適格請求書の記載事項の誤りに対する対応

Q.交付した適格請求書の記載事項に誤りがあった場合、何か対応が必要ですか?

A.適格請求書を発行した事業者が、交付した適格請求書、適格簡易請求書、または適格返還請求書に記載された事項に誤りがある場合は、誤りを修正した新しい適格請求書、適格簡易請求書、または適格返還請求書を、請求書を受け取った課税事業者に再度交付しなければなりません。これにより、受け取った課税事業者は、修正された請求書に基づき仕入税額控除を適切に行うことができます。なお、受け取った事業者は、自ら請求書を修正または追記することはできません。

参考:新法57の4④⑤

適格請求書の電子データによる提供

Q.当社は、インターネットを通じて請求書データを取引先に提供していますが、この方法で適格請求書とすることは可能でしょうか。

A.適格請求書発行事業者は、国内で課税資産の譲渡などを行った際、相手方から適格請求書の提供を求められた場合、それを交付する必要があります。しかし、適格請求書の内容を電子データ形式で記録し提供することで、紙の請求書を交付することに代わることが可能です。ただし、電子データとして提供された適格請求書を保存する際には、特定の条件を満たして保存する必要があります。

適格請求書の電子データ提供方法には、光ディスクや磁気テープなどの記録媒体を使った方法、EDI取引における電子データの提供、電子メールによる提供、インターネット上のサイトを通じた提供などがあります。

参考:新法57の 4①⑤、インボイス通達3-2

売手が負担する振込手数料相当額

Q.適格請求書等保存方式の開始後、売手が代金請求の際に既に適格請求書を交付している場合、売手が振込手数料相当額を負担する商慣行においてどのような対応が必要ですか?

A.取引当事者間の契約により、以下のような対応が必要です。

1. 売手が振込手数料相当額を売上値引とする場合:

売手は、振込手数料相当額を売上値引と考えているとき、原則として、適格返還請求書を買手に交付する必要があります。しかし、振込手数料相当額が1万円未満の場合、この適格返還請求書の交付義務は免除されます。例えば、売上値引きが440円の場合は、適格返還請求書の交付は不要です。振込手数料相当額の売上値引きに関して適用される税率は、その課税資産の譲渡に関する税率に準じます。

2. 売手が代金決済上の役務提供(支払方法の指定に関する便宜)を買手から受けた対価とする場合:

売手は、買手から請求金額から差し引かれた振込手数料相当額について、仕入税額控除を受けるために適格請求書の保存が必要になります。また、売手は、振込手数料相当額に関する仕入明細書などを作成し、買手の確認を得て仕入税額控除を行うことができます。

3. 買手が売手のために金融機関に対して振込手数料を立替払した場合:

買手が売手に代わって振込手数料を立替払いした場合、売手は、買手が金融機関から受け取った振込手数料に関する適格請求書及び買手が作成した立替金精算書などの交付を受け、振込手数料に関連する仕入税額控除を行います。買手が金融機関のATMを使用して振込手続を行った場合は、ATM手数料は自動販売機特例の対象となり、適格請求書及び立替金精算書の保存は必要ありません。

参考:新法30⑨三、57の 4③、新令70の 9③二、平28改法附53の 2、 平28改令附 24の 2①

1万円未満の適格返還請求書の交付義務免除

Q.1万円未満の対価返還等とは、具体的にどのような単位となりますか。

A.売上に関連する商品やサービスの返品、値引き、または割戻しなどによって、売上金額の全額または一部を返還すること、または売上に関連する売掛金などの債権額の全額または一部を減額することを指します。この返還や減額の金額が1万円未満であれば、適格返還請求書の交付義務は免除されます。判断は、返還された金額や値引きなどの請求額や債権の減額額ごとに行います。

500,000円の請求に対して、440円減額され499,560円が支払われた例(適格返還請求書の交付義務免除)

400,000円の請求に対し、1商品あたり100円のリベートが後日支払われ合計20,000円になった例(免除されない)

値引き等の金額に標準税率または軽減税率が適用される場合でも、返還または値引きの対象となる請求や債権ごとの減額金額により判断する。

参考:法38①、新法57の 4③ 、新令70の 9③二

適格返還請求書の交付義務

Q.返品や値引きなどで売上にかかわる代金を返す場合、適格請求書発行事業者はどのような対応をすべきですか?

A.適格請求書発行事業者は、返品や値引きなど売上にかかわる代金の返還を行う際には、適格返還請求書を交付する義務があります。ただし、以下の場合はこの義務から免除されます:

1. 3万円未満の公共交通機関による旅客運送

2. 出荷者が卸売市場で行う生鮮食料品の販売(卸売業務に限る)

3. 生産者が農業協同組合等に委託して行う農林水産物の販売(特定せずに行うものに限る)

4. 3万円未満の自動販売機や自動サービス機による商品販売

5. 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポスト差し出しのみ)

さらに、対価の返還に関わる税込価格が1万円未満である場合も、適格返還請求書の交付義務から免除されます。

参考:新法57の4③、新令70の9③

媒介者交付特例

Q. 当社は取引先に商品の販売を委託し、委託販売を行っています。これまで販売した商品の納品書は取引先から購入者に交付していましたが、この納品書を適格請求書として交付することは可能ですか?なお、当社と取引先はいずれも適格請求書発行事業者です。

A. はい、可能です。適格請求書発行事業者の間で商品の販売委託が行われる場合、受託者(取引先)が委託者(あなたの会社)の代わりに購入者へ適格請求書を交付することが認められています(代理交付)。また、「媒介者交付特例」という制度により、特定の条件を満たした場合、受託者が自らの名前と登録番号を記載した適格請求書またはその電磁的記録を購入者に直接交付あるいは提供することができます。この特例を適用するには、以下の条件を満たす必要があります:

1. 委託者及び受託者が適格請求書発行事業者であること。

2. 委託者が受託者に適格請求書発行事業者である旨を取引前に通知していること。

なお、受託者は適格請求書の写しやその電磁的記録を保存し、速やかに委託者にも提供する必要があります。一方、委託者も受託者から提供された適格請求書の写しを保存する義務があります。

適格請求書発行事業者には、課税資産の譲渡等を行った場合の適格請求書の交付義務があります。

 媒介者交付特例は、物の販売などを委託し受託者が買手に商品を販売している取引だけでなく、請求書の発行事務や集金事務といった商品の販売等に付随する行為を委託している場合も対象となります。

参考:新法57の 4① 、新令70の 12①③④、インボイス通達 3-7、 3-8

農協等を通じた委託販売

Q. 農業協同組合等を通じた農林水産物の委託販売で、組合員等の適格請求書の交付義務が免除される取引にはどのようなものがありますか?

A. 農業協同組合法、農事組合法人、水産業協同組合法、森林組合法、中小企業等協同組合法に基づく協同組合や組合連合会(以下、農協等と呼ぶ)のメンバーが農協等に対して条件なしで販売を委託し、その販売が共同計算方式を用いて行われる農林水産物については、販売先を特定せずに行われる場合、組合員等による適格請求書の交付義務は免除されます。無条件委託方式は出荷された農林水産物の売値、出荷時期、出荷先などの条件を設けずに販売を委託する方法です。共同計算方式は一定期間内の農林水産物の譲渡価格を種類や品質に応じて平均して算出し、それを基に精算する方法です。農林水産物を購入した事業者は、農協等が提供する特定の文書を保存する必要があり、これが仕入税額控除の条件となります。

農業協同組合法第4条(法人性)

水産業協同組合法第2条(組合の種類)

森林組合法第4条(事業の目的)

 中小企業等協同組合法第3条(種類)

参考:新法57の 4①、新令70の 9②ニロ、新規26の 5②

適格請求書の交付義務が免除される取引

Q.適格請求書の交付が困難な取引で、交付義務が免除されるのはどのようなものですか。

A.適格請求書発行事業者は、国内で課税対象の資産を譲渡する際、相手方(課税事業者の場合のみ)からの要求に応じて適格請求書を交付する義務を負います。しかし、以下の取引については、事業の性質上適格請求書を交付することが困難であるため、免除されます。

1. 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、または鉄道)による旅客運送

2. 出荷者が卸売市場で行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売業務として行う場合のみ)

3. 生産者が農業協同組合、漁業協同組合、または森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式を用い、特定の生産者を特定せずに行う場合のみ)

4. 3万円未満の自動販売機および自動サービス機による商品販売

5. 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたもののみ)

参考:新法57の4①、新令70の9②

適格請求書の様式

Q.適格請求書の様式は、法令又は通達等で定められていますか。

A.適格請求書の様式は法令等で特に定められていません。しかし、適格請求書として認められるためには、以下の事項が記載されている必要があります。これらの情報が含まれていれば、形式(請求書、納品書、領収書、レシート等)に関わらず、適格請求書とみなされます。

1. 適格請求書発行事業者の氏名や名称、及び登録番号

2. 課税資産の譲渡等が行われた年月日

3. 課税資産の譲渡等に関する資産や役務の内容(軽減税率の対象である場合は、その内容と軽減税率適用である旨も記載)

4. 課税資産の譲渡等の税抜き価額または税込み価額を税率別にまとめた金額と適用税率

5. 税率別に区分した消費税の金額

6. 書類を受け取る事業者の氏名や名称

なお、課税期間内の一定期間に渡って行われた課税資産の譲渡などについて一つの適格請求書にまとめる場合は、その期間を記載することが可能です。

参考:新法57の4①、インボイス通達3-1

適格簡易請求書の交付ができる事業者

Q.適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付できるのは、どのような場合ですか。

A.適格請求書を発行する事業者が、不特定かつ多数の者へ課税資産を譲渡する場合に、簡化された内容の適格簡易請求書を交付することが許されます。該当する事業には小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業(不特定かつ多数の者に限る)、およびこれらに準じる事業があります。1から5までの事業には「不特定かつ多数の者に対する」という制限はありません。各事業の性質に応じて、「不特定かつ多数の者への譲渡」が判断されます。取引条件を事前に提示していて、相手方を問わず一般に資産の譲渡等を行う事業や、取引で一般的に相手方の氏名等の確認をしつつも広く一般に対して資産の譲渡等を行う事業などがこれに該当します。

参考:新法57の4②⑤、新令70の11