登録国外事業者の意義

Q.「登録国外事業者」とは何ですか?

A.「登録国外事業者」とは、国外の事業者の中で消費者に電気通信利用のサービスを提供し、国税庁長官の登録を受けた課税事業者を指します。この登録を受けた事業者からのサービスを利用した場合に限り、仕入税額控除が適用されます。また、登録されるとその事業者の情報(氏名や名称、登録番号、登録年月日など)が国税庁のウェブサイトにて公開されます。ただし、「適格請求書等保存方式」の開始に伴い、2023年10月1日にこの制度は廃止される予定です。

参考:平成27年改正法附則39①、平成28年改正法附則45

消費者向け電気通信利用役務の提供に関する仕入税額控除

Q.国外の事業者からインターネットで電子書籍を配信してもらっています。この取引について、仕入税額控除は可能ですか?

A.はい、可能ですが条件があります。国外の事業者が国内の事業者や消費者に対して提供する電気通信利用役務(消費者向け電気通信利用役務と呼ばれます)については、国内取引とみなされます。したがって、そのようなサービスを受けた国内の課税事業者は原則として仕入税額控除が可能ですが、国外事業者が納税義務者となり、国外に所在するため、一時的に仕入税額控除が制限されています。ただし、国税庁長官に登録された国外事業者(登録国外事業者)から提供されるサービスについては、特定の記録保持を条件に仕入税額控除が許可されます。取引の相手方が登録国外事業者かどうかは、国税庁のホームページで確認できます。相手方が登録国外事業者であれば、仕入税額控除を適用できます。

参考:平27改法附39① 、平28改 法附45

課税売上割合の計算方法

Q.特定課税仕入れがある場合の課税売上割合の計算について教えてください。

A.課税売上割合は、原則として、事業者が行う資産の譲渡や課税資産の譲渡などの対価の額を基に計算します。そのため、特定課税仕入れに関する金額は課税売上割合の計算時には考慮しなくても良いです。また、国外事業者が課税売上割合を計算する場合も、特定資産の譲渡や特定の電気通信利用役務の提供、特定役務の提供は対象外として計算します。

参考:法30、令48①

特定課税仕入れに関する帳簿と請求書の保管

Q.特定課税仕入れに関して消費税の仕入税額控除を受けるために必要な帳簿と請求書等の保管について詳しく教えてください。

A.特定課税仕入れに該当する場合、法律で決められた内容を記載した帳簿を保管することによって、仕入税額控除を受けることが可能です。具体的な記載事項は、消費税法第30条 第8項第2号に定められており、以下の内容が含まれます:

1. 特定課税仕入れを行った相手方の名前または名称

2. 特定課税仕入れを行った日付

3. 特定課税仕入れの内容

4. 支払った対価の金額

5. その課税仕入れが特定課税仕入れに該当する旨の記述

特定課税仕入れに該当する旨の記述については、帳簿に「特定」と明記するなどして、後からそれが特定課税仕入れに当たることを確認できる表示であれば問題ありません。

参考:消費税法30条7項

事業者向け電気通信利用役務の提供である旨の表示方法

Q.国内において「事業者向け電気通信利用役務の提供」を行う国外事業者は、当該役務の提供に際し、あらかじめ「当該役務の提供に係る特定課税仕入れを行う事業者が消費税を納める義務がある旨」をどのような方法で表示すればよいですか。

A.国外の事業者が国内で「事業者向け電気通信利用役務の提供」を行う場合、取引相手が消費税納税義務を持っていることを明示する必要があります。これは、例えばインターネット上のサービス紹介ページ、規約、価格表示部分に「日本の消費税は役務の提供を受けた貴社が納税することとなります。」といった文言で表示することで対応できます。カタログを発行している場合は、そのカタログ内にも同様の表示を行います。また、直接交渉の場合は、交渉開始時に交わす書類やメールに納税義務に関する文言を含めます。これにより、取引の相手方が事前に納税義務があることを理解できるようにします。

参考:法62、基通5-8-2

事業者向け電気通信利用役務の提供の判断基準

Q.国外事業者との取引で受けた電気通信利用役務が「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するかどうかをどのように判断すればよいですか?

A.「事業者向け電気通信利用役務の提供」かどうかの判断は、提供される役務の性質を基に行います。例えば、広告配信やインターネット上でのゲームやソフトウェアの販売場所の提供サービスなど事業者向けであると明確に判断可能なサービスは該当します。一方、広く消費者にも提供されるクラウドサービスなどは該当しません。特定の取引当事者間での個別の交渉や契約によって提供されるサービスで、契約書や取引過程の文書で事業者向けであることが明確になっている場合は「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当します。また、国外事業者が提供する事業者向け電気通信利用役務については、国内事業者がリバースチャージ方式の対象となる旨をあらかじめ示す義務があり、これらの表示を取引開始時に確認することも重要です。

参考:法2①八の四、62

特定課税仕入れに係る消費税額

Q.課税標準額に対する消費税額から控除する特定課税仕入れに係る消費税額について教えてください。

A.課税標準額に対する消費税額から控除する特定課税仕入れに係る消費税額は、特定課税仕入れに関わる支払い価格に78%を乗じて算出します。特定課税仕入れを行う事業者には納税義務があり、支払った価格には消費税等を含まないため、特定課税仕入れ以外の仕入れに適用される110%を使用する計算法とは異なる点に注意が必要です。

参考:法30①

特定課税仕入れに係る消費税の課税標準

Q.特定課税仕入れに係る消費税の課税標準について教えてください。

A.特定課税仕入れに関する消費税の課税基準は、その仕入れに関わる「支払対価の額」になります。ここでいう「支払対価の額」とは、物やサービスの対価として実際に支払った、または支払うべき金銭、金銭以外の物、権利、またはその他の経済的利益の総額を指します。特定課税仕入れにおいては、事業者に納税の義務がありますが、支払った対価の額には消費税相当の金額は含まれておらず、支払った(または支払うべき)金額そのものが課税標準になります。したがって、課税資産譲渡等の対価として110%を乗じて税抜きで計算する必要はありません。

参考:法28②、基通10-2-1

国外事業者の納税義務の判定 その 2

Q.電気通信利用役務を提供している国外事業者の基準期間における課税売上高の計算方法はどのようにすればよいでしょうか?

A.基準期間中における課税売上高の計算にあたっては、特定資産の譲渡を含めないものとして計算します。つまり、特定資産の譲渡を除外した課税資産の譲渡等による収入から課税売上高を計算します。例えば、国外事業者が国内で電気通信利用役務を提供している場合、事業者向けと消費者向けのサービスがある場合には、消費者向けサービスに関わる収入のみを用いて課税売上高を計算します。

参考:法5①(かっこ書き)、9①、基通1-4-2(注)3

国外事業者の納税義務の判定 その 1

Q.国外事業者であっても事業者免税点制度は適用されますか。

A.国外事業者であっても、他の事業者と同様に事業者免税点制度が適用されます。これは、基準期間中の課税売上高が1,000万円以下の場合には、免税事業者とみなされることを意味します。また、国外事業者は消費税法第9条の2から第12条の3までの納税義務免除の特例の規定も適用されます。

参考:法9①