居住者と非居住者の期間がある場合の課税方法

Q.居住者が賃貸住宅を残して年の中途で出国した場合、どのような申告をすればよいでしょうか。

A.このケースでは、居住者期間と非居住者期間の所得を合わせた額をもとに、居住者と同じ方法で計算し申告します。具体的に言うと、居住者から非居住者に変わった年、または非居住者のまま出国した場合には、所得税法に基づき、出国時までの申告を行います。これには出国時の申告に関連する収入を含め、出国時の申告での納税額や還付金を差し引いたり足したりして申告を行います。さらに、所得控除を申請する際は以下の点に注意が必要です。雑損控除は、居住者期間中と非居住者期間中の国内資産で発生した損失のみが対象です。医療費、社会保険料、小規模企業共済掛金、生命保険料、地震保険料控除は、居住者期間中に支払った分のみが対象です。扶養親族の判定は、納税管理人の届出があるかどうかで年の終わりまたは居住者でなくなった時が基準となります。外国税額控除額の計算は、非居住者期間中の所得がないものとして行います。

非居住者の課税

Q.令和5年分の所得税について、非居住者に対する課税は、どのような方法で行われるのですか。

A.非居住者への課税は、日本国内で得られた所得に対して行われます。この所得は総合課税または分離課税の方法によって税がかけられます。非居住者が日本国内に恒常的な施設を持っているかどうかによって、所得が総合課税または分離課税されるかが変わります。また、日本が租税条約を結んでいる国の人が対象の場合、条約に基づいた税の適用を受けることができます。例として、スリランカなどでは、租税の軽減や免除を受けられる特別の制度があり、対象者は外国税額控除の対象となります。非居住者の所得の種類と、それぞれが総合課税や分離課税の対象となる条件は複雑で多岐にわたるため、具体的なケースによって異なります。

非居住者の課税範囲(国内源泉所得)

Q.非居住者については、国内源泉所得について課税されるということですが、国内源泉所得とは、どのような所得をいうのですか。

A.国内源泉所得とは、以下のような所得です:

1. 非居住者が国内の恒久的施設を通じて事業を行う場合の所得。恒久的施設が提供する機能や使用する資産、内部取引などを考慮して、恒久的施設に帰される所得です。

2. 国内にある資産の運用、保有、または譲渡により得られる所得。ただし、一定の例外を除く。

3. 組合契約事業から得られる利益で、組合契約に基づいて配分される所得です。

4. 国内にある土地や建物の譲渡による所得ですが、一定の条件下での譲渡は除かれます。

5. 国内で提供される人的役務(例:芸能人の活動、専門家によるサービス等)から得られる所得。

6. 国内の不動産の貸し出しや船舶・航空機のレンタルで得られる賃貸料。

7. 国内での業務に関連する使用料や対価、利子、配当等の所得。

8. 国内で勤務やその他人的役務の提供に基づき得られる給与、報酬、公的年金等。

9. 国内での広告宣伝活動による賞金。

10. 国内事業における保険金、補償金、損害賠償金等。

11. 定期積金の給付など、特定の契約に基づく所得。

12. 匿名組合契約に基づく利益の分配。

13. 国内の資産からの贈与や埋蔵物、懸賞金などの一時所得やその他の経済的利益に関連する所得。

これらはすべて国内で発生する源泉があるため、非居住者の国内源泉所得として扱われ、日本国内で課税の対象となります。

租税特別措置法第26条の適用と更正の請求

Q.私は租税特別措置法第26条(社会保険診療報酬の所得計算の特例)を用いて事業所得を計算し確定申告しました。しかし、実際の収支を計算した結果、申告額が過大だったことに気づきました。この場合、更正の請求は可能でしょうか?

A.国税通則法第23条第1項によると、申告書に記載した税額が法令の適用誤りや計算間違いで過大である場合に、更正の請求が可能です。租税特別措置法第26条を用いて確定申告書に事業所得の計算方法を記載している場合、所定の率により算出した金額が社会保険診療報酬に関連する必要経費としてみなされます。この計算方法か、実際の経費に基づく計算かは確定申告時に納税者が選択できます。しかし、もし所定の率による計算で必要経費を算定しており、実際にかかった経費がこの概算よりも多かったとしても、これは法令の適用誤りや計算間違いとはみなされず、更正の請求は認められないということになります。

還付請求申告書の修正申告 と加算税

Q. 令和4年分の所得税に関して、還付請求のために提出した申告書が調査で申告漏れがあると判明し、修正申告を行いました。この場合、過少申告加算税が賦課されるのか。

A. 還付請求申告書を修正するとき、増えた税額には通常、過少申告加算税が課されますが、あなたのケースでは還付すべきでない金額の全額が取消され、さらに税額が上がったため、最初の申告書は還付請求申告書とは見なされません。還付請求のための申告書に提出期限はないものの、実際に税金が発生する確定申告は特定の期限までに提出する必要があります。あなたが提出した修正申告書は、本来の提出期限を過ぎた後の申告であるため、無申告加算税が適用されることになります。

未払配当金を受領辞退した場合の更正の請求

Q.未払配当金を受領辞退した場合、更正の請求は可能ですか?また、その場合「回収できないこととなった金額」は源泉徴収前の金額ですか、それとも源泉徴収税額を差し引いた後の金額ですか?

A.会社の役員が債権者の損失を軽減するために、自分が受け取る配当金を辞退する必要が生じた場合、辞退した日から2ヶ月以内にその金額が回収できなくなったものとして更正の請求が可能です。これは特別な清算、破産手続開始、再生手続開始、更正手続開始、または会社整理の状態に陥った場合など、特定の条件下で行うことができます。受領辞退した未払配当金についての「回収できないこととなった金額」は、税金(源泉所得税及び復興特別所得税)を引いた後の金額として計算されます。つまり、もし配当金が100万円で、源泉所得税及び復興特別所得税が合わせて204,200円だった場合、実際の回収できなくなった金額は795,800円を基準とします。更正の請求をする際は、配当所得の金額を204,200円、配当控除額をこの204,200円に対応する金額、源泉徴収税額を204,200円として、その上で所得税額の計算を行います。

廃業後に生じた貸倒損失

Q.私は、令和4年9月に鉄工業を廃業しました。廃業時に売掛金500万円が残っていましたが、そのうち400万円について、令和5年7月に売掛先の甲社が倒産したため回収不能となりました。この場合の貸倒損失の金額400万円は、どのように取り扱われるのでしょうか?なお、廃業した令和4年分及びその前年の令和3年分の申告した所得の内容は以下の通りです。令和4年分の事業所得の金額は100万円、給与所得の金額は200万円、令和3年分の総所得金額は400万円、事業所得の金額は300万円、給与所得の金額は200万円です。

A.お問い合わせの貸倒損失400万円については、最初に令和4年分の事業所得100万円から差し引くことができます。令和4年分で控除しきれない残りの300万円は、令和3年分の事業所得200万円から差し引くことが可能です。しかし、それでもまだ残る100万円は、損失として認められず、切り捨てられます。この特例利用のためには、売掛金が回収不能になった事実が生じた翌日から2ヶ月以内に更正の請求を行う必要があります。

支給された賞与の返還による更正の請求

Q. 会社が不況で欠損が確定したため、役員賞与を返還しました。この返還した賞与について、確定申告後に更正の請求は可能ですか?

A. 一部の所得を除き、収入金額や総収入金額の全部または一部が回収不可能になったり、返還することになったら、その金額を所得計算上なかったものとして扱えます。この場合、事実が生じた日から2か月以内には更正の請求が可能です。しかし、質問のケースでは、役員から会社に返還された賞与は任意の寄付とみなされ、給与所得計算上除外されるものではなく、更正の請求の対象にはなりません。

貸倒引当金の繰入れを撤回するための修正申告

Q.前年分の確定申告で適法に貸倒引当金を必要経費に算入しましたが、今年の利益が高額になるため、繰り入れなかった方が有利かもしれません。この場合、前年分の修正申告により貸倒引当金の必要経費算入を撤回することは可能ですか?

A.青色申告者は、一括して評価する債権に関する貸倒引当金を費用として計上する特例を受けることができますが、この特例を利用するかどうかは青色申告者の選択に委ねられています。一度選択して確定申告をした場合、選択した内容に基づき税金が計算されます。この選択した内容は、法律で変更が認められている例外を除き、変更できません。そのため、前年分の確定申告で貸倒引当金を費用として計上した後にそれを撤回することは、原則として認められません。

少額配当の申告を撤回する更正の請求

Q.少額配当の総額30万円を確定申告に算入した後、税率が上がることが分かり不利になると検討した結果、申告を撤回し少額配当を除外するための更正の請求をすることは可能ですか?

A.納税者は確定申告で少額配当を総所得金額に含めるかどうかを選択できます。しかし、一度提出した確定申告を後で撤回し、少額配当を除外するための更正の請求や修正申告をすることは、税法上認められていません。これは、確定申告や更正の請求制度の本来の目的に沿わないため、高い税率を避けるための意思表示の変更は許されないことになります。また、もし少額配当を総所得金額に含めずに提出した確定申告について、少額配当所得を除外したことで計算ミスがあったとしても、これを更正の請求で修正することはできません。