専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合の意義

Q.不特定かつ多数の者に対して課税資産の譲渡等を行う場合であっても、「専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合」は、総額表示義務の対象から除くこととされていますが、どのような場合が該当するのですか。

A.「専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合」とは、その資産やサービスの種類や性質が、ほとんどの場合、事業でしか使用されないようなものであることが明らかな取引のことを言います。例として、建設機械の販売展示、または事業用資産のメンテナンスサービスなどが挙げられます。

参考:総額表示通達4

税込経理方式の場合の交際費等の取り扱い

Q.消費税の経理処理を税込経理方式で行いたいと思っていますが、交際費の税込処理または税抜処理で法人税法上の取り扱いが変わりますか。

A.税込処理または税抜処理では所得金額は基本的に同じになりますが、交際費など一部または全額を損金として計上できない費用については、税込経理方式を採用した場合、課税所得金額が税抜経理方式よりも多くなることがあります。例えば、資本金が1億円を超える会社の場合、交際費の50%を超える部分は損金に算入できなくなります。例えば交際費が1,100万円(税込み)だとすると、税抜方式と税込方式では課税所得の計算に差が出ます。税込処理をする場合、消費税含む金額で資産取得価額や費用を認識するため、このような差が生まれます。

参考:平成3年1月直法2-1

控除対象外の仕入税額の処理方法

Q.税抜経理方式を採用している場合、非課税売上げに対応する消費税等の控除されない部分の金額はどのように処理すればよいですか?

A.税抜経理方式を採用している場合、課税対象となる仕入れ等の消費税の計算で、控除できない仕入税額が生じることがあります。この控除対象外の消費税額は、法人税の所得計算で次のように処理します。

1. 課税売上割合が80%以上の場合:

   – 資産(棚卸資産を含む)に関する部分は即時に損金処理をするか、資産の取得価額に含めることができます。

   – 経費に関する部分は即時損金処理が可能です。

2. 課税売上割合が80%未満の場合:

   – 資産(棚卸資産を除く)に関する部分で、控除対象外の消費税額が20万円未満のものは即時損金処理が可能です。それを超えるものは、控除対象外消費税額を60で割り、その事業年度の月数を乗じた額を損金処理の限度とします。

   – 棚卸資産に関する部分は即時損金処理が可能です。

   – 経費に関する部分は即時損金処理が可能です。

この処理は所得税においても同様です。

参考:法令139の4

税込経理方式の場合の消費税等の損金算入の時期

Q.税込経理方式を採用している法人が、当事業年度分の課税資産の譲渡等に係る納付すべき消費税等の額を当事業年度分の損金として経理することは可能ですか?

A.税込経理方式を採用している法人が納付すべき消費税等については、納税申告書に記載された税額は、その納税申告書が提出された日が属する事業年度の損金として算入できます。また、申告期限前に納税申告書に記載すべき消費税等を未払金として損金に計上した場合は、その計上を行った事業年度の損金として算入できます。従って、当事業年度の消費税額及び地方消費税額を当事業年度の決算で未払金として損金に計上した場合のみ、当事業年度の損金として算入することができます。

参考:平成3年1月直法2-1、法法2①二十五

貸倒れの場合の経理処理

Q.貸倒れになった場合と、過年度に貸倒れ処理をしていた売掛金を全額回収した場合の消費税等の経理処理を教えてください。

A.貸倒れとその回収に関する経理処理には、税込み処理と税抜き処理の二つの方法があります。

1. 貸倒れになった場合:

   税込み処理:

   – 貸倒損失 55,000円/売掛金 55,000円

   税抜き処理:

   – 貸倒損失 50,000円、仮受消費税等 5,000円/売掛金 55,000円

2. 過年度に貸倒れ処理をしていた売掛金を全額回収した場合:

   税込み処理:

   – 現金 1,100,000円/雑収入 1,100,000円

   税抜き処理:

   – 現金 1,100,000円/雑収入 1,000,000円、仮受消費税等 100,000円

貸倒損失 50,000円、仮受消費税等 5,000円

雑収入 1,000,000円、仮受消費税等 100,000円

仕入返品と売上返品の経理処理

Q.仕入返品と売上返品があった場合、消費税等の経理処理をどのように行えばよいですか?

A.消費税や地方消費税の経理処理には、2つの方法が存在します。1つは税込み額を売上や仕入れに含めて処理する税込処理、もう1つは税込み額を売上や仕入れから除外し、別で処理する税抜処理です。仕入返品と売上返品での具体的経理処理は以下の通りです:

仕入商品66,000円を返品した場合:

– 税込処理であれば、買掛金と仕入れをそれぞれ66,000円で記入します。

– 税抜処理であれば、買掛金を66,000円、仕入れを60,000円、仮払消費税等を6,000円で記入します。

商品330,000円の売上返品があった場合:

– 税込処理であれば、売上と売掛金をそれぞれ330,000円で記入します。

– 税抜処理であれば、売上を300,000円、仮受消費税等を30,000円、売掛金を330,000円で記入します。

仕入れと売上の返品の場合、経理処理は税込処理と税抜処理の2種類があります。

仕入返品時、税込処理では買掛金と仕入れが等しい金額で記入され、税抜処理では買掛金の金額から消費税を差し引いた仕入れと消費税が別途計上されます。

売上返品時、税込処理では売上と売掛金が等しい金額で記入され、税抜処理では売上から消費税を差し引いた金額と消費税が別途計上されます。

割賦販売と税抜処理

Q.割賦販売を行う場合、消費税等の金額の計算と経理処理(税抜経理方式)はどのように行いますか?

A.割賦販売の経理処理では、契約時と決算時に以下の処理を行います。

1. 商品引渡時(契約時)の経理処理

   – 割賦仮売掛金として5,000万円を借方に、割賦仮売上として5,000万円を貸方に記録します。

   – 割賦引渡商品として4,000万円を借方に、仕入として4,000万円を貸方に記録します。

2. 決算時の経理処理

   – 支払期日が到来した金額3,200万円を割賦仮売上から割賦仮売掛金へ移動します。

   – 実際に入金された金額2,970万円を現金預金に記録し、割賦売上として3,200万円を記録します。

   – 割賦売掛金として550万円、仮受消費税等として320万円を記録します。

   – 割賦売上原価として2,560万円を記録し、割賦引渡商品から同金額を移動します。

   – 仮受消費税等から仮払消費税等へ400万円を移動し、未収消費税等として80万円を記録します。

当期に計上すべき割賦利益の額は640万円です。

割賦売上原価は3,200万円から640万円を引いた2,560万円です。

割賦引渡商品は4,000万円のうち、割賦売上原価に相当する2,560万円になります。

仮受消費税等は3,200万円の10%、つまり320万円です。

仮払消費税等は4,000万円の10%、つまり400万円で、当期に全額控除が可能です。

利子(手数料)相当額は非課税として考慮していません。

消費税等が転嫁されていない場合の税抜経理処理

Q.消費税等に関して税抜経理方式を使用している場合、消費者や免税事業者から購入した場合の消費税込みの商品はどのように経理処理すればよいですか?

A.消費者や免税事業者から商品やサービスを受け取る際に、これが事業のための資産やサービスであり、課税対象である場合、輸出など特定の免税対象外の取引では、この購入は課税仕入れとなります。したがって、支払った価格の1.1倍(または、それに相当する額)が課税仕入れに対する消費税額および地方消費税額と見なされます。税抜経理方式を採用している場合、これらの消費税額は別途区分して経理処理する必要があります。

参考:法令資料 法2条12、基本通達11-1-3

期末における税抜処理

Q.当社は税込経理方式を採用していますが、決算の際に税抜処理をして消費税の経理を行ってもよいでしょうか?

A.事業者が取引に関する消費税の経理を行う場合、原則としてその取引が行われる都度に税抜経理を行う必要があります。しかし、課税所得金額の計算の観点から見れば、事業年度中は税込経理を行い、事業年度末に一括して税抜経理を行う方法にも問題はないとされています。そのため、原則は取引ごとの税抜経理ですが、事業年度の終了時に一括して税抜経理を実施することも許されています。また、月次決算や中間決算を実施している事業者の場合、月末や中間決算時に一括して税抜経理を行っても良いことになっています。

参考:平成3年1月直法2-1、平成3年29日直所3-8

税込経理と税抜経理の併用について

Q.税込経理方式と税抜経理方式の両方を使うことは許されますか?

A.所得税や法人税の課税所得金額を計算する際、事業者は消費税及び地方消費税の処理を税込経理方式でも税抜経理方式でも行うことができますが、選んだ方式はその事業者が行う全ての取引に適用しなければなりません。したがって、異なる取引ごとに方式を変えることはできません。しかし、売上等の収益に関する取引で税抜経理を行っている場合は、固定資産や経費に関する一部の取引で税込経理をすることが可能ですが、これには条件があります。一方、売上等の収益に税込経理をしている場合は、全ての取引に税込経理を適用しなければなりません。これは、税抜経理方式が売上の収益と固定資産や経費の支出にかかる消費税を相殺して納付または還付されるべき消費税額を計算する方法であるため、売上の収益に税抜経理を行わなければその原則に反するからです。

参考:平元 3.1直法2-1、 平元 329直所3-8