遺産を国等に贈与した場合の取扱い

Q.故人が生前お世話になったA市に遺産の一部を寄付しましたが、この寄付財産についても相続税が課税されるでしょうか。

A.相続財産を地方公共団体に寄付した場合、その財産については相続税が課税されません。相続や遺贈により財産を得た人が、その財産を相続税の申告期限までに国や地方公共団体、または公益活動に貢献する特定の公益法人や特定公益信託等に贈与した場合、その贈与によって相続税の負担が不当に軽減されると認められない限り、贈与した財産は相続税の対象から外されます。この特例を利用するには、相続税の申告時に、特例の適用を受ける旨を記入し、以下の書類を添付して税務署に提出する必要があります。①贈与した財産の詳細を記した書類、②国や地方公共団体、特定の公益法人が贈与を受けたこと、その日付、財産の詳細、そしてその法人が贈与された財産をどう使うか記載した書類、③贈与を受けた法人が特定の種類に該当する場合、その法人が該当することを証明する公的な書類。

B型肝炎ワクチンの接種費用

Q. B型肝炎ワクチンの接種費用は医療費控除の対象となりますか?

A. 医療費控除は、直接必要な医療費をカバーしており、これにはB型肝炎ワクチンの接種費用も含まれます。特に、B型肝炎に罹患している家族を介護する場合、医者から推奨されたワクチン接種は患者の治療の一部と見なされ、実際に同居している近親者に接種された場合、その費用は医療費控除の対象になります。ただし、患者が医師によって連続する治療が必要であると診断され、その診断と接種費用が記載された正式な資料を提出する必要があります。これらの文書は、確定申告の際に提出するか、或いは確定申告書に記載の上で添付文書を省略する形で対応が可能です。省略した場合でも、これらの文書は領収書と共に5年間自宅での保存が必要とされます。

生命保険金の相続税処理

Q.被保険者に支払われるべきであった生命保険金をその相続人が受領した場合、相続税はどのように課税されるのでしょうか。

A.このケースでは、相続人が受け取った金額は「未収の保険金」とみなされ、これが相続財産として課税の対象になります。つまり、通常保険金が相続税の課税対象となる「みなし相続財産」に該当しないので、非課税規定は適用されません。その結果、受け取った保険金3,000万円がそのまま相続税の計算に入ります。一般的に、被相続人(被保険者)が亡くなったことによって支払われる保険金はみなし相続財産とみなされ、相続人が受け取る場合、一定額まで非課税になりますが、この場合は違います。甲が生前に既に得ていた権利(未収の保険金の請求権)を相続人が受け継ぎ、それに基づき保険金を受け取ったため、これは「未収金」としての通常の相続財産であり、相続税の対象となります。

歯科医に支払った金冠等の装てん費用

Q.私は虫歯の治療を受けていますが、歯科医の勧めにより奥歯4本に金冠を装てんすることにしました。この金冠に要する費用は、健康保険の取扱いができないということで40万円を支払っています。この費用は、医療費控除の対象となりますか。

A.医療費控除の対象となるのは、医師や歯科医師による診療や治療、治療や療養に必要な医薬品の購入、その他医療またはこれに関連するサービスの費用で、その病状に応じて一般的に支出される金額を大きく超えないものです。そのため、健康保険の適用外の高額な材料を使用した歯の治療費が医療費控除の対象となるかは議論の余地があります。しかし、歯科治療で健康保険の適用外の材料(金、プラチナ、ポーセレン等)が使われることは一般的です。病状に応じて、通常支出される範囲内であれば問題ないと考えられます。質問のケースでは、虫歯治療のため奥歯に金冠を装てんすることは適切と認められ、支払った40万円も一般的な支出水準を大きく超えていないため、医療費控除の対象として差し支えないと考えられます。ただし、美容目的で健康な歯を抜いて義歯を入れる費用などは、医療費控除の対象外です。

歯列矯正のための費用

Q.小学生の長女が虫歯治療のため歯科医を受診しました。歯並びが悪いため、今後胃への負担や虚弱体質になる可能性があると診断され、歯列矯正治療を受けることにしました。この治療に50万円支払いましたが、この費用は医療費控除の対象になりますか?

A.一般的に、人間ドックや健康診断の費用、また容姿を改善するための費用は医療費控除の対象にはなりません。成人が健康上の理由なく美容整形を行った場合も、医療費控除の対象外です。しかし、子どもが永久歯に生え替わる成長期に歯のかみ合わせを正すなどの目的で行う歯列矯正は、身体の構造や機能の矯正と考えられます。したがって、お子さんの歯列矯正のために支払った50万円は、歯科医師による治療費として、そして支払った金額が一般的に支出される範囲内であるとされ、医療費控除の対象とされます。

眼鏡の購入費用

Q.日常生活に必須とされる義手や義足、補聴器などは医療費控除の対象になると聞いたのですが、近視や遠視用の眼鏡も対象になるのでしょうか?

A.医療費控除において、義手や補聴器など日常最低限必要な用品の購入費用は医療費として認められます。これには医療器具の購入や使用も含まれますが、治療のために直接必要なものという条件があります。眼科医による診断と処方に基づく眼鏡は、日常生活に不可欠なものですが、治療の過程で直接必要なものとは見なされないため、医療費控除の対象外です。しかし、特定の眼疾患に対する治療用眼鏡、例えば眼病後の治療に必要な保護眼鏡や特殊眼鏡などは医療費控除の対象になります。確定申告時には、疾患名や治療が必要な症状が記載された処方箋を添付してください。

相続を放棄した者等の生命保険金等の非課税規定の適用

Q.相続を放棄したB子が、1,000万円の生命保険金を受け取った場合、相続税法第12条の非課税規定の適用は受けられるでしょうか? A.相続放棄をしたB子には、生命保険金の非課税規定の適用がありません。相続税法第12条第1項第5号及び第6号に記された生命保険金及び退職手当金に関する非課税規定は、相続を放棄した人や相続権を失った人が受け取った生命保険金や退職手当金には適用されません。

特定健康診査及び特定保健指導に関する自己負担額と医療費控除

Q. 特定健康診査及び特定保健指導に係る自己負担額は医療費控除の対象になると聞きましたが、その概要を教えてください。

A. 平成20年4月から、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に該当する人やその予備軍を減らすこと、国民の健康を増進させること、医療の適正化を目的に、特定健康診査及び特定保健指導が始まりました。この制度の導入と実施の基準が定められました。この中で、特定の条件を満たす特定保健指導を受けた際の指導料自己負担額が医療費控除の対象となります。この条件とは、特定健康診査を受けた結果が高血圧症、脂質異常症、または糖尿病に相当すると認められ、それに基づいて医師の指示で特定保健指導が行われる場合です。その指導を受けた中で発生する自己負担額が医療費控除の対象になります。

その他、特定健康診査自体の費用は基本的に医療費控除の対象外ですが、その結果を受けて特定保健指導を受けた場合、その健診の費用も控除の対象と認められます。ただし、特定保健指導を受けたことによる運動実践の費用や食生活改善のための食品購入費は医療費控除の対象外です。

特定健康診査とは、主に糖尿病などの生活習慣病に関する健康診査を指し、40歳以上の医療保険加入者が対象です。特定保健指導は、この健診の結果から健康を維持する必要がある人に対して行われる保健指導を指します。特定保健指導の領収書には、特定健康診査の実施機関と医師名、診査結果、実施年度、自己負担額、実施機関と実施者の名前が記載されている必要があります。

受取人が同時死亡した場合の生命保険金の非課税規定の適用

Q.保険契約者と指定受取人が同時に死亡した場合、受け取る生命保険金1,000万円に対する相続税法第12条の非課税財産の規定の適用はどうなりますか?

A.この場合、指定受取人(乙)と保険契約者(甲)が同時に死亡したため、生命保険金1,000万円は乙の相続人である乙の妻(B)と乙の長男(C)がそれぞれ500万円ずつ受け取ります。相続税の非課税財産の適用は、指定受取人である乙の相続人(ここではBとC)に限られるため、Cは非課税財産の規定の適用がありますが、Bは甲の相続人ではないので非課税財産の規定の適用はありません。その結果、Cが受け取る500万円は非課税となりますが、Bが受け取る500万円については、相続税の課税対象となります。

防ダニ布団の購入費用

Q.アトピー性皮膚炎のため、医師の勧めにより購入した防ダニ布団の購入費は医療費控除の対象になりますか。

A.医療費控除の対象となる費用は、医師の治療を受けるために直接必要な費用、例えば通院や送迎費、入院時の部屋代や食事代、あるいは医療用器具を購入したり、レンタルしたりする費用が含まれます。ただし、防ダニ布団の購入費用は、治療のために直接かつ通常必要とは言えないため、医療費控除の対象にはなりません。