小規模宅地等についての課税価格の計算の特例

Q.小規模宅地等についての相続税の課税価格計算の特例制度について説明してください。

A.相続または遺贈によって取得した財産の中で、相続人やその親族が事業や居住のために使用していた宅地等がある場合、その宅地の一定の面積までを通常の評価方法より低く評価して相続税の課税価格の計算時に減額することができる特例の制度があります。この特例を適用するには、相続税の申告期限までに該当宅地等を遺産分割する必要がありますが、申告期限から3年以内の分割や特定の事情で遅れた場合の承認を得た分割もこの特例の適用対象となります。さらに、この特例を受けるためには、宅地等を複数人で相続する場合、全員の同意が必要です。また、所定の書類を添付し、申告書に特例適用の旨を記載する必要があります。なお、相続開始前3年以内にあった贈与や、特定の制度の適用を受ける贈与財産、相続財産についてはこの特例の適用はありません。

共働き夫婦の出産費用と出産育児一時金

Q.私は薬局経営、妻は会社勤めの共働き夫婦です。今年の4月、妻の出産に際して、私がその費用を支払いました。出産後、妻の勤務する会社の健康保険組合から、妻に対して出産育児一時金42万円の支給がありました。私は、本年分の確定申告に当たって、私が支払った妻の出産費用を含めて医療費控除の適用を受けたいと思っていますが、その際に妻が会社の健康保険組合から受けた出産育児一時金を控除しなければならないでしょうか。

A.出産育児一時金は、医療費を補填するための保険金として扱われます。これは、出産による費用を補うために支払われるもので、支払った人が誰であるかは問われません。医療費控除においては、自分や配偶者、または一緒に生計を立てる家族の医療費としてその年に支払った金額が対象となります。あなたが妻の出産費用を支払った場合、その費用を医療費控除の計算に含めることができますが、妻が受け取った出産育児一時金42万円はその計算時に差し引かなければなりません。

特殊な遺産分割(代償分割)をした場合の課税価格の計算

Q.特殊な遺産分割(代償分割)をした場合、相続税の課税価格はどのようになり、贈与税は課税されるのでしょうか。

A.特殊な遺産分割(代償分割)をした場合、弟さんにはあなたから受け取った財産の価値に応じて相続税がかかり、あなたには相続した財産の価値から弟さんに提供した財産の価値を差し引いた金額で相続税が計算されます。贈与税については課税されません。遺産分割では、亡くなった人の財産を分けることが基本で、分割できない財産もあります。そういった場合、一部の相続人が他の相続人に自分の財産を提供することで全財産を得る「代償分割」や「債務負担による遺産分割」が行われることがあります。代償分割で財産の全てまたは一部が分けられたとき、相続税の課税価格は、代償財産をもらった人は相続または遺贈で得た財産と代償財産の合計、代償財産を提供した人は相続または遺贈で得た財産から代償財産を差し引いた金額で計算されます。例えば、あなたが財産を5,000万円で相続し、代わりに宅地(時価2,500万円、相続開始時の評価額2,000万円)を弟さんに提供した場合、あなたの課税価格は3,000万円、弟さんの課税価格は2,000万円となります。このとき、宅地を提供したことで所得税の対象となる譲渡所得が発生し、その時の時価2,500万円が収入金額として計算されます。

医療費を補填する保険金等 (出産育児一時金と出産手当金)

Q.本年7月に長男が生まれ、病院に支払った出産費用が35万円あります。これは医療費控除の対象になりますか?また、この出産に関し、勤務先から健康保険法第101条の規定による出産育児一時金の給付を受けていますが、これは健康保険法第102条の出産手当金と同様、出産による祝金と考え、医療費を補填する保険金等にあたらないと思いますが、どうでしょうか?

A.医療費控除の対象となる医療費は、医師や助産師に支払った診療、治療の対価や分娩介助、入院費などで、通常出費する水準を超えない部分です。したがって、質問にある病院に支払った出産費用は、通常水準を超えない限り医療費控除の対象になります。しかし、医療費控除を計算するときは、出産育児一時金のような保険金やその他類似の補填された金額を差し引いた残額が控除対象となる医療費です。あなたが勤務先から健康保険法第101条に基づいて受けた出産育児一時金は、医療費補填のための支給なので、控除対象となる医療費からその給付金額を差し引く必要があります。一方、健康保険法第102条に基づく出産手当金は、出産による給与減少を補うためのもので、医療費を補填する保険金等には該当しないため、医療費控除の対象からは除外されます。出産手当金は非課税所得に分類されます。

遺産が未分割である場合の課税価格

Q.遺産が未分割の場合、各人の相続税の課税価格はどのように計算するのでしょうか?

A.相続税の申告期限内に遺産が分割されていない場合、その遺産は各相続人や包括受遺者が法律で定められた相続の割合に従って獲得したものとみなされ、その割合に基づいて各人の課税価格が計算されます。具体的には、相続分は民法に定める法定相続分、代襲相続人の相続分、遺言による相続分の指定、特別受益者の相続分を指し、これらの割合に従って課税価格が決まりますが、寄与分の規定は遺産が未分割の場合の課税価格計算には適用されません。

要介護者が介護サービス事業者から受ける居宅サービスの費用

Q.私の母は、昨年4月から介護保険制度により、介護支援専門員(ケアマネジャー)の居宅サービス計画(ケアプラン)に基づいて、訪問介護(ホームヘルプサービス)と訪問看護を受けています。このサービスの利用料金は、医療費控除の対象になりますか。

A.はい、お母様が受けている訪問介護と訪問看護のサービスの自己負担額は、医療費控除の対象になります。これらのサービスは介護保険制度に基づき、利用者ごとに作成された個別の居宅サービス計画に沿って提供されています。医療費控除を受けるためには、サービスの利用料金に関する正式な領収書が必要です。この領収書は、サービスを提供した事業者から交付され、地方自治体への確定申告時に提出する資料として必要になります。

要介護者が指定介護老人福祉施設から受ける施設サービスの費用

Q.私の父は、指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入所しています。この施設に支払った利用料金は、医療費控除の対象になりますか?なお、要介護度3の認定を受けています。

A.要介護度1~5の認定を受けた方が指定介護老人福祉施設に入所している場合、介護サービスにかかった費用、居住費及び食費の半分が医療費控除の対象になります。これは、介護サービスの提供にあたり、医療との連携の下で看護や療養上の世話などが含まれ、これらに該当するサービスに対する費用が医療費控除の対象とみなされるためです。ただし、費用の内訳が個々には困難であるため、特定の条件下で介護費、居住費、及び食費の50%が医療費控除対象とされます。あなたの父様の場合、要介護度3で指定介護老人福祉施設に入所しているため、該当する費用の半分が医療費控除として適用されます。医療費控除を申請するには、「指定介護老人福祉施設等利用料等領収証」が必要になります。

遺言書の内容と異なる遺産の分割

Q.遺言書の内容と異なる遺産の分割があった場合には、各人の課税価格はどのように決まりますか?

A.遺言書の内容と異なる遺産の分割が行われた場合、各人の課税価格は相続人全員で合意した分割協議の内容に基づいて決まります。遺言で特定の財産を受け取ることが決められていた場合でも、すべての相続人が遺産の分割について別の合意に達したなら、その合意した内容が課税の基礎となります。遺言での分配とは異なる協議を行い、それに基づいて遺産が分配された場合、その分配された遺産が各人の課税価格の根拠になるのです。

おむつに係る費用

Q.寝たきりの母が入院している病院におむつ代も支払っていますが、このおむつ代も医療費控除の対象になりますか?

A.医療費控除の対象とは、医療のために直接必要な費用を指します。寝たきりの状態の人や病気で寝たきりとなった人のおむつ代は、その治療に直接必要と医師が認めた場合、医療費控除の対象に含まれます。具体的には、医師が下記の条件を全て満たすと認定し、「おむつ使用証明書」を発行した場合に限ります。

1. 病気やけがで6ヶ月以上寝たきり状態と認められる人

2. 当該病気やけがに対して医師の継続的な治療が必要であり、おむつの使用が必要と認められる人

従って、貴方の場合は医師から「おむつ使用証明書」が発行されており、その必要期間内に使用したおむつ代であれば、医療費控除の対象となるでしょう。また、証明書が発行される前でも、医療のため直接必要と認められた費用は、証明書発行後と同様に医療費控除の対象です。医療費控除を受けるには、この証明書を確定申告書に添付するか、確定申告時にこれを提示することが必要です。

注記:おむつ代の医療費控除の申請が2年目以降の場合は、より簡易な証明手続が認められています。また、平成29年分以降の確定申告を平成30年1月1日以降に提出する場合、特定の情報を「医療費控除の明細書」に記載することで証明書の添付が省略できますが、この際、証明書などは5年間保存が必要です。

ストマ用装具に係る費用

Q.私は、H病院で人工肛門のストマの造設手術を受け、退院後も継続してストマケアに係る治療を受けています。H病院へは、治療費とは別にストマ用装具代を支払っていますが、医療費控除の対象となるでしょうか。

A.医療費控除には、医師などが行う診療に直接必要な費用が含まれています。人工肛門のストマや尿路の切り替えが必要な方は、造設手術後だけでなく、退院後も継続してストマケアが必要なため、治療を行う医師が必要と認めた場合、ストマ用装具の費用も医療費控除の対象になると考えられます。特に、治療を行う医師から「ストマ用装具使用証明書」が発行された場合、その装具の購入費用は医療費控除の対象として取り扱われます。確定申告をする際には、この証明書を確定申告書に添付するか、提示する必要があります。