森林計画特別控除制度

Q.山林所得を計算する際に、「森林計画特別控除」という制度があると聞きましたが、どのような内容の制度でしょうか。適用するためにはどのような手続をすればよいか教えてください。

A.「森林計画特別控除」は、個人が所有する山林で森林法に基づく市町村長の認定を受けた森林経営計画に従って、特定の時期(平成24年から令和6年まで)に森林の一部または全部を伐採して譲渡、もしくはそのまま譲渡した場合、山林所得から特定の計算式によって算出された金額を控除できる制度です。ただし、森林の健康機能を向上させる目的で設置される森林保健施設に関する伐採や譲渡には適用できません。

この特別控除を受ける場合の計算方法には二つあります。一つ目は概算経費控除率を使用する方法で、所得額が2,000万円以下の場合は20%、超える場合は10%プラス200万円の控除が適用されます。二つ目は実際にかかった必要経費を計算する方法で、控除額は前述の方法と実費どちらか低い方が適用されます。ただし、伐採費や運搬費などが含まれます。

適用を受ける手続きとしては、確定申告書に特例適用条文として「措法30条の2」と記入し、山林所得の計算明細書、森林経営計画に基づく伐採や譲渡を証明する市町村長等の証明書、林地の測量図、森林経営計画書のコピーを添付して提出する必要があります。

山林所得の計算の特例

山林の交換

Q.隣村の甲さんから、お互いの所有する山林を交換してほしいと頼まれました。土地を交換した場合の課税の特例は知っていますが、立木の交換にも同様の特例があるのでしょうか?

A.立木を交換する場合、その交換事象に特別な税法上の扱い(つまり、譲渡として認められないための特例)が適用されません。このため、交換した立木に関しては、お互いに所得税(具体的には山林所得として)が課税されることになります。資産を交換すると一定の条件を満たす場合、税の支払いが先延ばしになる場合がありますが、この特例はすべての資産に適用されるわけではなく、立木やその他の土地に密着した物件はこの特例の範囲外です。

概算経費控除と通常の計算方法による必要経費の選択

Q.私は、例年山林所得の必要経費の計算に当たって、取得費を通常の計算方法による植林費、育成管理費の合計額によることにしています。ところが今年は、通常の計算方法による必要経費の額より、概算経費率を適用して計算した必要経費の方が有利になると思われますので、そのように計算して申告することができるでしょうか。

A.はい、概算経費率を適用して計算して申告することができます。所得税法に定められた必要経費の計算方法にこだわらず、納税者の選択によって概算経費率を用いて計算することが可能です。

概算経費の控除

Q.山林所得の金額を計算する際、その控除する必要経費を簡略化した方法で計算する制度について教えてください。

A.山林所得の金額を計算する際に考慮すべき必要経費には、基本的な方法と簡単に計算できる概算経費控除の方法の2種類があります。概算経費控除は租税特別措置法に基づいており、15年以上連続して所有された山林を伐採または譲渡した場合、その収入から特定の割合によって計算される金額を必要経費として控除することができます。このとき、取得費や植林費、育成費、管理費などは控除の対象外となります。一方で、伐採費、運搬費、譲渡のための仲介手数料、測樹費など特定の経費は別枠で控除可能です。この概算経費控除を用いる場合の山林所得計算式は、15年前以前から所有する山林の収入から特定費用と被災事業用資産の損失額などを加算して控除した金額になります。概算経費控除を利用する場合は、確定申告書にその旨を記載する必要があります。

山林の火災による損失

Q.私の所有している山林がハイカーの失火から山火事となり焼失しました。その損害額は、時価にすれば約1,000万円ですが山林所得の計算上火災による損失額として控除してもらえるでしょうか。なお、火災保険金や損害賠償金などは受け取っていません。

A.はい、山林の火災による損失は山林所得の計算上で控除できる項目ですが、その額は山林の時価1,000万円ではありません。控除できるのは、その山林を売ったとした場合に必要経費として考えられる植林費、取得費、育成費、管理費などの合計額です。具体的には、その山林に対してかかった費用のうち、収益(例えば間伐の収益)でまだ回収されていない部分から、もし受け取っていれば保険金や損害賠償金を引いた金額が必要経費に算入できます。したがって、損失の計算には山林の直前の時価ではなく、これまでにかかった費用が基準となります。

職場以外の場所での勤務に関する費用

Q.新型コロナウイルス感染症の感染予防として、感染が疑われる従業員がホテルで勤務する場合、ホテルの利用料や交通費を事業所得の計算上、必要経費として認められますか?また、これらの費用の従業員への支給は給与として課税される必要があるのでしょうか?

A.従業員が職場以外の場所で勤務することが事業主によって認められており、そのための通常必要なホテル利用料や交通費などの業務で通常必要な費用は、事業所得の計算で必要経費として認められます。これらの費用について事業主が従業員に支給する金銭は、一定の条件下では従業員への給与として課税される必要がありません。しかし、通常必要な費用以外や、支給した金銭が業務で必要な費用として使われなかった場合には、従業員への給与として課税される必要があります。

パート収入と内職収入がある場合

Q.現在内職で縫製加工を行っていて、パートの仕事もしていました。本年の収入状況は内職収入が70万円で必要経費20万円、パート収入が30万円で給与所得控除額が30万円です。家内労働者等の所得計算の特例の適用について教えてください。

A.家内労働者やその他特定の条件を満たす人が事業所得や雑所得に対して所得税の計算において特例を適用できます。この特例を使う場合、必要経費は一律に設定されていて、収入の種類(事業所得または雑所得)に応じて定められた金額(一般には55万円)が必要経費として認められます。ただし、給与所得がある場合は給与所得控除額を55万円から差し引いた金額が必要経費となります。あなたの場合、給与所得による控除額が30万円なので、25万円(550,000円 – 300,000円)が内職による事業所得の最低保障額としての必要経費となります。従って、70万円の内職収入からこの25万円を引くと、事業所得は45万円(700,000円 – 250,000円)と計算されます。この特例の適用により、あなたの事業所得の計算方法が明確になります。

家内労働者等の所得計算の特例

Q.家内労働者等とはどのような人をいうのでしょうか。

A.家内労働者等というのは、特定の仕事をする人のことを指します。これには家内労働者、外交員や集金人、電力量計の検針員など、特定の人々に継続的にサービスを提供する業務を行う人が含まれます。これらの人々が事業所得や雑所得を持っている場合、彼らは家内労働者等とみなされます。具体的に、「家内労働者」とは、主に物の製造、加工、修理などの作業を、他の業者から委託されて行う人々のことを言います。これらの人々は、自分の家に属さない人を雇用することなく、これらの作業に従事するのが普通です。家内労働者等の人々は、収入から55万円の経費を差し引けるという特別な計算方法の恩恵を受けることができますが、給与所得がある場合はその計算が少し変わります。

砂利採取地に係る埋戻費用

Q.青色申告者で砂利販売業を営む者が、他人の所有する田地から砂利を採取し、後に畑地として使用できるように埋め戻す契約をした場合、埋戻し費用の支出が3年後であり債務の金額が見積計算で確定していない場合でも、見積額で各年分の必要経費の算入が認められるか。

A.埋戻し費用は、砂利採取が終わった後に発生する事後的費用として計上されます。しかし、砂利採取後の跡地を埋め戻す費用は通常砂利の販売価格に反映されると考えられます。したがって、他の者の土地から砂利等を採取して販売する場合において、契約によりその後の跡地を埋め戻して土地を原状に復することを約束しているときは、その採取を開始した年以後、埋戻しを行う年の直前の年までの各年において、計算した埋戻し費用の見積額を砂利等の取得価額に算入することにより、結果的に必要経費に算入することが認められるようになっています。この取扱いは、自己の所有地から砂利等を採取する場合には適用されませんので、注意が必要です。

生計を一にする親族の所有する資産の無償使用

Q.生計を一にする母の所有する店舗を無償で借りて事業を始めようと思います。この場合、その店舗に係る減価償却費や固定資産税などは私の事業所得の金額の計算上必要経費に算入できるでしょうか。また、その店舗の2階に私又は母が居住する場合と、2階を空き屋として全く別の家に母と共に居住する場合とで、店舗に係る減価償却費や固定資産税の額の必要経費算入額が異なってきますか。

A.お母様の店舗を無償でお借りして事業を行う場合でも、減価償却費、固定資産税、修繕費などの維持管理費用は事業所得の計算上、必要経費として考慮できます。重要な点として、事業のために使っている部分のみが必要経費として認められますので、たとえば店舗の2階部分を事業に使っていなければ、その部分に関わる経費は必要経費にはなりません。そのため、2階にお住まいであるか、または別の場所に居住しているかによって必要経費に算入できる額には変わりはありません。