登録の手続き

Q.適格請求書発行事業者の登録はどのような手続きで行うのですか。

A.適格請求書発行事業者の登録を希望する課税事業者は、納税地を管轄する税務署長に対して登録申請書を提出する必要があります。提出された登録申請書を受けた税務署長は、登録拒否条件に当てはまらない場合、適格請求書発行事業者登録簿に法律で定められた事項を記載し、事業者を登録します。そして、登録された事業者に対しては書面でその旨を通知します。登録申請書は、e-Taxを通じても提出可能です。電子での通知を希望する場合は、登録通知等の情報がデータベースに保存され、それ以外の場合は、書面で通知が送付されます。

適格請求書発行事業者登録簿に登載される事項は以下の通りです。

1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号

2. 登録年月日

3. 法人(人格のない社団等を除く)については、本店または主たる事務所の所在地

4. 特定国外事業者以外の国外事業者については、国内で行う資産の譲渡等に関連する事務所や事業所などの所在地

参考:新法57の 2① ~⑤⑦、新令70の 5①、平28改 法附袈① 、 インボイス通達 2-1

仕入税額控除の要件

Q.適格請求書等保存方式における仕入税額控除の要件について教えてください。

A.適格請求書等保存方式では、一定の事項が記載された帳簿と請求書等を保存することが仕入税額控除を受けるための要件となります。保存が求められる請求書等には適格請求書の他に、適格簡易請求書、適格請求書または適格簡易請求書の記載内容が含まれた電磁的記録、適格請求書に記載された事項が記載されてる仕入明細書や仕入計算書等、相手方の確認を受けたものが含まれます。また、一定の書類が必要な取引や、請求書等の交付が難しい理由で帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例の取引も存在します。これには公共交通機関特例対象の取引、特定の入場券が使用された取引、古物営業や質屋、宅地建物取引業者からの特定購入、自動販売機や自動サービス機、郵便切手類での取引、通常必要と認められる出張旅費等が含まれます。加えて、特定規模以下の事業者には、一定期間、一定条件下での帳簿のみの保存による仕入税額控除の経過措置が設けられています。

参考:新法30⑦⑨, 新令49①, 新規15の 4, 平28改法附53の 2, 平28改令附24の 2①

適格請求書等保存方式の概要

Q.令和5年 10月 1日から開始される「適格請求書等保存方式」の概要を教えてください。

A.令和5年10月1日から、「適格請求書等保存方式」、通称「インボイス制度」が始まります。この制度では、仕入税額控除を受けるためには、適格請求書発行事業者から発行される適格請求書の保存が必須となります。適格請求書を発行するためには、税務署長への登録が必要で、適格請求書には、業者の情報、課税取引の日付、内容、税抜き・税込み価格、消費税額などが記載されます。また、特定の取引や小額の取引においては適格請求書の交付義務が免除される場合があります。仕入税額控除の要件としては、適格請求書のほかに、適格簡易請求書やそれに関連する電磁的記録なども保存を求められます。交付が困難な特定の取引については、帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能です。

参考:新法30、 57の 2、 57の 4、 新令49① 、70の 5、 70の 9② 、70の 11、 新規15 の4、 26の 6、 平28改 法附34②、53の 2、 平28改 令附24の 2①

所有権移転外ファイナンス・リース取引におけるリース料の取り扱い

Q.所有権移転外ファイナンス・リース取引でリース料支払いのための明細書をリース開始時に一括で作成し、交付することで、仕入税額控除の適用は可能ですか?

A.はい、可能です。賃借人がリース取引に関して請求書や領収書を保存することが求められますが、リース取引開始時に全期間のリース料の支払明細書を作成し交付することで、この要件を満たすことができます。ただし、この明細書には、①リース会社名、②リース取引開始日、③リース資産名、④リース料総額(消費税含む)、⑤賃借人の名称が記載されている必要があります。さらに、賃借人がこの明細書を請求書として扱い、受領した日から2ヶ月経過後の課税期間の翌日から7年間保存している場合、仕入税額控除を適用できます。「月額リース料(消費税含む)とリース期間の月数」の記載も許されます。

参考:法30⑦ 、⑨一、令50①

JV工事に関する請求書等の取り扱い

Q.共同企業体を組んで実施しているJV工事において、課税仕入れに関する請求書等は、幹事会社が保管している場合、その精算書に基づく消費税の申告は適切ですか?

A.JV工事のような共同事業では、共同事業に参加している各構成員が、自分の持分割合に応じて行った課税仕入れを支払ったことになります。課税仕入れに関して消費税の仕入税額控除を受けるためには、その課税仕入れの証となる請求書等を保存する必要がありますが、共同事業としては1つの請求書を共同企業体全体で受け取る形になるため、各構成員が個別に請求書を受け取ることはあまりありません。このような状況では、請求書等のコピーに各構成員の持分割合に応じた課税仕入れの配分を記載し、これを請求書等として扱う方法があります。幹事会社が請求書等を保存し、精算書を請求書等として扱うことが認められています。

参考:法30⑦ 、基通1-3-1 

実費精算の出張旅費に係る仕入税額控除の適用要件

Q.当社では従業員の出張旅費を実費精算しており、従業員が提出する精算書に基づいて支給しています。この精算書と実費精算による出張旅費の支払額を記載した帳簿を保存することで、仕入税額控除の適用要件を満たしているとして扱ってもよいでしょうか。

A.はい、従業員の精算書をまとめて保存し、出張旅費の支払額を記載した帳簿と共に保存することにより、仕入税額控除の適用要件を満たしていると扱うことができます。帳簿には複数人分や一定期間分をまとめて記載し、軽減対象資産の譲渡がある場合にはその内容も記載する必要があります。なお、宿泊費以外の交通費などで請求書の保存がない場合も、やむを得ない理由があるとして扱われます。

参考:法30⑦、③一、令49①、基通11-6-4

家賃の回座振替支払いと仕入税額控除の適用要件

Q.当社は事務所をB社から賃借しており、家賃の支払いを回座振替で行っていますが、B社からは請求書や領収書を受け取っていません。家賃の支払い記録は銀行の通帳にしか残らない状況です。仕入税額控除の要件を満たすために、帳簿に法定事項に加えて口座振替であること、そして賃貸人の住所または所在地を記載する方法で大丈夫でしょうか。

A.課税仕入れに関する支払合計額が3万円以上の場合で、請求書などが交付されなかったやむを得ない理由がある場合は、帳簿に法定事項とともにそのやむを得ない理由、並びに課税仕入れの相手方の住所または所在地を記載することで仕入税額控除を認められます。質問のケースでいうと、請求書等が交付されなかったやむを得ない理由として適合するため、指摘された方法での取り扱いで問題ありません。具体的には、「口座振替のため」という理由や「支払方法:口座振替」といった内容を帳簿に記載することが推奨されます。

参考:法30条の7、令49条の1、基通11-6-3

テナント家賃の銀行振込み

Q.我々はA社から事務所を借りており、家賃の支払いは指定された銀行に毎月振り込んでいますが、A社からの領収書は発行されません。振込時に銀行から発行される振込金受取書を賃貸借契約書と共に保存することは、仕入税額控除の要件を満たすことになりますか?

A.はい、振込金受取書は銀行が振込みを証明する書類であり、建物賃貸借契約書と一緒に保存することで、仕入税額控除の要件として必要な情報が網羅されると考えられます。振込金受取書は課税仕入れの相手方による確認は含まれないものの、銀行が振込みを確認したものとして扱われます。そのため、これらの書類を保存することで、仕入税額控除の要件としての請求書等の保存があるものとして扱うことが可能です。

参考:消法30⑦ 、⑨一、二

カード会社からの請求明細書

Q.カード会社から交付される請求明細書は、消費税法第30条第9項の請求書等に該当するか。

A.クレジットカード会社からの請求明細書は、消費税法第30条第9項に記載されている「請求書等」には該当しない。というのも、これらの書類は課税仕入れの相手方から直接交付されたものではないからです。しかし、クレジットカードの利用で得た商品やサービスの提供者から「ご利用明細」などが発行され、それに消費税法第30条第9項に規定する記載事項が含まれていれば、そのドキュメントは「請求書等」に該当することになります。

参考:法30⑨、平28改法附34②

電子帳簿保存法と仕入税額控除

Q.当社は電子帳簿保存法に基づき、帳簿及び書類を電子データで保存していますが、仕入税額控除に必要な帳簿及び請求書の保存要件を満たしているのでしょうか。

A.電子帳簿保存法に基づいて帳簿及び書類を電子データで保存することは認められています。具体的には、国税関係の帳簿は電子計算機を使用して最初から作成されたもの、書類は電子計算機を用いた作成やスキャンによる読み込みが認められています。これらの規定に従って保存されていれば、仕入税額控除で要求される帳簿及び請求書の保存要件を満たしていると考えられます。

参考:法30⑦③⑨、電帳法4、電帳規2