店舗の建築を変更した場合の設計費用

Q.店舗を建て替えるためにA設計事務所へ設計を依頼し、設計図と引換えに代金を支払いましたが、建築予定地が都市計画法の適用を受け、甲市の指導で建築することになり、その設計図は不要になりました。この場合、A設計事務所へ支払った設計費用はどのように処理すべきですか?

A.支払った設計費用は通常、建物の取得費用として取得価額に含まれます。しかし、この場合では設計図が使用されなかったため、直接取得価額に加えることはできません。設計図が他の用途で利用可能な状態であれば、資産とみなして資産勘定に入れます。もし設計図が全く価値を失い、利用不可能であれば、その費用は事業の実施に伴う費用として必要経費に算入します。

分収育林契約の意義

Q.分収育林契約とはどのようなものですか?

A.分収育林契約とは、山林の所有者と、その所有者以外の人が、山林を育てることについて、得られる収益をあらかじめ決めた割合で分け合う林業の取り決めのことです。この取り決めには、土地の所有者、育てる人、そして必要な費用を負担する人(もしいれば)が含まれることがあり、彼らが契約に基づいて山林を共有します。また、収益の分配割合は、山林の共有持分の割合と一致している必要があります。分収育林は、すでに植樹された後、さらに育てる段階から始める林業を指し、初期の植樹から始める分収造林とは異なります。契約による収益は、山林所得として申告する対象となります。分収育林契約を結ぶ際には、契約書を作成することが重要です。

建物の売買契約を解約したため放棄した手付金

Q.食堂を開業するための建物を買う契約をして支払った手付金を、他に良い立地の建物が見つかったため契約を解消して放棄しました。この手付金の損失は、新たに取得した建物の価額に含めることは可能ですか。

A.手付金とは、契約を保証するために事前に支払うお金です。契約の履行前に契約を解約した場合、手付金は放棄され、買い手はその金額を失うことになります。企業がより良い取引条件を探求して手付金を放棄するのは、事業の進行上自然なことであり、この手付金は多くの場合必要経費として計上できます。ですが、質問されたケースでは、事業がまだ開始前の段階で、手付金の放棄に対応する収入がないため、これを直接必要経費にすることはできません。その放棄した手付金を新たな店舗の取得費用とみなして、それを建物の取得費用に加えるという考え方もありますが、これにより適正な市場価値を大幅に超える価格での資産計上が生じる恐れがあり、会計上必ずしも適切とはいえません。したがって、この手付金の損失は、開業費の一部とみなして開業後の必要経費に計上するのが妥当だと考えられます。開業費は、事業開始から5年間で償却が可能であり、償却に関しては柔軟な方法が認められていますが、その詳細は確定申告書に記載する必要があります。

分収造林契約者 (土地所有者)の受け取る地代

Q.私が土地所有者、知人Aが費用負担者となって造林をBに任せることで三者間に分収造林契約を結びました。この契約では、山林の伐採又は譲渡したときの利益は、一定の割合で分収することにしていますが、契約を締結するに際して私は土地の使用料として、また知人Aは費用として出資した金額の金利として一定金額の支払を受けました。この場合、私及び知人Aの受け取った金銭は、山林所得に該当しますか。

A.契約により山林の伐採や譲渡から得られる収益を分配する際、土地の使用料や費用の金利などの支払いを受ける場合、これらの支払いは山林所得とはみなされません。その理由は、分収造林契約により分配される金額が山林所得となるのは、山林を伐採または譲渡した場合の収益を定めた割合で分配する場合に限定されるからです。あなたが受け取った土地の使用料は不動産所得に、知人Aが受け取った金利は、Aが金融業を営んでいる場合は事業所得に、そうでない場合は雑所得に該当します。

前払家賃の必要経費算入時期

Q.私は外科医 (青色申告者)で、診療所を借地に建てています。毎年11月末日に翌年11月分までの1年分の地代を前払いしており、これまではこの地代を期間対応で計上してきました。この区分計算が面倒なので、今年から前払費用の経理をやめて、支払った都度必要経費に計上したいのですが、この方法は認められますか?

A.必要経費の計算では、その年に債務が確定しているものを算入するとされています。つまり、その年に前払いした費用で、その年の12月31日にまだ役務が提供されていない部分は、原則としてその年の必要経費には算入できません。しかしながら、支払った日から1年以内に役務を受ける分の前払費用に関しては、該当年の必要経費に算入する継続的な処理をしている場合に限り、税務上認められています。これには、必要経費の計上を厳密な発生基準に基づかずに、ある程度柔軟な基準に基づいて行っている場合、税務上の大きな問題はないとされています。従って、あなたが契約に基づき翌年11月分までの地代を前払いし、それを支払った日が属する年の必要経費に継続して算入する場合には、その会計処理は認められることになります。

業務を廃止した後に生じた借入金利子について

Q.アパートの建築のために借入れていたお金の利子についてです。アパートを建てた後、賃貸しましたが、ある事情で売却することになりました。入居者との立退交渉を経て、3月には立退きが完了しましたが、予定外の事情で売却が9月までずれ込みました。立退き完了から売却までの6か月間の借入金利子は、不動産所得の計算上、必要経費として計上できるのでしょうか。

A.業務を廃止した後にかかわる建物の維持管理費は、居住用の建物の場合と同じく、不動産所得の計算上必要経費として加えることはできません。お問い合わせの場合、個人的な事情で売却が遅れたものであり、立退き完了時(3月)に業務を廃止したと見なされます。そのため、入居者の立退き後の借入金の利子は不動産所得の計算上、必要経費に含めることができないのです。さらに、譲渡所得の計算においても、譲渡所得の源泉となった資産の取得費及びその資産の譲渡にかかった費用のみが控除できるので、このケースでは借入金の利子を控除することは不可能です。

分収造林契約の権利の取得後5年以内の譲渡

Q.私は分収造林契約をしている造林者の権利を3年前に取得しましたが、今回ある事情により知人に譲渡することになりました。若干の利益を得ましたが、この所得は山林所得になりますか。

A.その分収造林契約の権利の所有者であるあなたが立木・素材の売買を業としている場合は事業所得として、それ以外の場合には雑所得として課税されます。分収造林契約の権利は、所得の種類を判断する際に山林と同じように考えられますので、その所得が山林所得になるかどうかは、その権利を取得してから5年を超えているかどうかにより決まります。したがって、山林を取得してから5年以内に伐採または譲渡した場合の所得は、事業所得または雑所得として課税されます。

損害保険料を借入金で支払った場合の支払利子

Q.所有するアパートを対象として結んだ5年満期の損害保険契約の保険料を借入金で支払いました。この借入金の利息は、不動産所得の必要経費になりますか?

A.長期損害保険は期間が5年、10年、20年など長期間で、満期時に返戻金が支払われるタイプの保険です。このような保険料を支払った場合、保険料のうち積立部分とされる金額は、保険期間終了や保険契約が解約・失効するまで資産として扱われ、定期的に支出される、いわゆる掛捨て部分のみがその業務における必要経費として計算されます。さらに、保険事故が発生し保険金が支給された結果その保険契約が終了したとしても積立部分は必要経費には含まれません。積立保険料に相当する金額は、満期返戻金や解約返戻金、または保険事故による非課税所得としての保険金に関連する支出とみなされ、業務上の支出や費用とは異なります。そのため、借入金の元本のうち積立保険料に相当する金額に対応する利息は、不動産所得における必要経費とは認められません。

相続により引き継いだ借入金の利子

Q.私の父が借入金全額で購入し賃貸していたマンションを、父の死亡後、私と母が相続しました。賃貸収入はそれぞれ半分ずつ受け取ることになりましたが、借入金の残額は私が引き継ぐことになりました。この借入金の利子は、私と母の不動産所得の必要経費にできますか?

A.相続により被相続人が借入金で取得した固定資産を相続人が引き継いだ場合、特定の条件の下で相続人が相続開始の日にその固定資産を取得するために借り入れたとみなされ、その借入金に相当する利子を必要経費として扱うことができます。具体的には、引き継いだ借入金の額と、相続開始日の固定資産に残っていた借入金の残額のうち、相続人が取得した固定資産の価値に相当する部分のどちらか低い金額が、新たに借り入れたとみなされます。あなたが相続した資産が半分であるため、借入金の残額の半分があなたが相続開始日にその固定資産の取得のために借り入れたものとして扱われ、この部分に対応する借入金の利子を不動産所得の必要経費とすることができます。しかし、あなたの母は借入金の残債を引き継いでいないため、借入金の利子を必要経費とすることはできません。

分収造林契約の意義

Q.友人から土地を提供され、私が植林し将来山林を伐採したときに、その収益を折半しようという相談を持ち掛けられています。分収造林契約をすれば、土地を提供する友人の収入金も山林所得として申告すればよいそうですが、分収造林契約とはどのようなことをいうのですか。

A.分収造林契約とは、特定の土地の植林について、その土地の持ち主と別の植林者が協力して行い、得られる収益をあらかじめ決められた割合で分け合う林業の形態のことを言います。この契約では、土地の持ち主、植林者、そして植林に必要な費用を負担する者がそれぞれ異なる場合もあります。基本的には、土地の持ち主、植林者、費用負担者は別々であり、収益を分け合う割合に応じて、植えた木は共有されます。その共有の比率は収益分配の比率と同じです。このような合意を「分収造林契約」と呼びます。この契約に基づき、目的とする山林の伐採や譲渡から得られる収益を定められた割合で分配することが、山林所得として認められるのです。ただし、分収造林契約をしていても、主に伐採による収益のみを分配する場合は山林所得と認められますが、間伐による収益は分配しない場合、山林所得には含まれませんので注意が必要です。また、分収造林契約を結ぶ場合は、契約書を作成することが重要です。