修正申告等の特則

Q.当初提出していました相続税の申告書は、未分割の状態でしたが、この度、相続人間において遺産の分割が確定し、その結果、相続税額に異動が生じることとなりましたが、この場合の修正申告書等の提出について説明してください。

A.修正申告書や更正の請求書を提出できます。提出納期限の翌日から修正申告書を提出した日までの期間は、延滞税の計算期間には含まれないので、その期間に対する延滞税はかかりません。相続税法は、一般の修正申告の特例を持っており、相続税額が不足していた場合は、修正申告が可能です。このとき、修正申告書の提出期間は延滞税の計算には含まれません。また、申告や決定による課税価格や税額が過大だった場合は、事由を知った翌日から4ヶ月以内に限り、更正の請求が可能です。

胎児がある場合の相続税の申告方法

Q.私の友人Aは2か月前に急死しました。Aの妻は妊娠3か月で他に子供はなく、またAの両親は健在です。この場合、Aについての相続税の申告について説明してください。

A.日本の法律では、胎児もすでに生まれたものと同じように扱い、相続権を認めています。しかし、相続税の申告時にその胎児がまだ生まれていない場合、その胎児がいないと仮定して相続人たちの相続分を計算し、その基に税金を申告します。この時、Aの妻とAの両親が申告を行います。胎児が実際に生まれれば、生まれた日の翌日から10ヶ月以内に、親権者などが胎児に代わって申告を行う必要があります。もしAの両親がすでに申告済みで、胎児が生まれたことで相続権が変わる場合は、その出生を知った翌日から4ヶ月以内に申告内容の更正を請求できます。未成年者の相続に関する法律行為には、法定代理人の同意が必要であり、未成年者の相続人が複数いる場合や父母と利害が対立する場合は、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求することになります。

制限納税義務者が相続税の申告書に添付する印鑑証明書

Q.被相続人が亡くなった後、米国籍の共同相続人Aが遺産分割協議を行う際、分割協議書に印鑑証明書を添付しなければならないと聞きました。しかし、Aは米国籍を持っていてどうしたらいいですか?

A.米国籍を持つAは、印鑑証明書を取得することができません。そのため、パスポートで身元を証明し、アメリカ領事館または公証人役場で署名の認証を受けるべきです。この認証をもって、遺産分割協議書に添付することが推奨されます。アメリカの領事は公証人の資格を持ち、日本の印鑑証明書に相当する役割を果たしています。不動産の登記に際しては、日本に住所を持たない外国人でも、公証人役場の認証を用いて印鑑証明書に替えることが可能です。

胎児がある場合の申告期限の延長

Q.夫が交通事故で死亡し、5700万円(債務控除後)の遺産を相続することになりましたが、相続人には、私(妻)のほか、子供3人と相続税の申告期限後に出産予定の胎児がおります。そこで、この胎児がないものとして相続税の計算をすると、申告書を提出しなければなりませんが、胎児が生まれたものとすると提出義務がなくなります。このような場合にも、法定の申告期限までに、いったん申告書を提出しなければならないのでしょうか。

A.相続が始まった時点で相続人になる胎児がいて、その胎児が相続税の申告期限までに生まれていない場合は、まずはその胎児を考慮せずに相続税を計算して申告する必要があります。その後、その胎児が実際に生まれた場合は、更正の請求を行うことで相続税を再計算することになります。また、胎児以外の相続人は税務署長に申請して認められた場合、その胎児が生まれた日から2ヶ月以内に申告期限を延長することが可能です。

申告書提出期限の延長

Q.共同相続人間で遺産分割協議も終え、申告の用意をしていたところ、申告期限の20日前に認知請求に関する裁判が確定し、新たに相続人が増えました。このような場合にも、元の申告期限までに申告しなければならないのでしょうか。

A.元々の相続人3名(A、B、C)は、税務署長に申請し、認められると、認知請求が認められた日から2ヶ月以内に申告期限を延長することができます。相続税の申告期限が迫っている中で、相続人に関する変更(認知、排除、取消等)が生じた場合、税法上の規定に従って、事実が起こった日から2ヶ月の範囲で申告期限の延長を求めることが可能です。新たに認知された相続人については、認知請求が認められた日から10ヶ月以内に申告を行う必要があります。

失そう宣告を受けた場合の申告期限

Q.私の友人Aは海外へ出張中に行方不明となり、7年間生死不明のため、Aの妻は家庭裁判所へAの失そうの宣告を請求し、この度、失そうの宣告を受けました。この場合の相続税の申告期限はいつになりますか?

A.失そう宣告を受けた場合、相続税の申告期限はその失そう宣告に関する家庭裁判所の審判の内容を知った日の翌日から10ヶ月後の日に設定されます。一度失そう宣告を受けると、その人は法的に亡くなったとみなされます。このため、失そう宣告に関する裁判所の審判が確定したことを知った日が、相続が始まったと認識される日になるのです。

共同相続人に行方不明者がいる場合の相続税の申告

Q.父が死亡し、兄弟5人が父の相続をすることになりましたが、その中の次男が行方不明です。この状況で民法上の手続き及び相続税の申告はどうなりますか?

A.民法上の手続きでは、行方不明者が7年経過しない内に家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることはできません。その場合、他の共同相続人が家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。選任された管理人は、家庭裁判所の許可を得て遺産分割協議を行うことができます。

相続税の申告に関しては、相続が開始されたことを知った翌日から10ヶ月以内に申告する必要があります。行方不明の次男を除いた4人の相続人は、翌年7月8日までに申告を行う必要があります。行方不明の次男も、もし現れたら同様に相続の開始を知った翌日から10ヶ月以内に申告をしなければなりません。

相続登記 と相続税

Q.私の父は、昭和19年に死亡しましたが、その際に不動産の相続登記をしなかったため、現在も父名義のままとなっています。私も高齢になりましたので、この度、長男である私と弟2人で相続登記をしたいと思います。この場合に相続税はかかるでしょうか。

A.今回、不動産の相続登記をしても新たに相続税がかかることはありません。しかし、弟さんはこの相続によって財産を得ることはできません。相続税とは、誰かが亡くなったり遺言によって財産をもらった場合にかかる税金です。相続があった場合、相続税の申告は相続開始を知った翌日から10ヶ月以内にしなければなりません。不動産の相続登記があってもなくても、相続財産として申告が必要です。昭和19年にお父さんが亡くなったとき、当時の法律により、あなたが家督を継いで全財産を引き継いでいます。したがって、今回相続登記後にその財産を弟さんに名義変更すると、その行為が贈与と見なされ、弟さんには贈与税がかかります。

住宅取得資金の贈与の特例を受けた場合の住宅借入金等特別控除の対象範囲

Q.本年7月にマンションを2,300万円で購入し、この購入資金として父親からの住宅取得資金贈与500万円と銀行からの借入金2,000万円があります。この場合、住宅借入金等特別控除の対象金額はどうなりますか?なお、住宅取得資金について贈与税額計算の特例を受けています。

A.住宅借入金等特別控除の対象となる金額には制限があり、住宅の取得に必要な資金に限定されます。したがって、贈与された住宅取得資金と借入金の合計がマンションの購入価格を超える場合、どちらの資金がマンションの購入に使用されたかを判断する必要があります。贈与税額計算の特例の適用を受けているとき、まず贈与された住宅取得資金が使用されたと見なされます。この例では、2,300万円のマンション購入価格から500万円の贈与された住宅取得資金を差し引いた、残りの1,800万円が住宅借入金等特別控除の対象となります。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除と住宅借入金等特別控除の適用

Q.昨年11月に自宅を売却しましたが、不況のため損失が出ました。確定申告で居住用財産の譲渡損失の繰越控除を申請しました。そして、今年4月に新しい住まいを借入金で購入し、5月に入居しました。この場合、今年の確定申告で譲渡損失の繰越控除と住宅借入金特別控除の両方を受けることは可能ですか?

A.自宅などの居住用財産を売却して損失が出た場合、その損失を翌年以降に繰り越して控除する特例が適用されます。また、新しく借入金で住宅を購入した場合は、住宅借入金の特別控除を受けることができます。質問のケースでは、譲渡損失の繰越控除と住宅借入金特別控除の2つを受けることが可能です。