決算期変更後の基準期間

Q.当社は従来9月末決算でしたが、令和5年3月から決算期を3月末に変更しました。この変更を行った場合、令和5事業年度(令和5年4月1日~令和6年3月31日)の基準期間は令和3年4月1日~令和4年3月31日で良いでしょうか?

A.法人の場合、基準期間は通常、2期前の事業年度となります。つまり、3月末決算の法人であれば、令和5事業年度の基準期間は、変更前の事業年度である令和3事業年度(令和3年4月1日~令和4年3月31日)が基準期間となります。しかし、決算期を変更したため、令和6事業年度の基準期間は令和4事業年度を基準にし、その期間が6ヶ月のみとなります。基準期間が1年でない場合、課税売上高は基準期間内で割り出し、12ヶ月分に換算します。

参考:法第2十四、9第二、9の2

人格のない社団がNPO法人となった場合の納税義務

Q.人格のない社団が特定非営利活動法人(NPO法人)となった場合、このNPO法人の納税義務はどうなりますか?

A.人格のない社団は、消費税法上は法人とみなされますが、その社団がNPO法人として新たに設立される場合、この2つは別の事業者として扱われます。新設されたNPO法人には、設立された時点およびその次の期間に基準期間の課税売上高が存在しないため、設立から2期目までの税金の納付義務からは免除されます。しかし、第2期においても、ある特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合には、課税事業者に該当することになります。

参考:法9①、9の2、12の2①、基通1-4-6

人格のない社団が公益法人となった場合の納税義務

Q.一般社団法人設立前後で経営実態が変わらない場合、基準期間の課税売上高の判定はどのようになるでしょうか?

A.経営実態が変わらなくても、人格のない社団と一般社団法人(公益法人)は全く別の法人として扱われます。したがって、新たに設立された一般社団法人(公益法人)の基準期間に課税売上高は無いため、設立初期と2期目には納税義務が免除されます。ただし、2期目については、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで納税義務の有無を判断する必要があります。

参考:法9①、9の2、12の2①、基通1-4-6

特定期間の判定と「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」

Q.課税事業者がその年(または事業年度)において課税売上高が1,000万円以下となった場合、「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」提出が求められますが、特定期間における課税売上高によっては、この届出による納税義務の免除が適用されないケースがありますか。

A.「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」は、課税売上高が1,000万円以下となった課税事業者が、その事実を基に納税義務が免除される場合に、税務署に提出する必要があります(「消費税課税事業者選択届出書」を提出している場合や特定の高額資産取得に関する特例を受ける場合を除く)。この届出は、その後の期間における課税売上高にかかわらず、既述の条件に該当する場合には提出する必要があるとされています。ただし、翌課税期間の特定期間において課税売上高が1,000万円を超える場合には、「消費税課税事業者届出書(特定期間用)」を提出する必要があります。課税売上高の代わりに、給与等の支払額で特定期間の判定を行うことも可能です。

参考:法57①

事業に「専ら従事」することの意義 (そ の 1)

Q.青色事業専従者給与は、事業に専ら従事する期間が6か月を超えていることが適用要件の一つとされていますが、この「専ら従事」とは具体的にどのように考えればいいのですか。

A.「専ら従事」するとは、基本的には、事業の内容やその家族の仕事の内容により、その家族がその仕事にかけるべき時間の大部分を実際に働いている、または働ける状態にあることを意味します。これは、必ずしも全ての勤務時間を事業に費やさなければならないわけではありませんが、他の職業を持っているなどして事業に専念することが難しい場合、この条件を満たしていないと見なされることがあるので注意が必要です。

特定期間の判定における給与等支払額の範囲

Q.特定期間の判定で使用できる給与等支払額には、具体的にどのようなものが含まれますか?

A.質問された給与等支払額は、所得税法施行規則第100条第1項第1号で規定される給与等の金額を指しており、特定期間中に支払われた給与、賞与等の所得税の課税対象とされる金額の合計を示します。支払った給与、賞与等だけが給与等支払額に含まれ、未払いの給与や賞与等は含まれません。また、退職手当や所得税が非課税となる通勤手当や旅費等は含まれないこととなっています。ただし、無償または低額で社宅や寮等を貸与することによって供与される経済的利益のうち、給与所得とされる部分は給与等支払額に含めて納税義務の判定に使用されます。

参考:法9の2③、規11の2、基通1-5-23

事業専従者控除額の計算

Q.白色申告者の事業専従者控除額の計算方法について説明してください。

A.事業専従者控除額は、以下の二つの金額のうち低い方を適用します。

1. 事業専従者が事業主の配偶者の場合は86万円、それ以外の場合は50万円。

2. 事業所得から事業専従者控除額を差し引く前の金額を、事業専従者の数に1を加えた数で割った金額。

例えば、事業所得が180万円で、事業主の配偶者と子どもが事業に専従している場合は以下のように計算します。

配偶者に関する計算:

– 86万円

– 事業所得180万円を事業専従者2人+1で割った金額は60万円。

– この場合、低い金額は60万円なので、配偶者に対する事業専従者控除額は60万円となります。

子どもに関する計算:

– 50万円

– 事業所得180万円を事業専従者2人+1で割った金額は60万円。

– この場合、低い金額は50万円なので、子どもに対する事業専従者控除額は50万円となります。

特定期間の判定における「短期事業年度」

Q. 法人の特定期間による納税義務の判定を行う際、前事業年度が「短期事業年度」に該当する場合、特定期間はどうなるのでしょうか。また、「短期事業年度」に該当する場合とはどういったものでしょうか。

A. 「短期事業年度」とは、以下の1または2のいずれかに該当する場合を指します。

1. 前事業年度が7か月以下の場合。

2. 前事業年度が7か月を超え8か月未満で、その事業年度開始後6か月の期間の末日翌日から前事業年度の終了日までの期間が2か月未満の場合。

これらの条件により前事業年度が短期事業年度となる場合、その事業年度の前々事業年度の開始日から6か月の期間(前々事業年度が6か月以下の場合はその事業年度の終了日までの期間)が特定期間となります。この特定期間内の課税売上高(または給与等の支払額)に基づいて納税義務の判定が行われます。ただし、前々事業年度が基準期間に含まれる場合など、特定期間とみなされないケースもあります。

注)前事業年度開始後6か月の期間の末日が前事業年度終了の日と同一でない場合、前事業年度が8か月未満でも特定期間とみなされ、納税義務の判定が必要になることがあります。

参考:法9の2④、令20の5、20の6

白色の事業専従者控除と青色事業専従者給与との相違

Q.白色申告者の場合は、6か月を超える期間事業に専従していなければ専従者控除はできませんが、青色申告者については、1か月だけ事業に専従している場合でもその専従に係る給与の必要経費算入が認められる場合があると聞きましたが、本当でしょうか。また、両者の相違点について詳しく説明してください。

A.事業主が家族に支払う対価は原則として必要経費に算入することはできませんが、青色申告者は事業主の家族に対して支払われる専従者給与を一定条件下で必要経費に算入できる特例があります。青色申告者は届出による完全給与制度があり、給与の必要経費算入を容易にします。それに対して、白色申告者は定額を事業専従者控除として必要経費にみなします。具体的な違いは、青色事業の場合は専従者の給与を必要経費として認められる条件がより柔軟であり、例えば1か月の専従期間でも必要経費算入が認められる場合があります。一方、白色事業の場合は、専従者控除として認められる金額が定められており、6か月以上の専従が必要で、確定申告書への記載が必要です。

事業者免税点制度の概要

Q.事業者免税点制度の概要について教えてください。

A.課税期間における基準期間中の課税売上高が1,000万円以下の場合、原則として消費税の支払い義務が免除されます。しかし、特定期間において課税売上高が1,000万円を超えた場合は、この免除が適用されません。特定期間中の課税売上高の判断は、課税売上高の代わりに給与などの支払総額で行うことも可能です。課税事業者に該当した場合は、「消費税課税事業者届出書(特定期間用)」を税務署に提出する必要があります。

特定期間の定義は以下の通りです:

1. 個人事業者の場合:前年の1月1日から6月30日まで

2. 法人の場合:事業年度の前年度(短期事業年度を除く)の開始日から6ヶ月間。前年度が短期事業年度の場合、その前々年度が特定期間に該当します。

課税事業者に該当しない場合でも、相続、合併、分割、または新設法人の場合は、税の支払い義務が違ってくるため、各状況に応じた再評価が必要です。

参考:法9①、9の2、基通1-4-6