相当の地代を改訂する届出をしながら地代の改訂をしなかった場合

Q. 子会社に土地を貸して、権利金代わりに相当の地代を受け取ることとし、3年ごとに地代改訂することを定め、「相当の地代の改訂に関する届出書」を提出しました。3年後、地代改訂の時期に土地の価値が上がったにも関わらず、子会社の業績悪化を理由に地代の増額を見送った場合、これは子会社への贈与とみなされるのでしょうか?また、地代を下げた場合はどうなりますか?

A. 最初に、地代の改訂を行わなかった場合、ただ単に土地の価値が上昇したことにより借地権の価値が増加したと見ることができますが、これによって借地権の受贈益や評価益が認定されることはありません。「相当の地代の改訂に関する届出書」を提出しているか否かは関係ありませんので、贈与課税の対象とはなりません。しかし、地代増額を見送ったことによる契約の無効化や、その他の結果については異なる取扱いがあります。地代を一時的に引き下げた場合、差額地代が贈与として認定され、親会社は子会社に対する贈与とみなされますが、双方に税の支払いは生じません。それに対して、地代を引き下げた場合、特に合理的な理由なく地代を下げた場合は、その差額を贈与とみなすことがあります。これは、地代引き下げを権利金の一部として扱うことによる贈与課税の回避を防ぐためです。ただし、土地の価値が下がったことが地代引き下げの合理的な理由となり得ます。

借地権の設定における対価の収受がない場合の取扱い

Q.法人が地主として借地権の設定により土地を使用させる際、権利金も地代も収受しない場合、借地人に対する経済的な利益の供与は権利金相当額と認定されるのですか?それとも、相当の地代の額と実際に収受している地代の額の差額と認定されるのですか?

A.法人が借地権を設定して土地を使用させる場合、通常は権利金または相当の地代を収受することが期待されます。権利金や相当の地代を収受しない場合、これは通常の取引条件に基づいた扱いとは異なります。税務上は、このような取引では権利金相当額が権利金として認定され、計算式に基づき算出された金額から、実際に収受している権利金や特別な経済的な利益があれば、その額を差し引いた金額が借地人への対価として見なされます。借地契約を通じて借地人が土地を無償で返還するという条件が含まれ、かつ、関連する届出が税務署に提出された場合に限り、権利金の認定課税は適用されず、相当の地代と収受している地代の差額が経済的利益として借地人に提供されたものとして扱われることになります。この場合、地代の見直しが定期的に求められ、借地人への贈与として認定される差額地代が更新されます。

相当の地代 と一般地代の差額の性格

Q.相当の地代と一般地代の差額の性格および相当の地代の改訂との関係について教えてください。

A.相当の地代と一般地代(通常権利金が授受された場合の地代)の差額は、「通常の権利金と実際に授受した権利金の差額に関する利息」またはそれに近いものです。つまり、この差額は、通常支払われるべき権利金が支払われなかった場合の利息と考えることができます。この差額を「通常の権利金相当額の分割払い」とする場合、それは地代としての費用ではなく、借地権としての資産と見なされます。しかし、税法にそうする規定はないため、この解釈は適用されません。

相当の地代の改訂については、土地の価額が上昇した場合、法定による改訂があり、その増加分に応じて地代が増額されます。例えば、土地の価額が2倍になった場合、地代も2倍になりますが、この増加は「一般地代」にのみ適用され、「通常の権利金と実際に授受した権利金の差額」には影響しません。そのため、土地の価額が上昇しても、その差額に関する利息は変わらないことになります。

一般的に、借地権が設定されると、借地借家法によって借地人の権利が強化され、土地の価額上昇に伴う地代の改訂が難しくなります。これにより、土地の価額の上昇によって地代率(土地の価格に対する地代の割合)が低下する可能性があります。

路線価の引下げにより相当の地代の額を減額 した場合

Q.子会社に土地の貸付けをした後、路線価の引下げによって、当該土地の財産評価基本通達による評価額が1,500万円になった場合、この評価額によって算定した年額90万円の相当の地代を適用することは問題ないですか?また、地代を減額しなかった場合、何らかの問題が生じますか?

A.地価の下落による路線価の引き下げを受けて、地代の適正な額を再評価することは通常発生します。土地を他人に使用させ、その後で地代を減額した場合、一般的には、その減額に正当な理由があるとみなせる場合を除き、減額時の土地の価値に基づいて計算された権利金の額相当を地主が借地人に贈与したものとみなされます。しかし、この処理は主に、法人が地主である場合に借地権の無償または低価格での譲渡を通じて課税を避ける行為を防止するためです。本件のような地価の下落に基づく路線価の引下げによる地代の減額は、適正な理由に基づくものとみなされるため、1,500万円の評価額に基づいて算定された年90万円までの地代の減額は問題ありません。評価額が下落しても、過去3年間の平均評価額が1,500万円を上回る場合が考えられますが、相当の地代計算においてはその年の評価額または過去3年間の平均評価額のいずれかを基にするため、問題ありません。一方で、土地価値の下落にも関わらず地代を減額しなかった場合には、相当の地代が高額であり続けるため、直接的な借地権設定に関する問題は生じませんが、高価な部分が親会社への贈与と見なされる可能性があります。路線価の引下げがあった場合でも、適正な地代の額の見直しは約3年ごとに行うべきとされていますので、その期限まで地代を減額しなくとも問題はありませんが、地代率を約6%に保つため、路線価の引下げが続く場合は地代の減額が適切です。

立退料の計算と当事者への課税

Q.子会社に貸している更地価額2,500万円(財産評価基本通達による評価額2,000万円)、借地権割合60%の土地に建物を建てさせることにし、権利金を受け取らずに年120万円の地代を受け取ることとしました。土地の価値が上昇しても地代を改訂しない場合、子会社が立ち退く際の更地価額が4,000万円(財産評価基本通達による評価額3,200万円)、または6,250万円(財産評価基本通達による評価額5,000万円)に上昇していたときの立退料はいくらになりますか?これを行わない場合、親会社および子会社にはどのような課税が適用されますか?

A.地代の見直しをしない場合、立退きの際に子会社が受け取るべき立退料の計算方法は、土地の更地価額の上昇を考慮に入れたものです。具体的には、更地価額が4,000万円(評価額3,200万円)に上がった場合、立退料は1,500万円になります。これは、年間地代120万円を基にして計算されます。また、更地価額が6,250万円(評価額5,000万円)に上がった場合、立退料は3,750万円になります。これらの立退料は、土地の価額の上昇によって、実際の地代が相当の地代に比べて低くなっていることを示しています。

また、立退料の授受をしない場合、借地人である子会社は原則として通常受け取るべき立退料の相当額を地主である親会社に贈与したものとして、寄附金の認定が行われます。親会社には立退料の支払免除益が認定され、税務上の取り扱いが行われますが、土地が戻ってきただけで親会社は帳簿価額を増額させることはできません。結果として、子会社に対する寄附金の認定課税だけが行われます。これは、子会社と親会社の間に完全支配関係がある場合、特定の条件下で全額が損金に算入されない場合があります。

土地の価額の上昇に応じての相当の地代の改訂

Q.土地の価額が上昇した場合、相当の地代を改訂し、年率約6%の地代率が保たれるようにする必要がありますか。また、地代を改訂するかどうかが、将来の子会社との関係、例えば子会社が立ち退く時に支払う立退料の額にどのような影響を及ぼしますか。

A.土地の借地権を設定した後、土地の価額が上昇しても地代を改訂しない場合、地代率(土地の価額に対する地代の割合)が低くなり、借地人には借地権の価値が上昇したと見なされます。ただし、借地人は土地の価額の上昇に伴う借地権の価値の増加を財務評価に反映する必要はありません。将来、借地権を譲渡する際や地主に借地を返還する際には、借地権の価値に応じた対価を受け取るべきですが、これを受け取らない場合は相手方に対して贈与したとみなされます。立退料の授受がない場合、借地人は地主に立退料相当額を贈与したと認識されますが、地主側には受贈益としての認定はありません。土地の価額が上昇した場合、地代を改訂し、年率約6%の「土地の更地価額」に相当する地代率を維持する必要があります。立退時に借地人が受け取る立退料の額は、地代の改訂方法によって異なり、おおむね3年以下の期間ごとに地代を改訂する場合、立退料はゼロまたは特別の経済的利益に相当する金額となります。それ以外の方法では、立退きの時点での算式に基づいて計算されます。

借地権に関する取扱い

Q.当社が所有する更地を、子会社の工場建設用地として賃貸しようと考えています。権利金の授受をしなくても相当の地代を支払えば税務上は問題がないそうですが、どうしてですか。

A.通常、土地を貸し出す際には権利金という一時金を受け取るのが慣習ですが、権利金を受け取らないか低額で設定した場合、税務上では土地の使用権が無償または低価格で提供されたとみなされます。しかし、法律は土地を他人に使用させる行為について、権利金を受け取らなくても、その土地の価値に見合った相当の地代を受け取る場合は、この取引を正常なものとして扱います。つまり、権利金に代わって相当の地代を受け取る場合、法人からの無償提供の認定はされず、税務上も問題ないとされています。相当の地代の金額は、土地の更地価額に基づき、おおむね年6%程度とされており、この価額は土地の通常取引価額や公示価格から合理的に算出されます。また、契約では土地の価値の上昇に沿って地代を改訂する方法を設け、税務署に届け出る必要があります。これにより、将来的に地代が現実的な価値を反映するようになっています。

別途積立金を取り崩して準備金を積み立てることができるか

Q.準備金方式を適用して特別償却限度額相当額の特別償却準備金を繰越利益剰余金からの振替えで積み立てたいのですが、当期純利益が少なく、繰越利益剰余金だけでは特別償却準備金の積立額に足りません。このため、特別償却準備金積立額とほぼ同額の別途積立金を取り崩そうと思いますが、過年度の利益留保である別途積立金を当事業年度の特別償却準備金へ振り替えることになります。税務上差し支えありませんか。

A.税法では、租税特別措置法に基づく準備金を剰余金の処分で積み立てる際に、必ずしも当期純利益の範囲内である必要はないため、過年度の利益留保である別途積立金を取り崩して特別償却準備金に振り替えても問題ありません。また、特別償却準備金は、取り崩した別途積立金を使って当事業年度に積み立てない場合でも、不足分を翌事業年度に繰り越して積み立てることが可能です。しかし、この場合、当事業年度では積立不足のため、節税効果は得られません。

繰越利益剰余金からの準備金取り崩し時の申告調整方法

Q.前事業年度から振替えて作った準備金を税法の規定に従って取り崩した場合、その計算書類の記載方法と申告調整方法はどうなりますか?また、税効果会計を適用している場合の会計処理と申告調整方法についても教えてください。

A.前事業年度に繰越利益剰余金から振替えて設定され、損金処理された特別償却準備金140万円のうち、次の事業年度に税法に基づいて20万円が益金に算入される場合、会計上は以下の仕訳を行い、株主資本等変動計算書に記載します。「特別償却準備金 20万円/繰越利益剰余金 20万円」と記入します。申告書では、特別償却準備金の取り崩しに関して、まず別表五(一)のI欄に140万円プラスとして記載し、取り崩し額の20万円を加えることで構成されています。取り崩し額が損益計算書上では利益には含まれていないため、別表四において20万円を「特別償却準備金取崩額」として加算し、これを基に別表五(一)のI区分欄に特別償却準備金の認容額として20万円マイナスを記載します。

税効果会計を適用している場合、特別償却準備金から繰越利益剰余金への振替え額は、税効果相当額を差し引いた額(この事例では20万円 – 6万円 = 14万円)とし、税効果相当額の6万円は、繰延税金負債と法人税等調整額として処理します。「繰延税金負債 6万円/法人税等調整額 6万円」とします。申告書での扱いでは、税効果相当額6万円を別表四で法人税等調整額から減算し、別表五(一)のIに「繰延税金負債」として6万円プラスで記載します。特別償却準備金の記載については、税効果会計の適用があるかどうかに関わらず、取崩額を20万円とします。

繰越利益剰余金からの振替で準備金を積み立てたときの申告調整方法

Q.繰越利益剰余金からの振替えで準備金を積み立てたときは、どのように申告調整して損金算入するのですか。税効果会計を適用しているときの会計処理及び申告調整方法についても、あわせて説明してください。

A.特別償却準備金を繰越利益剰余金から140万円積み立てた場合、仕訳は「繰越利益剰余金 140万円/特別償却準備金 140万円」となり、納税申告書の別表五の欄にこれを記載します。この積立は直接当期純利益には影響しませんが、積立額を損金として扱うため、別表四で該当額を減算し、別表五で特別償却準備金認容額として記載します。税効果会計を適用時、特別償却準備金は税効果相当額(例えば税率30%で42万円)を差し引いた金額(98万円)とし、この42万円の税効果相当額については、別表四で「法人税等調整額」として加算し、別表五で繰延税金負債として記入します。このとき、特別償却準備金としてプラスで記入する金額は98万円ですが、特別償却準備金認容額は税効果会計の適用に関わらず140万円となります。