特定新規設立法人の納税義務の免除の特例に関するケース

Q.「他の者により新規設立法人が支配される場合」とは具体的にどういう状況ですか?

A.「他の者により新規設立法人が支配される場合」とは、特定新規設立法人が納税義務の免除を受けるために満たさなければならない条件の一つであり、以下のいずれかに該当する状況を指します:

1. 他の個人または団体が、新規設立法人の発行済み株式または出資額の50%以上を所有する場合。

2. 他の個人(その親族等を含む)、該当個人が完全に支配する他の法人、または該当個人とその法人が共に完全に支配する他の法人が、新規設立法人の株式または出資額の50%以上を有している場合。

3. 上記の他の個人や法人が、新規設立法人の重要な決定を左右する議決権(例えば、事業の譲渡、解散、合併、役員の選任・解任、役員報酬や剰余金の配当など)の50%以上を有している場合。

4. 他の個人および上記のケースに該当する者が、新規設立法人の株主または一定の会社形態における社員の過半数を占める場合。

親族等には、その者の親族、事実上婚姻関係にある者、雇用されている者、及びその他金銭的援助を受けて生計を立てている者やその親族が含まれます。

「完全に支配している」とは、他の法人の全ての株式または議決権、又は全ての株主等を占める場合を指します。

参考:法12の 3①、令25の 2、 基通1-5-15の 2

売買とされるリース取引

Q.病院を経営している私が、診療用機器をリース契約で賃借しようと思っていますが、このような賃貸借契約を結んだ場合にも売買として取り扱われることがあると友人から聞きました。具体的にどのような場合でしょうか。

A.リース取引には、実際には賃貸借契約であっても、リース期間経過後にリースされた資産が賃借人に譲渡されるような取引や、資産が廃棄されるまで賃借人が使用することになっているような取引があります。これらは、実質的に資産を分割払いで購入するか、延払い条件付きで購入すると見なされるような取引です。リース取引が行われる際、リース資産が賃貸人から賃借人へ引き渡される時点で、売買があったものとして扱われます。このようなリース取引は、契約が途中で解除できない、または賃借人が賃貸資産から得られる経済的利益を実質的に享受でき、それに伴って生じる費用を賃借人が負担することが条件となっています。従って、あなたが考えている医療用機器のリース契約がこれに該当する場合、その医療用機器の引き渡しを受けた時に売買が行われたものとして取り扱われます。ただし、居住者が資産の購入を条件にリース取引を行い、その取引全体が実質的に金銭貸借であると認められる場合は、売買はなかったものとして扱われます。

就業規則を定めていない場合の退職給与引当金

Q.私の店では従業員が10人以上になることがありませんので就業規則は定めておりませんが、退職金は勤務年数等に応じて支払うことにしており、青色申告者です。この状況で、退職給与引当金を設けることは可能ですか?

A.青色申告者の場合、従業員に退職給与を支払う予定であれば、退職給与引当金を設定し、その額を経費として計上することが可能ですが、一定の条件を満たす必要があります。具体的には、退職給与の支払基準や規程をあらかじめ定め、労働協約、就業規則、または税務署長に届出た退職給与規程のいずれかに基づくことが求められます。従業員が10人未満という場合、就業規則の提出は必須ではありませんが、退職給与の規程を税務署に届出することで退職給与引当金の設定が可能となります。ただし、退職給与の支給規程を自由に変更できる状態では認められません。また、退職給与規程を変更する場合は、変更届が必要です。なお、青色事業専従者に対しては、退職給与引当金の設定ができません。

債務者の資力喪失後の債務保証の場合

Q.長男が経営するAI会社が経営不振で何年も赤字を出しており、資金がなくなった状態になっています。再建を試みるための銀行借入の際、私が保証人となりましたが、会社は結局倒産しました。このため、私が所有する土地を売って借入金の返済に充てました。この土地の売却による所得について、保証債務履行のための資産譲渡の特例税制を利用できますか?

A.保証人が債務の履行のため資産を譲渡した場合、通常は特例税制の対象となる可能性があります。しかし、主債務者が既に資金力を失っている状態で保証が行われた場合、これが実質的には債務の引き受けや贈与と見なされる時には、その特例税制は利用できません。

特定新規設立法人の納税義務の免除の特例

Q.当社(A社)は、B社の100%子会社として設立された株式会社です。資本金は500万円で、3月末決算です。設立1期目と2期目の消費税の納税義務は免除されるか。なお、B社の課税売上高は常に5億円を超えている。

A.資本金又は出資の金額が1,000万円未満の新規設立法人で、以下の2つの要件に該当する特定新規設立法人については、基準期間がない事業年度の課税資産の譲渡等における納税義務は免除されません。1) 事業年度開始の日に他の者によって50%超の株式等が直接または間接に保有されている場合。2) 特定要件に該当する他の者や一定の関係にある法人の課税売上高が、基準期間に相当する期間内で5億円を超えている場合。A社の場合、設立時にB社に50%超の株式が保有されており、B社の課税売上高が5億円を超えているため、特定新規設立法人に該当し、設立1期目の納税義務は免除されません。A社の設立2期目の納税義務については、課税売上高又は給与の支払い額が1,000万円を超えるか、B社の課税売上高が5億円を超えるかで判断されます。

参考:法12の 2②③、12の 3、 基通1-5-15の 2

手形裏書人が割り引いた手形債務を支払うための資産の譲渡

Q.私は、友人が振り出した約束手形を裏書譲渡し、その譲渡代金を友人に貸し付けていましたが、友人が事業に行き詰まり、その手形が不渡りとなってしまいました。私はやむを得ず土地を譲渡し、その代金で手形を買い戻しました。友人は、所在不明の状態にあり手形代金の回収をすることはできません。このような場合、手形の裏書が友人の資金調達のための保証として、譲渡した土地の譲渡所得について、保証債務の履行の場合の特例の適用が受けられるでしょうか。

A.あなたは友人への支援の一環として、その友人が振り出した約束手形を裏書し、譲渡代金を友人に貸し付けました。しかし、それは友人の借金に対する直接の保証とは認められません。その結果、手形の支払いが滞り、代わりに土地を売って手形を買い戻す事態になっても、土地の譲渡から生じた所得について、保証債務の履行による税の特例を適用することはできません。

保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例の対象となる資産

Q.友人Aの債務保証をしていたところ、Aが破産し、債権者から返済請求があったとき、手持ちがなく、土地や建物も使っているため、所有していた株式を売った例で、この株式売却による譲渡所得も「保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例」の対象になりますか?

A.はい、その株式売却による譲渡所得も特例の対象になります。株式は、譲渡所得を生じる資産の一つであり、他の条件をクリアすれば、保証債務を履行するために資産を売った際の特例を適用できます。

新設法人と簡易課税制度の適用

Q.令和5年6月25日に設立した株式会社(資本金1,000万円、4月末決算)が、新設法人として消費税の納税義務がありますが、初期2期に簡易課税制度を適用できるか?

A.新設法人で資本金1,000万円以上の場合、消費税の納税義務が免除されません。簡易課税制度は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合に適用できます。お社の場合、基準期間内の売上高がないので、初期2期に簡易課税制度の適用が可能です。この制度を適用するためには、課税期間の開始前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要がありますが、新規で事業を開始した場合はその課税期間の最終日までに提出すれば、当該課税期間から簡易課税制度を適用できます。従って、令和6年4月30日までに提出すれば、1期目から簡易課税制度を利用できます。

参考:法9①、法12の2①、法37、令56①、基通1-5-19、様式通達第24号様式

預金等で保証債務の履行を行った後に資産を譲渡した場合

Q.私は、友人Aの事業資金の借入れについて債務保証をしていました。しかし、Aが事業失敗で倒産し、借入金の返済ができなくなりました。そのため、債権者から返済を請求され、急遽手持ちの国債を売却して保証債務を履行しました。その後、土地が売れ、その代金を国債購入に充てましたが、この土地の譲渡は保証債務を履行するために資産を譲渡したことになりますか?

A.そのケースでは、保証債務を履行するための資産譲渡とは言えません。所得税法には「保証債務を履行するために資産を譲渡した場合」と規定されており、原則として、資産を売ってその代金で借金返済をするような状況を指します。つまり、資産を譲渡する時点で、保証債務の返済責任が現実的にある必要があります。您の事例では、土地を売った時点で既に手持ちの国債を使って友人Aの債務を返済済みで、保証債務の履行義務はもうありません。したがって、その後の土地売却は保証債務を履行するためとは認められないのです。

新設法人に該当する場合の届出

Q.当社は、令和5年6月25日に設立された4月末決算法人で、資本金が1,000万円です。消費税法第12条の2第1項に定める新設法人に該当し、1期目及び2期目は課税事業者になります。この場合、何か届出の必要はあるのでしょうか。また、3期目が引き続き課税事業者になる場合及び免税事業者になる場合、それぞれどのような届出が必要ですか?

A.新設法人に該当する場合、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出する必要がありますが、法人設立時に「法人税法第148条」に基づき提出する「法人設立届出書」に消費税の新設法人に該当する旨を記載している場合は、別途届出書の提出は不要です。3期目で課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者に該当するため、「消費税課税事業者届出書」を提出します。免税事業者となる場合は追加の届出は不要です。ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも特定期間の売上高が1,000万円を超える場合は課税事業者になります。

届出者の名称及び納税地

届出者の行う事業の内容

設立の年月日

事業年度の開始及び終了の日

新設法人に該当する事業年度の開始の年月日

その事業年度の開始日における資本金の額または出資の金額

その他参考となるべき事項

参考:法9① 、9の 2、 57① 一、②、規26⑤、基通1-5-18、 1-5-20、 様 式通達第 3号様式、第10-(2)号様式