自色申告者の記帳制度の概要

Q.白色申告者を対象とした記帳・帳簿等保存制度について、その概要を説明してください。

A.不動産所得、事業所得、または山林所得を得る業務を行っている人は、前年や前々年の確定申告があったか、また所得の額がどれくらいであったかに関係なく、取引記録の帳簿を準備しなければなりません。この帳簿には、年間を通じてこれらの所得に関連する総収入と必要経費を記録する必要があります。簡単な方法で記録することが許されています。さらに、これらの帳簿は7年間、そしてその他の関連する文書は5年間保存する必要があります。不動産所得、事業所得、または山林所得を得る業務に従事している居住者が確定申告を行う際には、その年の総収入と必要経費に関して記載された文書(収支内訳書など)の提出も必須です。ただし、帳簿記録がなく、所得に関連する収入が300万円を超える場合は除き、その所得が事業所得であることが認められる場合、その所得は雑所得とみなされる可能性があることに注意が必要です。

災害により帳簿等を消失した場合

Q.受託加工業を営んでおり、毎年確定申告していますが、失火により事業所に保管していた帳簿書類及び過去の申告書が消失してしまいました。この場合申告すべき所得金額が不明であることから申告の必要はありませんか。

A.帳簿書類や過去の申告書の控えなどが災害で失われた場合には、事業者や税理士は申告をするのが難しい状況になることがあります。このような時、可能な方法で帳簿書類を復元し(例えば、取引先や金融機関に取引内容を確認するなど)、合理的な方法に基づいて申告書を作成する必要があります。さらに、過去に提出した申告書の内容を確認する際は、税務署が提供する「申告書等閲覧サービス」を利用し、原則としてはコピー交付はされないものの、災害により重要書類が失われた場合は、災害を証明する書類を提出することで必要な部分のコピーを得ることができます。従って、帳簿などが災害で失われた場合でも、上記の方法で申告書を作成し、提出する必要があります。

復興特別所得税

Q.平成25年分の所得税から復興特別所得税が課税されると聞きましたが、何か特別な手続が必要ですか?

A.「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」が平成23年12月2日に公布され、復興特別所得税が設立されました。この制度により、所得税を納める義務がある方は、所得税と一緒に復興特別所得税も平成25年から令和19年まで納める必要があります。復興特別所得税の計算は所得税の基準所得税額に2.1%を乗じて求め、給与所得者は給与から源泉徴収されます。また、平成25年から令和19年までの各年の所得税の予定納税基準額及び予定納税基準額に2.1%を乗じた金額の合計が15万円以上の場合、予定納税と合わせて復興特別所得税も納付する必要があります。所得税と復興特別所得税は別々に申告・納付しますが、確定金額の合計に基づき申告書や納付書に記載し、合計額を納付しますので、特別な手続は必要ありません。予定納税に関しては、予定納税基準額とその基準額に2.1%を乗じた金額を合算し、合計が15万円以上になる場合に予定納税が必要です。

国外財産調書の提出制度

Q.海外に不動産や預貯金を保有している場合、確定申告の際にどのような書類を提出しなければならないのでしょうか?

A.居住者が年の最終日(12月31日)に5,000万円を超える価値の海外資産を持っている場合には、翌年の3月15日までに国外財産調書を所属する税務署に提出する必要があります。この国外財産調書には、資産の種類や量、価値などの詳細を記入する必要があります。海外財産とは、海外にある動産や不動産、預貯金、有価証券などを指し、それらの価値は12月31日時点の市場価値またはそれに準じる見積価値で計算されます。計算にはその日の外国為替レートも使用されます。もし、自分の海外財産の合計が5,000万円を超えるなら、指定された期間内に国外財産調書を提出してください。さらに、国外財産に関する所得が2,000万円を超える場合の他の報告義務は、この調書の提出で免除されます。また、提出が遅れたり、誤った情報で提出した場合には罰則が適用される場合があります。ただし、一定の条件下では罰則が軽減されたり、免除される場合もあります。令和4年度の税制改正により、令和5年分以後の提出期限はその年の翌年の6月30日に変更されています。

財産債務調書

Q.今年2,000万円を超える所得があるため、確定申告の際には財産債務調書を提出しなければならないと聞きましたが、どのようなものですか。

A.平成27年度の税制改正により始まった国外転出時課税制度を実施するため、所得税と相続税の正確な課税を確実にする目的で、「財産債務調書」という新しい制度が設けられました。この制度では、年間所得金額が2,000万円を超える人、総資産が3億円以上、または国外転出時課税の対象となる資産が1億円以上の人が対象となります。提出期限は翌年の3月15日までです。財産債務調書には、財産や負債の種類、数量、価額、不動産や有価証券の所在地や銘柄などを記載する必要があります。この書類を提出することで、所得税と相続税の申告加算税が5%軽減されますが、提出しないか記載が不備の場合は5%加重されます。ただし、財産債務調書自体には罰則が設けられていませんが、国外財産調書の不提出や虚偽記載には罰則があります。令和4年度の税制改正では、提出基準と期限がさらに見直され、総資産が10億円以上の人も対象になり、提出期限が翌年の6月30日に変更されました。

電子申告における第二者作成書類の添付省略

Q. e-Taxを利用して所得税の確定申告書を提出する場合、生命保険料控除の証明書など第三者作成書類の添付省略の制度について教えてください。

A. e-Taxを使用して所得税の確定申告書を提出する際、生命保険料控除の証明書などの第三者作成書類に関しては、その内容をe-Tax上で入力して送信することで、直接税務署にこれらの書類を提出または提示する手続きを省略できます。ただし、税務署は入力内容の確認のために、法定申告期限から5年間、これらの書類の提出または提示を要求することがあります。要求に応じなかった場合、確定申告書にこれらの書類が添付または提示されていないものとして扱われます。省略が可能な第三者作成書類には、給与所得者の特定支出の控除の特例に関する証明書、個人の外国税額控除に関する証明書、雑損控除の証明書、医療費通知や医療費に関する使用証明書(おむつ証明書など)、セルフメディケーション税制に関する書類、社会保険料控除の証明書、小規模企業共済等掛金控除の証明書、生命保険料控除の証明書、地震保険料控除の証明書、寄附金控除の証明書、勤労学生控除の証明書、住宅借入金等特別控除に係る書類、特定増改築等住宅借入金等特別控除に関する書類、政党等寄附金特別控除の証明書、認定NPO法人寄附金特別控除の証明書、公益社団法人等寄附金特別控除の証明書、特定震災指定寄附金特別控除の証明書が含まれます。令和3年分以降の所得税からは、医療費控除の明細書を入力して送信することで、税務署への提出または提示を省略できるようになりました。また、セルフメディケーション税制の明細書も平成29年分以降の所得税から同様の手続きが取れます。平成31年4月1日以降は、給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票、特定の証券投資信託などの書類の提出または提示も不要になりました。

収支内訳書の添付

Q.確定申告書に収支内訳書を添付しなければならない人はどのような人ですか。また、収支内訳書にはどのような事項を記載すればよいのですか。

A.確定申告書に収支内訳書を添付する必要があるのは、その年に不動産所得、事業所得、または山林所得を得ていた人です(ただし、青色申告者は除く)。提出する収支内訳書には、以下のような情報を所得の種類ごとに分けて記載する必要があります。1) 総収入金額:商品や製品の売上、サービス提供からの収入、農産物の売上と年末時点での農産物の見積価額の合計、賃貸料、山林の伐採や譲渡からの収益、家事消費分など、あらゆる収入の合計。2) 必要経費:商品や製品の売上原価、年始時点の農産物の棚卸評価額、従業員への給与、小作料、外注費、償却費、貸し倒れ損失、不動産の地代や家賃、利息支払い、その他すべての経費分類。さらに、還付を受けるための申告、確定損失の申告、年の途中での死亡や出国に伴う確定申告、非居住者の確定申告においても収支内訳書が求められます。また、雑所得で前々年の収入が1,000万円を超える人は、それに応じた収支内訳書を提出する必要があります。これらは所得税法に基づくルールです。

確定申告書の撤回

Q.私はA社に勤務するサラリーマンですが、貸家が1軒あり、その所得を計算したところ23万円となりましたので確定申告をしましたが、計算違いがあり不動産所得は18万円であることが分かりました。この場合、確定申告義務はないこととなりますので、私が提出した確定申告書をないものとすることはできませんか。

A.確定申告書に誤りがあったとしても、提出済みの申告書は有効です。提出した申告書によると、給与所得以外の所得が20万円を超えるため、確定申告書を提出しなかったことにはできません。そのため、確定申告の期限から5年以内であれば、更正の請求を行って不動産所得の計算誤りによる過大申告を修正し、納めすぎた税金の減額を求めることが可能です。しかし、給与所得以外の所得が20万円以下で確定申告不要な場合は、撤回したい旨の書類を提出することで申告書の撤回が可能で、既に納めた税金は過誤納金として返金されます。ただし、改めて確定申告を行うまでは、申告をしていないものとみなされます。

転居した場合の確定申告書の提出先

Q.昨年12月に住所を移転したが、所得税の予定納税額は旧住所の税務署に納付しております。この場合、確定申告書はどちらの税務署に提出すればよいでしょうか?

A.原則として、確定申告書の提出先は、提出時点でのお住まいの地域を担当する税務署になります。通常、所得税の納税地はお住まいの地域と同じと考えられるため、お住まいを移転すると、納税地も新しい住所地と同じになります。そのため、お住まいを甲市に移転した後は、甲税務署が新しい納税地になるので、甲税務署に確定申告書を提出する必要があります。もし、納税地に変更があった後で間違えて旧納税地の税務署に確定申告書を提出してしまった場合でも、その税務署は提出を受理し、提出された確定申告書を新納税地の税務署に転送し、納税者にその旨を通知する決まりになっています。

法定申告期限内に2通の確定申告書を提出した場合

Q.3月1日に提出した所得税の確定申告書の後、計算誤りを発見し、納付すべき所得税の額が過大であることに気づきました。その後、確定申告書の提出期限である3月15日に再度確定申告書を提出しました。この場合、どちらの申告書に基づいて所得税額を納付すれば良いですか?

A.法定申告期限内に2通以上の申告書が提出された場合、特に声明がない限り、最後に提出された申告書が正式な申告書として扱われます。このルールは、法定申告期限内であれば申告書の差し替えを可能とするためのものですが、先に提出された申告書に還付金が指定されており、既に還付が行われている場合は適用されません。したがって、あなたの場合は3月15日に提出された確定申告書に基づいて所得税額を納付すべきです。