追加決定された事業税

Q.所得税に関して税務調査を受けた個人が、事業所得について過去3年分の所得金額の更正処分を受けました。その個人の事業は事業税の課税事業に該当しますので、事業税についても更正処分がありましたが、この事業税の追徴税額については、いつの年分の必要経費に算入されますか。

A.個人の事業税に関しては、都道府県から追加決定処分があった年の必要経費に算入します。一方、法人の場合、直前の事業年度分の事業税については、その事業年度の終了日までに全部または一部が申告、更正または決定されていない場合でも、その事業年度の損金に計上できます。ただし、所得税においては、地方公共団体が所得税の課税標準の変更に伴って事業税を追加で決定するまで、これを必要経費として認識することは原則として行われません。しかし、事業税の追加決定があった場合には、その決定があった年の必要経費に計上することになります。

相続税の必要経費算入の可否

Q.父が営んでいた不動産貸付業から相続した賃貸マンションの相続税は、そのマンションに係る不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入できますか?

A.原則として必要経費には、収入を得るために直接要した費用や、販売費や一般管理費など、その業務に関連して発生した費用が含まれます。不動産に係わる費用であれば、固定資産税などの租税公課も必要経費に算入可能です。しかし、相続税は相続によって受け継がれた財産に対して課税されるものであり、不動産所得とは別の性質を持つため、必要経費には算入できません。したがって、あなたの賃貸マンションに関連する相続税を不動産所得の計算で必要経費として扱うことはできません。

住宅の貸付けと駐車場の貸付けに関する消費税の扱い

Q.賃貸マンションのマンション住人用駐車場の貸し付けにおいて、消費税は非課税となるでしょうか。

A.駐車場の貸し付けは、一般的に施設の貸し付けと見なされ、土地の貸し付けとして非課税となる訳ではありません。居住用住宅の貸し付けに伴う非課税範囲については、家具や照明設備など、住宅に付随して貸し付けられるものは含まれます。しかし、プールやアスレチック施設、駐車場のように独立して賃貸借の目的となる場合は非課税対象外となります。具体的に、自動車の所有の有無に関わらず入居者一戸あたり1台分以上のスペースが割り当てられ、家賃とは別に駐車場使用料を収受していない場合は、住宅の貸し付けに付随するものとして非課税となります。それ以外の場合は、消費税の課税対象とします。

参考:法6①、法別表第一第1号、第13号、基通6-13-1、6-13-2、6-13-3

住宅の貸付けに係る非課税範囲の明確化

Q.住宅の貸付けに関して、非課税範囲が見直されたと聞きましたが、その概要を教えてください。

A.住宅を人が住むために貸し出す場合、その貸出の契約で明確に住宅として利用されることがわかっていれば消費税が非課税とされます。もし貸出の契約で利用目的がはっきりしていなかったとしても、その住宅が実際に人が住む用途で使われていることが明らかな場合には、消費税を非課税とすることになりました。具体的には、契約では住宅の用途が居住か事業か明確でない状況や、契約が用途を明言していないが実際には個人が住んでいるケース、または賃借人が第三者に転貸して居住の用に供されていることが契約で明確にされている場合などが含まれます。この改正は、令和2年4月1日以降に国内での資産の譲渡や課税仕入れが行われる場合に適用されます。

参考:法6①、法別表第一第13号、令2改法附1、46①、基通6-13-10、6-13-11

教科書の取次手数料に関する消費税

Q.私たちの書店では、小中学校の教科書の取次ぎ業務をしており、その配送手数料も受け取っています。この配送手数料に対して消費税は非課税と見なしてもいいのでしょうか。

A.消費税が非課税となるのは、文部科学省が検定した教科書や文部科学省が所有権を持つ教科書の売買に限定されます。従って、教科書の配送手数料や供給手数料といったサービスに関しては、これらは教科書の直接の売買ではないため、消費税の非課税対象にはなりません。

参考:法 6①、法別表第一第12号 、基通 6-12-2 

相続により取得した不動産に係る固定資産税

Q.父が所有していたマンションと駐車場を相続しました。市役所から固定資産税の通知書が届き、支払いを行いましたが、この固定資産税は父の不動産所得の計算上の必要経費になるのでしょうか、それとも私の不動産所得の計算上の必要経費になるのでしょうか。

A.固定資産税や登録免許税など、不動産の所得に関連する税金は、その不動産からの所得計算時に必要な経費として計上できます。ただし、どの年の所得計算にこれらの税金を経費として計上できるかは、その年の12月31日までに納付しなければならない税金で、具体的に確定しているものに限られます。固定資産税について言えば、1月1日時点での所有者に対して課される地方税ですが、納税が確定するのは固定資産税の納税通知書が届いたときです。従って、質問のケースでは、相続開始時にはまだ固定資産税の納税通知がなされていなかったため、支払った固定資産税はお父様の不動産所得の計算上ではなく、あなたの不動産所得の計算上必要な経費として扱うことになります。必要経費として計上できる金額は、原則として納税通知書に記載されている固定資産税の金額となりますが、納期ごとの税額をそれぞれの納期の開始日または実際に納付した日の所属する年度の経費として計上することも可能です。

業務用資産を相続により取得した場合の登録免許税

Q.不動産賃貸業を営む父が死亡したため、事業を引き継ぐことになりました。賃貸用建物の相続に際して支払った登録免許税は、不動産所得の計算上必要経費に算入してもよいでしょうか。

A.登録免許税には、異なる取り扱いがあります。特許権や鉱業権のように登録で権利が発生する資産に関連する登録免許税は資産の取得費に算入します。船舶や航空機、自動車など業務で使う資産の登録免許税は、取得価額に入れなくても良いことになっています。そして、これら以外の資産に関する登録免許税も取得価額に算入しません。取得価額に算入しない登録免許税は、所得計算上の必要経費として算入できます。相続や贈与で取得した業務用資産、例えば賃貸用建物に支払う登録免許税は、このルールに従って必要経費として扱うことができるので、あなたが相続で支払った登録免許税も不動産所得の計算で必要経費に算入することができます。

不動産取得税、登録免許税

Q.洋品雑貨商を営んでいます。今度繁華街に支店を出すことになり、店舗を購入しましたが、不動産取得税と登録免許税がかかってきました。これは建物の取得価額に含めるのですか。また、自動車を購入したときの自動車重量税はどうなりますか。

A.業務に使用する資産で発生する固定資産税、登録免許税(登録費用を含む、ただし取得価格に含めるものは除く)、不動産取得税などは、事業に関する各種の所得を計算する上で必要な経費に算入します。また、減価償却資産に関する登録免許税(登録費用を含む)については、次のように取り扱います。(1)特許権、鉱業権など登録で権利が発生する資産は取得価額に算入します。(2)船舶、航空機、自動車など業務に使用するために登録が必要な資産は、取得価額に算入しなくても良いです。(3)(1)と(2)以外の資産は、取得価額に算入しないことになっています。従って、質問の店舗に関する不動産取得税と登録免許税は、必要経費に算入できます。自動車の取得(登録)でかかる自動車重量税も、必要経費に算入可能です。しかし、店舗としても使用し、住宅部分がある場合は、これらの費用の住宅部分に該当する額は経費に算入できず、合理的な基準に基づいて分割した額を算入することになります。

教科用図書の譲渡相手

Q.私たちの書店では、教科書も扱っており、学校の生徒以外にも私塾などに販売することがあります。この際、教科書の販売に消費税はかかりますか?

A.学校教育法に定められた文部科学省検定済みの教科書や文部科学省が著作の権利を持つ教科書の譲渡は、全て非課税です。したがって、学校の生徒以外に販売する場合でも、これらの教科書であれば非課税となります。

参考:法 6①、法別表第一第12号

非課税となる教科用図書の範囲 その2

Q.当社は書店を経営しており、県立乙農業高等学校に園芸関連の書物を納入しています。これらは教科書として採択され、授業で使用されています。これらの書物の販売は消費税の非課税対象になりますか?

A.学校教育法には、教科書が存在しない教科について、一時的に他の書物を教科用図書として使用できることが記されています。しかしながら、非課税の対象となるのは文部科学省が認定した教科書や文部科学省が著作権を持つ教科書に限られます。従って、ご質問の書物は学校教育法上で教科用図書とはみなされますが、文部科学省検定済みの教科書ではないため、非課税の対象にはなりません。

参考:学校教育法第34条第4項、学校教育法第34条第1項、法別表第一第12号、基通6-12-1