土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認

Q.当社は衣類の卸売を行っていますが、所有している遊休地を売却しました。土地売却は非課税取引であるため、課税売上の比率が下がります。この場合、税務上の特例はありますか?

A.土地の売却が偶発的に行われ、これが原因で課税売上の比率が減少した場合、事業実態を反映していないとされ、消費税額の計算に影響を与えることがあります。この状況では、「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出し、税務署の承認を受けることにより、課税売上割合に準ずる割合の適用が可能です。承認は、土地の売却が一度きりの出来事であり、売却がなかった場合に事業実態に変化がないと認められる場合に限られます。適用される割合は、以下のいずれか低い割合です:1)過去3年間の総課税売上割合、2)直前の課税期間の課税売上割合。ただし、土地を貸し出していた等、事業実態に変動がなく過去3年間の課税売上割合の最高と最低の差が5%以内である場合に限ります。承認を受けた後、翌課税期間には「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」の提出が必要です。

参考:法30③、33② 、令47、 令53③ 、基通11-5-7、 様式通達第22号 様式、第 23号 様式

課税売上割合に準ずる割合

Q.課税売上割合に準ずる割合とは何ですか?また、その承認申請手続きや適用開始時期について教えてください。

A.課税売上割合に準ずる割合とは、共通対応分の仕入れ控除税額を計算する際に、通常の課税売上割合では事業内容が適切に反映されない場合、より合理的な割合を適用できるようにする制度です。この割合は事業内容に応じて変わるため、具体的にどの割合が合理的かは一概には言えませんが、従業員数や労働日数、資産価値、使用量、面積などの割合が考慮されます。この割合を使用して仕入控除税額を計算するためには、「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」に算出方法と合理性の説明を記載し、所轄の税務署長に提出して承認を得る必要があります。承認後は、通常の課税売上割合ではなく、この特別な割合で仕入控除税額の計算を行います。申請は適用を希望する課税期間の末日までに行う必要があり、期限までに提出し、その後1ヶ月以内に承認を受けた場合は、申請を行った課税期間から適用が可能となります。提出時は審査期間を考慮し、余裕をもって行ってください。

参考:法30③、令47、規15、基通11-5-7、11-5-8、様式通達第22号様式

リース機材を海外で使用する場合の消費税処理

Q.国内以外でリース機材を使用する際、消費税法上での課税売上割合の計算はどのように行われるのでしょうか?

A.消費税法において、所有権のないファイナンス・リースによるリース機材の海外での使用や売却の場合も、リース料全額が資産の譲渡の対価とみなされます。海外での使用や売却によって発生する取引は対価を得る輸出取引ではないものの、消費税法第31条の2項に規定される「みなし輸出取引」にあたる場合、課税資産の譲渡等に関連する輸出取引とみなされます。このため、ビデオカメラなどのリース資産を輸出する場合、そのFOB価格を課税売上割合の計算の際、分母と分子の両方に加算します。オペレーティング・リースに関しても、消費税法上は賃貸借契約として扱われ、リース料が資産の貸付けによる対価とされますが、課税売上割合の計算においてはファイナンス・リースと同様の取り扱いとなります。

参考:法31② 、令51③④

再ファクタリングの場合の課税売上割合の計算

Q. 当社はクレジット会社ですが、下図のような一連の取引の場合、消費税の課税売上割合の計算上、分母に算入すべき金額はいくらですか。

A. ご質問の取引では、490円(9,800円×5%)を課税売上割合計算の分母に加える必要があります。この計算は、売掛債権を譲渡した場合に該当します。売掛債権の譲渡対価の5%に相当する金額を分母に算入することになるためです。

参考:法30⑥、令48

輸出免税取引がある場合の課税売上割合

Q.日本船籍の船舶を国内以外の地域間で使用する目的で船舶運航事業者に譲渡した場合、その譲渡によって消費税の課税売上割合の計算にどのような影響がありますか?

A.日本船籍の船舶を国際間輸送用として船舶運航事業者に譲渡した場合、この取引は輸出取引として消費税から免除されます。しかし、輸出免税取引であっても、この船舶の譲渡は国内における課税対象資産の譲渡とみなされるため、課税売上割合の計算に際しては、その対価は課税対象売上の総額(分母)と課税売上総額(分子)の両方に含める必要があります。

参考:法7①、30⑥、令17②一イ、48①

売掛債権を譲り受ける場合の課税売上割合

Q.クレジット会社がクレジット加盟店から売掛債権を譲り受けた場合、消費税の課税売上割合を計算する際に、売掛債権の額は非課税取引として算入する必要がありますか?

A.クレジット会社が加盟店から売掛債権を譲り受ける場合、これはクレジット会社にとっての仕入れに当たり、売掛債権の額自体は消費税の課税売上割合に影響しません。ただし、譲り受けた売掛債権の額と実際に支払った金額の差額およびクレジット手数料は、消費税の非課税売上として、課税売上割合の計算で分母に含める必要があります。一方、加盟店はこの債権譲渡において、顧客に対する売上としての対価を取得しており、その対価については課税売上割合の計算の分母には含まれません。しかし、クレジット会社に支払う手数料に関しては、非課税取引のため、課税仕入れには該当しないことになります。

参考:法6、30⑥、法別表第一第3号、令10③八、48②二、④

信用取引による有価証券の譲渡と課税売上割合

Q.資金運用の一環として有価証券の売買を行っている場合、仕入税額控除額を計算するための課税売上割合の算出において有価証券の譲渡に関する特例はどのようなものでしょうか。また、その有価証券の売買が通常の取引と信用取引の場合で取扱いに違いはありますか。

A.消費税の課税売上割合を算出する際、非課税とされる資産の譲渡等の対価全額は通常資産の譲渡等の対価の合計額に含められます。しかし、有価証券の譲渡に関しては、譲渡対価の5%相当の金額だけをその合計額に含めるという特例があります(ゴルフ場利用権等の有価証券は除く)。この特例は、通常の現物取引と同様に、有価証券が信用取引によって譲渡された場合にも適用されます。なお、現先取引に関しては別途特例が設けられています。

参考:法30⑥ 、令48⑤

有価証券の譲渡等がある場合の課税売上割合の計算

Q.有価証券や金銭債権を譲渡した場合の消費税の課税売上割合の計算方法を教えてください。特例などがあればその内容も知りたいです。

A.消費税の課税売上割合は、課税期間中の国内での資産の譲渡などから得られる対価の総額(税抜き)から、課税資産の譲渡などから得られる対価の総額(税抜き)の割合で計算します。ここで言う対価には輸出取引からの返金などを控除した金額が含まれます。有価証券や金銭債権の譲渡については以下の特例があります:

1. 通貨や小切手などの支払手段での譲渡は、対価が二度計算されるのを防ぐため、課税売上割合の計算からは除外されます。

2. 資産の譲渡等で得た金銭債権を譲渡した場合も、同じく二重計算の防止のため、対価は計算に含みません。

3. 国債や社債など特定の債券の現先取引など、資金の借入と同じ効果を持つ取引は、対価を課税売上割合の計算から除外します。

4. 現先取引などで売買が行われ、利子を得る目的の金銭貸付と類似する取引では、対価は売り戻し時の金額から購入時の金額を差し引いた額で計算します。

5. 消費税が非課税の有価証券や金銭債権の譲渡では、対価の5%が課税売上割合の計算に算入されます。

6. 国債などで償還差損がある場合、その損失は課税売上割合の計算から控除されます。

参考:法30⑥、令48⑤

販売奨励金を支払った場合の税額控除

Q.当社は製造業を営んでおり、卸売業者に対し当社製品の売上高に応じて支払う販売奨励金は、課税仕入れに該当しますか。

A.事業者が販売促進を目的として取引先に金銭を支払う販売奨励金は、消費税法に基づき売上げに関連する対価の返還として扱われるため、その税額を控除できます。従って、貴社が支払う販売奨励金も売上げに関連する対価の返還と見なされ、税額控除を行うことができます。

参考:法30⑥ 、令48⑤

永年勤続者を旅行に招待する費用について

Q.勤続20年以上の社員とその配偶者を旅行に招待する場合、その費用は課税仕入れに該当しますか?

A.ご質問の旅行費用は、旅行会社からのサービスに対する対価として支払われるため、課税仕入れに該当します。さらに、社員への旅費宿泊費として一定の金額を支給する場合も、適切な領収書などの提出により、課税仕入れとして扱うことができます。ただし、旅行が海外の場合は輸出免税取引または国外取引とみなされるため、国内の課税仕入れには当てはまらず、仕入税額控除の対象外となります。

参考:法2①十二、基通11-2-1