仮装経理の更正に伴う税額控除の計算例

Q.3月31日決算の資本金50,000千円の法人が仮装経理により過大に納付した法人税の還付及び税額控除を行う場合、その計算例を教えてください。

A.この例では、仮装経理による架空売上が令和5年3月期に10,000千円として計上され、その結果法人税2,128千円が納付されました。その後、令和6年3月期に架空売上の10,000千円を減額修正し、この修正により所得金額が3,000千円となり、納付すべき法人税が450千円に減少しました。

この過大納付された法人税の還付及び税額控除は令和5年3月期に計上された架空売上の減額修正が令和6年3月期の確定申告後に行われるため、更正の日が属する事業年度の開始日前1年以内に開始する事業年度の法人税額に基づき計算されます。この場合、更正の日の属する事業年度は令和7年3月期で、それに基づいて計算すると、令和5年3月期の法人税は300千円に修正され、過大納付額は1,828千円となります。令和6年3月期については、減額修正後の所得金額が13,000千円に増加し、法人税が2,360千円となりますが、この増加分は令和5年3月期の減額更正後に行われるため、令和6年3月期の法人税の過大納付額は450千円のみとなります。この450千円は還付され、残りの1,378千円は令和7年3月期以降の法人税から順次控除されます。

このような場合、利益操作は避けるべきですが、仮装経理による税額の還付を先延ばしにしないよう対策を講じることが重要です。

仮装経理に対する減額更正及び法人税額の還付

Q.不況のため業績が赤字になったが、金融機関に配慮して架空売上を計上し黒字に見せた場合、(1)架空売上を申告減算しても良いか、(2)仮装経理に基づく申告と納税後に更正の請求をした場合、どのように扱われるか。

A.仮装経理、つまり虚偽の決算は法律に反し、会計基準にも反します。税法では事実に基づく課税が原則ですから、(1)架空売上など事実と異なる取引は課税対象外となり、法人が架空売上を申告から減算した場合、それは認められます。(2)もし仮装経理による申告と納税をした後に更正請求をする場合、税務署長は、正確な決算に基づく申告がなされるまで減額更正をしないことができます。更正を行った場合でも、特定の条件を除き、更正日に属する事業年度開始の1年以内に開始する事業年度の法人税から還付しますが、全額一度に還付されるわけではなく、残額は後の事業年度の法人税から控除されます。5年を経過するまでに控除しきれなかった額は、その時点で還付されます。また、特定の事態が生じた場合には、それらの事態が起きた後1年以内に仮装経理による法人税額の還付を請求できます。

DX投資促進税制

Q.デジタルトランスフォーメーション(DX)のための投資を行った場合に受けられる特別償却又は税額控除の制度について教えてください。

A.このDX投資促進税制は、デジタル技術を活用した事業改革を支援するために設けられた税制措置です。2021年8月2日から2025年3月31日の間に特定の条件を満たす設備を購入したり、特定の支出を行った企業は、投資額に応じた特別償却または税額控除を受けることができます。適用を受けるためには、青色申告を行っている法人であり、産業競争力強化法に基づく認定を受けた事業者である必要があります。

適用対象となるのは、DXに必要なソフトウェアや機械・装置など、特定の条件を満たす資産です。特別償却については、対象資産の購入価額の合計が300億円以下であれば、購入価額の30%が特別償却の限度額となります。300億円を超える場合の計算方法もありますが、所有権移転以外のリース取引には適用されません。

法人税額の特別控除は、対象資産合計が300億円以下の場合、購入価額の3%または5%が控除額となります。300億円を超える場合には、特別な計算方法があります。この税額控除の上限は、適用年度の所得に対する調整前法人税額の20%です。特別控除の5%が適用されるのは、産業競争力強化法に定められた基準に適合するDX設備の場合です。

認定特定高度情報通信技術活用設備の特別償却及び法人税額の特別控除制度

Q.「認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度」について、その概要を説明してください。

A.この制度は、高度情報通信技術を活用したシステムの導入を促進するため、特定の条件を満たす法人が一定の設備を取得し、その設備を事業で利用した場合に適用されます。適用される法人は青色申告書を提出する法人で、特定高度情報通信技術の導入に関する認定を受けた企業ですが、中小企業を除く一部の法人には給与増加または一定の設備投資がない場合、特別控除を受けることができません。

適用される資産は特定の機械や装置、建設後初めて事業で使われる建物附属設備、構築物などで、これらは高度情報通信技術の導入のために特別に認定された設備である必要があります。ただし、これらの設備をリース契約によって取得した場合は、特別償却の対象外となります。

制度には特別償却と法人税額の特別控除の二つの主な特典があります。特別償却では、認定された設備の取得価格の30%を償却限度額と計算します。法人税額の特別控除は、取得価格の一定割合か、調整前法人税額の20%のうち小さい方が適用されます。この割合は設備の種類や導入期間、地域によって異なります。

給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度(一定の大会社の特例)

Q.一定規模の大会社の場合、給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除の適用を受けるには、特別な要件があるとのことですが、その内容を説明してください。

A.資本金または出資金が10億円以上で、従業員が1,000人以上の大企業が給与の支給額が増えた場合に法人税額の特別控除を受けるためには、以下の二つの要件を満たす必要があります。まず、給与の支給額を増やす方針、下請中小企業振興法に基づく下請事業者やその他の取引先との適切な関係の構築に関する方針などについて、インターネットを使って公開することが必要です。これらの方針は厚生労働大臣、経済産業大臣、国土交通大臣が定めるもので、これをマルチステークホルダー方針と呼びます。次に、確定申告書に経済産業大臣のマルチステークホルダー方針を公表していることについての届出があった旨の書類のコピーを添付することです。具体的には、会社のホームページでマルチステークホルダー方針を公開し、その旨を経済産業省に届け出ます。経済産業省からの通知書を受け取り、それを確定申告書に添えます。この手続きに関する詳細は経済産業省のホームページに掲載されているため、そちらを参照してください。

給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度(中小企業者等の特例)

Q.【問25-22】の法人税額の特別控除制度について、中小企業者等の特例の内容を説明してください。

A.【問25-22】で説明された給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度には中小企業者等に対する特例が存在します。この特例では、青色申告書を提出する中小企業者等が、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に始める事業年度で、国内の従業員に対して給与等を支給する場合、特定の条件を満たすと法人税の特別控除が受けられます。この特例を受けるための重要な条件の一つとして、給与等の支給額が前年度と比較して5%以上増加している必要があります。

この特別控除の具体的な計算方法は以下のとおりです。特別控除額は次の2つの計算方法のうち、小さい方が適用されます。

1. 給与等支給増加額の15%(ただし、特定の条件を満たす場合、この率は上乗せされる可能性があります)

2. 適用年度の調整前法人税額の20%

また、雇用を地方活力向上地域等で行った場合、給与等支給増加額から一定の金額を減じて控除額を算出します。さらに特別控除額には上乗せ措置があり、実施した教育訓練費の増加や一定の要件を満たす場合、控除率が高まります。この上乗せ措置により、控除率は最大40%まで高まる可能性があります。

給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度

Q.給与等の支給額が増えた場合、法人税額の特別控除が受けられるとのことですが、この制度の概要を説明してください。

A.雇用者に対して支払う給与等が増加した場合、特定の条件を満たすことで、増加した給与額の一定割合を法人税から控除できる制度があります。この制度には、すべての企業が対象のものと中小企業限定のものが存在しますが、ここでは全企業対象の制度について説明します。中小企業向けの特別控除に関する情報は別の項目で確認できます。また、資本金または出資金が10億円以上であり、常時1,000人以上の従業員を雇用している企業は、追加の条件を満たす必要があります。この制度は、令和4年4月1日から令和6年3月31日までに始まる事業年度に対して、国内の雇用者に給与等を支払った場合に適用されます。具体的には、前年度と比較して支払った給与等の増加額の15%が特別控除され、更に特定の条件を満たす場合はこの割合が上がります。この控除は、適用年度の調整前法人税額の20%まで受けることができます。控除対象となる給与等の定義や、雇用者数の計算方法、教育訓練費等が考慮される点も重要です。

中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度の概要

Q.「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」の制度について、その概要を説明してください。

A.この制度は、平成29年4月1日から令和7年3月31日までに特定の条件を満たす経営力向上設備を取得し国内で指定された事業に用いる中小企業者や特定事業者が青色申告書を提出する場合、その年度内での特別償却や法人税額の特別控除の適用を選べるものです。この制度の対象となるのは、中小企業基本法に基づいて認定された中小企業者などで、除外される事業者もあります。適用される資産は、生産設備の一部、新品のソフトウェアなど経営力向上計画に記載されたもので、一定額以上の投資が必要ですが、コインランドリー業や暗号資産マイニング業など一部の資産は除外されます。特別償却では、取得価額から普通償却限度額を引いた額が限度で、法人税額の特別控除は取得価額の7%または10%、または調整前法人税額の20%のうち少ない方が適用されます。なお、リース取引による特定経営力向上設備等の取得では特別償却制度は適用されません。

事業年度の中途で中小企業者等や特定中小企業者等に該当しなくなった場合の特別償却適用について

Q.資本金が1億円以下の中小企業者等が機械装置等を取得し、その後増資で資本金が1億円を超えることにより中小企業者等に該当しなくなった場合、特別償却の適用は受けられるでしょうか。また、資本金が3,000万円以下の法人が増資で資本金が3,000万円を超え特定中小企業者等に該当しなくなった場合はどうでしょうか。

A.中小企業者等が機械や装置を購入あるいは製作して事業で使用した場合、初めは特別償却の対象となります。もし事業年度の途中で資本金が増資され、中小企業者等に該当しなくなったとしても、該当していた時期に取得または製作した資産については、特別償却を受けることができます。この場合、特別償却を適用するかどうかは、中小企業者等だった期間に取得または製作した資産の総額で判断されます。つまり、中小企業者等だった時に特別償却の対象となる資産を事業用に取得したのであれば、その資産に対する特別償却を適用できます。同様に、特定中小企業者等が特定の機械装置等を取得した場合、初めは特別償却あるいは法人税額の特別控除の選択が可能です。事業年度の末に特定中小企業者等に該当しなくなったとしても、該当していた時期に資産を取得し事業で使用していれば、その資産に対して法人税額の特別控除を受けることができます。

中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度の概要

Q. 「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」制度の概要を説明してください。

A. この制度は、特定の条件を満たす中小企業者等が新しい機械や装置を購入したり、作った場合に適用されます。重要なポイントは以下の通りです:

1. 適用される企業と期間: 青色申告をしている中小企業者等が、1998年6月1日から2032年3月31日までの間に特定の機械装置を購入または作成し、日本国内で業務に利用した場合に適用されます。

2. 適用される業種: 製造業、建設業、農業等、幅広い業種が含まれますが、一部の飲食店業や娯楽業は条件があります。

3. 対象となる機械装置: 主に取得価額が160万円以上の機械や装置、特定の工具、ソフトウエア等が該当し、さらに一部の条件を満たしたものが対象です。

4. 特別償却と税額控除: 資産の取得価額の30%相当を特別償却するか、または特定条件を満たす中小企業者等は、取得価額の7%か調整前法人税額の20%のいずれか低い方の金額を法人税額から特別控除できます。ただし、リース契約による取得では特別償却制度は適用されません。

この制度を利用することで、中小企業者等は経済的な支援を受けながら、事業の効率化や競争力の強化を図ることが期待されます。