純損失の繰り戻し後の額の追加について

Q.令和4年分の課税所得が500万円だったため、令和5年分の純損失800万円のうち500万円を令和4年分に繰り戻して所得税の還付を受けました。しかし、その後令和4年分に事業所得が200万円過少申告されていたことが判明し、修正申告をしました。この場合、令和5年分の純損失の繰り戻し額を200万円追加できますか?

A.純損失を繰り戻して所得税の還付を受ける場合、還付請求書に記載された請求金額が上限となります。したがって、還付を受けた後に前年分の所得が増加したからといって、純損失の繰り戻し額を増やしてさらに還付を受けることはできません。ただし、前年分の課税所得が増加した場合、純損失の繰り戻しによる所得税の額は再計算され、その増加分については追加で還付されることになります。純損失の増加分については、繰り越し控除の対象とし、純損失の減少分については、既に還付された金額から対応する部分を納付することになります。また、前年分の課税所得の変動があった場合、増減に応じて計算された金額の差額がそれぞれ還付または納付されます。

廃業後における純損失の繰り戻し

Q.青色申告者である事業所得者が令和5年6月1日をもって法人成りしたため、令和5年6月以後は給与所得だけを有することになりました。令和5年以前3年間の所得の状況は、令和3年分100万円(課税所得金額)、令和4年分120万円(同)、令和5年分△200万円です。令和3年分及び令和4年分は青色申告書を提出しています。この場合、令和5年分の純損失200万円を令和3年分までさかのぼって繰り戻しの対象とすることはできますか?

A.純損失の繰り戻しについて、純損失が生じた年に青色申告書を期限内に提出し、その前年も青色申告書を提出していれば、純損失の生じた年の直前の年の課税所得金額を限度として繰り戻し控除ができます。ただし、前々年分までさかのぼっての繰り戻し控除は許されていません。従って、質問にある200万円の純損失は、令和4年分の課税所得金額120万円を限度として繰り戻し控除が適用され、令和3年分への繰り戻し控除は認められません。残る損失80万円については、令和6年分から令和8年分までの3年間にわたり、繰り越して控除できます。純損失の繰越控除は、損失の生じた年に青色申告書を提出していれば、その後の年分で青色申告者である必要はなく、給与所得のみの年分でも適用可能です。事業の全部を廃止した場合のみ、前年分の純損失を前々年分に繰り戻して還付請求できる特例がありますが、これは繰越控除予定の純損失を廃業時に繰り戻し控除に変更するためのもので、純損失の生じた年の前々年への繰り戻し控除を認める例外ではありません。

雑損失の繰越控除と限度額計算

Q.サラリーマンであり火災で居宅を失った場合の雑損失控除は、その年の所得で控除しきれなかった場合、翌年に繰り越して控除することは可能ですか?また、翌年に繰り越した場合でも、改めて限度額計算を行うのですか?

A.サラリーマンが火災で家を失ったという事例では、損失額がその年の所得金額を超過しているため、雑損失の繰越控除が可能です。具体的には、災害などで生じた損失量でその年の所得から完全に控除できなかった金額は、翌年以降3年間(令和5年4月1日以降に発生する特定非常災害の場合は5年間)まで総所得や分離課税所得などに対して控除が可能です。このようにして損失額を繰り越して控除することを雑損失の繰越控除といいます。

雑損失とは、災害や盗難などによる損失の合計金額が、その年の総所得等の10%を超過する部分、または災害関連支出から5万円を差し引いた金額のうち多い方の金額を意味します。実際に計算すると、雑損失の控除可能額は280万円と特定されます。

さらに、雑損失を繰り越して控除する際には、繰り越した雑損失が発生した年に関わらず、控除額を計算に再度用いる必要はありません。繰越控除が行われる際の順序は、まず最も古い年に発生した雑損失から順に控除していきます。また、雑損失の繰越控除は他の損益通算や損失の繰越控除の後に行います。

具体的なあなたのケースでは、火災で失われた額(300万円)からその年の所得(200万円)を差し引くことで、翌年に繰り越し可能な雑損失額80万円と計算されます。

譲渡所得がある場合の損益通算と純損失の繰越控除

Q.次の場合における損益通算及び損失の繰越控除について説明してください。(1)総合課税の短期譲渡所得△80万円、総合課税の長期譲渡所得300万円、分離課税の長期譲渡所得400万円、総合課税の事業所得△120万円。(2)前年より繰り越された純損失△100万円。

A.まず、(1)について、損益通算とは異なる種類の所得と損失を合計して最終的な収益を計算する方法です。この場合、総合課税の短期および長期譲渡所得と分離課税の長期譲渡所得があり、更に総合課税の事業所得が損失として記載されています。総合課税の譲渡所得(短期と長期)は特別控除を適用後、事業所得などの赤字と相殺できますが、総合課税と分離課税の譲渡所得の間で相殺はできません。ここでは、総合課税の短期譲渡所得から特別控除を引いて、事業所得の赤字を長期譲渡所得から差し引いた後の金額が計算されます。

次に、(2)について、前年からの純損失繰越額があります。これは損益通算を行った後の総所得金額、山林所得金額、退職所得金額から控除できますが、分離課税される所得額からは控除できません。具体的には、総合課税の長期譲渡所得から事業所得の赤字を差し引いた後の総所得金額から、前年の純損失を控除し、残った損失額は翌年以降に繰り越すことが可能です。分離課税の長期譲渡所得は、その他の所得との間で損益通算はできませんので、400万円のままです。

純損失の金額のうちに含まれている被災事業用資産の損失の金額

Q.青色申告をしていない場合でも、被災事業用資産の損失の金額については純損失の金額として、翌年以降3年間に繰り越して控除することができるとされていますが、ある年分の所得金額の内訳が不動産所得200万円、総合課税の譲渡所得の損失△200万円、事業所得の損失△500万円(すべて被災事業用資産の損失)となっている場合、翌年以後に繰り越して控除できる被災事業用資産の損失の金額はいくらですか?

A.青色申告をしていない人でも、特定の条件下で純損失の金額を翌年から3年間(特定非常災害がある場合は5年間)に渡って繰り越し控除できます。純損失の金額とは、各種所得から損益通算後に残った損失のことを指し、その中に被災事業用資産の損失が含まれている場合、この損失額は繰り越し控除の対象となります。具体例として、不動産所得が200万円、総合課税の譲渡所得が△200万円、事業所得の損失が△500万円のケースでは、全体の損失が500万円となり、このうち事業所得の損失が300万円は不動産所得と損益通算され、残る200万円が譲渡所得の損失として扱われます。したがって、翌年以降に繰り越せる被災事業用資産の損失の金額は300万円となります。이 이야기에 따르면、もし不動産所得が600万円であった場合、500万円の損失全額が不動産所得から控除されるため、純損失の金額100万円を翌年へ繰り越すことはできません。

特定非常災害に係る純損失の繰越控除

Q.特定非常災害に指定された災害により事業用資産や棚卸資産などに被害を受けた場合は、繰越控除期間が5年間になると聞いたのですが、内容について教えてください。

A.特定非常災害により事業用資産や棚卸資産などに被害を受けた場合、個人事業主はその損失を必要経費として事業所得の計算で引くことができます。ただし、保険金で補填される部分は除きます。純損失がある場合、青色申告者は損失総額を、白色申告者は被災事業資産の損失と変動所得に関する損失を、翌年から3年間繰り越して控除できました。しかし、令和5年度の税制改正で、令和5年4月1日以降に発生した特定非常災害の指定を受けた災害による事業用資産等の損失について、損失の状況に応じて繰越控除期間を5年間とする特例が設けられました。これは、近年頻発する自然災害に対応するための措置です。特定非常災害とは、著しく異常かつ激甚な災害で、行政上の権利利益の保全が特に必要とされる状況のことです。例としては、平成28年熊本地震や平成30年7月の豪雨災害などがあります。この特例により、事業用資産の特定被災事業用資産の割合が10%以上、または割合が10%未満の場合でも、その損失に関して繰り越し控除期間が5年間に延長されます。

純損失の繰越控除について

Q.私は、工場と機械が焼失し、事業所得が赤字になりましたが、青色申告の承認を受けておらず、救済措置があるか知りたいです。あれば、要件も教えてください。

A.従来の所得税法では、損失が発生しても損益通算(各種所得との相殺)で完全にカバーできない場合、その残りの損失分を純損失と呼んでいます。この純損失が発生した場合、通常、青色申告者はこれを次年度以降3年間にわたって繰り越して控除できます。しかし、青色申告をしていない場合でも、特定の損失に限り、同じく3年間の繰越控除が認められています。この例外として認められるのは、一定条件を満たす変動所得に由来する損失や、災害によって損害を受けた事業資産に関する損失です。災害に関連する必要不可避の費用もこれに含まれます。

あなたのケースでは、工場と機械の損失や取壊し費用から保険金を差し引いた額、つまり200万円が災害による資産損失として認められ、この金額は次年度から3年間にわたり繰り越し控除が可能です。ただし、その他事業活動によって生じた50万円の赤字についてはこの措置の対象外です。

純損失の繰り越しを利用するには、その年度の確定申告書に損失額に関する記述を含めて提出し、続く年度にわたっても確定申告を継続して行う必要があります。この手続きを通じて、特定の条件下での損失に対して限定的ながらも税制上の救済が用意されていることになります。

不動産所得に係る損益通算の特例

Q.私には、賃貸マンションや駐車場の貸付けによる不動産所得があります。本年中に新たに借入金で取得した土地に賃貸マンションを建設し、貸付けの用に供していますが、この貸付けによる収支を計算すると、土地の取得に要した借入金の利子があるために赤字となります。この赤字の金額と他の不動産所得の黒字の金額との通算もできないことになるのでしょうか。

A.不動産所得で赤字が出た場合、赤字の中に含まれる土地などの取得費に使った借入金の利子相当の金額に関しては、損益通算(異なる所得間での黒字と赤字を引き算する計算)をする際には、赤字がなかったこととして扱われます。しかし、この規定は不動産所得の中での収支計算(同一不動産所得内での赤字と黒字の引き算)には適用されません。つまり、あなたのケースでは、新しく建てた賃貸マンションを含めたすべての不動産収入と支出を計算し、最終的に不動産所得全体で赤字にならなければ、この特例の適用はありません。

不動産所得に係る損益通算の特例と借入金の借換え

Q.賃貸用の土地の取得に要した借入金を有利な条件で借り換えた場合、借換え後の借入金の利子も不動産所得の損益通算の特例の適用対象となりますか?

A.賃貸用不動産を取得するために使われた借入金を有利な条件で借り換えるとき、借換え後の借入金の利子は、その不動産の賃貸業務に関連する経費として扱われます。この点において、借換え後の元本が借り換え前の残額を超えた場合、超えた分の利子は除外されます。要するに、借換え後の借入金の利子は、不動産の取得に必要だった借入金とみなされ、不動産所得の計算で必要経費に含まれます。結果として、このような借り換え後の借入金の利子も、租税特別措置法第41条の4に基づく不動産所得の損益通算の特例の対象になります。

一括購入の土地・建物に係る借入金の返済

Q.賃貸マンションの取得に使った借金を返済し、今後の不動産所得の赤字が損益通算の対象となるかどうか。

A.借入金で購入した建物と土地の取得に関しては、まず借入金が建物の取得に使われたとみなされ、その利子は必要経費として考慮されます。ですが、返済の際には借入金が建物や土地の取得にどのように使われたかを基に考えるため、返済がどちらの取得に充てられたかに影響されません。例えば、店舗と住宅の両方を購入し、それぞれの部分に借入金の利子を割り振る場合、返済はこれらの取得価額の割合に応じて行われるとみなされます。そのため、質問者の場合、昨年末の返済で建物の取得に関する分が含まれていると考えられ、その後の返済が建物取得部分のみに関係するとは限りません。従って、本年以降の不動産所得で赤字が生じた場合、土地の取得に関する借入金の利子は損益通算の対象外となります。