土地建物等の譲渡所得がある場合の損益通算 (その2)

Q.紙卸売業の事業所得が赤字になりました。先祖からの土地を売却して、この赤字を補填しました。この事業所得の赤字200万円を、譲渡所得300万円から控除できますか。

A.所得税法では、一人が一年間に得た所得を10種類に分け、それぞれの所得別に金額を計算します。不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得が赤字の場合、その赤字を黒字の所得から控除し、控除後の金額で税金を計算します。これを損益通算といいます。しかし、特定の所得で赤字が出た場合は、その赤字を無かったことにし、損益通算をすることができません。例として、分離課税される土地や建物の譲渡所得、株式に関する事業所得や譲渡所得、先物取引に関する所得などがあります。そのため、質問の事例において、事業所得の赤字を土地の譲渡所得から控除することはできません。

売買契約成立後に相続があった場合の相続税の扱い

Q.売買契約成立後に相続の開始があった場合、相続税の課税の関係はどうなるのでしょうか?

A.契約によって譲渡される土地などの取引が完了する前に売主や買主のどちらかに相続が発生した場合、その土地などの課税価格は次のように決まります。もし相続が売主に発生した場合、相続人が取得する財産はその契約に基づく未収入金となります。これは売主が生前に契約を結んでいた土地の残代金請求権で、相続開始時の未収入金の金額です。反対に買主に相続が起こった場合、相続人が取得する財産はその契約による土地の引渡し請求権などになります。この場合、相続人が負担するべき債務は相続開始時の未払い金になります。なお、買主に相続が発生し、その土地を相続財産として申告する際の土地の価値は、財産評価基本通達に基づいて評価された価格で決まります。

事業主貸と事業主借

Q.55万円又は65万円の青色申告特別控除の適用を受ける場合に、確定申告書に添付する貸借対照表の「事業主貸」勘定や「事業主借」勘定には、どのようなものを計上するのですか。

A.「事業主貸」勘定と「事業主借」勘定に計上する項目は以下の通りです。

1. 「事業主貸」勘定では、

   – 事業用の現金を生活費として家計に渡した金額、

   – 決算整理時に、家事関連費のうち必要経費から除外した金額、

   – 業務用と家事用に併用する建物や自動車などの減価償却資産で、取得価額を業務用と家事用に分けずに減価償却していた場合、決算整理時に家事用として使用する部分の減価償却費を家事分として除外した金額、

   – 事業用固定資産を売却して譲渡損が生じた場合のその差額 (例えば、固定資産の帳簿価額が100万円で、60万円で売却した場合は40万円を事業主貸に計上します)。

2. 「事業主借」勘定では、

   – 家事用の現金等で支払った事業上の必要経費、

   – 事業用預貯金の利息 (税引後)、

   – 事業用固定資産を売却して譲渡益が生じた場合のその差額 (例えば、固定資産の帳簿価額が80万円で、100万円で売却した場合は20万円を事業主借に計上します)。

これらの記録は確定申告書に添付する貸借対照表に反映され、青色申告特別控除を受ける際に必要となります。

譲渡担保の取扱い

Q.譲渡担保の目的となっている財産に係る相続税の課税については、どのように取り扱われますか。

A.譲渡担保とは、金銭を貸し借りする際に、その返済の担保として物や権利を移動させることをいい、相続税の取扱いは以下のようになります。被相続人がお金を貸している立場(債権者)の場合、その貸しているお金に相当する金額は相続税の計算に入れますが、担保として設定された財産の価値は計算に入れません。一方で、被相続人がお金を借りている立場(債務者)の場合、担保にされた財産の価値を相続税の計算に加え、借りているお金に相当する金額は相続税から引きます。

現金主義と55万円または65万円の青色申告特別控除

Q.前々年の所得金額が300万円を超えた場合は、現金主義の取りやめの手続きをしなくても55万円または65万円の青色申告特別控除を適用できますか?

A.前々年の所得金額が300万円以上であれば、現金主義の所得計算の特例は適用されません。したがって、他の条件を満たしていれば55万円または65万円の青色申告特別控除を受けることが可能です。

Q.現金主義の適用者がその年の3月15日までに取りやめの手続きをしないで、年初から記帳の方法をいわゆる発生主義に変更している場合には、55万円または65万円の青色申告特別控除を適用できますか?

A.その年の前々年の所得金額が300万円以下であり、3月15日までに現金主義の取りやめの手続きをしていない場合、たとえ記帳方法を発生主義に変更していても、現金主義の特例が適用されます。このため、55万円または65万円の青色申告特別控除を受けることはできません。

海外留学者等の住所の判定

Q.令和5年5月に父が死亡し、相続人は母、私、及び私の長男(父と養子縁組されている)の3人です。私の長男は、令和2年9月からアメリカの大学に3年間の留学中であり、その間の長男の生活費や教育費は、私が日本から送金しています。父の相続財産の中にはハワイの別荘がありますが、これを長男が相続する予定です。海外に住所を有する者が、海外にある相続財産は課税されますか。

A.はい、課税されます。日本国内に住所を持たない者が、相続によって日本国内の財産を取得した場合は、その財産についてのみ相続税が課せられます。しかし、日本国民で、留学などの理由で一時的に日本国内を離れていても、次の条件に当てはまる場合は住所が日本国内にあるとみなされ、それに応じた税制が適用されます。主に、学術や技芸を学ぶため海外に留学しており、日本にいる家族から経済的な支援を受けている者、または仕事などで一時的に海外にいるが、その期間が大体1年以内である者です。質問の状況では、長男が留学生として認められ、扶養家族の扱いを受けるため、アメリカにある別荘も相続税の対象となります。

国外財産を相続又は遺贈により取得した場合の相続税

Q.外国人と結婚し日本から配偶者の本国に移住している場合、日本に住む父から遺贈された国内の預貯金と配偶者の本国にある居宅は、相続税の課税対象になるか?また、配偶者は外国籍で、私は日本国籍を持っています。

A.あなたと配偶者のどちらにも、預金と居宅に関しては、全て相続税の課税対象になります。これは、あなたが日本国籍を持つ者として、外国籍の配偶者と共に、日本と配偶者の本国にある財産を相続することになるので、国内外の財産に関わらず、相続により得た全ての財産には相続税が課されるためです。

相続税の納税義務者

Q.相続税の納税義務者及び課税財産の内容について教えてください。

A.令和3年4月1日以降、相続や遺贈によって財産を取得した場合、相続税の納税義務者と課税される財産の範囲は以下のようです。まず、日本国内に住所を持つ人が相続や遺贈で財産を手に入れた場合、取得した全ての財産について納税義務があります。ただし、被相続人が外国人または日本に住所を持たない場合は除かれます。次に、日本国籍を持つが日本国内に住所を持たない人も、一定の条件下で取得した全財産について納税義務が発生します。この場合、相続の開始前10年以内に日本に住所を持っていたかどうかがポイントとなります。さらに、日本国内にある財産を相続又は遺贈で取得したが、日本に住所を持たない人も日本国内の財産について納税義務があります。この納税義務に関しては、日本国籍の有無や遺贈者の状況(日本に住所があったか、あるいは日本国籍を持っていたかなど)に応じてさまざまな条件が適用されるため、具体的なケースに応じて納税義務が決定されます。最後に、所得税法の特定の条文に基づく納税猶予の適用を受ける人が亡くなったり贈与をした場合の相続税または贈与税の納税義務も別途規定されています。

特別寄与料を受けた場合

Q.夫の母と長年同居し介護をしていた私ですが、夫と義母が亡くなり、義母の相続人には当てはまりません。しかし、療養看護した者が相続人から金銭を請求できる制度について知りたいです。

A.民法には「特別の寄与」という規定があります。これは、相続人以外である被相続人の家族が被相続人の看護などを行った場合、一定の条件のもとで相続人から金銭を請求できる制度です。特別寄与料というものは、直接相続や遺贈によって得られるものではないですが、遺産の取得と類似した性質を持っているため、相続税法では、この特別寄与料を遺贈とみなして扱います。この場合、特別寄与者(相続人以外で看護などを行った人)は遺贈を受けたように扱われ、相続税の計算方法も同じです。ただし、法定相続人ではないため、一部の税額控除は適用されません。また、通常相続人でない場合には、相続税額に20%加算されることがあります。特別寄与料を支払う側の相続人は、支払った特別寄与料を相続財産から差し引けます。この制度によって、看護などの労をした人が、相続人以外であっても、その貢献に対してある程度の報酬を受け取ることが認められています。

停止条件付遺贈があった場合の取扱い

Q.父が死亡しましたので、その財産を相続することになりましたが、父は、甥に対して停止条件付の遺贈をしていました。この条件の成就する前に、相続税の申告をしなければなりませんが、どのように計算すればよいのでしょうか。

A.停止条件付の遺贈がある場合、その条件が成就するまでは遺贈による効果は発生していません。このため、条件が成就するまで相続人はその財産を仮に所有することになります。相続税の申告期限までに条件が成就しなければ、その財産はまだ甥に帰属しているとは言えません。これにより、遺贈の対象となる財産は、相続人が法律で定められた相続分に従って取得したものと見なされ、未分割財産として扱われることになります。相続人が実際にその財産を相続財産として分割している場合も、分割された割合に従って取得したものとして扱っても問題ありません。後に条件が成就し、甥が遺贈による財産を取得する場合、相続人は更正の請求を行うことができます。さらに、甥が財産を取得した事実は、条件が成就した日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告を行う必要があります。