青色事業専従者 と扶養控除等の関係

Q.青色事業専従者である人はなぜ扶養控除や配偶者控除の対象とされないのですか?

A.青色事業専従者給与の取り扱いは、親族に支払う報酬を必要経費に計上する特例です。この特例のため、一般の給与所得者と違い、年齢や過大な給与に関する特別な制限があります。これは、親族間での給与条件の決定に自由度が高く、税制の公正性を守るための措置です。一方で、一般の給与所得者は、年間の所得が一定額以下の場合、扶養控除等を受けることが可能です。しかし、青色事業専従者にはこれが適用されず、理由は専従者給与の計上と扶養控除の適用が同時に行われることにより、その効果が事業主に倍増されることを避けるためです。青色事業専従者給与と扶養控除を重複して適用すると、実質的には控除額を大きくする同じ効果が発生します。一般の給与所得者の場合、必要経費の計上と扶養控除は異なる対象に対して行われるため、このような倍増効果は発生しません。このような背景から、青色事業専従者給与と扶養控除の重複適用を認めない理由がわかります。また、専従者給与に関しては、適正な額で支払われている限り認められ、結果として扶養控除等の減税効果をその給与でカバーできるとされています。ただし、青色事業専従者は、専従者給与を必要経費に計上したうえで、扶養親族や控除対象配偶者として申告することはできないので注意が必要です。

事業に「専ら従事」することの意義 (その2)

Q. 私は、一週間のうち月曜日から水曜日までは実家の両親の介護をしておりますが、木曜日と金曜日が空いているので、夫の金融業を手伝うこととしました。夫は、青色申告の承認を受けていますので、私を青色事業専従者として届け出ようと思いますが、認められますか。

A. 青色事業専従者として認められるためには、事業に「専ら従事」する必要があります。仮にご主人の金融業が月曜日から金曜日までの営業であり、専従者はその全ての期間において業務に従事する必要があります。したがって、木曜日と金曜日のみを従事する場合は、通常の専従者としては認められません。しかし、あなたの業務が木曜日と金曜日のみ従事する業務であれば、その時間内で専ら従事していると認められれば、青色事業専従者として届け出ることが可能です。

固有事業者と受託事業者の納税義務の免除の判定

Q.法人課税信託の受託者は、固有事業者及び受託事業者がそれぞれ申告することになっているそうですが、小規模事業者に該当し納税義務が免除される条件の課税売上高の判定方法について教えてください。

A.固有事業者についての課税売上高の判定は、固有事業者自身の課税期間における売上高と、その固有事業者に関連する法人課税信託の受託事業者の売上高を合算して計算します。この合算売上高は、固有事業者の課税期間と一致する期間内で終了した受託事業者の事業年度ごとの課税売上高を合計し、これを基にします。12ヶ月を超える事業年度月数がある場合は、合計売上額を事業年度月数で割り、12を乗じて調整します。

一方、受託事業者の課税売上高は、その課税期間の初日に該当する固有事業者の課税売上高として計算されます。ただし、課税売上高が1,000万円以下であっても、課税期間の初日に固有事業者が課税資産の譲渡などについて課税事業者選択届出書を提出している場合は、小規模事業者の納税義務免除の対象にはなりません。

参考:法15

輸出免税取引がある場合の基準期間の課税売上高

Q.当社は、輸出取引を頻繁に行っています。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合は、消費税の納税義務が免除されますが、輸出免税分が1億円、国内販売の課税売上高が1,000万円の場合、基準期間の課税売上高をどう判定し、消費税の納税義務は免除されるのでしょうか?

A.輸出免税分を含めた基準期間の課税売上高は合計1億1,000万円となります。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているため、消費税の納税義務があります。基準期間において、国内で行われた課税資産の譲渡等から得た対価の総額が課税売上高として計算されるため、輸出免税分も課税売上高に含まれます。

参考:法2①九、7①、9C②、9の2、28①、基通1-4-2

基準期間における課税売上高の判定単位

Q.私は、個人で食料品の小売業と駐車場業を営んでいます。令和3年分の課税売上高は、食料品小売業が約800万円、駐車場業が約700万円でした。この場合、それぞれの事業に関する基準期間の課税売上高は1,000万円以下ですが、令和5年は免税事業者になると考えて良いですか。

A.基準期間における課税売上高は、事業者単位で判断します。一人の事業者が複数の異なる種類の事業を行っている場合や複数の事業所を持っている場合でも、それぞれの事業や事業所での課税資産の譲渡などによる対価の合計金額(税抜き)によって基準期間の課税売上高を算出します。ご質問のケースでは、食料品小売業と駐車場業の売上高の合計が約1,500万円となり、1,000万円を超えるため、令和5年は消費税の課税事業者となります。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合も、特定期間(個人事業者はその年の前年1月1日から6月30日までの期間)の課税売上高等が1,000万円を超えるかで課税事業者かどうかを判断します。

参考:歴三董ヨ法9①②、9の2、基通1-4-4

基準期間が1年未満の法人の課税売上高

Q.設立後4か月間の基準期間しかない法人の場合、課税売上高が1,000万円を超えるかどうかの判断はどのように行いますか?

A.設立初年度の課税売上高をその期間の月数で割り、その結果に12を乗じて1年分に換算します。この換算した金額が1,000万円を超えるかどうかで、消費税の納税義務の有無を判断します。基準期間内の課税売上高が1,000万円以下の場合、特定期間の課税売上高等が1,000万円を超えるかどうかで納税義務を判定します。

参考:法9、9の2

個人事業者が法人成りした場合の納税義務

Q.個人事業者が年の途中で法人成りした場合、前々年の課税売上高が1,000万円を超えていたとしても、設立した法人に納税義務はありますか?

A.納税義務の有無は事業者ごとに判断されるため、個人事業者だった期間と法人成り後は別々に考えます。そのため、法人成りした個人事業者の前々年の課税売上高が1,000万円を超えていても、法人成り後の新設法人には特定の条件(資本金が1,000万円以上、特定新規設立法人にかかる消費税の免除規定や高額特定資産を取得した際の規定の適用、または課税事業者選択届出書の提出がある場合を除く)以外では、前々事業年度の売上がないため納税義務はありません。しかし、法人成りした年の個人事業者としての期間は、課税売上高が1,000万円を超えているため、その期間についての納税義務は免除されません。

参考:法 2①三、四、5①、12の 2① 、基通 1-4-6

前々年に事業を開始した個人事業者の基準期間の課税売上高

Q.前々年の中途で事業を開始した個人事業者の「基準期間の課税売上高」は、1年に換算する必要がありますか?

A.個人事業者の場合、基準期間はその年の前々年です。この前々年に事業を開始したとしても、前々年内の実際の課税売上高(税抜き)が1,000万円超えるかで課税事業者となるかを判定します。前々年の事業運営期間が1年未満だったとしても、課税売上高を1年分に換算する必要はありません。ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合は、その年の前年1月1日から6月30日までの期間を特定期間とし、その特定期間内の課税売上高による判定を行います。前年に事業を開始した個人事業者の場合、事業開始日から6月30日までが特定期間になります。

参考:法 2①十 四 、 9②一 、 9の 2、 基 通 1-4-9

基準期間が免税事業者であった場合の課税売上高

Q.私は飲食店を経営しており、これまで消費税の申告・納付をしていませんでした。しかし、令和3年分の売上高が1,080万円となりましたが、基準期間である令和元年の課税売上高が1,000万円以下だったため、免税事業者でした。この場合、令和5年分は課税事業者となるのでしょうか?

A.免税事業者か課税事業者かの判断は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であるかによって決まります。基準期間中に免税事業者であった場合、その期間の課税売上高は消費税や地方消費税を加えずに計算されます。質問のケースでは、令和3年が基準期間であり、その時点で免税事業者であったため、課税売上高は1,080万円となり、1,000万円を超えています。そのため、令和5年分では課税事業者に該当します。

参考:法2第十四、9第一、9の2、基通1-4-5

免税事業者の判定における課税売上高の範囲

Q.免税事業者かどうか判定する際に基準期間内の課税売上高に含まれるものには、どのようなものがありますか?

A.免税事業者かどうか判定する際の課税売上高には、以下のようなものが含まれます。

1. みなし譲渡の売上高は課税売上高に含めます。これには、個人事業者が事業用資産を私的に使用した場合や、法人が役員へ資産を贈与した場合のそれら資産の時価が含まれます。

2. 事業用固定資産の売却代金も課税売上高に含みます。

3. 消費税および地方消費税を除く、他の個別消費税の額も課税売上高に含めますが、軽油引取税、ゴルフ場利用税、入湯税は利用者が納税義務者であるため含まれません。

4. 返品や値引き、割戻しによる対価の返還は、消費税および地方消費税を除いて、課税売上高から控除します。

参考:法4⑤、9②、9の2、28①②、基通1-4-2、10-1-11