一括評価による貸倒引当金の対象となる貸金の範囲

Q.青色申告者ですが、今年から一括評価による貸倒引当金を設けたいと思います。使用人に対する貸付金についてもこの貸倒引当金を設けることができるそうですが、家主へ支払った保証金や仕入先へ支払った手付金についてもこの貸倒引当金を設けることができますか。

A.事業を行っている青色申告者は、売掛金や貸し付けた金など、事業で生じた金銭債権について貸倒引当金を設けることができ、これは経費として計上できます。しかし、保証金や手付金など、資産の取得や費用の前払いなどに使われた金額については、貸倒引当金の対象外となります。つまり、家主への保証金や仕入先への手付金は、貸倒引当金の設定対象とはならないということです。また、従業員に対する貸付金に関しても、将来精算されるような前払給料の性質を持つものや概算払いの旅費などは対象外です。

分割があった事業年度の納税義務の免除の特例

Q.当社は会社組織の再編成を目的として会社の分割を計画しており、消費税の納税義務はどのようになるでしょうか。

A.会社の分割に伴う消費税の納税義務については以下の通りです。

1. 分割があった日の属する事業年度及びその翌事業年度について

   – 新設分割した場合、新設分割子法人が、分割によって新たに設立され、基準期間のない事業年度で、分割前の親法人の課税売上高のいずれかが1,000万円を超える場合、または新設法人が資本金1,000万円以上の場合、納税義務は免除されません。

   – 分割後の新設分割親法人や吸収分割により営業を承継した法人、分割法人は、それぞれ基準期間内の課税売上高によって納税義務の有無が判定されます。

2. 分割があった日の属する事業年度の翌々事業年度以降について

   – 新設分割子法人及び新設分割親法人が特定の要件に該当し、それぞれの基準期間内の課税売上高とそれに対応する期間の課税売上高の合計が1,000万円を超える場合、納税義務は免除されません。

   – 吸収分割の場合における分割承継法人及び分割法人も、基準期間内の課税売上高に基づき納税義務の有無が判断されます。

参考:法9の2、12、12の2①、令24、基通1-5-6の2

専従者給与額の変更

Q.青色申告者ですが、年々所得が増加しておりますので、専従者給与も毎年10%程度増額しております。この場合でも専従者給与額の変更届を毎年出さなければ認められませんか。

A.青色申告者が専従者の給与を決める際、特にその金額を変更する場合には税務署に届け出る必要があります。ただし、毎年の定期昇給のようなものは最初の届出の際にその昇給の方法も記述しておけば、その後毎年変更届を出す必要はありません。これは給与や賞与の金額を変更する時に限らず、変更の内容や理由もしっかり記入して提出しなければなりません。ですが、もし規約に基づかない急な給与の上昇がある場合は、その都度変更届を出さなければなりません。

専従者に支払った退職金

Q.個人事業主が事業を廃止して法人化する際に、個人事業時代の従業員に退職金を支払った場合、事業専従者にも同じ退職金を支払うことは必要経費として認められますか?

A.事業専従者に支払う退職金を必要経費として認めることはできません。これは、所得税法第57条第1項により、専従者に支払う給料が給与所得として扱われることにありますが、退職金は必要経費に算入される専従者の給与の一部とは見做されないからです。専従者の給与が一般の従業員と異なって扱われることも、この判断の根拠となっています。

前事業年度または前々事業年度に合併があった場合の納税義務の特例

Q.前事業年度または前々事業年度に他の法人を吸収合併した場合、消費税の納税義務の判定に特別な規定はありますか?

A.前事業年度の基準期間の初日の翌日から事業年度開始日の前日までに吸収合併があった場合、合併法人及び被合併法人の基準期間の課税売上高を合算した金額が1,000万円を超えると、その事業年度の消費税の納税義務が免除されないことになります。計算方法には、合併法人と被合併法人の課税売上高を特定の方式で計算し加算するものです。したがって、合併後の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで消費税の納税義務の有無を判定します。

参考:法9の2、11②、令22②、基通1-5-6、1-5-7

青色事業専従者のアパート賃借料

Q.長女の夫が海外勤務のため、長女と孫が同居することになり、家が手狭になったため、青色事業専従者である長男を近くのアパートに住まわせることにしました。このアパートの家賃は必要経費になりますか?なお、長男は独身で、以前と同様に食事や入浴は私の家でするとのことです。

A.所得税法では、必要経費は収入金額を得るために直接必要だった費用や販売費、一般管理費など、所得を生み出すために発生した費用と定められています。しかし、特定の青色事業専従者のアパート賃借に関しては、賃借の理由が家族が増え家が手狭になったためという家庭生活上の必要からであり、長男がアパートに住んだ後も家族としての生活を共にしており、生計を一にしているため、この場合のアパートの費用は家族の生活費としての性質を持ち、必要経費とは認められません。さらに、家族関係を理由にアパートを賃借している場合でも、入居している親族が事業に従事していたとしても、そのアパートの費用が必要経費とはならないと解されます。

専従者給与相当額の借入れ

Q.青色専従者給与の必要経費算入は、その給与を実際に事業専従者に支払うことが条件となりますか。また、帳簿上は支払ったことにして、これを直ちに事業資金として借り入れた場合、あるいは年末に一括してその年中の支給額を借り入れ、実質的に給与が未払となっているような場合はどのように取り扱われますか。

A.青色専従者給与を必要経費として認めるためには、専従者への実際の給与支払いが必須です。もし支払われた給与がすぐに事業資金として借り入れられる場合、その借り入れが実際に貸し借りと認められるかが問題となります。親族間の借り入れは、返済期限や利率が設定されていないことが多く、実際には贈与と見なされることが多いです。そのため、借り入れが贈与と同じ状況である場合、給与支払いがあったとは見なされず、以下のように扱います。(1)専従者給与の未払額を必要経費に算入するかどうかは、未払いになった経緯に妥当な理由があり、かつ、短期間内に実際の支払いがある場合のみ認められます。その他の場合は支払われなかったとみなされます。(2)毎月適切に支払われていた専従者給与が年末に一括して借り入れられた場合、借り入れに妥当な理由があり、かつ、返済可能な状況下で実際に返済が行われている場合に限り認められます。そうでない場合は、支払いがなかったものとして扱われます。質問の状況にある専従者給与相当額の借入れは、実質的に未払給与と同じです。借り入れに妥当な理由があり、返済可能な状況で返済が行われているなら認められますが、そうでなければ必要経費としての算入は認められません。

合併があった事業年度の納税義務の免除の特例

Q.当社が吸収合併したA社の年商が約5,000万円である場合、合併後も消費税の免税事業者として扱って良いのでしょうか?

A.事業年度の途中で他法人を合併した場合、その年度の基準期間の課税売上高が一定額以下でも、合併された法人の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合、合併後のその年度の間は消費税の納税義務が免除されません。A社の年商が5,000万円ならば、基準期間の課税売上高も同程度であると仮定すると1,000万円を超えるため、合併後のその事業年度においては課税事業者となります。

参考:法9、1l①、基通1-5-6

事業所得が赤字の場合の専従者給与

Q.青色申告者です。今年は売掛金の貸倒損失が生じたことで事業所得が赤字となりましたが、青色事業専従者に支払った専従者給与は必要経費に計上できますか。

A.青色申告者の場合、事業所得が赤字であっても、専従者給与は、それが適切な金額であると認められれば必要経費に計上できます。適切な金額であるかどうかの判断は、専従者の労務期間、労務の性質や提供程度、他の従業員の給与状況、事業の種類や規模、収益状況など、様々な状況を総合的に考慮して行われます。ただし、事業が貸倒損失や災害などの偶発的な損失により赤字になった場合は、専従者給与を適切に勤務の状況や支給状況と照らし合わせて評価し、必要経費として認められる可能性があります。しかし、偶発的でない原因により毎年のように損失が発生している場合は、収益の状況を考えると不合理と見なされ、給与の金額や支給状況を再考する必要があるかもしれません。

年の中途で結婚した娘の事業専従者控除

Q.長女が11月に結婚するまでは、食料品店の販売を手伝ってくれていたので事業専従者控除の適用を受けたいのですが、12月末日現在では生計は別であり、長女は夫の配偶者控除の適用を受けています。この場合、私の事業所得の計算上、事業専従者控除(50万円)の必要経費算入は認められますか。また、適用ができるとすれば、控除額を10月までの月数により按分計算する必要はありませんか。

A.白色申告者の場合、事業専従者控除を受けるためには、従事者が生計を一にする親族であり、その年の6ヶ月以上その仕事に専ら従事していたことが必要です。結婚して生計が別になった後も、結婚前は生計が一つで長期にわたり事業を手伝っていた場合は、事業専従者控除が適用されます。また、娘が別の家庭で配偶者控除を受けていたとしても、事業専従者控除の適用には影響しません。事業専従者控除の額は定額で50万円ですので、月割りの必要はありませんが、控除前の事業所得が少ない場合にはその所得額が上限になるので注意が必要です。さらに、事業専従者控除として認められた額は、事業専従者の給与所得として扱われます。