仮受消費税等及び仮払消費税等の精算 (そ の 2)

Q.機械部品加工業者で、税抜経理方式を採用しています。事業用固定資産の譲渡に係る仮受消費税等がある場合、年末で仮受消費税等から仮払消費税等を控除した残額が実際に納付すべき消費税等の額を上回った場合の税務処理はどうなりますか?

A.税抜経理方式を用いている場合、業務用固定資産の譲渡による収入では消費税等は損益計算に影響しません。譲渡した固定資産に関連する消費税等は仮受消費税等に含まれ、そこから仮払消費税等を控除した残額と実際に納付する消費税等の差額は事業所得の計算において収入または必要経費として扱われます。ご質問のケースでは、仮受消費税等から仮払消費税等を控除した残額が実際に納付すべき消費税等の額を下回っているため、その差額は消費税の課税期間を含む年の事業所得における必要経費として計上されます。

所有権移転外ファイナンス・リース取引における転リース取引の取扱い

Q.所有権移転外ファイナンス・リース取引により賃借した資産を他の事業者に賃貸する転リース取引の場合、会計処理と消費税法の取扱いについて教えてください。

A.転リース会社は、賃借人として元受会社からリース資産を受け取る取引と、賃貸人としてエンドユーザーにリース資産を譲渡する取引として二つの取引を処理します。会計処理では、賃貸人として受け取るリース料総額と賃借人として支払うリース料総額の差額を手数料収入として計上しますが、消費税法上は、転リース会社はリース資産の引渡し時に賃貸人として受け取るリース料総額を資産の譲渡対価に、賃借人として支払うリース料総額を課税仕入れに係る支払対価にそれぞれ加算します。法人税法上適切に延払い基準の方法による経理処理が認められる場合、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例が適用できます。

参考:法2①八、十二、16、 28、 30

仮受消費税等及び仮払消費税等の精算 (その1)

Q.税抜経理方式で経理処理している場合、年末における仮受消費税等と仮払消費税等の差額が翌年に実際に納付すべき消費税等の額に一致しない場合、税の処理はどうなりますか?

A.税抜経理方式を使用している場合、通常は仮受消費税と仮払消費税の差額がその年の納税額と一致すると考えられます。これにより、納税額は事業の損益計算に影響しません。しかし、例外的に差額が一致しない状況が発生することがあります。一つの例として、消費税の課税売上の割合が95%未満であるか、課税売上高が5億円を超える場合、仮払消費税が控除できない消費税として残ることがあります。また、簡易課税制度の適用で、仮受消費税と仮払消費税の差額が実際に納付すべき消費税額と異なる場合もあります。控除対象外の消費税額は、発生した年の経費として扱うか、5年間にわたり経費に算入されることになります。簡易課税制度の場合、特定課税仕入れの消費税を含む仮受消費税から同じく特定課税仕入れの消費税を含む仮払消費税を差し引いた額と、実際に納付または還付されるべき消費税額との差額は、その課税期間の総収入または必要経費に計上されます。ここで、「特定課税仕入れの消費税等の経理金額」とは、特定課税仕入れに関わる取引で計上した消費税額です。「特定課税仕入れ」とは、国外事業者から提供される電気通信利用役務や特定役務の提供を指します。

消費税等の経理処理 の選択

Q.物品販売業を営む課税事業者として、税込経理方式を採用している状況で、業務用車両を売却する際、その売却に係る譲渡所得の計算を税抜経理方式で行うことは可能でしょうか。

A.消費税などの経理処理では、各業務に応じて、不動産所得、事業所得、山林所得や雑所得を生じる取引ごとに税込経理方式か税抜経理方式を選択できます。しかし、一度選んだ方式は、その業務に関する全ての取引に適用される必要があります。業務用固定資産の譲渡そうにより得た所得は、譲渡所得として分類されるため、その取引に消費税などがかかる場合、業務に適用している経理処理方式に従う必要があります。従って、物品販売業で使用していた車両の売却に関する経理処理は、事業に適用している税込経理方式に従うこととなります。これにより、譲渡所得の金額を計算する上で、売却価格を税込みで算入することになります。

合理的な再生計画 に基づ く私財提供非課税措置 の特例

債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の課税の特例

Q.債務処理計画に基づき法人に対して資産を贈与した場合の課税の特例があると聞きましたが、その概要を教えてください。

A.債務処理計画に基づいて、中小企業者である再生企業の保証人である経営者が、平成25年4月1日から令和7年3月31日までの期間に中小企業者へ一定の事業用資産を贈与する場合、特定の条件を満たすと課税が特例としてみなされます。この特例の条件には以下が含まれます:

1. 経営者が債務処理計画に従って、保証債務の一部を履行していること。

2. 贈与と保証債務の一部の履行後も、経営者が債務処理計画に従って保証債務を持ち続けていること。

3. 贈与を受けた内国法人が、受け取った資産を事業で使用することが債務処理計画で定められていること。

4. 平成31年4月1日以降に行われる贈与に関しては、以下のいずれかを満たすこと:

   a. 内国法人が金融機関から受けた事業資金の条件変更により債務の弁済負担が軽減されていること。

   b. 債務処理計画が平成28年4月1日以降に策定され、かつ特定の支援組織の支援対象となっていないこと、などが含まれます。

上記条件を満たす場合、贈与による課税が特別な扱いを受けることができます。これは中小企業者の再生や支援を目的とした制度であり、経営者が再生企業への支援をしやすくするためのものです。

リース会計基準に基づいた会計処理と資産の譲渡時期の特例

Q.賃貸人がリース会計基準に基づいて会計処理を行う場合、資産の譲渡等の時期の特例の適用が可能ですか?

A.賃貸人がリース会計基準に従って会計処理を行う場合、法人税法の取り扱いで、延払基準の方法による経理としてリース譲渡に関連する資産の譲渡等の時期の特例を受けることができます。これは、この特例が適用される場合、消費税法上でもリース譲渡に関連する資産の譲渡時期の特例を適用できることを意味します。

参考:法16

リース取引における残存リース料の取扱い

Q.我々の会社では、所有権移転外のファイナンスリース取引に賃貸借処理を適用し、分割して仕入税額控除をしています。次のような事由でリース契約を解約した場合、残存リース料はどう処理すれば良いですか? 1) 賃借人の倒産やリース料の支払遅延などの契約違反時、2) リース物件の滅失や修復不能な毀損が起こった時、3) リース物件の陳腐化による借換えなどで賃貸人と合意により解約した時。

A.リース契約においては、一括して仕入税額控除を行っている場合、上記1から3の事由で支払われる残存リース料は、課税対象外となります。賃貸借処理を行い、分割して仕入税額控除を実施している場合、これらの残存リース料は、どのケースでも課税仕入れとなります。理由は、リース取引が資産の譲渡(売買)に該当することが変わらないからです。残存リース料は仕入税額控除の対象となり、その時期は解約した日の属する課税期間において仕入税額控除として扱います。

参考:問2-59、8-7

賃借人におけるファイナンス・リース取引の消費税法上の取扱い

Q.所有権移転外のファイナンス・リース取引における賃借人の消費税法上の取扱いについて教えてください。賃借人が通常の賃貸借と同様の会計処理を行っている場合、リース料は支払うべき日が属する課税期間の課税仕入れとして扱えるのでしょうか?

A.消費税法上、リース取引においては、資産の賃貸人から賃借人への引渡し時にその資産の売買があったとみなされます。これにより、原則として、資産を引渡しを受けた日の課税期間に消費税が一括して計算されます(一括控除)。しかし、賃借人が賃貸借処理を行っている場合は、リース料に対して支払うべき日が属する課税期間ごとに課税仕入れとして処理することが許されています(分割控除)。仕入税額控除の時期を2年目以降に変更することは認められません。また、簡易課税から原則課税へ移行した場合や、免税事業者から課税事業者へと変わった場合は、リース期間の2年目以降に支払うリース料に対して仕入税額控除を行うことができます。

参考:法30①、基通5-1-9(1)、11-3-2(注)、所法67の2、所令120の2②五、法法64の2、法令48の2⑤五

部分完成基準で処理する場合の課税の時期

Q.所得税や法人税で部分完成基準に基づいて工事収入を計上する場合、消費税もその計上基準で課税されるか。

A.所得税や法人税で部分完成基準を用いて収益を計上する場合、つまり完成した部分を引き渡し、それぞれの完成割合に基づいて工事代金を計上する場合は、引き渡された時点でその部分について資産の譲渡があったと見なされるため、それが消費税の課税時期となります。ただし、長期大規模工事を請け負う場合、工事進行基準を用いることで、部分的な引き渡しがなくても資産の譲渡等があったとみなすことが可能です。

長期大規模工事は、工事の開始日から契約に定める引き渡し日までの期間が1年以上(平成20年4月1日以前に開始された課税期間では2年以上)で、工事の請負代金が10億円以上(平成20年4月1日以前に開始された課税期間では50億円以上)のものを指します。

参考:法17①②、基通9-1-8、 所法66① 、法法64① 、所令192①②、法令129①②

所有権移転外 ファイナンス・リース取引の場合の資産の譲渡等の時期

Q.所有権が移転しないファイナンス・リース取引で、リース料の支払方法が均等払いか不均等払いかに関わらず、消費税法上はどのように取り扱われるか。

A.所有権が移転しないファイナンス・リース取引は、「リース取引」として消費税法において扱われ、リースの目的となる資産が賃貸人から賃借人へ引き渡される時点で、そのリース資産の売買が行われたとみなされます。そのため、リース料の支払い方法が均等払いであれ不均等払いであれ、リース資産の引き渡し時点でリース資産の売買があったとみなされ、リース料の総額が課税売上げとされます。ただし、延払い基準の方法による経理をする場合等は、資産の譲渡等の時期に特例が適用される場合があります。

参考:法16①②、法法63①②、令32の2①②