任意契約に基づく診療報酬

Q.私は、甲株式会社の健康保険組合が経営する歯科診療所で治療行為を行っています。その報酬として、社会保険診療報酬額の85%相当額を甲株式会社の健康保険組合から受け取っています。この場合、私は確定申告に当たって、社会保険診療報酬の所得計算の特例の適用が受けられますか。

A.社会保険診療報酬の所得計算の特例は、個人で医業や歯科医業を経営しており、社会保険診療から支払いを受けている場合に適用されます。この特例には、健康保険法など特定の法律に基づく診療報酬が含まれるため、あなたが甲株式会社の健康保険組合から受け取っている任意契約に基づく報酬は、この特例の対象外とされます。そのため、あなたが雇用されていて報酬を受け取っているこの状況では、社会保険診療報酬の所得計算の特例の適用を受けることはできません。

社会保険診療報酬を返還した場合の必要経費算入の時期

Q.社会保険診療報酬が過大であるとされ、返還した場合、この返還分はどのように処理されるか。

A.社会保険診療報酬の過大請求分を返還した場合、返還した金額はその損失が発生した年度の事業所得計算において必要経費として計上することができます。返還が発生したのは今年であれば、今年度の必要経費に算入します。ただし、もしこの過大請求が昨年度の所得計算に影響を与えていた場合は、昨年度の申告の修正が必要になります。

保険薬局と社会保険診療報酬の所得計算の特例

Q.本年4月から開店した薬局で、保険薬局として保険の取扱いを行っています。この保険扱い分について社会保険診療報酬支払基金に請求し、支払を受けています。社会保険診療報酬の所得計算の特例の適用は可能でしょうか。

A.社会保険診療報酬の所得計算の特例は、医者や歯科医者が健康保険法に基づく治療で支払いを受けた場合に適用されるものです。この特例は医者や歯科医者の業務に限定されており、薬局の運営など他の医療関連業務には適用されません。そのため、保険薬局としての活動で社会保険診療報酬支払基金からの支払いを受けても、この特例を利用することはできません。同様に、助産師やマッサージ師、鍼師、整体師などの業務も、医者や歯科医者の業務には含まれず、これらの業務を行い社会保険診療報酬支払基金から支払いを受けた場合もこの特例の適用はありません。

対価未確定の販売における資産の譲渡時期

Q.資産の譲渡等にかかる対価が課税期間の末日までに確定しない場合、どのように対応すべきですか?

A.対価が未確定の場合でも、資産の譲渡等の時期は基本的に資産を引き渡した日とされています。そこで、対価が課税期間の末日までに確定していない場合は、仮価格が設定されている場合はその仮価格に基づき、仮価格がない場合は適切に見積もった金額で消費税の確定申告を行います。対価が確定した後は、確定した課税期間で仮価格または見積価格と実際の対価との差額を調整する必要があります。

参考:基通9-1-1、10-1-20

老人医療公費負担と社会保険診療報酬の計算の特例

Q.私は内科医ですが、老人医療公費負担制度の対象となる老人を診療した場合は、患者の自己負担分相当額についても社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会を通じて、地方公共団体から支払を受けることになっています。また、この診療報酬とは別に老人医療対象患者の診療件数に応じ、老人医療協力事業費補助金が地方公共団体から交付されることとなっています。ところで、この地方公共団体から支払を受ける自己負担相当額及び老人医療協力事業費補助金について、社会保険診療報酬の所得計算の特例を適用して差し支えありませんか。

A.老人医療公費負担制度とは、条件に該当する老人が保険を使って医療を受けた際に、その自己負担分を地方公共団体が支払う制度です。この制度では、患者の自己負担分を地方公共団体が直接医療機関に支払い、医療機関はその金額を患者の窓口負担分に充てることが普通です。そのため、地方公共団体から社会保険診療報酬支払基金を通じて受ける自己負担分相当額は、社会保険診療の患者負担分そのものと見なされます。しかし、老人医療協力事業費補助金は、老人医療の請求事務などへの医療機関の協力に対する補助金であるため、社会保険診療報酬には該当しないので、所得計算の特例を適用することはできません。この補助金は雑収入として処理されます。

ss消化仕入れの場合の資産の譲渡の時期

Q.相手先が消化仕入れの方法により売上げ、仕入れを計上している場合の当方の資産の譲渡の時期はいつになりますか?

A.棚卸資産の販売については、原則として商品を引き渡した日が資産の譲渡の時期とされます。つまり、消化仕入れの方法で売り上げと仕入れを計上している小売業者に棚卸資産を供給した場合、その小売業者が消費者に商品を販売した日が、卸売業者から小売業者への資産譲渡の時期とみなされます。この場合、卸売業者と小売業者は課税資産の譲渡を同じ時期に行ったと考えられます。

参考:基通9-1-1

租税特別措置法第26条 の適用の選択替 え

Q.内科医として診療所を営む私は、今年の確定申告で租税特別措置法第26条の適用を受けずに事業所得の金額を計算し提出しました。しかし、後から計算し直したところ、租税特別措置法の適用を受けた方が有利だとわかりました。この場合、修正申告や更正の請求によって、租税特別措置法の適用を受けることは可能でしょうか。

A.社会保険診療報酬から得られる事業所得に関して、年間の社会保険診療報酬が5,000万円以下、且つ、医業または歯科医業からの総収入金額が7,000万円以下の場合、租税特別措置法第26条の特例を適用できます。ただし、確定申告時にこの特例の適用を選択しなかった場合、後から「より有利だから」という理由で特例を適用するための修正申告や更正の請求は認められません。この特例の適用は、原則として、確定申告時に選択する必要があり、後からの変更はできないという規定に基づきます。したがって、お問い合わせのケースにおいては、残念ながら修正申告や更正の請求を通じて租税特別措置法第26条の適用を受けることはできません。

前受金、仮受金に関する消費税

Q. 資産の譲渡が行われているにも関わらず、前受金、仮受金、預り金のままで売上処理をしていない場合、消費税が課税されないと考えてもいいですか?

A. 前受金、仮受金、預り金として金銭を受領した時点では、通常、これらは資産の譲渡の対価とは見なされず消費税は課税されません。しかし、その後実際に資産の譲渡が行われた場合は、経理処理上これらの金額を売上に振り替えているかどうかに関わらず、その時点で消費税が課税されます。

参考:基通9-1-27

租税特別措置法第26条の共同経営における適用

Q.内科医である私とAは診療所を共同で経営していますが、その出資は各々50%ずつで、診療業務には均等に従事し、診療所の収益又は損失の額は出資割合に応じて分配することとしています。この場合、租税特別措置法第26条の規定を適用して所得計算を行うに当たって、その計算の基礎となる収入金額は、その共同経営に係る診療所の社会保険診療報酬の総額によって計算すべきですか、それとも収入金額を分配したところにより計算すべきですか。

A.あなたとAさんが共同で経営する診療所は、それぞれ50%の出資をもとに設立されたもので、これは法律における任意組合に基づく経営形態です。任意組合では、組合員の所得の計算は、その収入と支出、資産、負債などを組合の契約または法律に定められた損益の分配比率に基づいて計算します。この計算方法に従う場合、社会保険診療による報酬は、あなたとAさんの分配比率に応じて各自に分配されます。そのため、租税特別措置法第26条の適用は、あなたとAさんのそれぞれの収入を計算の基礎として使用することが適切です。

社会保険診療報酬の所得計算の特例の適用者

Q.私は内科医ですが、本年分の社会保険診療報酬が5,000万円を超えています。この場合、社会保険診療報酬についての特例は5,000万円までの報酬の部分については適用できるのでしょうか。

A.社会保険診療報酬の所得計算の特例制度について、この制度は社会保険診療報酬の年間合計が5,000万円以下でなければ適用できません。また、医業または歯科医業から得る年間の総収入金額が7,000万円以下である必要があります。つまり、社会保険診療報酬が一部でも5,000万円を超える場合、特例の適用は受けられないことになります。しかし、社会保険診療報酬が5,000万円以下でかつ医業又は歯科医業からの年間総収入金額が7,000万円以下である年には、特例の適用を受けることができます。