合併法人が簡易課税制度を選択する場合の基準期間の課税売上高の計算

Q. 当社は簡易課税制度を適用して申告していますが、基準期間の課税売上高が5,000万円超の甲社を吸収合併した場合、当期において簡易課税制度を適用して申告できますか?なお、当社の基準期間の課税売上高は5,000万円以下です。

A. 合併法人が簡易課税制度を選択する場合、基準期間の課税売上高は合併後の法人のもののみで判定します。そのため、被合併法人の課税売上高を合算する必要はありません。貴社の基準期間の課税売上高のみで5,000万円以下であれば、当期は簡易課税制度を適用して申告できます。

参考:法1l①②、37①、基通13-1-2

新設法人と簡易課税制度

Q.当社は令和5年6月に設立された株式会社で、第1事業年度と第2事業年度に簡易課税制度を適用できるか、またその場合「消費税簡易課税制度選択届出書」をいつまでに提出すれば良いのか、第3事業年度の課税事業者の判定方法、第1事業年度から簡易課税制度を選択した場合に第3事業年度に選択を取りやめる手続きについて教えてください。

A.1 新設された事業であっても、第1事業年度及び第2事業年度には簡易課税制度を適用することが可能です。この制度を適用するためには、「消費税簡易課税制度選択届出書」をその課税期間の開始の前日までに提出する必要がありますが、新たに事業を開始した場合は、課税期間中に提出しても受け付けられます。よって、第1事業年度に適用を希望する場合は、令和5年12月31日までに提出すれば良いです。

2 第3事業年度の課税事業者か否かの判定は、第1事業年度の課税売上高を基準期間として、それを7で割り、さらに12を乗じた金額が1,000万円を超えるかで判断します。この計算に基づき、判定を行ないます。

3 簡易課税制度を選択した場合、選択開始から2年を経過した後の課税期間の初日から「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」の提出が可能です。この提出により簡易課税制度の適用を取りやめることができますが、その効果は提出した課税期間の翌課税期間からとなります。従って、第1事業年度からの適用を令和7年に取りやめた場合には、その効力は第4事業年度から発生します。

参考:法2①十四、9①②、3

決算期変更に伴う基準期間の扱いと簡易課税制度の適用

Q.会社の決算期を9月末から3月末に変更した場合、令和6年3月期の基準期間における課税売上高はどのように計算するのでしょうか?また、その際簡易課税制度を適用することは可能でしょうか?

A.原則として、基準期間はその事業年度の前々事業年度になりますが、前々事業年度が1年未満の場合は、その事業年度の開始日より2年前の前日から同日以降1年を経過する日までの間に開始した各事業年度をまとめた期間が基準期間となります。基準期間が1年でない場合の「基準期間における課税売上高」は、該当期間の課税売上高をその期間の月数で割り、これに12を乗じて計算します。令和6年3月期の場合、基準期間は令和4年3月期の6か月間のみとなり、令和4年3月期(6か月)の課税売上高27,000,000円を6で割り、これに12を乗じて54,000,000円が「基準期間における課税売上高」となります。これにより、令和6年3月期は簡易課税制度の対象外です。ただし、令和7年3月期は基準期間の課税売上高が5,000万円以下になるため、簡易課税制度を再び適用できます。

参考:法2①十四、9①②、37

簡易課税制度の届出書の効力存続期間

Q.木造建築業を営む12月末決算の法人が令和3年分の課税売上高が5,000万円以下であったため、令和5年から簡易課税制度を選択しています。令和3年から令和7年まで毎年の課税売上高はどのように影響しますか?令和4年5月10日に消費税簡易課税制度選択届出書を提出しています。

A.簡易課税制度を選択した後、その効力は選択不適用届出書を提出しない限り継続されます。課税売上高が5,000万円以下の年には簡易課税制度が適用されますが、5,000万円を超える年には一般課税が適用されます。令和5年の課税売上高が5,000万円以下であるため、簡易課税制度が適用されます。しかしながら、令和6年の課税売上高は5,000万円を超えるため、一般課税が適用されます。令和7年には再び課税売上高が5,000万円以下となり、簡易課税制度が適用されます。簡易課税制度選択の有効性は、再度届出をする必要がない限り継続されるため、各年の課税売上高に応じて適用される制度が変わります。

参考:法37、基通13-1-3

簡易課税制度 とその他の税額控除との関係

Q.当社は消費税簡易課税制度の適用を受けていますが、簡易課税制度を利用している場合においても、貸倒れに関する消費税額の控除は可能ですか?

A.はい、簡易課税制度が適用されている場合でも、貸倒れに係る消費税額の控除は可能です。簡易課税制度では、課税期間の売上げに関する対価の返還等に係る消費税額の控除後の残額に、みなし仕入率を乗じて計算した金額を仕入れに関する消費税額として控除します。しかし、貸倒れに関する消費税額の控除は仕入れに関するものとは別扱いなので、簡易課税制度を利用していても控除することができます。また、売上げに係る対価の返還等に関する消費税額の控除についても、簡易課税制度と併用が可能です。

参考:法30② 、33、 37、 38、 39

簡易課税制度

Q.いわゆる簡易課税制度とは、どのような制度ですか?

A.簡易課税制度とは、税務上の基準期間において課税売上高が5,000万円以下である事業者が適用できる制度です。この制度では、課税期間の課税売上高からその期間における返還金などに係る消費税額を差し引いた後の金額に、事業の種類ごとに定められた仕入れに係わる消費税額をあらかじめ決められたみなし仕入率を使って計算し、その計算結果を消費税額の計算の基礎として用います。つまり、実際の仕入れ税額を計算せずに、みなし仕入れ税額を用いることで、消費税の申告が簡略化されます。第一種事業から第六種事業まであり、それぞれ業種に応じたみなし仕入率が設定されています。簡易課税制度を適用するためには、課税期間の開始前に所定の届出を税務署に提出する必要があり、一度適用を開始すると2年間はその制度を使用し続けなければなりません。ただし、特定の条件を満たす場合には、特例が適用されることがあります。

簡易課税制度の適用可能な課税売上高は5,000万円以下です。

みなし仕入率は、第一種事業から第六種事業まで事業の種類によって異なります。

参考:法37、 令57

2割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択

Q.小規模事業者が2割特例の適用を受けた後、翌課税期間から簡易課税制度の適用を受けたい場合、消費税簡易課税制度選択届出書の提出期限はいつですか?

A.簡易課税制度を適用する場合、原則としてその適用を受ける課税期間の初日の前日までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間から簡易課税制度の適用を受ける意向を税務署長に届け出た場合、その課税期間の初日の前日に届出したものとみなされます。簡易課税制度の適用を受ける場合は、事前に選択届出書の提出が必要であるため、注意が必要です。例えば、ある年まで2割特例で申告していた事業者が、翌年から簡易課税制度を適用したい場合、翌年中に簡易課税制度選択届出書を提出すれば、その年から簡易課税制度の適用を受けることができます。

参考:平成28年改正法附51の2⑥

2割特例の適用ができない課税期間 その2

Q.消費税課税事業者選択届出書の提出により納税義務の免除が制限されている場合でも、小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)の適用を受けられない場合はありますか。

A.はい、あります。具体的には、令和5年10月1日以前から消費税課税事業者選択届出書の提出により継続して課税事業者である期間については、2割特例の適用を受けることはできません。ただし、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの期間において、適格請求書発行事業者となり課税売上高が1千万円以下であれば、適用できます。また、適格請求書発行事業者となるための登録申請書を提出し、適用を受けることにより、その登録日から2割特例を適用することが可能です。

令和5年10月1日から令和8年9月30日までの期間

基準期間の課税売上高が1千万円以下である場合

参考:平28改 法附51の 2①⑤ 

2割特例の適用ができない課税期間 その 1

Q.小規模事業者に関する税額控除の経過措置(2割特例)が適用できない課税期間にはどのようなものがありますか?

A.小規模事業者の税額控除(2割特例)は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者になる場合に適用可能です。しかし、以下の課税期間では2割特例の適用を受けられません。

1. 基準期間の課税売上高が1千万円を超える課税期間

2. 特定期間における課税売上高が免税点を超えることによる免税の特例が適用される期間

3. 相続、合併、または分割があった場合の免税の特例が適用される期間

4. 新設法人や特定新設法人に対する免税の特例が適用される期間

5. 課税事業者となった後、2年以内に一定額以上の固定資産を仕入れた際に、免税点制度が適用されない期間

6. 新設法人や特定新規設立法人が、特例を受けながら高額な固定資産を仕入れた場合の課税期間

7. 高額特定資産の仕入れにより、免税点制度が適用されない期間

8. 課税期間を1ヶ月または2ヶ月に短縮した特例を適用する課税期間

参考:法2①十六、9①⑦、9の 2① 、10、 11、 12、 12の 2①②、12の 3①③、 12の 4①②③、19、 令5、 25の 5① 、平28改法附44④ 、51の 2①

小規模事業者に係る税額控除の経過措置(2割特例)

Q.適格請求書等保存方式がスタートした後の一定期間、免税事業者が課税事業者となる場合の消費税の簡易計算方法(2割特例)について教えてください。

A.令和5年10月1日から令和8年9月30日までの期間に免税事業者が課税事業者となる場合(「消費税課税事業者選択届出書」の提出後も含む)、納付する税額の計算で、特別控除税額として算出した金額(売上にかかる消費税額から返還等に関わる消費税額を差し引いた金額の80%)を利用できます。これにより実質的に売上にかかる消費税額の20%を納税する形となります。この制度は、課税売上高が1千万円以下の場合にも続く課税期間で利用可能であり、2割特例の適用にあたっては事前の届出や継続適用の必要はなく、申告書にその適用を記載することで適用が受けられます。

参考:平成28年改正 法附51の2①②③