特定の事業用資産の買換え及び交換の特例

譲渡資産の所有期間

Q.特定の事業用資産の買換え・交換の場合の譲渡所得の課税の特例を適用するためには、譲渡資産をどれくらいの期間所有している必要がありますか?

A.事業用資産の中で、特に土地に関しては、譲渡を行う年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合、事業用資産の買換えや交換の特例を受けることができません。ただし、期間限定で平成10年1月1日から令和8年3月31日までの譲渡であれば、5年以下の所有期間であっても特例の適用が可能です。さらに、特定の建物や土地を買換える場合には、譲渡の日が属する年の1月1日時点で所有期間が10年超である必要があります。一方、船舶については、譲渡日時点で所有期間が20年、23年、30年未満であることが条件とされています。特定の条件下での買換えについては、令和8年3月31日までの適用となっており、所有期間の判定や取得日についての詳細は別の質問項目で確認が必要です。

店舗併用住宅の譲渡と特定居住用財産の買換えにおける税の特例

Q.昭和50年8月に取得した店舗併用住宅を譲渡して、居住専用住宅を買い換えようと思っています。譲渡する店舗併用住宅の譲渡価額は8,000万円で、店舗部分の面積は30%です。仮に、買換資産の取得価額を4,500万円とした場合、特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合の譲渡所得はどのように計算されますか。

A.店舗併用住宅を売って、居住専用住宅に買い換えるケースでは、税の特例が適用されるのは住宅部分だけです。この場合、譲渡する家の価額の70%が住宅部分に相当します。よって譲渡価額8,000万円の70%、すなわち5,600万円が住宅部分として計算されます。この特例による計算方法は、以下の通りです。譲渡資産の取得費が不明なため、概算取得費を譲渡価額の5%として計算します。

1. 住宅部分の譲渡所得金額

– 収入金額: 5,600万円 (住宅部分) – 4,500万円 (買換資産取得価額) = 1,100万円

– 取得費: 概算取得費は400万円×70% = 280万円、概算取得費の5% = 280万円の5% = 14万円

– 譲渡所得金額: 1,100万円 – 14万円 = 1,086万円

2. 店舗部分の譲渡所得金額

– 収入金額: 8,000万円×30% = 2,400万円

– 取得費: 400万円×30% = 120万円

– 譲渡所得金額: 2,400万円 – 120万円 = 2,280万円

3. 買換えた資産の取得価額の計算

– 280万円×5% = 14万円

– 買換えた資産の取得価額: 14万円

以上を合わせると、譲渡所得金額は3,370万円になります。また、将来買換資産を譲渡する際の取得価額として計算する金額は、14万円になります。

特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例

Q.居住用財産の譲渡と取得が交換の方法で行われた場合には、課税関係はどのようになりますか。

A.居住用財産を交換することによる譲渡所得の課税には、一定の条件を満たした場合、特殊な取り扱いがあります。具体的には、居住用財産を交換する際、特定の要件を満たせば、その交換が行われなかったとみなされ、譲渡がなかったとして扱われます。これにより、税金がすぐにはかからず、課税が繰り延べられる可能性があるという特例が設けられています。この特例は、「特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例」として知られ、家や土地、またはこれらの上の権利を交換する場合に適用されることがあります。ただし、この特例が適用されるかどうかは交換する財産の種類やその他の条件によって異なります。また、この特例を利用するためには、交換譲渡資産や交換取得資産が特定の基準を満たしている必要があります。特例の適用を受けられない特定の例外もあり、この特例が適用できるかどうかは、交換する財産の具体的な状況を詳しく確認することが必要です。

特定の居住用財産の買換え(交換)の場合の長期譲渡所得の課税の特例と住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除

Q.特定の居住用財産の買換え(交換)の特例の適用を受けて取得した住宅についても所得税の確定申告をすれば住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の適用が受けられるのでしょうか。

A.特定の居住用財産の買換え(交換)の特例を利用して取得した住宅に関しては、住宅借入金等を持つ場合でも所得税の特別控除を受けることはできません。租税特別措置法の一部により、住宅を取得した際の所得税額の特別控除は利用不可とされています。

買換資産に付すべき取得価額の計算等

Q.特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合は買換資産の取得価額はどのようになるのでしょうか。

A.特定の居住用財産を買い替えて、その買い替えに伴う長期譲渡所得の特例を受けた場合、その後その買い替えた資産を売却、相続、遺贈、または贈与した際に、その売却所得を計算する基礎となる取得価額は、以下の条件に従って決まります。

1. 譲渡資産の売却から得た収入が買換資産の取得価額を超える場合、取得価額は譲渡資産の取得価額に加え、設備費、改良費の合計と譲渡費用の和を収入金額で割ったものです。

2. 譲渡資産の売却から得た収入が買換資産の取得価額に等しい場合、取得価額は譲渡資産の取得価額、設備費、改良費の合計、および譲渡費用の総額です。

3. 譲渡資産の売却から得た収入が買換資産の取得価額に満たない場合、取得価額は譲渡資産の取得価額に加え、設備費、改良費の合計と譲渡費用の和です。

注:買換資産の取得日は、実際の取得日とされ、特定の事業用資産の買換えのための特例と同じく、取得日の継承はありません。

特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用が受けられない譲渡

Q.居住用財産を譲渡(取得)した場合でも、特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用が受けられないケースはありますか?

A.はい、次の状況では特定の居住用財産の買換えに関する長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けることができません:

1. 譲渡が譲渡人の配偶者や特別の関係がある者へ行われた場合。

2. 次の特例のいずれかの適用を受ける譲渡の場合:収用等による代替資産の取得、交換処分や換地処分による資産の取得、収用交換等に伴う譲渡所得の特別控除、特定の事業用資産の買換えや交換、特定普通財産とその隣接する土地等の交換に関する譲渡所得の特例。

3. 贈与、交換、出資、金銭債務の弁済に代わる代物弁済による譲渡の場合。

加えて、特例の対象となる買換資産の「取得」についても、贈与、交換、金銭債務の弁済に代わる代物弁済による取得の場合は特例の適用が受けられません。また、特定の条件を満たしていない場合には特例の適用がありません。

更正の請求、修正申告書等

Q.私は、令和5年6月に、自分が住んでいる家を6,000万円で売りました。次の家が土地の準備などで令和6年5月ごろに完成する予定なので、確定申告の時には新しい家の購入費用を5,000万円と見積もって、特定の住宅を買い換えた場合の長期譲渡所得課税の特例を利用しようと考えています。購入費用の見積もりと実際の費用に差が出た場合、どのような手続きをすればいいですか?

A.仮に見積もった購入費用に達しなかった場合は、修正申告書の提出を行い、見積もりを超えた場合は更正の請求を行ってください。もし買い替えた資産を住宅として使用する期限までに住宅用として利用していない、または購入費用の見積もりと実際の費用に差があった場合などは、修正申告書の提出や更正の請求が可能です。これは、譲渡した資産を譲渡年とその前年に全部購入してこの特例を受けた人が、譲渡年の翌年の12月31日までに住宅用として利用しなかった場合、または購入費用が見積もりに比べて多かったり少なかったりした場合に、修正申告や更正の請求をすることができるという規定に基づきます。

特定の居住用財産の買換えの場合の課税の特例における譲渡所得金額の計算

Q.昭和52年に5000万円で取得した居住用家屋とその敷地を令和5年6月に1億円で売却し、同年10月に8000万円で居住用の住宅を購入しました。譲渡に要した費用は400万円です。この場合、特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けたときの譲渡所得金額はどのように計算しますか?

A.特定の居住用財産の買換えにおける長期譲渡所得の課税特例を利用する場合、譲渡所得金額の計算方法は以下のようになります。①買換資産の取得価額が譲渡資産の譲渡価額以下の場合、譲渡資産の譲渡がなかったとみなします。②買換資産の取得価額を譲渡資産の譲渡価額が超える場合、その差額に相当する部分の譲渡があったものとして、その部分についてのみ譲渡所得が課税されます。譲渡所得金額は、譲渡価額から買換資産の取得価額を引いた収入金額から、譲渡資産と買換資産にかかる必要経費を引いた額です。あなたのケースでいうと、譲渡価額は1億円、買換資産の取得価額は8000万円で、これにより収入金額は2000万円となります。譲渡資産の取得費と譲渡にかかる費用を加えた額(5400万円)を収入金額に対する比率で計算し、必要経費1080万円を差し引いた結果、長期譲渡所得金額は920万円となります。ただし、特定の要件を満たしていない場合は、この特例の適用はありません。

買換資産を居住の用に供すべき期限

Q.特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けるためには、買換資産をいつまでに居住の用に供すればよいのでしょうか。

A.買換資産を令和6年中に取得する場合は、令和7年の12月31日までに居住のために使用すれば、特別な税制の恩恵を受けることができます。買換資産を取得後、その資産を自分の家として使用するための期限は以下のように区分されます。もし令和5年やその前の年に買換資産全てを取得した場合は、買換資産を譲渡した年の翌年の12月31日までに居住用に使う必要があります。また、買換資産の譲渡の年の翌年に資産を取得した場合、その取得年の翌年の12月31日までに居住用に供する必要があります。ただし、買換資産を取得後に亡くなった場合、その資産を相続した人が期限までに居住のために使用した場合、亡くなった人が使用したとみなされます。この特例を利用するためには特定の要件を満たす必要があり、特定非常災害などやむを得ない理由で買換資産の取得が困難になった場合には、別途規定があります。

借地を買い取って家屋とともに譲渡した場合の買換えの特例の適用

Q.昭和56年に建てた家屋がある借地を平成30年に買い取り、令和5年3月に家屋と土地を譲渡した場合、特定の居住用財産の買換えにおける長期譲渡所得の課税の特例の適用はどうなるか。土地は時価1,000万円で500万円で買い取った。

A.このケースでは、家屋と借地権部分の譲渡収入だけが特例の対象となります。借地権を持つ人がその土地を購入する際、取得日は借地権部分と実際の土地部分とで分けて考えられる必要があります。質問の状況では、家屋と借地権部分は譲渡年の1月1日時点で所有期間が10年を超えているため、特例が適用されます。しかし、実際の土地部分についてはその時点で所有期間が10年未満であるため、特例の条件には当てはまりません。従って、譲渡収入金額を特例の対象となる借地権部分と適用外の実際の土地部分に分ける必要があります。仮に家屋と土地の譲渡対価総額が4,000万円、土地の譲渡価格(時価)が3,000万円だった場合、特例の対象となる譲渡収入金額は2,500万円になります。また、特例の適用を受けられない短期譲渡所得は1,000万円になります。