寄附金控除の対象となる政治献金

Q.私は機械の下請加工を営む者ですが、今年某政党に100万円の政治献金をしました。この政治献金は事業所得の必要経費にはならないそうですが、所得税法上の優遇措置はありませんか?また、某政党からは領収証をもらっていますが、これ以外にどのような書類が必要ですか?

A.平成7年1月1日から令和6年12月31日までの期間に行った政治献金は、特定の条件を満たせば特定寄附金として寄附金控除が可能です。対象となるのは、一定の議員数を有する政党、総務大臣に届け出られた政治資金団体、衆議院議員や参議院議員が主宰する政治団体、また、公職推薦や支援を目的とする後援団体などです。これらの政治団体や公職候補者への寄附は、政治活動や選挙運動に関わるもので、量的制限を超えず、政治資金規正法や公職選挙法に基づき報告されていなければなりません。匿名や他人名義の寄附、特別な利益があるとされる寄附は対象外です。寄附金控除を受けるためには、確定申告時にその寄附金の詳細と受領団体が政治団体や特定の公職候補者であることを示す書類を添付する必要があります。具体的には、総務大臣の確認印のある「寄附金控除のための書類」を受け取り、確定申告に添付又は提示すれば良いです。この書類は、政治団体や公職の候補者から支出された寄附の領収書控として交付されます。もし確定申告時にこの書類を添付できなかった場合、後日税務署に提出することも可能です。また、指定期間内に政党や政治資金団体に対してした寄附については、税額控除を選択することもできます。

貸付事業用宅地等である小規模宅地等

Q.「貸付事業用宅地等である小規模宅地等」について説明してください。

A.「貸付事業用宅地等である小規模宅地等」とは、亡くなった人(被相続人)やその親族が経営していた不動産貸し出し業や駐車場業等の事業に使われていた土地のことを言います。この土地は、相続によって引き継がれた場合、特定の条件を満たすことで相続税が最大50%減額される対象になります。条件としては、大きく分けて2つあります。

1. 被相続人が使っていた事業用の土地を相続人が引き継ぎ、相続税の申告期限までその事業を続け、その期間中土地を保持している場合。

    1. 被相続人の事業を相続税申告期限まで引き継ぎ、継続していること。

    2. 相続税の申告期限まで土地を保有していること。

2. 被相続人と一緒に生計を立てていた親族が運営する事業用の土地を、相続人が引き継ぎ、同じく相続税の申告期限までその事業を続け、その期間中土地を保持している場合。

    1. 相続開始前から申告期限までずっと自己の事業を行っていること。

    2. 相続税の申告期限まで土地を保有していること。

「準事業」とは、不動産の貸し出しなどを相応の対価を得て継続的に行っているが、正式な事業とは認められない活動を指します。また、相続が始まる前の3年以内に事業用になった土地は、相続開始日まで3年以上特定の貸付事業(準事業を除く)に利用されていた場合に限り、この減額の対象とはなりません。

ふるさと納税

Q.社会人になって初めての給料で「ふるさと納税」をした場合、どのような税金の控除がありますか?

A.「ふるさと納税」は、2008年の法改正によって開始された制度で、2,000円を超える寄附金について、所得税と住民税から原則全額が控除されます。この制度では、寄附金が所得税法において「特定寄附金」と認められており、所得税では寄附金額から2,000円を差し引いた額か収入の40%のどちらか少ない額が控除できます。住民税においては、2,000円を超える部分の約2割(一部期間は1割)が、寄附をした翌年度の税金から控除されます。また、この制度はふるさとという名がついていますが、寄附はどの自治体にでも行え、特定の出身地に限られません。2015年の税制改正により、サラリーマンなど確定申告が不要な人も、ワンストップ特例制度を利用することで、所得税と住民税の控除を受けられるようになりました。この特例を受けるためには、寄附先の自治体が5団体以内であることと、寄附時に申請書を提出することが必要です。ただし、医療費控除など確定申告が必要な場合は、寄附金控除に関する情報も申告書に記載する必要があります。

国又は地方公共団体に対し土地を寄附した場合の寄附金の額

Q.土地を国又は地方公共団体に寄附した場合、寄附金控除を適用する際、昭和27年以前に取得し取得費が分からない土地については、寄附金の額はどのようにして計算されるのですか。

A.土地などの物品を寄附した場合、その寄附金の金額は一般的にその時の価値で計算されます。土地を国や地方公共団体に寄附する場合、税法上は譲渡とみなされず、寄附した土地の時価から譲渡所得を差し引いた金額が寄附金の額として扱われます。寄附にかかった費用も合わせて寄附金の計算に含まれます。特に、昭和27年12月31日以前に取得した土地に関しては、その価値の5%を取得費用と見なして計算されるため、資産価値の5%に寄附にかかった費用を加えた合計が寄附金額となります。

特定事業用宅地等である小規模宅地等

Q.「特定事業用宅地等である小規模宅地等」について説明してください。

A.「特定事業用宅地等である小規模宅地等」とは、特定の条件を満たす宅地のことを指します。これには以下のような条件があります。

1. 被相続人の事業に使われていた宅地で、被相続人の親族が相続などによって取得した場合。この宅地については、

   – 取得者が相続税の申告期限までにその事業を引き継ぎ、引き続きその事業を営んでいること

   – 相続税の申告期限まで引き続きその宅地を保有していること

が求められます。

2. 被相続人が生計を共にしていた親族の事業に使われていた宅地で、相続人が相続などによって取得した場合。この宅地については、

   – 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、継続して自己の事業をその宅地上で営んでいること

   – 相続税の申告期限まで継続してその宅地を保有していること

が必要です。

3. 相続開始前3年以内に新たに事業用に使われるようになった宅地であってはならないという条件もあります。ただし、例外として、相続開始前3年以内に事業用に使われるようになった宅地でも、特定の条件(建物や特定の減価償却資産が存在し、その価額が宅地の相続開始時の価額の15%以上であるなど)を満たす場合は、特定事業用宅地等である小規模宅地に該当します。

なお、これらの特例の適用と、個人の事業用資産の納税猶予制度は選べる制度になっており、納税猶予制度の適用を受ける特定事業用宅地等や個人の事業用資産を相続や遺贈で取得した場合、この小規模宅地の特例を選択することはできません。

固定資産の寄附

Q.公益財団法人○○育英会に寄宿舎の敷地用として土地を寄附した場合、寄附金控除額はどのくらいになりますか。

A.公益財団法人○○育英会は公益を大きく促進する組織であり、あなたが寄附した土地は、その時価額3,600万円を基準に寄附金控除の対象となります。しかし、土地の売却による所得に対して非課税の特例が適用されるため、寄附金の計算は時価から土地の売却所得に相当する額を差し引いた金額で行います。その結果、寄附金控除額は399万8,000円になります。この計算は、まず3,600万円から売却所得の3,100万円(3,600万円 – 500万円)を引き、寄附金として500万円を算定します。寄附金控除額としては、あなたの所得金額合計1,000万円の40%である400万円、または寄附金額500万円から微小な調整を行い、最終的に399万8,000円が控除されます。

社会福祉法人への寄附金と寄附金控除

Q.社会福祉法人「○○福祉協会」に50万円の寄附をしたいと考えており、今年の所得は500万円程度ですが、この寄附は寄附金控除の対象となりますか?

A.はい、社会福祉法人への寄附金は寄附金控除の対象になります。この寄附金控除を受けるためには、その寄附金が社会福祉法人の主要な業務に関連する寄附であることが必要です。さらに、寄附金控除を選択する場合、寄附金控除額は次のように計算されます。所得金額の合計の40%または特定寄附金の合計額のいずれか少ない額から2,000円を引いた金額になります。例えば、所得金額が500万円で寄附金が50万円の場合、寄附金控除額は49万8,000円になります。

計算は次の通りです。500万円の40%は200万円ですが、寄附金が50万円の方が少ないため、50万円を選択し、そこから2,000円を引いて49万8,000円が寄附金控除額となります。

公益を促進する目的での寄附の場合、その事実を記載した受領証を確定申告の際に提出または提示する必要があります。

私立学校に対する寄附金

Q.私は母校の私立学校へ寄附したいと思っていますが、どのような場合に寄附金控除の対象になるのですか。

A.寄附金控除は、私たちの国で公共事業の運営などに民間からの資金援助が重要な役割を果たしている現状を踏まえ、教育や科学の発展、文化の向上などに資する民間資金の導入を促進する目的で、1962年に導入されました。寄附金控除の対象となるのは、私立学校法に基づく学校法人が設置する幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校、専修学校などの運営に資する寄附金です。ただし、入学に関する寄附金は除外されます。寄附金控除を受けるには、①寄附金が学校運営に関連していること、受領したこと、寄附金の額と受領した日を証明する書類と②学校設置を主たる目的としていることを示す所轄庁発行の証明書のコピーを確定申告書に添付、または提出時に提示する必要があります。

公益の増進に著しく寄与する法人を設立するための寄附金

Q.学生に奨学金を提供することを目的とした「育英会」の設立計画が文部科学省から許可されました。この設立に際し、基本財産として現金を寄附しました。この寄附金は確定申告時に寄附金控除の対象としてよいでしょうか。設立に当たって財務大臣の指定は受けていません。

A.特定寄附金として認められる寄附金には、国や地方公共団体への寄附、または財務大臣が指定した公益法人等への寄附金、さらには公益の増進に顕著に寄与する法人への寄附金などが含まれます。ただし、公益法人等を設立するための寄附金は、財務大臣の指定を受けた場合のみ特定寄附金と認められます。従って、ご質問のケースでは、設立後に公益の増進に顕著に寄与する法人であるとしても、寄附時には法人が存在せず、また財務大臣の指定も受けていないため、寄附金控除の対象にはなりません。

入学に際して行う寄附

Q.長女がA大学を受験して合格したので、寄附金を40万円支払っていましたが、B大学にも合格したため、B大学に入学することにしました。この場合、A大学に支払った40万円は、入学しない大学に対する寄附ですから、寄附金控除の対象になりませんか。

A.たとえ、支払った寄附金が一般的な寄附金控除の対象になる特定の寄附金であったとしても、その寄附金が入学と関連して支払われたものである場合は、寄附金控除の対象外です。具体的には、学校への入学を目的とした寄附金、つまり学生本人やその家族が入学を希望する学校に対して、その学校からの入学許可が寄附金の支払いを条件とされている場合、または入学願書の受付開始から入学が予定される年の終わりまでの間に支払われた寄附金は原則として寄附金控除対象外とされています。また、入学希望に伴い支払った寄附金が、後に入学を辞退するなどの理由で実際には入学しなかった場合でも、寄附金控除の対象とはなりません。そのため、質問の場合でも、A大学への40万円の寄附金は寄附金控除の対象外となります。