工事着工金の貸倒れ

Q.医師が病院増築のため、工事請負業者に500万円の着工金を支払い、建築を請け負わせましたが、その請負業者は工事半ばで倒産し、その着工金は回収不能となりました。その後、他の工事請負業者によって工事が引き継がれ、翌年に建物の引渡しを受けましたが、これらの明細は次のとおりです。この場合、回収不能となった着工金に係る損失は、建物の取得価額に算入しなければなりませんか。

イ 倒産した工事請負業者に支払った着工金 500万円

ロ 未完成工事の価額 (引き継いだ請負業者の見積り) 150万円

ハ 引き継いだ工事請負業者に支払った工事代金 2,350万円

A.不動産所得や事業所得を生む事業の遂行によって起こった売掛金、貸付金、前渡金などの債権の貸倒れで生じた損失の額は、それらの所得を計算する際に必要経費として計上できます。今回の着工金500万円も、医師の病院経営に関連して支払われた前渡金であり、これが貸倒れになった際の損失は、完成した病院の取得価額に加えるのではなく、医業に関する事業所得の計算において必要経費として計上されます。ただし、工事が一定程度進んで未完成工事の価額が生まれた分は実質的に回収したものとみなされるため、工事着工金と未完成工事の価額の差額が実際の損失額となります。具体的には、500万円から150万円を引いた350万円が損失額です。また、新築した建物の取得価額は、2,350万円と150万円を合わせた2,500万円となります。これは、新築病院が事業用資産としてのみ使用される場合の説明であり、もし建物が住宅部分を含む場合、住宅部分の貸倒れについては必要経費と見なせず、損失額350万円から住宅用部分に当てる分は必要経費に算入できないとされます。

手続委託型輸出物品販売場の許可について

Q.テナントビル内の小売店舗を運営していて、免税カウンターが設置されているため、手続委託型輸出物品販売場の許可を受けたいです。どのような手続きが必要ですか?

A.手続委託型輸出物品販売場の許可を受けるには、販売場ごとに納税地を管轄する税務署長へ「輸出物品販売場許可申請書(手続委託型用)」を提出する必要があります。この申請書には、販売場が所在する特定商業施設の見取り図や免税販売手続の代理に関する契約書の写しなどを添付します。許可を受けるためには、以下の要件を全て満たす必要があります:1) 国税の滞納がなく、過去3年間で輸出物品販売場の許可が取り消されたことがない消費税の課税事業者であること。2) 免税購入対象者が利用する場所に所在する販売場であること。3) 販売場と免税手続カウンターを設置する事業者との間に、免税販売手続の代理に関する契約があり、販売した物品が同一であることを確認し、必要な情報を共有する措置が講じられていること。また、「輸出物品販売場における購入記録情報の提供方法等の届出書」の提出も必要です。

参考:法 8⑦、令18の 2②二、規 6の 2①、基通 8-2-1(2)、 様式通達第20 -(2)号様式 

一般型輸出物品販売場の許可

Q.電気製品の小売業を営んでおり、外国人観光客の利用が多くなったため、一般型輸出物品販売場の許可を本店と甲市の支店で受けようと考えています。この許可を受けるための手続きについて教えてください。

A.一般型輸出物品販売場の許可を受けたい場合、納税地を所轄する税務署長に対して、本店や支店ごとに「輸出物品販売場許可申請書(一般型用)」と見取り図等の必要書類を提出する必要があります。また、販売場ごとに購入記録情報提供方法等の届出書の提供も必要です。「一般型輸出物品販売場」の許可を受けるには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。1. 消費税の課税事業者で、税の滞納がなく、過去3年以内に輸出物品販売場の許可が取り消されていないこと。2. 免税購入対象者が利用する場所、または利用が見込まれる場所に販売場があること。3. 免税販売手続きに必要な人員を配置し、免税販売手続きを行うための設備があること。この設備には、免税購入対象者であることの確認や免税品を包装するためのカウンター等が含まれますが、特別なカウンターを設ける必要はありません。

「輸出しないとき」の範囲

Q.消費税法第8条 第3項に規定する「輸出しないとき」の範囲について教えてください。

A.「輸出しないとき」とは、免税対象者が免税対象の物品を購入し、出国するまでにその物品を輸出しなかった場合を指します。具体的には、免税対象の消耗品などを国内で使用した場合や、出国時に免税対象の物品を所持していなかった場合がこれに該当します。このような場合、出港地を所轄する税関長は直ちに消費税を徴収することになります。しかし、出国時に税関に以下の書類のいずれかを提示し、物品が輸出されたことが明らかな場合は、「輸出しないとき」とはみなされません。

1. 輸出許可書またはその写し

2. 小包郵便物等を輸出する際に交付された書類とその内容の写し

3. 通常郵便物を輸出する際に交付された書類(追記含む)

4. 上記書類に準ずる書類

また、免税購入対象者が対象でなくなる時に、所在地を所轄する税務署長に対して、出国までに物品を輸出したことを上記の書類で証明できる場合も同様の扱いを受けられます。

参考:法8①③、令18、 基通8-1-5、 8-1-5の 2

通常生活の用に供する物品

Q.「通常生活の用に供する物品」について教えてください。

A.免税対象物品は、輸出のために購入される物品の中で、日常生活で使用されるものが該当します。一方、事業用や販売目的で購入される物品は免税対象外です。日常生活で使用される物品と判断するには、販売業者が以下の事項を総合的に考慮して判断します。

1. 物品の大きさや用途、販売状況(販売回数、販売数量、販売金額など)からみて、事業用や販売目的とは考えられないか。

2. 物品が配送される住所が、日本国内の個人宅や法人の事業所でないか。

3. 購入時に使用されたクレジットカードやポイントカードが、提示された旅券等と異なる名義のものでないか。

4. 継続的な事前注文や掛け売り、振り込みなどの決済方法を使用していないか。

5. その他、明らかに事業用や販売目的で購入されると考えられる状況がないか。

これらをもとに、販売業者が輸出される物品が日常生活で使用されるものかを判断します。

参考:令18②

免税販売の対象となる物品

Q.輸出物品販売場において、免税販売の対象となる物品について教えてください。また、外国人事業者に対して免税販売することはできますか。

A.免税販売の対象となる物品は、輸出を目的として購入される日常生活に使われる物品です。一日の税抜き総販売額が特定の基準を満たす、一般物品(家電、バッグ、衣料品など消耗品以外)や消耗品(飲食料品、医薬品、化粧品など)であった場合に免税対象となります。一般物品の場合は税抜5千円以上が、消耗品の場合は税抜5千円以上かつ50万円以下が基準です。ビジネス用や販売目的で購入される物品は、免税の対象外です。この基準は外国人事業者が代理で購入する場合も適用されます。また、「金または白金の地金」は免税の対象外であり、一般物品と消耗品の組み合わせで税抜5千円以上の場合、指定された包装方法により免税販売可能です。この場合、一般物品は消耗品として扱われます。

参考:法8、令18

取引停止による貸倒処理

Q.貸金業者である個人が行った貸付について、一定期間取引を停止した後に弁済がない場合の貸倒処理の特例が適用されるかどうかについて説明してください。

A.このような貸付金の貸倒処理に関して、特定の条件下での取引停止後に弁済がない際の貸倒れの特例適用はありません。この特例は、支払い能力が低下した債務者との継続的な取引を停止した後、1年以上弁済がない場合に貸倒処理が認められるものです。主に一度限りの取引についての貸倒れの判断は、債務者の資産状況から回収可能性を評価した上で決定されます。また、最後の弁済が利息への充当であった場合でも、特例適用のためには最後の弁済から1年以上の経過が必要である点に変わりはありません。

山林の火災による損失

Q.私は専業農家で、子供に残すために4年前に山林を取得しましたが、今年3月にその山林が山火事で全焼しました。この損失は、保有期間が5年以内の山林の資産損失として雑所得に関わる損失となるのでしょうか。他に山林は所有していません。

A.山林の収入(伐採や譲渡によるもの)は保有期間が5年を超えた場合と5年以内で所得の種類が異なります。5年超は山林所得、5年以内は事業所得または雑所得とされます。しかし、取得から5年以内に災害や盗難、横領で失われた山林は、伐採や譲渡が不可能になるため、どの所得における損失かが問題になります。特に、雑所得の損失は損益通算の対象外で税負担への影響が大きいです。所得税法では、災害や盗難、横領による山林の損失(保険金等で補填される部分を除く)は保有期間に関わらず損失の生じた年の事業所得または山林所得の必要経費に算入できることとしています。あなたの場合、子供のために取得した山林で他に山林がないので、この損失は事業所得の必要経費にはならず、山林の収入がなくても山林所得の損失として扱われ、他の所得と損益通算することが可能です。

競走馬の事故による損失

Q.競走馬の馬主として、昨年は賞金を獲得しましたが、今年はレース中に競走馬が怪我をしてしまい、レースに出られなくなりました。この損失を昨年の所得から引くことは可能ですか?

A.生活に必要でない特定の資産の損失、例えば競走馬の災害や盗難による損失は、その年の譲渡所得または翌年の譲渡所得から差し引くことができます。この規則は、競走馬が事業として使われる場合には適用されません。また、楽しみや保養のために持っている家屋やその他の資産、生活に使う物のうち非課税でないものも含まれます。もし競走馬が事故で死亡したり、レースや繁殖の能力を失った場合、次の計算式に基づいて損失額を出し、その年または翌年の譲渡所得から差し引くことができます。計算式は「未償却残高 – (事故見舞金 + 競走馬保険金 + 処分可能価額) = 損失の金額」となります。ただし、昨年の賞金から直接差し引くことはできません。

建物貸付けの事業的規模の判定の時期

Q.今年6月に退職し、退職金でマンションを建てて10月から入居者を募集しましたが、12月末には空室があり損失が出ました。この場合、以前の貸家を取り壊した際の損失を不動産所得の計算で全額必要経費として算入できますか?

A.建物を貸し出す事業が事業的規模であるかによって、取り壊しによる損失を全額必要経費に算入できるかが決まります。事業的規模であれば、損失を全額算入できますが、そうでなければ、その年の不動産所得の金額を上限に損失を算入できます。問題のケースでは、取り壊した時点で事業的規模であったかが重要で、その時点では事業的規模には達していないため、損失はその年の不動産所得の金額を限度に必要経費として算入されます。