居住用賃貸建物の取得に関する消費税の仕入税額控除の制限

Q.居住用賃貸建物の取得にかかる消費税の仕入税額控除について知りたいです。我が社は、令和5年5月に契約した居住用賃貸建物を取得し、その後家賃収入を得る予定です。当社の課税売上高は5億円以下で、課税売上割合は95%以上ですが、この建物の消費税の仕入税額控除には制限があると聞きました。具体的にどのような制限があるのでしょうか?

A.居住用賃貸建物の取得にかかる消費税の仕入税額控除は、特定の条件を満たす建物に対して制限が設けられています。具体的には、居住目的でない明らかな事業用途の建物や旅館・ホテルなどの施設、棚卸資産として取得した建物等は、仕入税額控除の対象外とされます。居住用賃貸建物が自己建設の高額特定資産の場合、建設費用が1,000万円以上であれば、その後の課税期間における仕入税額について控除の対象となります。ただし、資本的支出に関する課税仕入れ等についても、高額特定資産に該当する場合は注意が必要です。令和5年5月の契約基づく居住用賃貸建物の課税仕入れに関しては控除できない場合がありますが、課税賃貸用に供したり、他者に譲渡した場合には仕入控除税額を調整することができます。

参考:法30条⑩、35の2、令和2の2、基通11-7-1~11-7-5

課税業務用固定資産の非課税業務用への転用時の調整

Q.課税業務用固定資産を非課税業務用に転用した場合、消費税法上で固定資産に関する控除税額の調整は必要ですか?

A.はい、必要です。課税事業者が固定資産を課税事業用のみに使用するために仕入れた後、3年以内に非課税業務用に転用する場合、その転用した課税期間に仕入れに関する消費税額から調整を行う必要があります。この調整には、以下の概要があります:

– 課税仕入れを行った日から1年以内に転用した場合は、控除済み消費税額の全額を調整します。

– 課税仕入れを行った日から2年以内に転用した場合は、控除済み消費税額の2/3相当額を調整します。

– 課税仕入れを行った日から3年以内に転用した場合は、控除済み消費税額の1/2相当額を調整します。

また、非課税業務用から課税業務用へ転用する場合も同様の方法で増額調整が必要です。

参考:消費税法34条、35条、基本通達12-4-1

調整対象固定資産に関わる資本的支出の取り扱い

Q.資本的支出があった場合、消費税法における調整対象固定資産についてどのように取り扱うのでしょうか?

A.調整対象固定資産にかかる資本的支出は、その固定資産の価値の一部を形成します。資本的支出を独立した資産として判断することで、調整対象固定資産に該当するかを決定します。また、資本的支出に関わる課税仕入れにおける支払い額が100万円以上の場合、消費税法第33条第1項に基づく調整対象固定資産の消費税額調整規定が適用されます。 

参考:法律第2条①十六、令5、基通12-2-5

調整対象固定資産を中途で売却した場合の調整

Q.調整対象固定資産を購入して2年後に売却した場合でも、課税売上割合が大きく変動した場合の仕入控除税額の調整計算にはその売却資産も含める必要がありますか?

A.調整対象固定資産に関する仕入れに係る消費税額の調整規定は、その固定資産を購入してから3年間の終了時に所有している場合に限ります。そのため、3年間を経ずに廃棄、減失、または売却等で所有していなくなった固定資産は、消費税額の調整対象にはなりません。

参考:法33、 基通12-3-3

資本金1,000万円以上の法人が初期に固定資産を購入した場合の消費税の取扱い

Q. 資本金1,000万円で設立した法人が、設立1期目に固定資産を200万円で購入しました。この固定資産に関する消費税の還付を受けるため、一般課税で申告する予定ですが、消費税法上の取扱いについて教えてください。

A. 資本金1,000万円以上の法人が設立される場合、設立から2年間は納税義務が免除されないため、初めの2年間は必ず課税されます。さらに、調整対象固定資産を購入し、その購入期間中に一般課税で申告した場合、購入した課税期間から3年間は免税事業者となることができず、この3年間は一般課税での申告が必須となります。また、調整対象固定資産の購入日が属する課税期間の初日から3年を経過する日が属する課税期間(令和7年4月1日から令和8年3月31日)までに、課税売上割合に顕著な変動がある場合、かつその課税期間の末日に固定資産を所有している場合は、「調整対象固定資産に関する課税仕入れに係る消費税額の調整」を行う必要があります。

参考:法9(7)、法12の2(2)、法33、法37(3)

通算課税売上割合の計算方法

Q.通算課税売上割合を求める具体的な計算方法は何ですか?

A.通算課税売上割合は、過去一定期間内(通算課税期間と呼びます)で国内で行われた資産の譲渡などから得た対価の合計から、その期間内で資産の譲渡などに関連する返還された金額の合計を除いた金額(税抜きで計算)に対して、同期間内で行われた課税対象資産の譲渡などから得た対価の合計から、その期間内で課税対象資産の譲渡などに関連する返還された金額の合計を除いた金額(税抜きで計算)を割り当てて求めます。計算の際、支払手段等の譲渡は除外し、有価証券等の譲渡はその対価の5%相当額を含めて計算する点は、通常の課税売上割合の計算と同様です。

参考:法33①②、令48②~⑥、53③④、基通12-3-1

調整対象固定資産の支払対価の判断基準

Q.消費税法上、調整対象固定資産について、その資産の課税仕入れに係る支払対価の額が相当する金額が100万円以上のものとされています。この場合、資産購入のための運賃や荷役費などの費用も購入価格に加算して考慮するのでしょうか。

A.調整対象固定資産かどうかを判断する際の支払対価の額は、資産の購入価格のみを指します。したがって、運賃や荷役費など資産の購入に直接かかった費用は含まれません。これは、所得税や法人税での減価償却資産の取得価額の算定とは異なり、単に資産の購入価格のみで判断されます。

参考:法2①十六、令5、 基通12-2-2

調整対象固定資産の範囲

Q.課税売上割合が著しく変動した場合の仕入控除税額の調整計算の対象となる「調整対象固定資産」の範囲について教えてください。

A.調整対象固定資産とは、建物、構築物、機械装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具、器具備品などの有形固定資産、鉱業権などの無形固定資産、牛馬や果樹などの生物、及びこれらに準ずる資産で、一取引単位について支払った価格または保税地域から引き取る際の課税基準となる金額が100万円以上のものです。ただし、棚卸資産は含まれません。さらに、「その他これらに準ずる資産」には、著作権、回路配置利用権、ノウハウ、預託金方式のゴルフ会員権、書画、骨董品などが含まれます。調整が必要とされるのは、仕入れた日が属する課税期間内の課税仕入れ等について計算される調整対象固定資産です。これには、個別対応方式における課税資産の譲渡等や、一括比例配分方式における資産の譲渡に共通して要する課税仕入れ等を課税売上割合で計算したもの、及び課税売上割合が95%以上かつ売上高が5億円以下の事業者で全額控除されたものが含まれ、取得日から3年経過した課税期間の末日に保有されているものに限定されます。

参考:法2①十六、30②、33、令5、基通12-2-1

課税売上割合の変動に伴う調整について

Q.課税売上割合が大きく変わったとき、課税と非課税の両方に関わる機械の購入において、消費税の還付金額にバランスの問題はありますか?また、その還付金額を調整するための規定は存在しますか?

A.課税事業者が購入(税抜き価格が100万円以上の固定資産)を行い、その固定資産に関する消費税額を比例配分法によって計算した場合、その固定資産の購入時から3年が経過した税期の終わりにまだその固定資産を所有していて、さらにその3年間での累計課税売上割合が購入時の課税売上割合と大きく異なる場合、第3年度の税期に消費税額の調整を行います。この調整は、累計課税売上割合による再計算で得られた金額と、購入時の税期に還付された金額との差額を基に、加算または減算して行うことになります。

調整が必要になるのは以下のケースです:

1. 通算課税売上割合が購入時の税期の課税売上割合よりも高い場合、その差額を税額に加えます。

2. 通算課税売上割合が購入時の税期の課税売上割合よりも低い場合、その差額から税額を引きます。

参考:法第33条、令第53条①②、基通12-3-1~12-3-3

実質的な輸入者と申告名義人が異なる場合の特例

Q.実質的な輸入者として消費税を納付している場合、どのような条件で輸入消費税を仕入税額控除の対象とすることが認められるのでしょうか?

A.次の3つの条件すべてを満たす場合、実質的な輸入者は輸入消費税を仕入税額控除の対象とすることができます。1) 実質的な輸入者が、輸入申告後に申告者に有償で課税貨物を譲渡する。2) 実質的な輸入者が、その課税貨物の引取りに関わる消費税と地方消費税を支払う。3) 実質的な輸入者が、申告者名義の輸入許可書と消費税等の領収証書の原本を保存する。これらの条件を満たせば、例えば飼料用のとうもろこしのように限定申告が必要な場合でも、実質的な輸入者であるA社はB社名義の輸入許可書と消費税の領収証書を保存することにより、輸入消費税を仕入税額控除の対象とすることが認められます。

参考:法5②、30① 、基通11-1-6