出向社員に係る旅費等の実費負担分

Q.当社には親会社から出向契約に基づいて派遣されている社員がおり、親会社に給与負担金の他に出張旅費や通勤費などの実費も支払っています。これらの費用は当社において課税仕入れに該当するのでしょうか。

A.親会社から派遣された職員の給与に関して、子会社が給与負担金として親会社に支払う部分は、親会社では課税の対象とならない収益ではなく、子会社でも課税仕入れには当たりません。一方で、出張旅費や通勤費などの実費相当額を子会社が親会社に支払う場合、これらは派遣先子会社の業務遂行に必要な経費として課税仕入れに該当します。しかし、親会社がこれを受け取って派遣社員に支払うだけの場合は、課税の対象になりません。

参考:法2①十二、基通5-5-10、11-1-2

出向先法人が支出する退職給与の負担金

Q.親会社から出向された従業員が退職する際、出向先である当社が親会社に支払う退職給与相当額の負担金は課税仕入れになるのでしょうか?

A.従業員が別の事業者に出向している際、その従業員に対する給与支払いを原則として出向元が担当することから、出向先が負担する給与相当の金額は給与としては扱われず、課税仕入れには該当しません。このため、退職給与の負担金も課税仕入れには含まれず、仕入税額控除の対象外となります。

参考:法2①十二、30、基通5-5-10、11-1-2

出向社員の給与等を負担する場合の消費税処理

Q.子会社に出向させた社員の給与等の一部を親会社が負担する場合、消費税の課税関係はどのようになりますか。

A.出向した社員に対する給与は本来、その労務を受ける子会社が負担すべきですが、雇用契約が維持されているため親会社が給与等の一部を負担することがあります。親会社から負担される給与の支払い方法には主に3つありますが、親会社または子会社による給与等の負担は、雇用関係に基づく給与の格差補てん金等と見なされるため、課税仕入れには該当せず、受け取った側も資産の譲渡等の対価に該当しません。

参考:法2①十二、基通5-5-10、 11-1-2

社員の発明等に対する社内報償金の課税対象性

Q.社内で発明、考案、創作をした社員に対して支払われる社内報償金は課税仕入れに該当するのか。

A.事業者が事業のために他の者から資産を受け取ったり、サービスを受けることを課税仕入れと言いますが、給与などの対価として提供されるサービスは除外されます。社内報償金は、社員が業務上役立つ発明などを会社に譲渡した対価として支払われるため、給与等とは見なされず、課税仕入れに該当します。

業務上有益な発明、考案、創作をした従業員から特許権、実用新案権、意匠権またはこれらの権利を継承することにより支払われる報償金

特許権、実用新案権、意匠権を取得した従業員にこれらの実施権の対価として支払われる報償金

事務や作業の合理化、製品品質の改良、経費の節約に貢献する工夫、考案に対して支払われる報償金

参考:法2①十二、30、 基通11-2-4 

マネキン(派遣店員)に対する支出

Q.当社はマネキン紹介所から、当社製品の販売に従事するマネキンを紹介され、あるデパートに派遣しています。この場合、マネキン紹介所に支払っているマネキンの報酬と紹介料はそれぞれ課税仕入れに該当するのでしょうか?

A.マネキンの派遣は職業安定法に基づいて行われ、派遣先とマネキン(派遣店員)の間に直接雇用関係が発生します。そのため、マネキンに対する報酬(便宜的にマネキン紹介所に支払う場合を含む)は給与等として認識され、課税仕入れには該当せず、仕入税額控除の対象とはなりません。一方で、マネキン紹介所に支払う紹介料は、マネキンの紹介という役務の提供の対価であるため、課税仕入れに該当します。

参考:法2①十二、30、基通11-1-2

外部講師の講演に対して支払う謝金

Q.社員研修として外部から講師を招いた時に支払う謝金は、大学教授や医師など事業者でない人に対しても課税仕入れに該当するのでしょうか?

A.謝金を支払った相手が消費税の課税事業者であるかどうかに関わらず、支払いが事業として受けた役務の提供に対するもので、所得税法上の給与所得に該当しなければ、課税仕入れに該当します。したがって、会社が大学教授等に講演の対価として支払う謝金は、課税仕入れに該当します。免税事業者や事業者でない個人からの仕入れも、国内で行われた課税仕入れであれば、その支払いは消費税の課税対象となります。

参考:法2①十二、30、 基通11-1-3

外交員、集金人等に支払う報酬の課税仕入れについて

Q.外交員、集金人、電力量計等の検針人などに支払う報酬や料金が、所得税の観点から給与所得に該当する場合、これらは課税仕入れには該当しないのでしょうか?

A.消費税法の定めにより、給与等を対価として受ける労務の提供は課税仕入れの範囲に含まれません。これには、給与、賞与などが対価となる労務の提供が含まれ、雇用契約またはこれに準ずる契約に基づく労務提供を指します。そのため、外交員や集金人、電力量計検針人などに支払う報酬や料金が、給与所得に該当する部分であれば、それは課税仕入れに該当しません。

参考:法2①十二、基通11-1-2、 11-2-5

手形で受領した場合の課税標準

Q.商品等の販売代金を手形で受け取り、銀行で割り引いた場合、消費税の課税標準は手形の額面金額となるのか、それとも割引後の金額になるのか。

A.消費税の課税標準は、手形で受領した販売代金の額面金額となります。手形を割引で現金化することは、販売代金の回収時期が遅れるという点で掛売りと同じであり、割引後の金額ではなく手形の額面金額が課税標準です。手形の割引自体は非課税取引であり、割引料は消費税の課税仕入れの対象外となります。

参考:法28①、令10③七

現物出資の場合の課税標準

Q.当社は、子会社に土地、建物、借入金を合わせて現物出資しました。消費税の課税標準額はいくらになりますか?

A.金銭以外の資産を出資した場合、取得する株式の時価が資産の譲渡対価になります。ただし、特定の法律で規定されたケースを除きます。貴社が土地(非課税資産)と建物(課税資産)を出資したので、消費税の課税標準となるのは、取得する子会社株式の時価のうち建物に相当する金額です。したがって、建物の時価20,000千円が課税標準となります。

参考:法第28条、令第2条の一、45条の二、三

値引き販売した入場券と課税資産の譲渡等の対価の額

Q.映画や演劇等の主催者が、その入場券の一部を値引き販売した場合、課税資産の譲渡等の対価の額はどうなりますか?

A.入場券を値引き販売した場合、割引後の金額が映画・演劇等の役務提供の対価の額となります。このケースでは、入場券そのものではなく、入場券により提供される映画・演劇の鑑賞というサービスの対価が非課税とされるわけではありません。例えば、会社が得意先の招待用に入場券を1割引で購入した場合、その1割引後の金額が課税仕入れに関わる支払額になります。ただし、入場券を得意先に贈る場合、これは課税仕入れには該当しません。入場券の販売業者が入場券を他者に販売する場合、その取引は非課税となります。

参考:基通6-4-4、6-4-5、10-1-9