多角的経営と消費税の簡易課税制度

Q.当社が多角的経営を行っており、全ての課税売上げがある場合において、簡易課税制度での仕入控除税額の特例について教えてください。

A.簡易課税制度では、複数の事業を営んでいる場合、各事業区分ごとの売上げに関する消費税額を基に仕入控除税額を計算します。ただし、特定の2種類の事業に関する課税売上高が全体の75%以上を占める場合は、その2種類の事業以外の課税売上に関しては、2つのうち低い方のみなし仕入率を適用することが可能です。例えば、貴社が第一種事業と第三種事業の売上が全体の75%以上を占める場合、第一種事業には90%のみなし仕入率を、残りの部分には第三種事業の70%のみなし仕入率を適用できます。この計算をするためには、事業の種類ごとに課税売上高を明確に分けておく必要があります。

参考:法37、令57②、③二

簡易課税制度における複数事業の取り扱い

Q.当社が主に製造業を営んでいるが、少量の製造業以外の収入がある場合、消費税の簡易課税制度では、全ての取引を事業の種類ごとに分類し、それぞれのみなし仕入率を適用する必要があるのでしょうか?

A.簡易課税制度では、複数の事業を行っている場合、原則として、各事業ごとに事業の種別に応じたみなし仕入率を適用して消費税額を計算します。しかし、ある1種類の事業に関する課税売上高が全体の75%以上を占める場合には、全ての課税売上にその事業のみなし仕入率を適用できる特例があります。例えば、製造業からの課税売上高が全体の75%以上の場合は、製造業のみなし仕入率(70%)を全ての課税売上に適用できます。ただし、この特例の適用は任意であり、必要に応じて事業ごとに異なるみなし仕入率を適用することも可能です。重要なのは、課税売上高を事業種別に区分記録しておくことです。

参考:法37、令57②③一、基通13-4-1

事業用固定資産の売却収入の事業区分

Q.当社は卸売業を営んでいて、事業で使用していた固定資産を譲渡しました。この固定資産の譲渡は簡易課税制度において、第一種事業に該当すると考えてよいでしょうか。

A.消費税の簡易課税制度における第一種事業とは、購入した商品をその性質や形状を変えずに他の事業者に販売する事業のことです。質問の事業用固定資産は商品ではないため、その性質や形状を変えずに譲渡しても、第一種事業には該当せず、第四種事業に該当します。ただし、貴社が第一種事業に係る課税売上高が全体の75%以上である課税期間の場合、全体に対して第一種事業のみなし仕入率を適用することができます。

参考:法37、令57③⑤⑥、基通13-2-9

サービス料等の事業区分

Q.当社は飲食店を経営しており、簡易課税制度の適用を受けています。料理代金とは別にサービス料を10%いただいていますが、このサービス料の事業区分はどうなりますか?また、部屋代やテーブルチャージ等についてはどうでしょうか?

A.サービス料は、料理代金とは別に請求される場合でも、飲食物の提供に対する対価の一部として認められ、第四種事業に該当します。部屋代やテーブルチャージ等の料金も、同じ理由で第四種事業に該当します。

飲食物を提供する場合の事業区分

Q.飲食店を経営しており、簡易課税制度の適用を受けています。ホテルでパーティが行われる際に、主催者の依頼で会場に材料、調理器具等を持参して会場内で飲食物の提供を行う場合や、自ら会場使用料を支払って会場で飲食物を提供する場合の事業区分はどうなるのでしょうか。

A.第四種事業に該当します。飲食店の定義は、飲食のための施設を設けて、主に注文によりその場で直接飲食させる事業所です。また、百貨店などの一室を借りて独立の一事業所として飲食店を営む場合も含まれます。したがって、パーティの主催者から依頼を受けて飲食物の提供を行う場合や、自ら会場使用料を支払って飲食物を提供する場合も、パーティ参加者の注文に基づきその場で飲食を提供することから、飲食店に該当し第四種事業となります。

参考:法37、令57⑤、基通13-2-8の2、基通13-2-8の3

自動車整備業者等によるタイヤ交換等の事業区分について

Q. 自動車のタイヤ交換やオイル交換などを行う事業者で、これらのサービスによる売上げはどのように事業区分されるのですか?

A. タイヤやオイルなどを交換する場合、これらは故障や老朽化した部品を新しいものに取り替える行為で、部品の販売を主とした取引です。販売した部品の代金と作業工賃が区分されているならば、販売代金は第一種事業または第二種事業に、工賃は第五種事業に該当します。ただし、請求金額が商品(タイヤやオイル等)代金のみであり、工賃が無償サービスとみなされる場合は、全体が商品の販売として第一種事業または第二種事業に該当します。

参考:法37、令57⑤

印刷業者が行う取引と事業区分

Q.簡易課税制度下で、我々印刷業者が行う以下の取引はそれぞれどの事業区分に該当しますか? (1)自己で紙を調達して行う印刷、(2)注文者から紙の無償提供を受けて行う印刷、(3)印刷物の提供を受けて行う製本の請負。

A.各取引は以下の事業区分に該当します。 (1)印刷業として「製造業」、第三種事業に該当します。 (2)印刷業として「製造業」に該当しますが、注文者が提供した紙に印刷を施すため、加工賃等の役務提供として第四種事業に該当します。 (3)製本業として「製造業」に該当しますが、こちらも加工賃等の役務提供として第四種事業に該当します。ただし、(2)及び(3)は「製造業」に属するため、サービス業など他の部門の第五種事業には該当しません。

参考:法37、令57⑤、基通13-2-4、13-2-7、13-2-8の3

旅館業者における売上げと事業区分

Q.旅館業を営む私たちの会社では、次の各売上げが簡易課税制度のどの事業区分に該当するか教えてください。

(1)1泊 2食付きで30,000円 の宿泊代

(2)宿泊代と区分して領収される特別料理代

(3)客室内の冷蔵庫で販売された酒やジュース類の売上げ(宿泊代と区分して領収)

(4)お土産コーナーでのお土産品の販売代金

(5)旅館内のレストラン利用による売上げ(旅館の宿泊代と区分して領収)

A.各売上げが以下の事業区分に該当します。

(1)サービス業として第五種事業に該当します。

(2)飲食店業として第四種事業に該当します。

(3)飲食店業として第四種事業に該当します。

(4)購入した商品をそのまま販売している場合は第二種事業、自社で製造または加工して販売している場合は製造業として第三種事業に該当します。

(5)飲食店業として第四種事業に該当します。

参考:法37、令57⑤⑥、基通13-2-8の2

不動産業者が行う取引と事業区分

Q. 当社は不動産業を営んでいますが、簡易課税制度において、以下の各取引がどの事業区分に該当するか教えてください。

1. 不動産売買の仲介

2. 別の業者が建築した建物を購入し、そのまま別の業者に販売する行為

3. 自社で施主となり、請負契約により建築させた建物をそのまま別の会社に販売する行為

4. 自社が所有する事務所を別の会社に賃貸する行為

A. 各取引は以下の事業区分に該当します。

1. 不動産業として第六種事業に該当します。

2. 他の業者から購入した建物をその性質及び形状を変更せずに販売した場合、第一種事業に該当します。ただし、購入した建物を自社が一時的に使用していた場合は、固定資産の譲渡とみなされ、第四種事業に該当します。

3. 建設業として第三種事業に該当します。外注でも自社が施主として建築した建物の販売なので、第二のケースとは異なります。

4. 不動産業として第六種事業に該当します。

参考:法37、 令57⑤⑥、基通13-2-4、 13-2-5(2) 

塗装工事業の事業区分について

Q.塗装工事業は簡易課税制度において第三種事業と第四種事業のどちらに該当しますか?

A.塗装工事業は、資材を自社で調達して建築物等に塗装を施す場合は「建設業」に当たり、第三種事業に該当します。しかし、他者が調達した塗料の塗装のみを行う場合は、加工賃その他これに類する料金を対価としているため、第三種事業から除かれ、第四種事業に該当します。

参考:法37、令57⑤、基通13-2-7