特定課税期間

Q.「特定課税期間」について教えてください。

A.「特定課税期間」とは、新型コロナウイルス感染症などの影響で、事業の収入が大きく減少した期間(調査期間)を含む課税期間のことです。例として、3月決算の法人が令和2年3月1日から3月31日の間に事業収入が前年の同じ期間と比べて50%以上減少した場合、その期間(平成31年4月1日から令和2年3月31日まで)が特定課税期間になります。収入の大幅な減少があった期間が複数の課税期間にわたる場合、それらの課税期間がそれぞれ特定課税期間とされます。

参考:新型コロナ税特法10①

収入金額の計算

Q.一定の期間に事業としての収入の著しい減少があったかどうかを判定する際の「収入金額」は、どのように計算するのですか。

A.一定の期間における事業の「収入金額」を計算する際には、事業から得られる通常の売上やその他経常的な収入を全て含めます(これには消費税の課税取引が含まれる収入も含まれますが、限定されません)。ただし、臨時に得られる各種給付金などの収入は含めません。さらに、新型コロナウイルス感染症等の影響で、事業者が通常受け取るべき金額を減免したり、支払いを猶予した場合のその減免額や猶予額も「収入金額」には含めません。例えば、政府の要請により賃貸人が賃借人の賃料の支払いを猶予している場合は、その猶予された賃料額を調査期間の賃料収入から差し引いて計算します。

参考:新型コロナ税特法10①、新型コロナ税特法通達2(注)1、2

一定の期間

Q.特例の対象となるのは、一定の期間に事業としての収入の著しい減少があった事業者とのことですが、「一定の期間」とはどのような期間ですか。

A.「一定の期間」とは、令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間であれば任意の期間を選べ、その期間は連続する1か月以上であればよいとされています。例えば、4月1日から5月15日までの期間も該当します。ただし、選ぶ期間は令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間に限ります。そのため、令和元年9月1日から令和2年3月31日のように指定期間外の部分を含む期間は認められません。

参考:新型コロナ税特法10①、新型コロナ税特法通達2

新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少

Q.新型コロナウイルス感染症等の影響による事業としての収入の減少とは、どのような場合ですか?

A.新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少とは、事業から得られる収入が新型コロナウイルス感染症等のために大きく減少したことにあり、以下のような状況が原因で収入が減少した場合です。

– 事業者または親族、会社の従業員が新型コロナウイルスに感染し、または感染疑いがあるため事業を休止した。

– 国または自治体の要請によりイベント中止や営業自粛を行った。

– 外出自粛要請に従い、従業員を自宅待機させたり、営業時間や規模を縮小した。

– 外出自粛要請によって顧客が減少した。

– 入国制限により顧客が減少した。

– 国または自治体の要請で家賃の支払いを猶予した。

参考:新型コロナ税特法10①、新型コロナ税特法通達1

特例対象事業者

Q.どのような事業者が特例の適用を受けることができるのですか。

A.特例対象となる事業者は、新型コロナウイルス感染症等の影響で、一定の期間において事業収入が大きく減少した人です。具体的には、2020年2月1日から2021年1月31日までの間で、任意の連続する1ヶ月以上の期間(以下「調査期間」という)の事業収入が、その調査期間の直前1年間での同じ期間の収入と比べて、50%以上減少していることです。事業を始めて1年未満の場合や、調査期間に対応する期間の収入金額が不明な場合には、特定の計算方法で収入の減少を判断します。

参考:新型コロナ税特法10①、新型コロナ税特法通達2

特例の概要

Q.新型コロナ税特法により措置された消費税の特例について教えてください。

A.新型コロナウイルス感染症とその拡散防止策による影響を受ける事業者向けに、一定の条件を満たす場合に限り、消費税に関する特別措置が設けられました。これには以下のような特例が含まれます。

1. 事業者は税務署長の承認を経て、課税選択の変更が可能です。これは特定の課税期間の開始後でも、課税事業者として選択するか、またはその選択をやめることができるというものです。

2. 新規設立された企業等が、基準期間のない課税期間中に特定の固定資産を取得した場合、高価な特定資産を仕入れた場合、または高価な特定資産に関して棚卸し資産の調整措置を受ける必要がある場合における、納税義務の免除制限を解除する特例があります。

参考:新型コロナ税特法10①③、④~⑥

事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用制限の一部解除

Q.事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用制限が一部解除される特例について教えてください。

A.この特例は、以下の2点に関して説明されます。

1.新設された被災事業者の場合:新設法人や特定の新設法人が、開業初期(通常は開業から2年目まで)に固定資産を取得して一般課税で申告を行う場合、通常は取得後最初の3年間は簡易課税制度の選択ができず、納税義務が免除されません。しかし、被災を受けた新設法人や特定の新設法人については、被災した課税期間以降からこれらの制限が適用されなくなります。

2.被災事業者が高額な特定資産を仕入れた場合:事業者が高額な特定資産を仕入れ、一般課税で申告する場合、通常は仕入れた日から3年間簡易課税制度の選択ができず、免税されません。しかし、被災事業者の場合、被災日を含む課税期間以降から、これらの制限は適用されません。

参考:措法86の5④~⑦

届出の特例の概要

Q.被災事業者が消費税の課税事業者を選択する、または課税事業者の選択をやめる場合、また簡易課税制度を選択する、またはやめる届出をする場合の特例について教えてください。

A.被災事業者が災害に遭ってその影響で課税期間後の課税事業者の選択をする(またはやめる)、または簡易課税制度を選択する(またはやめる)場合には、指定された日までに税務署に届出書を提出することで、その制度の適用(または制度からの退出)が可能です。さらに、課税事業者として選択した後、2年以内の課税期間に固定資産を取得し、一般課税で申告した場合、通常は一定期間制度の変更ができませんが、災害の特例により、被災した事業者は被災日のある課税期間以後からこれらの届出ができるようになります。

参考:措法86の5①②③⑨⑩

特例の概要

Q.特定非常災害の被災者である事業者の方に対する、消費税法の特例について教えてください。

A.災害による税制上の措置として、住宅ローン控除の期間延長や、住宅取得時の贈与税特例などがありますが、消費税に関しても特例があります。これは「特定非常災害の被害者を保護するための特別措置法」に基づき、特定非常災害の被災事業者に対して、消費税の課税事業者選択の届出変更や、簡易課税制度の選択変更等に関する特例を設けています。また、新設法人などが調整対象固定資産を取得した場合や、高額特定資産の仕入れ等を行った場合に、事業者免税点制度や簡易課税制度の適用制限を解除する特例が設けられています。

参考:措法86の5

特定課税仕入れがある場合の経理処理

Q.税抜経理方式を適用している課税事業者が、国外事業者から「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受け、その対価を支払った場合の経理処理について教えてください。

A.この場合、以下の二つの仕訳例のいずれかで経理処理を行います。

仕訳例1では、特定課税仕入れ10,000円を支払対価(現金)として記録します。

仕訳例2では、特定課税仕入れ10,000円を支払対価(現金)として記録し、さらに仮払金1,000円/仮受金1,000円として消費税の額を扱います。

特定課税仕入れを行った事業者は、その取引に係る消費税の申告と納税の義務がありますが、国外事業者との取引では、対価の額と消費税等の額の区分けに関する金銭の受払いは行われません。つまり、税込み/税抜き経理方式に関わらず、経理処理は仕訳例1の通りです。ただし、決算処理等で必要に応じて、仕訳例2のように仮受金・仮払金を用いた経理処理をしても差し支えありません。

さらに、特定課税仕入れがある課税期間の課税売上割合が95%未満で一般課税を行う場合は、リバースチャージ方式による消費税の申告が必要になるので、他の課税仕入れとは区別して管理する必要があります。

参考:平成元年3月1日付直法2-1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)5の2