社長の所有地を会社が賃借して「無償返還届出書」を提出した場合の効果

Q.会社が社長所有の土地を権利金なしでかつ相当地代未満で借りた場合、「無償返還届出書」を提出するとどのような効果がありますか?

A.「無償返還届出書」を提出すると、差額地代の認定課税ではなく、差額地代の認定が行われます。法人が借地人である場合は、差額地代として計算される地代と地代支払債務免除益が相殺されるので、企業の所得に変動はありません。また、地主が個人の場合、実際には収受していない地代に対して不動産所得を認定するのは難しいです。したがって、あなたの質問の状況では、法人も個人も差額地代に関する課税を受けずに土地を無償返還できますが、問題があるとすれば社長に対する不動産所得の認定課税です。社長が会社から差額地代を受け取っている場合でも、それが会社への贈与とみなされるかどうかが問題になります。ただし、不動産所得の認定には特定の規定はありませんが、行動が著しく不適切である場合、不動産所得が認定される可能性があります。

社長所有の土地に会社が借地権を設定する場合

Q.社長所有の更地の上に会社が本社事務所を新築する予定です。会社から社長に対して権利金を支払うか、相当の地代を支払うかいずれかをしなければなりませんか。いずれもしなかった場合、会社と社長それぞれに、どのような税務上の問題が生じますか。

A.会社が社長所有の土地に借地権を設定し本社事務所を建てる場合、会社は社長に対して権利金を支払うか、権利金に代わる適切な地代を支払う必要があります。このように取引を行えば、税務上、正常な取引とみなされます。逆に、権利金も適切な地代も支払わず、「土地の無償返還に関する届出書」も提出しない場合、会社は借地権を無償または低価で取得したとみなされ、会社に対して借地権の受贈益が認定される可能性があります。その一方で、社長には権利金を受け取らずに借地権設定により土地の使用を許可しても、借地権の無償譲渡に関する「みなし譲渡所得」の課税は行われません。これは、収入額が土地の価格の3倍を超える場合にのみ譲渡所得とみなされるためです。しかしながら、もし会社が権利金相当額を社長に支払った場合は、社長にはその金額が不動産所得または譲渡所得として課税されます。また、借地権設定対価の収入金額が土地の価格の相当額以下である場合、それは社長の不動産所得となり、一定の条件下で臨時所得の平均課税の適用を受けることができます。

相当の地代を収受することとした場合の土地の帳簿価額の一部損金算入

Q.借地権の設定による土地の賃貸に当たって権利金を収受せず、相当の地代を収受することとした場合でも、法人税法施行令第138条第1項の規定による土地の帳簿価額の一部損金算入は認められますか?

A.他人に土地を使用させる際に、権利金の代わりに適切な地代を収受する場合でも、土地の価値は依然として高い地代が得られることから低下していないと考えます。したがって、借地権の設定によって土地が価値が下がったとは見なされず、法人税法施行令第138条第1項の規定に基づいて、土地の帳簿価額の一部を損金として計上することはできません。この規定で言う「借地権設定直後の土地の価額」は、その土地の収益力に基づいて算定されます。権利金の受け取りの有無に関わらず、借地人の建物が存在している条件が同一であることから、第三者への販売価格に違いは生じません。しかし、地代に基づく収益還元法で評価した場合、高額な地代を受け取れる土地は価値が下降していないので、借地権設定前の価額と比較して価値が下がることはありません。

申告加算された敷金に係る特別の経済的な利益の最終処理方法

Q.申告加算した利益積立金額となった敷金についての特別の経済的な利益の処理方法について、貸地の返還時、地代の値上げ時、特別の理由なしに敷金を返済した時のそれぞれの処理方法はどのようになりますか?

A.貸地返還時や地代の値上げ時に敷金を返済すると、通常は土地の価値が増加し、その特別な経済的利益は土地の帳簿価額に加算されます。敷金返済の際は、確定申告書の別表四の「加算」欄に土地、「減算」欄に権利金としてそれぞれの金額を記載します。土地の帳簿価額にはもともと権利金収入原価として一部を損金算入していますが、敷金返済により、この部分を買い戻したことになります。特に、「敷金受領時」と「敷金返済時」には会計帳簿上で正しい処理を行う必要があり、無償で貸地の返還を受けた場合、損金算入した金額を土地勘定に加算する必要があります。しかし、敷金返済に伴い特別な経済的利益を受けなくなるため、無償返還とはなりません。一方、特別な理由無く敷金を返済し、賃貸借契約が継続しつつ地代も値上げされない場合は、企業として通常ではなく、贈与と認定されうる場合があります。この場合、敷金返済時の確定申告書では権利金を減算し、その額を借地人に対する寄附金や特別な関係のある人への給与として扱う必要があります。

借地権割合が50%未満の土地を他人に使用させた場合のその帳簿価額の一部損金算入

Q.借地権の設定によって他人に使用させた土地の借地権割合が50%未満のときは、どのような場合でも、その土地の帳簿価額の一部損金算入はできないのですか。

A.法人が借地権を設けて他人に土地を使用させた場合、その土地の帳簿価額の一部を損金として計上することができるのは2つのケースに限られます。1つ目のケースは、借地権を設けることで地価が大幅に下がり、その値下がり額が設定直前の土地価格の3分の1以上になった場合です。しかし、質問のケースのように借地権割合が50%未満では、地価の大幅な下落が見込めないため、この規定を適用して帳簿価額の一部を損金として計上することはできません。2つ目は、借地権の設定による賃貸で土地の価値が下がらないにも関わらず、その価格が帳簿価額よりも低くなった場合です。この場合、賃貸直前の土地価格と賃貸直後の価格を比較し、その差額分を評価損として計上することができます。この取扱いは、帳簿価額が賃貸直後の土地の価格よりも低い場合には適用されません。事例として、賃貸直前の土地価格が1000万円、帳簿価額が800万円、賃貸直後の土地価格が600万円であれば、200万円の評価損を計上できるという解釈です。ただし、土地の価値が長期間に渡って下落している場合、その下落分に関しては評価損の計上ができない点に注意が必要です。

敷金に関する特別な経済的な利益の益金算入方法

Q.敷金1,000万円(30年間無利息)に関しての特別な経済的な利益の額138万円を、借地権設定の対価として益金算入する方法について教えてください。また、将来この敷金を運用して生じる果実の額と相殺できるかどうかについても知りたいです。

A.敷金1,000万円についての特別な経済的な利益の額138万円は税金を公平にするために計算された額であり、これは実際に生じる経済的な利益を表すものではありません。実際の経済的な利益は、無利息で預かった1,000万円を30年間運用して生じるものです。この運用によって生じる利益は元本1,000万円を基に計算されるため、はるかに大きくなります。しかし、敷金1,000万円についての138万円の益金算入は、現実に生じる経済的な利益を事前に算入するものではないため、生じた果実と相殺することはできません。

税務上は、敷金1,000万円を受け取った際に次のように仕訳し、経済的な利益の額138万円を申告加算調整する必要があります。具体的には、現金1,400万円(権利金400万円 + 敷金1,000万円)、権利金収入400万円、預り敷金1,000万円として記入します。この経済的な利益の額138万円を税務申告時に権利金として加算し、別に詳細を記載します。将来運用によって生じる実際の利益が収益に計上される場合でも、この金額を利益積立額から差し引くことはできず、敷金が負債として計上されている間、利益積立額にそのまま残ります。

借地権の設定による経済的な利益の計算方法

Q.会社の土地に借地権を設定して他人に使用させ、権利金400万円と敷金1,000万円(30年間無利息)を受領しました。課税関係はどのようになりますか?

A.この状況においては、二つの主要な課題があります。

1. 土地の価値低下による帳簿価額の損金算入:

法人が他人に土地を使用させるために借地権を設定した場合、この設定により土地の価値が大幅に低下すると、その低下した分の一部を損金として計上できます。これは、借地権を設定することで土地の利用が限定され、所有者は土地の完全な利用権を失い、事実上土地の一部を譲渡したのと同じ状況になるためです。例の場合、土地の借地権割合が60%であれば、200万円の土地について120万円が権利金収入原価として損金に算入されます。

2. 特別な経済的な利益に対する課税:

権利金400万円は課税対象ですが、敷金1,000万円は元々は賃借人から地主への担保であり、普通は課税対象ではありません。しかし、敷金を受け取ることで特に有利な条件が設定され、この敷金に対し利率がゼロか非常に低い場合、権利金のみを受け取った場合と比べて課税の公平性が損なわれます。このケースでは、特定の計算式を用いて経済的利益の額を求め、これを借地権の設定の対価とみなし課税します。具体的には、敷金1,000万円に対して計算した経済的利益の額が138万円になるため、権利金と合わせた合計538万円が上土部分の譲渡の対価の額として課税されます。

遊休地を駐車場として賃貸する場合の権利金や地代についての質問

Q.遊休地を更地のままで駐車場として賃貸する場合でも、権利金又は相当の地代の額を収受しなければなりませんか。

A.遊休地を駐車場としてそのまま賃貸する場合の法的な位置づけは、借地借家法上の建物所有目的の地上権や土地賃借権には該当せず、そのためこの法律による保護は受けられません。但し、税法の観点から見ると、借地権がより広い意味を持ち、権利金や一時金を通例として受け取る取引慣行があるかどうかによって借地権の存在を判断します。つまり、駐車場として利用する更地や仮店舗用地など、通常権利金を伴わない土地使用については、税法上の借地権に該当しないため、権利金の認定はありません。ただし、実際に収受される地代が土地の使用目的に照らして通常収受すべき地代未満である場合、その差額が借地人に対する贈与とされることがあります。しかし、短期間の利用や地主による管理目的など、通常収受する地代相当額を請求できない合理的な理由がある場合は、贈与の認定はされません。

借地権と借家権の相違

Q.当社所有の更地の上に当社が建物を建てて他人に賃貸する場合でも、権利金若しくは相当の地代を受け取らなければなりませんか。

A.法人が所有する更地を他人に建物の建設用地として貸す場合、その他人は借地権を手に入れることになります。しかし、法人が自身の更地上に建物を建築し、それを他人に賃貸するケースでは、その借り手は借家権を得ることになります。借地権と借家権は、法的な保護や税法上の取り扱いが異なります。借地権は基本的に、土地を借りて建物を所有する権利であり、物権として強い保護を受けます。対して借家権は、建物を借りる権利に関する債権であり、借地権と比べて保護の程度が低く、家主の同意が必要です。そのため、借地権における権利金や地代は非常に高額になりうるのに対し、借家権に関するものはそこまで高額ではありません。質問のケースのように、借家権を取得する場合、高額な権利金や相当の地代を要求されることは通常ありません。借家人は建物を利用するためだけに土地を使用するため、借地権のように土地の所有を目指すわけではありません。

無償返還届出書と相当地代改訂届出書の関係

Q.法人税基本通達には「無償返還届出書」と「相当地代改訂届出書」が示されていますが、この二つの届出書の使い分け方法と、届出後の効果の相違について説明してください。

A.「無償返還届出書」とは、会社が借地権を設定するなどして土地を他人に使用させる際、権利金を受け取らず、かつ地代が相場以下であっても、将来的にその土地を無償で返還することが合意されている場合に提出する届出書です。この場合、実際に支払われる地代と相場の地代との差額は認定されず、税務上は相場の地代が支払われたものとみなされます。これにより、土地が返還される際に地主が借地人へ立ち退き料を支払う必要がなくなります。

「相当地代改訂届出書」は、借地権設定契約で土地の価値が上がった際に地代を見直すことが約束されている場合に提出されます。この届出書を提出することで、土地の返還時の立ち退き料を支払う必要がなくなります。一方で、地代の見直しを行わないことやこの届出書を提出しない場合、土地価値の上昇に伴う地代見直しは必要なくなりますが、無償返還届出書を提出していないと、借地権者には借地期間中の特定権利が発生し、土地返還時には地主が立ち退き料を支払う必要が出てきます。

要するに、両届出書の使い分けは、土地の使用期間中に相当の地代が支払われ、将来的に土地の価値が上昇する場合には「相当地代改訂届出書」を提出し、改訂しない場合は「無償返還届出書」の提出が適切となります。また、借地権設定時に相当の地代未満である場合には、「無償返還届出書」の提出が必要となり、立退き料の支払いを避けることができます。ただし、権利金や特別な経済的利益を受けている場合はこの限りではありません。