従業員を被保険者とする生命保険(養老保険)契約の保険料

Q.私は個人事業主で、従業員を被保険者とする養老保険に加入し、保険料を負担しています。この保険料は事業所得の計算上必要経費に算入できるか。また、満期保険金の課税関係はどうなるか。

A.法人事業主の場合、養老保険に関連する保険料は支払った保険料の半額を経費として計上し、残り半額を資産に計上することが認められています。個人事業主の場合、明確な規定はありませんが、従業員の福利厚生目的で養老保険に加入し保険料を負担しているならば、法人と同様に保険料の半額を必要経費に算入し、残り半額を資産計上して差し支えないと考えられます。満期保険金を受け取る際には、受け取った金額を事業所得の総収入として計算に入れ、資産計上した保険料の半額相当を必要経費として計上する必要があります。生命保険の満期保険金は通常、一時所得として課税されますが、事業関連で受ける場合は課税対象外になります。ただし、福利厚生とみなされるためには、従業員全員を対象とし、契約期間や保険料支払い方法が適切であること、事業主と従業員の間で退職金の基金に充てるなどの取り決めが必要です。また、事業主は関連する取引全てを正確に記録している必要があります。

売上げの一部を寄附した場合の必要経費の取扱い

Q.個人で食料品の小売販売をしており、コロナウイルス禍を受けて売上げの一部を医療機関に寄附する取組を始めました。この取組では、指定商品の売上金額の一定割合を寄附金額とし、寄附先や寄附日などを事前に設定し、店内ポスターやホームページで周知することにしました。予定どおり医療機関に寄附をしましたが、この支出は、事業所得の計算上、必要経費に算入できるでしょうか。

A.質問に対する回答として、医療機関への寄附金が、事前に広く一般に周知していた取組による場合に限り、事業所得の計算上、必要経費に算入できます。所得税法では、必要経費は収入を得るために直接要した費用や販売費、一般管理費などの業務に関連する費用とされています。あなたの取組は、新型コロナウイルスの下での社会的支援としての医療機関支援に加え、集客目的の広告宣伝効果も持つと認められます。また、顧客が指定商品を購入する際、取組に合意しているため、あなたには寄附する義務があり、そのための支出は事業の遂行上で発生した必要なものとされます。しかし、周知内容が不明確な場合などは必要経費に算入できない場合があるので注意が必要です。個人事業主が寄附金で必要経費に算入されない場合、それは個人の家事上の経費となり、寄附先が国や地方公共団体などの寄附金控除の対象であれば、控除を受けることができます。

山林所得の範囲

Q.山林所得となる「山林」にはどのようなものが含まれますか。

A.山林所得に該当する「山林」とは、建築材料や薪炭材などとして使用される目的で、立木が一定の成長期間を経て集団的に育成・管理されるものを指します。山林所得は、このような「山林」を伐採して売却したり、伐採せずに立木のまま売却することで発生する所得のことをいいます。ただし、所有期間が5年以内の伐採または売却から生じた所得は山林所得とはみなされず、所有者が素材業者などの場合は事業所得、それ以外の場合は雑所得として扱われます。山林所得には該当しないものとして、果樹、桑樹、茶木などの収穫木、主に観賞用として植えられる庭園用植木、販売目的で植えられる苗木などがあります。

税込経理方式を採用している個人事業者の消費税等の必要経費算入時期

Q.税込経理方式を採用している個人事業者です。令和5年1月1日から同年12月31日までの消費税課税期間の消費税等は、令和6年3月に申告・納付することになりますが、この税額は、事業所得の計算上、令和5年分の必要経費とすることはできないでしょうか。

A.税込経理方式を採用している個人事業者の場合、課税売上げに係る消費税等は収入金額に含まれるため、納付する消費税等の額は必要経費に算入できます。この消費税等の算入時期は、基本的に次の2点によって決まります。

1. 納税申告書に記載された税額は、納税申告書が提出された日が属する年の事業所得等の計算上、必要経費に算入します。

2. 更正あるいは決定に関する税額は、更正または決定があった日が属する年の事業所得等の計算上、必要経費に算入可能です。

もし、翌年3月に提出予定の納税申告書に記載すべき消費税等の額を未払金として計上した場合、その金額を未払金として計上した年の事業所得等の計算上、必要経費として算入できます。そのため、令和5年12月末日時点で納付すべき消費税等の額を未払金として計上すれば、令和5年の事業所得計算に必要経費として算入できることになります。

設立準備期間中の課税関係について

Q. 設立準備期間中に行った課税仕入れについて、設立第1期の消費税申告を行ってもよいか。

A. 新設法人の最初の課税期間は、法人が設立された日から始まります。設立の日は、登記の場合は設立登記の日、認可または許可を得て設立する場合はその認可や許可の日、合併または分割による設立の場合は契約書や計画書に定められた日となります。設立後の最初の課税期間の開始日の前日以前に、法人が設立準備期間中に課税売上げや課税仕入れを行った場合、その期間が通常の設立準備期間と認められる限り、設立後最初の課税期間での課税売上げ及び課税仕入れとして扱うことができます。ただし、設立準備期間が通常を超えて長くなる場合は、その期間の取引は法人として扱えません。個人企業が法人となった場合、設立登記前の取引は個人の取引として扱われます。新設法人が第1期から申告する場合、課税事業者として選択する手続きが必要であることに注意してください。

参考:法12の 2①、基通3-2-1、 9-6-1 

税込経理方式を採用している個人事業者が受ける消費税等の還付税額の収入すべき時期

Q.税込経理方式を採用している物品販売業の個人事業者です。消費税等の還付税額は、消費税等の申告書を提出する翌年分の事業所得の計算上、総収入金額に計上しなければなりませんか。

A.税込経理方式を採用している個人事業者が受ける消費税等の還付税額の収入すべき時期は、消費税等の申告書が提出された日の属する年と同じです。具体的には、次の日の属する年の事業所得等の計算上、総収入金額に算入されます。(1) 納税申告書に記載された還付税額の場合は納税申告書が提出された日、(2) 減額更正に関係する税額の場合は更正があった日です。しかし、申告期限前に還付税額を未収入金に計上した場合、その金額を未収入金に計上した年の事業所得計算上、総収入金額に算入することが可能です。従って、質問のケースでは、消費税等の還付税額を令和5年12月末日の未収入金として経理すれば、令和5年分の事業所得計算上、総収入金額に算入することができます。

先物取引に係わる資産の譲渡等の時期

Q.商品取引所の先物取引では、資産の譲渡等の時期はどのように取り扱われますか?

A.消費税においては、資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供が課税対象となります。商品先物取引では、特定の期日までに反対売買によって差金を決済した場合、実際に資産が引き渡されることなく取引が完了するため、消費税の課税対象外となります。しかし、期日が来て実物の引き渡しが行われる場合、その引き渡しが行われた日が資産の譲渡等として扱われ、消費税の課税対象となります。

参考:基通9-1-24

資産に係る控除対象外消費税額等の処理方法

Q.課税期間の仕入れ等に係る消費税等のうち非課税売上げに対応する部分が控除されていません。この控除対象外消費税額等について、所得金額の計算上、どのように処理をすればよいのでしょうか。

A.税抜経理方式を採用している場合、課税売上の割合や課税売上高により、課税仕入れに係る消費税の全額が仕入税額控除の対象となるか、一部が控除されない(控除対象外消費税額等)場合があります。控除対象外消費税額等は通常の運転資金としてではなく、特定の処理が必要です。具体的には、資産に関連する控除対象外消費税額等の場合、その税額を資産の取得価額に分配し、減価償却か特定計算方式に基づく経費として計上する必要があります。

課税売上の割合が80%以上であれば、その年に生じた資産関連の控除対象外消費税額はその年の必要経費として計上できます。80%未満の場合は、一資産の関連税額が20万円未満、棚卸資産関連、特定課税仕入れ関連の税額は、必要経費としてその年に計上できます。それを超える繰延消費税額等は特定の計算式によって必要経費に計上します。資産に関連する控除対象外消費税額等が生じた場合、その年の確定申告書には、これらの金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

山林所得の範囲 (1)

Q.山林所得とはどのようなものですか。また事業所得とどのように区分されているのですか。

A.山林所得とは、山林(立木)の伐採や譲渡から得られる所得のことです。立木は、主にパルプ材や建築用材として使用される目的で植えられ、成長させられます。そのため、立木を伐採して売ったり、立木の状態で売却するときに得られる所得は、米や麦などの農作物の収穫や製品の製造・販売から得られる所得と根本的に違いはありません。ただし、山林では、植林から伐採までの期間が長く、資本を投じてから収益を得るまでの時間が非常に長い特徴があります。また、伐採や譲渡から得られる所得は、その長い期間にわたって蓄積された所得が一度に実現されるという特徴も持っています。このような所得を、資本の回転期間が短く、毎年の資本効果が明確に現れる事業から生じる所得と同様に課税するのは、税制上の公平を損なうことになるため、所得税法では山林所得と事業所得を区分し、分離課税方式、5分5乗方式、特別控除の制度など特別な措置が取られています。

ロイヤリティ収入に関する消費税の課税時期

Q.フランチャイズチェーンの主催事業者が傘下の事業者から受け取るロイヤリティ収入について、消費税はいつ課税されるのでしょうか。

A.ロイヤリティ収入は、フランチャイズチェーンのブランド名を使用させたり、広告を代行したり、経営指導をしたりすることを対価として、傘下の店舗から受け取るものです。消費税は原則として、工業所有権やノウハウ使用の対価となるロイヤリティの額が確定した日に課税されます。ただし、契約に基づき、ロイヤリティ支払いを受ける日が事前に定められ、その日を資産の譲渡等の時期として会計処理している場合は、その支払いを受けるべき日に資産の譲渡等が行われたものとして扱い、その日に消費税が課税されます。

参考:基通9-1-21