少額な課税仕入れと帳簿及び請求書等の保存

Q.課税仕入れに関する仕入税額の控除を実額ベースで受けるには、帳簿と請求書等の保存が必要ですが、少額な課税仕入れでも同様にすべて保存する必要はありますか?

A.課税仕入れに対する仕入税額の控除を実際の金額に基づいて受ける場合、指定された事項が記載された帳簿と請求書等を保存することが求められます。ただし、課税仕入れに関する支払い総額が3万円未満の場合は、帳簿の保存のみで仕入税額の控除を受けることができます。ここでの「3万円未満」とは、一つの商品ごとではなく、一回の取引における税込み総額で判断されます。

参考:法30⑦、令49①一、基通11-6-2

軽減対象資産の議渡等の記載について

Q.仕入先から受け取った請求書等に「軽減対象資産の譲渡等である旨」と「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額」の記載がない場合、これらが記載された請求書等の再交付を受けなければ仕入税額控除を行えないのでしょうか?

A.事業者は、請求書等に「軽減対象資産の譲渡等である旨」と「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額」の記載が欠けている場合でも、取引の事実に基づいてこれらを追記し保存することで、仕入税額控除が認められます。ただし、これら以外の項目を追記や修正することはできません。また、3万円未満の取引の仕入税額控除には、請求書等の保存がなくとも、法律で定める事項が記載された帳簿の保存だけで対応可能ですが、帳簿には「軽減対象資産の譲渡等に関するものである旨」の記載が必要になります。

参考:法30⑦、令49①一、平28改法附34②③、軽減通達19

軽減対象資産の記載方法

Q.区分記載請求書等に「軽減対象資産の譲渡等である旨」をどのように記載したら良いですか?

A.「軽減対象資産の譲渡等である旨」の記載は、その事実が客観的に明らかであれば十分です。以下の方法で軽減税率が適用される商品やサービスを表示することができます。

1. 請求書で、「※」や「☆」のような記号を使って軽減税率の対象商品を表示し、「※は軽減対象」といった形でその意味を明確にする。

2. 請求書内で、軽減税率対象の商品とそれ以外の商品を区分し、軽減税率対象の商品群がそうであることを明示する。

3. 軽減税率対象の商品とそれ以外の商品について別々の請求書を作成し、軽減税率対象の商品の請求書にはその事実を表示する。

参考:軽減通達18

仕入税額控除の適用要件

Q.令和元年10月1日から令和5年9月30日までの間、仕入税額控除を受ける際の要件として採用された「区分記載請求書等保存方式」では、どのような帳簿や請求書等を保存する必要がありますか?

A.令和元年10月1日から令和5年9月30日まで、「区分記載請求書等保存方式」においては、軽減税率適用品目とそれ以外の商品の区分を明確化するため、特定の内容を記載した帳簿と請求書等の保存が必須です。保存が必要な帳簿には、課税仕入れの相手方名、行った日付、仕入れた資産やサービスの内容、支払い金額が含まれます。一部の業種では相手方名称の記載が省略可能です。保存が必要な請求書等は、課税対象の資産の譲渡等について、作成者の名前、譲渡日、内容、軽減税率と標準税率の合計額、受け取り事業者の名前が記載された書類を含みます。これらの書類は、確定した課税期間の末日から7年間保存する必要があります。

参考:法3∝)D⑨ 、令49、 50、 平28改 法附34②

いわゆる「95%ルール」の適用要件

Q.仕入税額控除制度において、「95%ルール」とは何か、その適用要件を教えてください。

A.「95%ルール」とは、その課税期間における課税売上高が5億円以下の事業者に限り適用されるルールです。課税売上割合が95%未満の場合や、課税売上高が5億円を超える場合には、仕入控除の計算を個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかで行う必要があります。課税期間が1年未満の場合、その期間の課税売上高を年間に換算して5億円を超えるかどうかで適用の判定を行います。また、「課税期間における課税売上高」とは、その期間中に発生する消費税が課税される取引と免税売上の合計から、売上返品や売上値引き等の金額を差し引いた金額を指します。

参考:法30②⑥

免税期間の資産の譲渡に関する対価の返還等の取扱い

Q.免税事業者であった期間に課税資産を譲渡した後、課税事業者になってから仕入れや売上げに関する返品や割戻しを行った場合、消費税法における対応はどのようになりますか?

A.免税事業者であった期間に課税資産を譲渡した場合の消費税額の調整は、課税対象となった対価が返還された際に行われます。この期間に譲渡した資産について、課税事業者になった後に生じた仕入れや売上げの返品・割戻しは、消費税免除期間の活動に基づくものであるため、仕入れに対する消費税額の控除の特例(消費税法第32条第1項)や売上げに対する消費税額の控除(消費税法第38条第1項)の適用外です。しかし、免税期間に課税仕入れに関する返還があった場合で、消費税法第36条の適用を受けた棚卸資産に関しては、仕入れに対する消費税額の控除の特例が適用されます。基準期間における課税売上げの計算や課税売上割合の計算では、この期間の売上げに関する返還があっても、その売上げに基づく消費税額は考慮されず、課税売上高及び課税売上割合の計算から除外されます。

参考:法9②、32①、36、38①、令48①、基通12-1-8、14-1-6

消費者に対するキャッシュバックサービス

Q.メーカーとして新製品キャンペーンで製品購入者全員にキャッシュバックサービスを行う予定ですが、これは売上に対する対価の返還と見なされますか?

A.事業者が販売促進を目的として卸売業者や小売業者など取引先に対して販売数量や販売高に応じて支払う販売奨励金は、売上に対する対価の返還と見なされます。そのため、メーカーが製品購入者にキャッシュバックを行う場合も、売上に対する対価の返還と考えられます。

参考:法38① 、基通14-1-2

貸倒引当金勘定に繰り入れた損失見込額と貸倒れに係る消費税額の控除について

Q.売掛金に対して貸倒引当金を繰り入れた場合、その売掛金に係る消費税額も控除できるのか?

A.貸倒れに係る消費税額の控除は、国内で税を含む資産の譲渡等を行った際、その譲渡等の相手方への売掛金やその他の債権が回収不能になった場合に適用されます。この回収不能は、例えば会社更生法による更生計画の認可等、特定の事実に起因するもので、売掛金などの資産から得られるはずの税込みの金額のうち、一部または全部を受け取ることができなくなった場合、その受け取れなかった部分に相当する消費税額を控除することができます。しかし、貸倒引当金を繰り入れる行為は回収不能見込額の認識であり、実際に回収不能になったわけではないため、消費税額を控除の対象とすることはできません。

参考:法39① 

免税事業者となる場合の棚卸資産に関する消費税額の調整

Q.当社は、翌課税期間で免税事業者となる見込みです。このとき、当課税期間中に仕入れた棚卸資産を翌課税期間に売上げた場合、消費税はどのように扱われるのでしょうか?

A.免税事業者となる予定の課税期間直前に課税仕入れをした棚卸資産をその期間の末に保有している場合、その棚卸資産に関わる消費税額を当該期間における仕入税額控除の対象とすることはできません。つまり、仕入れた棚卸資産を翌課税期間以降に売上げる場合、その消費税額については当課税期間で仕入税額控除することはできなくなります。

参考:法36⑤

免税事業者から課税事業者への変更時の棚卸資産に関する取り扱い

Q.免税事業者であった期間に仕入れた商品を、課税事業者となった後に販売する場合、その商品に対する消費税の取り扱いはどうなりますか?

A.免税事業者が課税事業者になる直前に保有している棚卸資産で、免税期間中に課税対象の仕入れを行った商品については、その商品の仕入れにかかった消費税額を、課税事業者としての課税対象の仕入れ等の消費税額とみなして仕入れ税額控除の対象にすることができます。つまり、免税期間中に仕入れた商品を課税期間に販売する場合も、その仕入れにかかった消費税額を控除することが可能です。

参考:法36①