社会保険料と企業年金掛金等の損金算入時期の違い

Q.社会保険料と企業年金掛金等の損金算入時期に違いがあるのはなぜですか?

A.社会保険料の法人負担額と企業年金掛金等の法人負担額で損金算入のタイミングが異なる理由は、この二つの負担が法的に異なる処理を受けることに基づいています。健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、それぞれの保険料がかかる月の終わりに納付義務が確定するため、その月が属する事業年度に損金として計上できます。もし、事業年度末にこれらの社会保険料が未払いであれば、未払費用として計上し、損金に算入することが可能です。一方で、法人が定められた企業年金契約に基づいて支払う企業年金掛金は、実際に支払った日が属する事業年度にのみ損金として認められます。これは、企業年金掛金が納付基準によって損金算入され、社会保険料のように債務確定基準で処理されないためです。この違いは、社会保険料が未払いの場合に国から滞納処分を受ける可能性があるのに対して、企業年金掛金が未払いの場合は契約解除のみで済むという法的な処理の違いによるものです。また、企業会計上は、社会保険料も企業年金掛金も事業年度末に未払計上しますが、税務上は企業年金掛金について追加の調整が必要になります。企業年金の掛金に関しては、納付時に損金算入されるというのが基本原則ですが、厚生年金基金の掛金はこの限りではなく、未払いの状態でも事業年度末に損金として計上できます。

長期の損害保険契約に係る保険料の処理方法

Q.社員寮に保険金3,000万円の長期総合損害保険(保険期間10年)をかけ、保険料を一時払いで222万円支払いました。保険証券に添付された説明書には、「長期総合保険契約の保険料の税務処理について」という記載がありますが、この保険料の処理方法を具体的に教えてください。

A.長期の損害保険契約は、保険期間が3年以上で、満期返戻金が支払われる契約を含みます。このような保険は、保険料の中に掛け捨ての部分と、契約期間終了時に返戻金として受け取る部分があります。掛け捨ての部分は経過期間に応じて損金として処理され、返戻金に相当する部分は資産として計上されます。具体的に、質問にある社員寮の保険の場合、保険料222万円の中から、算式により計算した積立保険料の部分を差し引いた額が、掛け捨て保険料に相当します。この掛け捨て保険料は、契約日から10年間にわたる保険料と見なされ、全額を一度に損金として処理することはできません。したがって、保険料の一部をその年度の費用として計上し、残りを長期前払費用として翌年度以降に振り替えて処理します。例えば、保険契約からその年度の終了までが6ヶ月の場合、保険料222万円を支払った際の仕訳は、積立保険料として1,826,790円、長期前払費用として373,549円、その年の保険料として19,661円を計上し、現金2,220,000円を支出として記録します。

匿名組合営業について生じた損益の帰属者とその計上の時期

Q.匿名組合は、税法ではどのように取り扱われますか。匿名組合営業について生じた損益は、匿名組合員と営業者にどのように帰属し、それぞれでの益金算入又は損金算入の時期は、どのようになりますか。

A.匿名組合契約は、匿名組合員が営業者にお金を提供し、営業者がその投資から得た利益を匿名組合員に配分する約束をする契約です。匿名組合員が出したお金は営業者の財産とみなされ、投資家はその財産に対する権利を持たないとされています。この形式は、私募投資ファンドなどでよく使われています。税法上、匿名組合自体が課税されるわけではなく、生じた利益や損失は所得税や法人税で匿名組合員と営業者に対して課税されます。利益が出た場合は、契約によって計算された分配金を受け取り、損失がある場合は負担します。この収益や損失の計上時期は、匿名組合契約で定められた計算期間の末日の属する事業年度です。特定の条件を満たす匿名組合員には、組合損失に関する特別な取り扱いがあり、リスクを負わない組合員の損失負担は出資金の範囲に限定されます。これにより、航空機や船舶のリース事業などで見られるレバレッジドリース取引において、初期に計上される損失を通じて税の繰り延べを行うことが制限されます。

同業団体等に対して支出した加入金及び会費の取扱い

Q.法人の所属する同業団体等のために支出した加入金及び会費は、加入金、通常会費、特別会費のいかんを問わず、すべて支出時に損金の額に算入することができますか。

A.法人が加入する同業団体等は、通常は法人格を有していないため、これらの団体が会員から徴収する加入金や会費は収益事業に関するものではなく、課税の対象になりません。そのため、会員が支出する加入金や会費を支出時に無条件で損金に算入することは、税制上の問題を引き起こす可能性があります。

加入金に関しては、その移転可能性に基づき、以下のように扱われます:

1. 移転不可能な場合は、同業団体等から受ける会員としてのサービスのために支出した費用とみなされ、繰延資産(繰延資産の償却期間は5年)として処理されます。

2. 移転可能な場合は、出資の性質を有するものとして扱われ、その地位を他に譲渡するか同業団体等を脱退するまで、損金に算入することはできません。

会費に関しては、通常会費とその他の会費に分けて取り扱われます:

1. 通常会費は、同業団体等がその業務運営のために経常的に要する費用の分担額として、その支出があった事業年度の損金に算入されます。ただし、同業団体等で不相当に多額の剰余金が生じた場合、当該剰余金が適正な額になるまでは前払費用として算入されます。

2. その他の会費(特別施設の取得・改良、会員相互の共済、懇親、政治献金などの特定の目的のために支出される会費)は、前払費用として、支出の目的に応じて処理されます。通常会費が特定の目的に充てられた場合も、その金額はその他の会費として処理されますが、懇親費や寄附金として支出される一部が業務運営の一環として通常必要と認められた場合は、通常会費として扱われます。

従業員の福利厚生団体のために負担 した費用の処理方法

Q.従業員の福利厚生事業を行う団体に会社が毎月定額の助成金を支出し、従業員もその費用の一部を負担しています。会社の支出する助成金は、税務上どのように取り扱われますか。

A.会社が従業員の福利厚生を目的として活動する団体に対して支出する助成金は、特定の条件が満たされた場合、税務上会社の収益や費用として扱われます。会社が団体の経費の相当部分を支出し、さらに次のいずれかの条件に該当する場合は、団体の収益や費用を会社のものとして計算します。条件は、(1) 団体の役員が会社の役員や従業員から選ばれる場合、(2) 団体の事業運営に会社の許可が必要な場合、(3) 団体の事業に必要な施設の大部分を会社が提供している場合です。

会社は、団体から得た収益や費用の全額を自身の計算に入れ、事業年度の終了時には団体の純資産残高を自社の純資産として申告加算する必要があります。ただし、会社と従業員からの負担が適切に区分されている場合、その区分に基づいて会社に帰属すべき収益や費用の計算が可能です。この区分は、「任意組合等の組合事業から分配を受ける利益等の額の計算」に沿って行います。分配割合に基づいて団体の収支や資産を配分し、これを法人に帰属するものとして税務上調整を行うことができます。この方法で剰余金や損失が発生した場合、団体に寄附金や交際費が含まれる場合にも、特定の分配割合に基づく計算が可能です。ただし、預金利息などの収入に対する所得税額の控除や、特定の準備金の積立て規定の適用は認められません。

業務と観光を併せて行った海外渡航費の取扱い(2)

Q.往復の航空便にビジネスクラスを利用した場合、また、ロサンゼルス以遠に行くのをやめて、ロサンゼルスの観光と帰路ハワイに立ち寄って観光に数日を費した場合は、税務上それぞれどのように取り扱われますか。

A.ロサンゼルスへの出張目的が商談のためであれば、観光が含まれても、ロサンゼルスまでの往復旅費は全額業務遂行上必要と認められます。ビジネスクラスの利用も、渡航中の安全を考慮すれば税務上認められますが、社内規程でビジネスクラス利用の資格者を明確にするのが理想的です。ロサンゼルスでの業務と観光両方を行った場合や、帰路ハワイでの観光があった場合、業務上必要な旅行とそうでない旅行を明確に分け、滞在費などは旅行期間に応じて按分してそれぞれの旅費を計算します。休日には、業務を休んで休息や観光をすると想定されるため、これらの日々は按分計算から排除することができます。具体的な計算方法では、往復旅費(ビジネスクラス代を含む)、業務のために特別に要した費用、観光のために特別に要した費用、業務と観光両方に分けられない共通費用を合算し、業務遂行に要した日数、観光に充てた日数、移動のための日数を加味し、最終的に旅費として認められる金額と役員給与として扱う金額を決定します。

業務と観光を併せて行った海外渡航費の取扱い(1)

Q.社長がロサンゼルスの取引先と商談のために渡米した際に、グランドキャニオンへの観光旅行をしました。この渡米のために要した費用はどのように取り扱われますか。

A.社長が業務で必要とされる海外への出張と観光を兼ねて行った場合、その費用はどのように扱うかということになります。業務で必要不可欠な部分の費用は、会社が支払うことができますが、業務に必要ではない、つまり観光部分にかかる費用は基本的に社長や従業員への給与として扱われます。これは、税務上、給与としての支払いは通常の業務に関連しない費用に対するものと見なされるため、これらの経費は損失として計上することはできません。

具体的には、海外出張が業務上必要かどうかを判断する際には、旅行の目的、訪問地、ルート、期間などを考慮して総合的に評価します。ただし、観光を主目的とする旅行や団体旅行等は、業務上必要な出張とは認められません。

業務と観光を併せて行った場合には、その費用を業務上必要な部分とそうでない部分に分け、観光に関連する費用は給与として扱います。しかし、出張の直接の目的が商談や契約締結などの業務上のもので、そのための旅行であれば、訪問地までの往復費用は業務に必要なものとして認められ、損金に算入することができます。

例えば、質問のケースでは、ロサンゼルスまでの往復旅費は業務上必要なものとして扱われますが、グランドキャニオンへの観光にかかる費用は業務と無関係なため、全額が社長に対する給与として計上されます。

社交団体、ロータリークラブ及びライオンズクラブの入会金、会費の取扱

Q.社交団体、ロータリークラブ及びライオンズクラブの入会金、会費等を法人が支払った場合の税務での取扱いを教えてください。

A.社交団体、ロータリークラブ、ライオンズクラブの入会金や会費について、その税務上の取り扱いは以下の通りです。

– **社交団体が法人会員として加入する場合**や**法人会員制度がなく、個人会員として加入するが、その加入が法人の業務上必要と認められる場合**には、入会金や会費は**交際費**として扱われます。

– **個人会員として加入した場合**には、その費用は**給与**として扱われます。

– 費用が**法人の業務の遂行上必要と認められる場合**は**交際費**、それ以外は場合によって**寄附金**または**交際費**、または特定の役員や使用人の負担と認められる場合は**給与**として処理されます。

– 社交団体への入会が親睦を目的とする場合、役員に対する給与として処理された入会金及び経常会費の一部は、過大役員給与と見なされ、それ以外は損金算入されません。

– ロータリークラブやライオンズクラブは、社会奉仕を主目的としており、入会金や経常会費が主に食事代などに充てられ、業界関係者との懇親を深める目的であれば、これらの費用は全て交際費として扱われます。

所得税に関しては、交際費または寄附金として処理される場合、役員または使用人に経済的利益がないとされています。

ゴルフクラブ及びレジャークラブの入会金、会費の取扱い

Q.ゴルフクラブ及びレジャークラブの入会金、会費等を法人が支払った場合の税務での取扱いを教えてください。

A.法人がゴルフクラブやレジャークラブの入会金や年会費などを支払う場合の税務処理は、法人税基本通達によって次のように定められています。まず、入会金に関する取り扱いですが、法人会員として入会する場合、支出した入会金は資産として計上されます。しかし、もし個人が法人のために入会し、その入会が法人の業務遂行に必要と認められた場合も、同様に資産計上します。入会金が固定資産投資などの資産部分に計上された場合、脱退時に返還されない、または他人に譲渡できない場合でも、償却はできません。ただし、ゴルフクラブを脱退したり、会員の地位を他に譲渡したりした場合に発生した損失相当額は、その事業年度の損金に算入することができます。

年会費やロッカー料などの費用については、その使途に応じて交際費、福利厚生費、または給与として処理します。特定の入会金が給与とされている場合の年会費などは給与となります。プレーする場合の直接の費用は、法人の業務遂行に必要なものと認められる場合、交際費として処理することができますが、その他の場合では給与として処理されます。

全体的に、ゴルフクラブやレジャークラブの費用は、その目的と利用される人に応じて、資産計上、交際費、福利厚生費、もしくは給与として処理されます。重要なのは、その支出が法人の業務遂行に直接必要かどうかと、個人会員としての入会が法人によって負担されるものであるかどうかを判断することです。

ゴルフクラブの名義書換料

Q.ゴルフクラブの名義書換料は税務上どのように取り扱われますか。新たに取得した会員権の名義書換料と、会社が以前から所有している会員権についてその登録名義を例えば社長の交代 に伴って変更する場合の名義書換料とで異なりますか。

A.新たに取得した会員権の名義書換料については、ゴルフクラブへの入会に必要な全ての費用の中に含まれると考えられます。つまり、これは入会金に含まれることになります。一方、会社が以前から所有する会員権の名義を変更する場合の名義書換料は、入会のためではなく会員権を保持する目的の費用ですので、年会費やロッカー料などと同じ扱いになります。このため、資産として計上する必要はありません。もし入会金が資産として計上されている場合は交際費に、給与として計上されている場合は特定の役員や使用人への給与として扱われます。