、平元130直法6-1「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて」(法令解釈通達)

先物取引の現引き、現渡しに関する課税標準等

Q.商品先物取引で現物の受渡しを行った場合、消費税の課税標準及び課税仕入れの額はどのように計算しますか?

A.商品先物取引で現物の受渡しを行った場合、売手の売約定に関する代金と買手の買約定に関する代金は、いずれも消費税を除いた金額として計算されます。売手が受け取るべき金額や買手が支払うべき金額は、約定代金に加えて、受渡代金(最終的な帳入値段に基づく金額)に消費税率を掛けて算出された金額が消費税相当額として、取引所を通じて授受されます。つまり、売手の消費税課税標準は約定代金と受渡代金の合計に消費税率を乗じて計算され、買手の課税仕入れの額は、約定代金と受渡代金を消費税を除いた上で計算された消費税相当額を合算して求められます。商品先物取引の特殊性を考慮して、約定代金に代わり受渡代金を基に消費税の課税標準や支払対価の額を計算することも可能です。ただし、商品先物取引では差金決済が行われるため、売手と買手の約定代金が一致しない場合もあります。

参考:法28①、30①、基通9-1-24

現金主義会計適用者の課税仕入れの時期

Q.所得税法第67条の規定を適用している個人事業者が、消費税での課税資産の譲渡等の時期を現金主義で考える場合、課税期間中の支払い分のみを消費税額の計算に含めてもよいですか?

A.消費税法では、所得税法第67条の規定を適用している個人事業者は、課税資産の譲渡等の時期を実際に譲渡が行われた日ではなく、現金が支払われた日として扱うことができると規定しています。従って、課税仕入れに関わる消費税額の計算は、課税期間中の支払分のみを対象に行うことが可能です。ただし、所得税法第67条の適用を受けている場合でも、実際の譲渡等の日(発生主義会計)を基準にすることも可能です。

参考:法18、基通9-5-1、所法67

販売側、仕入側で計上時期が異なる場合

Q.当社は商品の仕入れを検収基準で計上していますが、相手方は出荷基準を採用しているため、売上の計上時期と仕入税額控除の時期が異なります。この状況は問題ないでしょうか?

A.商品の譲渡や課税仕入れの時期は、引渡しの日を基準とします。この引渡し日の判断基準として、検収日や出荷日など合理的で、一貫して適用される基準を使用している場合、販売側と仕入側で計上時期が異なっていても認められます。従って、貴社が検収基準を採用している場合、その基準に基づいて仕入税額控除の時期を決め、消費税額を計算しても問題ありません。

参考:基通11-3-1

建設仮勘定の税額控除の時期

Q.建設仮勘定により経理している場合、仕入税額控除の時期はいつになるのでしょうか。

A.事業者が建設工事等の目的物が完成する前に、その建設工事等のための課税された仕入れなどの金額を建設仮勘定として経理している場合でも、これらの課税仕入れは、その仕入れを行った日が含まれる課税期間内で仕入税額の控除が可能です。しかし、建設仮勘定では、単なる中間金の支払いなども含まれるため、その期間内の課税仕入れを特定するのが難しい場合があります。そのような場合には、目的物が完成した日が含まれる課税期間の課税仕入れとして、仕入税額の控除を行うことも認められています。

参考:法30、基通11-3-6

仕入税額控除の時期

Q.「仕入税額控除」は、どの時点で行えばよいのでしょうか。

A.仕入税額控除は、商品等を仕入れた日や税貨物を保税地域から引き取った日が属する課税期間内に行うことができます。ここでいう「課税仕入れを行った日」は、原則として資産を譲受け、借り受けた日、またはサービスを受けた日を指します。

参考:法30①、基通11-3-1

延払い基準に関する経理処理

Q.所得税や法人税で延払い基準で売上を計算した場合、消費税も同様の方法で経理処理をしなければいけませんか。また、経理処理をしなかった場合はどうなりますか。

A.所得税や法人税で延払い基準を用いて経理する際、消費税での延払い基準の適用は任意です。延払い基準で経理していた事業者が、ある年または事業年度でそれを採用しないことにした場合は、その年の12月31日や事業年度終了日を含む課税期間で、未申告分の売上に関する対価の総額に加算することになります。

参考:消費税法第16条第1項、令32第1項、基通9-3-1