贈与税額控除の額が相続税額を上回る場合の取扱い

Q.父が死亡し、私は相続により財産を取得しましたが、相続税額を計算していたところ、贈与税額控除の額が相続税額を上回ることになりました。この場合の上回る贈与税額はどうなるのでしょうか。

A.贈与税額控除が算出した相続税額を上回る場合、その超過分を還付してもらうことはできません。ただし、相続時精算課税の適用を受けていた場合に限り、相続時に算出した贈与税額が相続税額を上回れば、その差額の還付を受けることが可能です。これは、亡くなる前の3年以内に受けた贈与に関して適用される制度で、相続や遺贈を受ける際、以前に贈与税として支払った税額を相続税の計算において控除することができますが、これは二重課税を避けるための制度であり、支払った贈与税を相続のタイミングで調整する目的で設けられました。相続時精算課税の場合、特定の条件に一致する贈与税額が相続税額から控除できず、残額が発生する場合、その未控除分について還付を受けることが可能です。

移転登記未了の分譲住宅に係る住宅借入金等特別控除

Q.新築住宅の分譲を受けて居住しているが、所有権の移転登記が代金完済時までできない場合、居住を始めた年から住宅借入金等特別控除の適用を受けることは可能ですか?また、この場合、申告書に添付する登記事項証明書はどうなりますか?

A.一般的には、建物の所有権の保存登記や移転登記が完了しているかどうかが、住宅取得の有無の判断において重要です。これにより、申告書には登記事項証明書や売買契約書など取得事実を証明する書類の添付が求められます。しかし、代金完済時まで移転登記を行わない約束がある場合のように、特別な事情で登記が未了の場合もあります。そのような場合は、実際に住宅の引き渡しを受けた日をもって住宅を取得したと見なされ、住宅借入金等特別控除の適用が可能になります。この際、登記事項証明書がなくても、居住用家屋取得の事実やその対価、床面積を明確にする売買契約書等の添付で要件を満たすことができます。また、令和3年7月1日以降は、「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」に不動産番号を記載することで、登記事項証明書を添付する代わりになります。

配偶者が分割前に死亡している場合

Q.父が死亡し、相続税の申告をしましたが、遺産の分割をしていませんでした。配偶者の税額軽減の特例適用について記載しましたが、遺産を分割する前に母が死亡しました。私たち兄弟間で父の遺産の一部を母の取得分として確定させましたが、この場合、母が受けるべきだった配偶者の税額軽減の特例の適用を受けることができますか?

A.お母さんの相続人がお母さんの取得する財産を確定させたので、配偶者の税額軽減の特例の適用が可能です。相続によって得た財産が相続人によって分割される前に、その相続に関わる被相続人の配偶者が亡くなった場合、第一次相続で得た財産の全部または一部がその配偶者以外の相続人及び亡くなった配偶者の相続人によって分割され、その分割によって配偶者が取得した財産が確定した場合、その財産は配偶者が取得したものとして税額軽減の特例計算を行うことになります。

居住用家屋を2以上有する場合の住宅借入金等特別控除

Q.東京に居住していたが、仕事の都合で大阪勤務になり、大阪に新築マンションを取得しました。東京の家屋は売れず、妻と子供が引き続き居住しています。この場合、大阪で取得したマンションについて住宅借入金等特別控除が受けられますか?

A.居住用家屋を2つ以上所有している場合、住宅借入金等特別控除が受けられるのは、本人が主に居住すると認められる1つの家屋に限ります。あなたの場合、大阪の新築マンションが主に居住する家屋と認められれば、特別控除を受けられます。ただし、東京の家を売却し、3,000万円の特別控除の特例を適用する場合、住宅借入金等特別控除は受けられなくなることがあります。

海外に単身赴任した者が帰国した場合の住宅借入金等特別控除

Q.平成28年に新築住宅を取得し、その後3年間の住宅借入金等特別控除を受けた後で、令和2年に3年間の海外勤務に出た私(家族は日本の住宅に残った)が、令和5年に帰国して再びその住宅に住んだ場合、住宅借入金等特別控除の適用を受けられますか。

A.住宅借入金等特別控除を受けるためには、取得した住宅にその年の12月31日まで継続して居住する必要があります。ただし、赴任や療養などやむを得ない理由で家族が住み続け、事情が解消され共に住む場合は、居住しているとみなされます。従って、海外勤務期間中も家族が日本の家に住み続け、帰国後再び住むなら、その後の年分について住宅借入金等特別控除を受けることができます。令和2年から令和4年までの間は、年末時点で居住していないため適用外ですが、令和5年以降は適用されます。

住宅借入金等特別控除の対象となる家屋の増改築等(省エネ改修工事)

Q.省エネ改修工事は住宅借入金等特別控除の対象となる増改築等に当たると聞きましたが、具体的にどのような工事が対象となるのか教えてください。

A.金融機関などからお金を借りて特定の省エネに関わる改修工事を行った場合、住宅借入金等特別控除を受けることができます。対象となる「一定の省エネ改修工事」とは、家のエネルギー使用を効率化するための修理や改装で、次の4つのうちどれかに該当する工事を指します。

1. 居室の全ての窓の改修工事

2. 床の断熱改修工事

3. 天井の断熱改修工事

4. 壁の断熱改修工事

これらの工事が、下記の条件を全て満たす必要があります。

– 改修した部分の省エネ性能が2016年の基準を超えること。

– 改修後の住宅の全体的な断熱性能が、改修前より一段階相当以上向上すると認められること。

ただし、どの省エネ改修工事が対象となるかは地域によって変わる場合があるため、詳細は国土交通省の告示を参照してください。これらの工事を行う際は、以下のいずれかから発行される増改築等工事証明書が必要です。

1. 登録住宅性能評価機関

2. 指定確認検査機関

3. 建築士事務所に所属する建築士

4. 住宅瑕疵担保責任法人

2009年4月1日から2015年12月31日までに住宅を省エネ改修する場合、要件が緩和され、上記の条件を満たさない工事も特別控除の対象になり得ます。また、省エネ改修工事を行った場合、住宅借入金等特別控除の他に、特定増改築等住宅借入金等特別控除や住宅特定改修特別税額控除のいずれかを選択して適用することができます。

住宅借入金等特別控除の適用除外

Q.本年7月に譲渡した以前の家と銀行からの借入金を使い、郊外に三階建ての住宅を新築しました。10月に入居予定ですが、以前の家を譲渡したことで受けられる居住用財産の譲渡に伴う3,000万円の特別控除と同時に、住宅借入金等特別控除の適用も受けられますか。

A.住宅借入金等特別控除は、一定の条件下では適用を受けることができません。その一つの条件は、住宅を購入、増改築して使用を開始した年、またはその前の2年間、あるいは前年の所得税において、居住用財産を譲渡して特定の税務上の特例の適用を受けた場合です。これには、居住用財産を譲渡した際の長期譲渡所得税の特例、居住用財産の3,000万円特別控除、特定の居住用財産の買換え・交換特例、都市地域における中高層耐火建築物の建設のための買換え・交換特例などが含まれます。もしこれらの特例の適用を受けていれば、住宅借入金等特別控除を受けることができません。また、譲渡した既存の家屋(およびその敷地)に関して、特定の税務上の特例の適用を受けた場合、その居住の年までさかのぼって、住宅借入金等特別控除を受けることもできません。これに該当する場合、以前に受けた住宅借入金等特別控除に相当する税額を返納する必要があり、そのためには、譲渡年の3年以内(または、令和2年3月31日以前に譲渡した場合は前年または前々年)の所得税について修正申告書や期限後申告書の提出が必要になります。そして、これらの書類は、その他の資産の譲渡で特例の適用を受けた年の確定申告期限までに提出する必要があります。したがって、あなたの場合、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。

重婚の場合の相続税の総額と配偶者の税額軽減額の計算

Q.被相続人甲はアメリカ国籍の女性Aと婚姻しており、同時に日本人の女性Bとも婚姻しております。重婚状態で亡くなった場合、相続税はどのように計算しますか?また、配偶者の税額軽減はどうなりますか?

A.重婚状態にあるときの相続税の計算では、法定相続分において配偶者が二人いるものとして扱います。つまり、民法が定める配偶者の法定相続分の半分を、それぞれの配偶者に割り当てます。相続人の総数は、甲とA、甲とBの間にいる子供たちを含む配偶者AとBの合計人数で決まります。配偶者への税額軽減も、AとB両方に適用されます。この軽減額は、相続税の総額とA及びBの課税価格の合計を基に計算し、2人の配偶者で1人分の税額軽減額を共有します。それぞれの課税価格の比率に応じて軽減額を分割して控除することが可能です。

自己が居住しない新築家屋に係る住宅借入金等特別控除

Q.私は本年1月に長男が結婚したため床面積90㎡の家屋を銀行からの借入金で新築し、長男夫婦を居住させております。この場合に、住宅借入金等特別控除が認められますか。

A.お問い合わせの内容によると、ご自身が住むために新築家屋を取得し、自分が住むことになる6か月以内に実際に住むという条件を満たしていないため、住宅借入金等特別控除の適用は受けられません。さらに、もし家を新築して長男へ贈与し、長男がその家に住んだ場合でも、長男は家を購入するためのローンを組んでいないこと、また贈与で家を手に入れた場合には住宅借入金等特別控除が適用されないため、長男にもこの控除は適用されません。

住宅借入金等特別控除の対象となる家屋の増改築等 (バリアフリー改修工事)

Q.バリアフリー改修工事が住宅借入金等特別控除の対象となる増改築等の範囲に加えられたと聞きましたが、具体的にどのような工事が対象となりますか。また、その工事が、住宅借入金等特別控除の対象となるかどうかはどのように確認すればよいでしょうか。

A.住宅借入金等特別控除において、「一定のバリアフリー改修工事」として対象となるのは、家屋で高齢者などが自立して生活するために必要な構造や設備を整える増築、改築、修繕、または模様替えです。具体的には、通路や出入り口の拡幅、階段の設置や勾配の緩和、浴室や便所の改良、手すりの設置、室内段差の解消、出入り口の扉の改良、床表面の滑り止め化などが挙げられます。これらの工事が自宅に適用されるのは、2007年4月1日以降に住宅を自己の居住用途に供した場合です。

バリアフリー改修工事が住宅借入金等特別控除の対象かどうかは、登録住宅性能評価機関、指定確認検査機関、建築士が所属する建築士事務所、住宅瑕疵担保責任法人のいずれかが発行する増改築等工事証明書によって確認します。この証明書は確定申告書に添付する必要があります。バリアフリー改修工事を行った場合、住宅借入金等特別控除の他に特定増改築等住宅借入金等特別控除または住宅特定改修特別税額控除から一つを選択して適用することができます。この選択は、令和3年12月31日までに居住の用に供する場合に限られます。