税法の引当金制度と準備金制度の対比

Q.税法の引当金制度と準備金制度を対比した場合、どのような点が違いますか。主要な項目について説明してください。

A.税法における引当金制度と準備金制度の主な違いは以下の通りです。まず、引当金は法人税法に基づき、準備金は租税特別措置法に規定されています。次に、引当金の計上には青色申告法人である必要がないのに対して、準備金の計上は青色申告法人に限られます。引当金は解散時を含む任意の事業年度に計上できますが、準備金は解散時には特別償却準備金を除いて全額取り崩さなければなりません。損金算入の方法では、引当金は損金経理方式のみ、一方で準備金は損金経理方式と剰余金の処分による積み立てのいずれかを選べます。また、明細書を失念し税務署長がやむを得ないと認める場合には引当金では救済措置がありますが、準備金ではそのような措置がありません。企業会計と税法の関係では、引当金は企業会計原則に沿った利益留保のためのもので、特定の条件下で貸借対照表に計上可能です。

複数の特別控除の適用を受ける場合の損金算入額の制限

Q.複数の所得の特別控除を受ける場合、損金算入額に制限があるとのことですが、その内容を説明してください。

A.特定の特別控除に関しては、その年の特別控除の合計が5,000万円を超えた場合、超えた分は損金として計上できないというルールがあります。このルールは以下のような特別控除に適用されます:

1. 収用換地などで得た所得に対する特別控除は、上限が5,000万円です。

2. 特定の土地区画整理事業などで土地を譲渡した所得に対する特別控除は、上限が2,000万円です。

3. 特定の住宅地造成事業などで土地を譲渡した所得に対する特別控除は、上限が1,500万円です。

4. 農地の合理的な保有のため土地を譲渡した所得に対する特別控除は、上限が800万円です。

5. 特定の長期所有土地に対する特別控除は、1,000万円です。

グループ全体での特別控除の限度額は、完全支配関係にある企業間で合算され、その合計が5,000万円を超えた場合、超えた分は損金として認められません。

特定の長期所有土地等の所得の特別控除制度の概略

Q.「特定の長期所有土地等の所得の特別控除」について、その概略を説明してください。

A.「特定の長期所有土地等の所得の特別控除」は、2009年(平成21年)と2010年(平成22年)に購入した土地を5年以上所有して、その後売却した際の利益(譲渡益)に対して適用される特別な減税措置です。この制度では、特定の条件を満たす土地(国内にある土地やその土地に関連する権利)が対象になり、その土地を継続して5年以上所有している場合に限ります。ただし、特定の関係がある個人や法人から購入した土地はこの特例の対象外です。

この特例を受けるためには、対象となる土地を売却して得た価格または交換によって得た資産の価値が、売却する土地の直前の帳簿に記載されている価格と売却にかかった費用を合わせた金額を超える場合、つまり利益が出た場合に限ります。また、譲渡にかかった費用が支払った金額を超える部分に関してのみ、特定の計算方法に従って控除が認められます。

損益計算で考慮できる所得控除の限度額は、売却によって得た価格や交換資産の価値から売却直前の帳簿価格と売却費用を差し引いた金額と、1,000万円のうち低い額になります。しかし、同一年に他の土地の売却でこの特例を使用している場合は、その金額を差し引いた額が上限になります。

この特例を利用するためには、確定申告時にこの制度によって損金額を算入する旨を記載し、損金の計算に必要な詳細を添付する必要があります。加えて、「租税特別措置の適用額明細書」を法人税申告書に添付することも求められます。

土地の一部が収用されたときの残地保全経費の補償金

Q.土地の一部が収用されて、残った土地に新しい通路や溝、垣、柵などを作る必要が出た場合、その費用を補償してもらったときはどうなりますか。

A.お問い合わせの残地保全経費の補償金に関しては、土地収用法の第75条に基づいて補償されます。この条文では、同じ土地所有者が持っている土地の一部が収用または使用されることで、残った土地に新しい通路、溝、垣、柵などの建設や、既存のものの改築、増築、修理、土地の盛り土や切り土が必要になった場合に、そのための費用を補償しなければならないと定められています。この補償金は対価補償金には当たらず、受け取った補償金はそのまま利益に算入されます。しかし、補償金で行われた建設などが資本的支出とみなされるものであり、それが残土地の本来の機能を保つために必要と認められる場合に限って、その補償金相当の金額を修繕費として損金処理することが許されます。

土地の一部が収用されたときの残地の買収の対価

Q.土地の一部が収用された場合、残りの土地を起業者に買い取ってもらった際はどのように扱われますか。

A.土地の一部が収用され、その結果残った土地(残地)をこれまでの目的で使うことが非常に難しくなった場合、土地所有者は収用法に基づいてその土地全体の収用を要求することが可能です。この権利を残地収用の要求権と言いますが、これを行使するためには残地を以前の目的で使用することが非常に困難になったという状況が必要です。この要求権が行使できる状況下で起業者に残地を買い取ってもらった場合、その買取り対価は収用された日を含む事業年度の補償金として扱うことができます。しかし、この要求権が行使できる状況ではないにもかかわらず残地を起業者に買い取ってもらった場合は、その買取り対価は収用に伴う不可避的な資産譲渡とは見なされず、補償金とはされず、収用時の課税に関する特例の適用はありません。ただし、条件を満たす場合は、特定の資産の買換えに関する租税特別措置法に基づく課税の特例が適用される場合があります。

土地の一部が収用されたときの残地補償金

Q.土地収用法の適用を受けて収用された土地の残地について残地補償金の交付を受けた場合、これについても収用の場合の課税の特例の適用が受けられるか。

A.土地収用法に基づき、公共事業で土地の一部が必要となり、その結果残りの土地(残地)の価格が下がったり利用価値が損なわれたりした場合、その損失に対して補償金が支払われます。この残地補償金は、直接収用された土地部分に対する補償金と同様に扱われ、そのため収用された土地に対する課税の特例の対象となります。この特例は、収用された部分に対する補償金と残地補償金を合算した金額に基づいて適用されます。たとえば、法人が所有する土地の大部分が収用され、収用による補償金として9,000万円を受け取り、さらにその結果価値が下がった残地に対して300万円の残地補償金を受け取った場合、両方を合わせた9,300万円が特例の適用を受ける補償金の総額となります。

収用を受けた建物の取壊し遅れと特別勘定の計算

Q.土地の収用に伴い、その土地上の建物の移転補償金を受けましたが、建物を移転せずに取り壊し、代わりの建物を新築する予定です。建物を取り壊して代わりの建物を新築する事業年度が、土地の収用があった日を含む事業年度後の事業年度となる場合、移転補償金について特別勘定に経理する金額はどのように計算すればよいですか?

A.土地の収用に関連して建物の移転補償金を受け取った場合、その建物を移転せずに取り壊すと、その補償金はその建物の対価補償金として扱われます。この場合、代替資産(新しい建物)を取得する際にその資産の価値を調整する圧縮記帳が可能です。代替資産の取得が土地の収用があった日を含む事業年度の翌年度以降に延びる場合、補償金が交付された事業年度の確定した決算で、次の計算式によって求められる金額を特別勘定として経理し、損失として計上することができます。計算式は「(補償金の額(既に代替資産の取得に使われた部分を除く))/(補償金全額)×(取り壊し前の建物の帳簿価格)」となります。ただし、代替資産の取得が収用日を含む事業年度から原則として2年以内に限定されます。もし取り壊しも翌事業年度以降となる場合、取り壊し費用等の金額は確定せず、また取り壊し前の建物の帳簿価値の処理がその事業年度の末では不可能です。このため、代替資産の取得に向けた補償金全額を特別勘定として計上することが許されています。

収用等の場合の課税の特例が適用される移転補償金

Q.収用に伴い起業者から交付を受ける移転補償金のなかで、収用等の場合の課税の特例が適用されるものには、どのようなものがありますか。

A.移転補償金は基本的に収用等の場合の課税の特例の適用を受けませんが、例外的に特例が適用される場面があります。特例が適用されるケースは主に以下の2点です。

1. 「ひき家補償」の名目で起業者から補償金を受け取ったが、収用された土地にある建物や構築物を実際には移動せずに取り壊した場合、その補償金は建物や構築物の対価とみなされます。通常、ひき家補償金は補償される建物や構築物の移設にかかる費用を補填するために交付され、税の特例の対象外です。しかし、もしそれらの建物や構築物を取り壊した場合、補償金はその建物や構築物の買取代金として扱われ、特例が適用されます。

2. 機械装置の移転費用を補償するために受けた補償金についても、その補償金が移設することが非常に難しい資産、例えば製錬設備の溶鉱炉や公衆浴場の浴槽の取り壊しや修繕の補償金であれば、その補償金は対価補償金として扱われます。機械装置の新設費用の補償金が移転費用の補償金を上回る等、特定の状況下では、その補償金が実質的に新設費用の補償となっており、対価補償金としての扱いが可能です。

なお、これらの場合においても、補償金に関連する資産の売却や取り壊しによって生じた損失が補償金の額を超える場合、特例の適用による利益は発生しません。この場合、補償金は対価補償金として扱われず、発生した損失は収用された資産の譲渡にかかる経費として処理されます。

収用等の場合の課税の特例が適用される経費補償金

Q.収用等に伴い起業者から交付を受ける経費補償金のなかで、収用等の場合の課税の特例が適用されるものには、どのようなものがありますか。

A.経費補償金は通常、収用などの場面での課税特例の適用対象外です。しかし、以下の状況では特例が適用されます。ある資産(例:土地や建物、機械装置)が収用等により売却せざるを得なくなった際、その売却による損失の補償として起業者から受け取る補償金は経費補償金とみなされます。特に、事業全体を廃止した場合や、従来行っていた業種の事業を廃止し、かつ、該当する機械装置等を他で使うことができない場合に受け取る機械装置等の売却損の補償金に関しては、対価補償金として扱われます。この場合、該当機械装置等の会計上の価値のうち対価補償金に相当する部分は特定の計算式に基づいて算出する必要がありますが、計算式で求めた金額が対価補償金に相当する会計上の価値として記録されている場合は、その扱いが認められます。例えば、機械装置の対価補償金が900万円、帳簿価額が600万円、処分見込み価額または処分価額が100万円、処分による費用が無い場合、900万円の対価補償金のうち、600万円×900万円 ÷ (900万円 + 100万円)=540万円が帳簿上の価値に相当します。この計算により、特例の対象となる金額は360万円(900万円-540万円)となります。また、通達のただし書きに従う場合、600万円のうち900万円の対価補償金に相当する金額は、600万円-100万円=500万円となり、この場合特例の対象となる金額は400万円(900万円-500万円)です。機械装置等の売却損の補償金は一般的に特定の計算式に従って求められるため、この例のように対価補償金が帳簿価値を上回ることがあります。

家主が受け取った借家人補償金を借家人に支払わなかった場合

Q.関係会社A社が所有するビルを当社が賃借している状況で、ビルが収用され、起業者からA社へ対価補償金が、当社へ経費補償金が支払われた際、対価補償金のうち借家人補償金部分をA社が当社に支払わなかった場合、A社および当社がそれぞれ受け取った補償金に対する収用等の場合の課税の特例の適用はどのようになりますか?

A.ご質問の状況では、建物の収用に伴い支払われる対価補償金の中には、本来借家人である貴社へ支払われるべき借家人補償金が含まれています。通常、家主に一括して支払われる補償金には、借家人へ支払うべき借家人補償金も含まれる場合がありますが、家主はこれを借家人に支払う義務があります。借家人補償金の額は、通常借家人が受け取るべき金額として、起業者が他の借家人に対して行った補償の状況を基に計算されます。

家主がこの借家人補償金の支払いを怠った場合、その金額は借家人から家主への贈与と見なされます。そのため、家主であるA社は、受け取った対価補償金のうち、収用等に関する課税の特例を受けられるのは、贈与とみなされる部分を除いた残りの金額です。借家人からの贈与とみなされた金額は、益金として考慮されます。

次に、借家人である貴社は、借家人補償金相当額を贈与としてA社に提供したとみなされます。この場合、貴社は5,000万円までの特別控除を受けることができます(ただし、代替資産の取得が行われていない場合)。また、貴社が資金で代替資産を取得した場合には、圧縮記帳の特例の適用を受けることが可能です。この特例を受けるためには、家主が受け取った収用証明書のコピーを、確定申告に添付する必要があります。

最後に、貴社が受け取る経費補償金は、休廃業等に伴う事業上の費用や、収用された資産以外の損失補填に使用されるもので、収用等の場合の課税の特例の適用はありません。