前年 又は前々年に相続があった場合の納税義務の免除の特例

Q.私は食料品の小売業を営んでおり、令和3年分の課税売上高が1千万円以下です。令和4年2月に父が亡くなり、父が営んでいた雑貨品小売業を相続しました。この場合、令和5年分には免税事業者となることができるでしょうか。

A.前年または前々年に相続によって事業を承継し、その年の基準期間の課税売上高が1千万円以下の場合でも、相続した事業と自身の事業の課税売上高の合計が1千万円を超える場合には、消費税の納税義務から免除されません。従って、令和3年分の課税売上高と相続した雑貨品小売業の売上高の合計が1千万円を超えている場合は、令和5年分の消費税の納税義務が発生します。

参考:豪法9①、9の2、10②、基通1-5-1、1-5-4

他に職業を有する場合

Q.私と妻はそれぞれ、整形外科と美容整形外科の診療所を営む青色申告者です。私の営む整形外科の診療所は午前9:00〜12:30、午後15:00〜18:00の診療時間で、妻が営む美容整形外科の診療所は午後のみです。午前中は私が営む整形外科の診療所で妻にも診療してもらいたいと考えています。妻に支払う給与を青色事業専従者給与として必要経費に算入することはできますか?

A.青色事業専従者給与を必要経費に算入するためには、その人が事業に全ての時間を割いて専念している必要があります。あなたの整形外科の診療時間は午前9:00〜12:30、午後15:00〜18:00ですので、基本的にはほとんどの時間をその事業に費やす必要があります。しかし、妻が午前中のみあなたの整形外科で働くことは、「専ら従事」するとは見なされないため、妻に支払う給与を青色事業専従者給与として必要経費に算入することは認められません。

相続があった場合の納税義務の免除の特例

Q.サラリーマンであり、年間課税売上高が1,000万円以下の免税事業者ですが、令和5年4月に父が亡くなり、2,000万円の課税売上高を持つ食料品小売業を相続しました。この場合でも免税事業者として認められるのでしょうか?

A.相続があった年で、基準期間内の課税売上高が1,000万円以下の相続人が、1,000万円を超える課税売上高を持つ被相続人の事業を継承した場合、その相続があった翌日からその年の12月31日までの期間については、譲渡された資産に対して消費税の納税義務が免除されません。従って、質問のケースでは、あなたが相続した翌日以降、貸家収入も含めた課税資産の譲渡等に対して消費税が課税されることになります。

参考:法10①、基通1-5-1、1-5-4

二つの事業に専従することの可否

Q.長男甲の妻が甲が営むアパート業と甲の母乙が営む貸家業に専ら従事しており、甲から月額6万円、乙から月額4万円の青色専従者給与を受け取っています。甲及び乙の不動産所得を生ずべき事業に同時に専従することは可能でしょうか?

A.配偶者や親族がある事業に専ら従事しているかどうかは、通常、その年を通じて6ヶ月以上その事業に従事しているかどうかによって判断されます。ただし、青色事業専従者の場合、死亡、病気、結婚、その他特別な理由で年中その事業に専念できなかった時には、年間の半分以上その事業に専ら従事していれば要件を満たしたとみなされます。しかし、一人が同時に二人の納税者が営む事業に専念する場合、一方の事業に年間の半分以上従事した場合、もう一方の事業に年間の半分以上専念することはできません。そのため、長男の妻は甲または乙のどちらか一方の事業にのみ専念することができ、両方の事業に青色事業専従者として同時に従事することは認められません。

課税事業者の選択取りやめについて

Q.これまで消費税の課税事業者を選択していましたが、今回これを取りやめたいと思います。その手続きについて教えてください。

A.課税事業者の選択を取りやめたい場合は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を納税地の所轄税務署長に提出します。提出後は、提出があった日の属する課税期間の終了日の翌日から、以前に提出した「消費税課税事業者選択届出書」の効力がなくなります。ただし、この不適用届出書は、選択届出書の効力が発生した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以降にしか提出できません。事業を廃止した場合はこの限りではありません。また、調整対象固定資産の課税仕入れを行い、その仕入れた日の属する課税期間の消費税の確定申告を一般課税で行った場合は、不適用届出書を提出することは、調整対象固定資産の課税仕入れを行った日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければできません。

参考:法9⑤ ~⑦、様式通達第2号様式

共有アパートの事業専従者控除

Q.私と妻が共有している賃貸アパートの事業で、同居している母を事業専従者として管理させています。この場合、私と妻はそれぞれ母を事業専従者として専従者控除を50万円ずつ適用できるでしょうか。

A.専従者控除や専従者給与に関する取扱いは、親族への支払いを例外的に必要経費として認める特例です。ただし、一緒に暮らす親族を事業に専従させる場合が該当します。しかし、この控除を適用できるのは、専らその事業に従事する配偶者や扶養親族に限られ、一家庭に複数の納税者がいる場合、扶養控除を受けるのは一人の納税者に限られます。これは、一家庭内で複数の人が同じ親族を事業専従者として重複して控除を申請することが基本の趣旨に反するためです。従って、お問い合わせのケースでは、夫婦それぞれが母を事業専従者として50万円の専従者控除を適用することはできません。専従者として認められるのは夫婦のどちらか一方です。どちらを専従者とするかは確定申告書の記載によって決まります。

専従者が他の専従者を扶養控除の対象とすることの可否

Q.専従者が他の専従者を扶養控除の対象とすることは可能ですか?

A.配偶者控除や扶養控除の対象となる人物は、青色事業専従者や事業専従者、つまり給与を受け取る仕事をしている人ではない必要があります。ですから、ある専従者が扶養親族の所得基準を満たしていても、その人を別の専従者が扶養控除の対象にすることは認められません。

新たに法人を設立した場合の課税事業者の選択

Q. 新たに設立した株式会社が消費税の課税事業者を選択する場合、「消費税課税事業者選択届出書」はいつまでに提出すれば良いですか?

A. 設立された法人が消費税の課税事業者を選択したい場合、原則として選択届出書を提出した日から次の課税期間にその効力が発生します。しかし、特例として当該課税期間中に提出した場合、適用される特例の条件によっては、提出した課税期間からすぐに効力が発生することもあります。設立された法人が事業活動を開始した日が属する課税期間内に選択届出書を提出すれば、設立初年度から課税事業者として効力が発生します。つまり、令和5年6月11日から令和6年3月31日までの期間内に提出してください。ただし、基準期間がなく、資本金または出資金額が1,000万円以上の法人は、その事業年度における消費税の納税義務からは免除されません。

参考:法9㈣、12の2㈠、令20、基通1-4-13、1-4-13の2、様式通達第1号様式

雑所得における筆耕料の扱い

Q.給与所得の他に原稿料で得た雑所得があり、必要経費の中に家族に支払った筆耕料が含まれていますが、この筆耕料は必要経費として算入できますか?

A.不動産所得、事業所得、山林所得を生じる事業に関与する居住者と生計を一にする家族への支払いは、支払った人がその額を必要経費として計上できないこととされています。同様に、支払いを受けた家族側もその額を自身の所得として計上しません。これは、「事業」と認められる収入においてはさらに詳細な取扱いがなされていないものの、雑所得を生じる「業務」への支払いにおいても、必要経費として認められないと解釈されています。したがって、あなたが娘さんに支払った筆耕料45万円は、必要経費として計上できないため、雑所得は810,000円ではなく、1,260,000円となります。ただし、筆耕料は娘さんの所得には含まれないため、特定の条件を満たす場合、娘さんを扶養家族として扶養控除を受けることができます。

課税事業者となるための届出

Q.基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者が消費税の課税事業者となるためには、どのような手続きが必要ですか。

A.基準期間において課税売上高が1,000万円以下である事業者(個人事業主でその年、または法人でその事業年度に、特定期間の課税売上高や給与等の支払額が1,000万円以下の場合も含む)でも、消費税課税事業者となりたい場合は、納税の管轄する地域の税務署長へ「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。この届出は通常、届出書を提出した日が含まれる課税期間の次の課税期間から効力が発生し、一度効力が発生すると、基準期間(前々年または前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えたとしても、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、その効力は失われません。ただし、消費税課税事業者選択届出書を提出した課税期間が、課税資産の譲渡等に関連する事業を開始した期間である場合には、その期間から届出の効力が始まります(この場合でも、事業を開始した課税期間の次の課税期間から課税事業者を選択することも可能です)。 

参考:法9④⑤、9の 2、 令20、 基通1-4-11、 1-4-14、 様式通達第1号 様式、第2号様式