特定の資産の買換えの場合の課税の特例の適用要件、圧縮限度額

Q.特定の資産の買換えの場合の課税の特例について、その適用要件、圧縮限度額を説明してください。

A.特定の資産を買換える際の課税の特例には、以下の適用要件があります。

1. 棚卸資産には適用されないが、不動産売買業を営む法人が使用または貸し付けている土地や建物、または具体的な使用計画に基づき使用予定の土地や建物は例外となる。

2. 譲渡資産の譲渡には、地価が著しく低下する場合の特例も含まれるが、収用等による代替資産取得や交換、出資、現物分配による譲渡は含まれない。

3. 買換資産の取得には、建設や製作も含まれるが、合併、分割、贈与、交換等による取得や所有権移転外のリース取引によるものは含まれない。

4. 買換資産が土地等の場合、譲渡資産の面積に対して5倍以内の範囲で特例が適用される。

圧縮限度額に関しては、以下の算式によって定められます。

圧縮限度額 = 圧縮基礎取得価額 × 差益割合 × 80%

ただし、地域によっては70%、60%、75%、90%となる場合があります。

圧縮基礎取得価額は、買換資産の取得価額と譲渡資産の譲渡対価の額のうち小さい方から計算され、減価償却費の損金算入があった場合は手数料の重複を避けるため調整されます。

差益割合は、譲渡対価の額から譲渡資産の帳簿価額と譲渡経費を引いた後、譲渡資産の譲渡対価で割って算出されます。

特定の資産の買換えの場合の譲渡資産と取得資産

Q.特定の資産の買換えの場合の圧縮記帳について、譲渡する資産と買換えで取得する資産の組み合わせを説明してください。

A.特定の資産を買換える場合に使われる「圧縮記帳」とは、令和8年3月31日までに特定の「譲渡資産」を売り、その年の間に特定の「買換資産」を新たに買い、その購入日から1年以内にその買換資産を事業で使う(または使う予定がある)場合に、買換資産の価値を帳簿上で減らすことを許される制度です。この制度を利用することで、譲渡資産の売却益の一部について税金の支払いを遅らせることができます。ただし、この説明は令和5年4月1日以降に資産を売却した場合のもので、それ以前に売却した場合は適用条件が異なります。この特例制度には、以前は多数のパターンが存在しましたが、令和5年の税制改正後は以下の4つのパターンに限られています。

1. 航空機騒音障害区域内の土地や建物、構築物などを譲渡し、同じような資産を航空機騒音障害区域外で取得する場合。

2. 既成市街地等内の土地や建物、構築物を譲渡し、同じ既成市街地等内で、都市再開発法に基づいて取得される同様の資産を取得する場合。

3. 国内の土地や建物、構築物で、10年以上所有していたものを譲渡し、同じような資産を国内で取得する場合。

4. 日本の船舶を譲渡し、同じ種類の日本の船舶を取得する場合。

これらの買換えパターンは、環境への影響を減らすために指定されたものや、特定の場合に買い取られたり補償金が支払われたりする特別な地域内の資産に関するものが含まれます。詳しくは、航空機騒音障害区域に関する特別な法律や、都市再開発に関する法律などの特定の規定に従っています。

交換による圧縮記帳の計算例

Q.交換の相手方も交換の特例の適用を受けるとした場合、その圧縮限度額の計算と申告書の記載方法、及び法人税基本通達10-6-10に示された方法(帳簿価額の付替え処理)による仕訳は、相手方ではどのようになるか教えてください。

A.交換の相手方は圧縮限度額を1,350万円と計算します。この場合、相手方が交換によって得た交換差金150万円に対し、対応する譲渡益は65万円であり、これが課税の対象となります。譲渡資産の価額が1,500万円、帳簿価額(譲渡資産の帳簿価額+譲渡経費)が850万円の場合、650万円が圧縮限度額となり、これから585万円を引いた65万円が譲渡益として計算されます。

法人税基本通達10-6-10に基づく仕訳では、取得資産として土地が765万円、交換差金として現金が150万円、譲渡資産として土地が800万円、譲渡経費として現金が50万円、そして土地譲渡益として65万円が記載されます。

申告書別表十三(三)では、交換により取得した資産の圧縮額の剰余算入に関する明細書が記載されます。ここで、交換により取得した土地の帳簿価額から圧縮額を減額した値が5,850,000円と表示され、交換により譲渡された資産の帳簿価額から取得資産の価額や交換差金等で調整された数値が提示されます。

交換による圧縮記帳の計算例

Q.令和5年6月30日に土地を相互に交換し、交換差金150万円を支払いました。圧縮限度額の計算方法と申告書の記載方法を教えてください。また、法人税基本通達に従った帳簿価額の付け替え処理はどのように行いますか?

A.交換差金150万円は、交換された資産の価額である1,500万円の20%にあたる300万円を超えていません。従って、交換によって取得した資産に関する圧縮額の損金算入の条件が満たされていると思われます。圧縮限度額は、取得した資産の価額から、譲渡された資産の直前の帳簿価額、譲渡経費、そして交換差金を引いた金額で算出します。このケースでは、圧縮限度額は次のように計算されます:1,500万円 – (500万円 + 20万円 + 150万円) = 830万円です。帳簿記入では、取得した土地に670万円(譲渡資産500万円、交換差金150万円、譲渡経費20万円)を反映し、申告書別表十三(三)には、譲渡資産の情報とともに、圧縮限度額として830万円を記載します。

交換により取得した資産の圧縮記帳の規定とその適用要件

Q.固定資産を交換した場合の圧縮記帳は、どのような制度ですか。これが適用されるための要件を教えてください。

A.資産を交換した場合の圧縮記帳は、交換によって手放される資産の帳簿価額を、交換で手に入れた資産の価額に変えることです。本来であれば、手放される資産は市場価格で売却したと見なし、その売却益に税をかけ、その売却金で新しい資産を購入したことにします。しかし、この制度では手に入れた資産の取得価額を売却益の分だけ少なく記録することで、売却益に税金をかけないようにしています。この制度を利用するための条件として、取引が本当に交換であることが求められます。具体的に、以下の要件を全て満たす必要があります:

1. 交換で手放される資産は、1年以上所有していた固定資産であること。もし合併によって他社から受け取った資産であれば、その他社が所有していた期間を含めて1年以上でなければなりません。なお、事業で使用していない固定資産であっても、この制度の適用を受けることができます。

2. 交換で得た資産も、相手方が1年以上所有していた固定資産であり、かつ、交換の目的で購入されたものではないこと。

3. 交換される資産は土地、建物、機械装置、船舶、鉱業権の中からであり、交換で得た資産は手放した資産と同じ種類であること。交換後、資産を以前と同じ目的で使用することも求められます。相手方が資産を同じ用途で使用しているかはこの要件には影響しません。

4. 交換時点での双方の資産価額の差額が、相手方と自分の資産のどちらかの価額の20%を超えないこと。

これらの条件を満たす場合、交換取得資産の帳簿価額を調整することなく、交換で手放される資産の帳簿価額と必要な経費の合計以上の金額を交換取得資産の取得価額とすることができます。この際、確定申告書に「交換により取得した資産の圧縮額の損金算入に関する明細書」を添付する必要があります。

支出時期が翌事業年度となる損害賠償金の仮受経理

Q.公道に面している自社の工場が自動車事故によって被害をうけ、塀と建物の一部が損壊しました。加害者から損害賠償金を受け取りましたが、復旧工事は翌事業年度に行う予定です。当事業年度の計算書類で、損害賠償金を預り金として経理しておくことは可能ですか?なお、塀は除却して建て直さなければなりませんが、建物は部分的な修繕をすれば原状回復が可能です。

A.固定資産が滅失または損壊したことにより受ける損害賠償金で、その滅失または損壊した日から3年以内に支払の確定したものは、法人税法第47条の規定が適用される保険金等に含まれます。この損害賠償金で取得する代替資産について、保険金等で取得した固定資産の圧縮記帳の規定を適用することができます。もし代替資産の取得時期が損害賠償金の支払を受けた事業年度後となる場合、原則として翌事業年度の開始日から2年間、特定の計算式によって計算した金額を特別勘定として経理しておくことができます。質問のケースでは、塀は建て直すため代替資産の取得となります。従って、その事業年度の確定した決算において、計算式によって計算した代替資産の取得に充てようとする部分の金額を、特別勘定として経理することが認められます。翌事業年度に代替資産を取得した場合の圧縮限度額は計算式により求められます。一方、建物の部分的な修繕では代替資産の取得にあたらず、そのため特別勘定として経理できる規定はありません。加害者から建物の修繕のための損害賠償金を受け取った事業年度には、損害賠償金額を益金に算入しますが、それに伴う建物の一部損壊による損失額は、損害が発生した事業年度で損金に算入できます。

国庫補助金等で取得した固定資産の圧縮記帳の会計処理と消費税の取扱い

Q.商店街振興組合がアーケードに設置する防犯カメラの設置費用に対して国及び地方公共団体から補助金を受けた場合、圧縮記帳の会計処理方法はどのようになりますか。また、この補助金に関する消費税の取扱いはどうなりますか。

A.まず、圧縮記帳の会計処理については、補助金の交付を受けた場合、その金額を特別利益として計上し、その後に防犯カメラの取得価額から補助金でカバーされた分を引いた額で減価償却費を計算するのが一般的です。この場合、補助金受領による特別利益を得つつ、実際の負担額に応じた減価償却費を計上します。ただし、この方法では特別利益が計上されるため、補助金受領年度とその後の年度で損益が不安定になることがあります。しかし、商店街振興組合のような協同組合等では、直接簿価減額方式を採用して、補助金を受けた事業年度に補助金額を特別損失として一括計上することが可能であり、結果としてその後の損益計算の波が平坦化されます。この場合、防犯カメラの取得価額は補助金を除いた実質負担額として計上されます。

次に、消費税の取扱いに関しては、補助金が全額不課税収入とされるため、補助金経由で購入した防犯カメラにかかる消費税については、仕入税額控除の対象となります。これにより、補助金の一部が消費税に対応する金額であり、手元に残ることになりますが、これによって防犯カメラの購入費用の消費税が控除されます。ただし、補助金受領者が消費税の納税義務が免除される小規模事業者である場合など、特殊な状況においては、この一般的な扱いが異なる場合がありますので注意が必要です。

国庫補助金等の交付前に資産を取得した場合

Q.当社が令和4年10月に取得し事業用に供した機械装置を対象とした県からの補助金が、令和5年10月に交付され、返還不要が確定している場合、令和6年3月期にこの補助金について圧縮記帳することは可能ですか?また、可能である場合、圧縮限度額はいくらになりますか?機械装置の取得価額は1,000万円、補助金の額は600万円で、機械装置の耐用年数は8年、定率法で減価償却しています。

A.はい、補助金の交付目的に適合する固定資産を補助金の交付前に取得した場合でも、補助金が交付され返還不要が確定した事業年度に圧縮記帳をすることが可能です。圧縮限度額の計算は、交付を受けた補助金の額に対応する固定資産の帳簿価額に基づきます。令和5年3月期における機械装置の減価償却費は125万円であり、この結果帳簿価額は875万円です。したがって、圧縮限度額は875万円に補助金額として受け取った600万円を乗じて算出し、その結果525万円となります。差額の75万円は、圧縮記帳を当初から行っていなかったことによる償却限度額の増加分に相当します。

租税特別措置法上の圧縮記帳の適用を受けた資産に対する特別償却の規定の適用の可否

Q.圧縮記帳の特例を受ける予定の工場用建物に、租税特別措置法の特別償却の規定の適用を受けることはできますか?

A.租税特別措置法に基づく特定の資産を買い換えた場合の税務上の特例の規定を受けた資産については、特別償却の規定を適用することはできません。つまり、もし工場用建物を買い換え資産としていても、その建物には特別償却の規定は適用されないことになります。これは、同一の資産に対して圧縮記帳と特別償却の両方を適用すると、過度な税優遇となるためです。ただし、圧縮記帳をした資産の税法上の取得価額が低くなるため、特別償却を適用しても得られるメリットは限られています。そのため、特別償却を施せる他の資産がある場合は、その工場用建物を買い換え資産としない方が有利かもしれません。また、もし買い換え資産の取得価額が譲渡資産の譲渡価格を上回る場合であっても、その資産全体に特別償却の規定を適用することはできませんので、この点も考慮して買い換えに伴う税務上の特例の適用を検討することをお勧めします。

法人税法上の圧縮記帳の適用を受けた資産と特別償却

Q.法人税法上の圧縮記帳の規定の適用を受けた資産について、特別償却の規定を適用することができますか。

A.租税特別措置法に基づく圧縮記帳の適用を受けた資産には特別償却を適用できませんが、法人税法に基づく圧縮記帳の適用を受けた資産には特別償却を適用できます。例として、国庫補助金や保険金で取得した固定資産、交換によって取得した固定資産などがあります。圧縮記帳を受けた資産の特別償却においては、実際の取得価額から圧縮記帳による損金算入分を差し引いた金額を償却の基礎とします。特別償却を受ける資産かどうかの判断では、圧縮記帳後の金額を基に評価します。