出向先から帰国した者の確定申告

Q.3年間のアメリカ勤務を終えて4月に帰国し、本社営業部に勤め始めた私は、出向時に自宅を会社に借り上げさせ、賃貸料を受け取っていました。本年分の確定申告はどのようにすればいいですか?

A.あなたがその年に、「非永住者」以外である「居住者」と「非居住者」の区分に2つ以上該当した場合、それぞれの期間に応じた所得に基づいて所得税が課されます。帰国後は「居住者」としてのすべての所得と、帰国前の「非居住者」としての国内で得た不動産所得を含む所得を合わせて申告する必要があります。しかし、海外での所得については、非居住者期間中は確定申告の必要はありません。

商社員の海外出向

Q.私はA物産の海外事業部で働いていましたが、今年6月にイタリア支社へ3年間の転勤が決まりました。毎年A物産からの給与と貸家からの不動産所得を申告していたのですが、今年はどうすれば良いのでしょうか?税理士には納税管理人として依頼しています。

A.海外に転勤する場合、通常は出国後に非居住者となります。非居住者は出国時に確定申告を行い、その後は一定の国内源泉所得についてのみ税金を支払います。しかし、あなたは税理士を納税管理人として登録しているので、出国時の確定申告は不要です。来年の3月15日までの通常の申告期限に、出国前の全所得と出国後の国内源泉所得である不動産所得について確定申告をする必要があります。不動産所得が法人からの賃借の場合、支払われる賃料の20.42%が源泉徴収されますが、これは分離課税されず、他の所得と合算して申告し、年税額を精算します。

非居住者の厚生年金脱退一時金に対する課税

Q.米国人であるS氏が日本で勤務し、その期間に支払った厚生年金の脱退一時金を受給した場合、日本におけるその課税関係はどのようになりますか?

A.厚生年金や国民年金は、通常10年以上保険料を支払うことで年金の受給資格が得られます。しかし、日本に短期間滞在した外国人はこの条件を満たさないことが多いため、1995年(平成7年)4月から、条件を満たさない人も脱退一時金を受給できるようになっています。この一時金を受け取る条件としては、帰国後2年以内に必要な手続きを行うことです。この脱退一時金は退職手当等と見なされ、支払い時に20.42%の税率で源泉徴収されます。しかし、非居住者がこの一時金を受け取る場合、受給翌年の1月1日以降に適切な申告を行うことで、居住者として計算される税額に基づいて過払い税金を還付してもらうことが可能です。この申告では、国外の収入も含めた退職所得の総額や勤続年数を全期間で考慮する必要がありますが、所得控除は適用されません。一方、国民年金の脱退一時金に関しては、源泉徴収の対象外であり、最高495,600円までの支給で、他に退職手当等がなければ課税されないことが多いです。

居住者・非居住者の区分

Q.当初定められた期間より早く海外支店から帰国し、または予定よりも長く勤務した場合、居住者と非居住者の区分はどうなりますか?

A.税法では、日本国内に住所がある人、または1年以上継続して居住する人を居住者と定めています。一方で、これに該当しない人は非居住者とされます。しかし、事業や職業のために国内外で住んでいる場合、居住期間が最初から1年未満であることが明確な時を除き、国内に居住するとみなされます。

あなたのケースでは、海外勤務から帰国するまでは非居住者となります。具体的には、出国日はまだ居住者と見なされ、出国翌日から帰国日までは非居住者、帰国翌日から再び居住者となります。

あなたの友人の場合は、海外での勤務が1年以上継続することが確定した日までは居住者、その翌日から非居住者となります。

非居住者が受ける退職手当等の選択課税について

Q.非居住者でも、国内で勤務していた期間に対応する退職手当等を受けた場合、その退職所得控除額の計算において勤続年数はどう計算するのですか。

A.非居住者が国外の事業所から退職し、退職手当等を受け取る場合、この退職手当等のうち、国内で勤務していた期間に対応する部分(国内源泉所得)は、通常20.42%の税率で分離課税されます。しかし、居住者期間に基づき支払われる退職所得については、勤続年数に基づく退職所得控除額を用いて、所得税の負担を軽減することが可能です。非居住者の場合でも国内での勤務に基づいて受ける退職手当等があるならば、その退職手当等の総額を基に退職所得を計算し、超過累進税率を適用する方法を選択できます。この場合、勤続年数の計算は、非居住者として勤務した期間、すなわち国外支店での勤務期間も含めて行います。退職所得の選択課税を受けるためには、退職手当等の支払を受ける年の翌年1月1日以後(もしその退職手当等の総額が前年内に確定した場合は、確定日以後)に、所轄税務署長に対して、所定の事項を記載した申告書を提出する必要があります。

非居住者が国内の土地を譲渡した場合

Q.私は米国在住の友人(非居住者)の納税管理人となっています。今年8月に、その友人は国内に所有していた土地を事業用地として1億円で売却しました。この土地の譲渡についての課税はどのようになりますか。

A.非居住者が日本国内で土地を売却した場合、その取引は国内源泉所得と見なされ、日本での課税の対象となります。具体的には、土地を売却した際の対価が1億円以下でもそれが個人で自己や親族の住宅用に購入した場合を除き、事業用地などの譲渡は国内源泉所得として扱われます。課税の方法には、源泉徴収の上での総合課税、源泉徴収のみで完了する源泉分離課税がありますが、土地の譲渡により生じる所得は源泉徴収後に総合課税が適用されます。また、日米租税条約により、不動産の譲渡によって生じた所得は不動産の所在地国で課税されることが規定されています。この場合、譲渡対価の1021%の税率で源泉徴収され、土地を譲渡した翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告が必要です。非居住者の譲渡所得の計算や税額の算出は居住者と同じように行われ、特定の租税特別措置法の適用を受けることができます。

非居住者の受けるみなし配当

Q.私の父は、英国の子会社に2年間の予定で単身出向中です。父が保有する甲社の株式による清算分配金が送金され、そのうち「みなし配当」とされる部分は、父が国内で得る不動産所得と合算して申告しなければなりませんか。

A.お父様が外国へ1年以上出向されているため、所得税法上非居住者とみなされます。非居住者が日本国内での源泉所得である配当等を受ける場合、その配当等も含め、非居住者の源泉分離課税の対象となります。ですので、お父様は総合課税の対象となる国内源泉の不動産所得のみを申告する必要があり、清算による分配金のうち「みなし配当」とされる部分を合算する必要はありません。

非居住者に係る総合課税

Q.3年間の海外勤務となった私は、国内の居住用家屋を知人に貸すこととしました。この場合に発生する令和5年分の不動産所得はどのように申告すればよいのでしょうか。

A.海外勤務中も国内の家を貸し、その収入がある場合、非居住者としても総合課税によって税金が課されることになります。この総合課税の対象となる不動産所得については、居住者と同じ方式で所得税が計算され、申告する必要があります。ただし、利用できる控除は限られており、雑損控除(国内資産からの損失のみ)、寄附金控除(特定の寄附金に限る)、基礎控除、配当控除がそれにあたります。租税特別措置法で定められた特例を使った税額控除を受けることも可能ですが、この場合も条件があります。

租税条約を締結している国

Q.我が国が租税条約を締結している国には、どのような国がありますか。

A.日本は令和5年9月1日現在、91か国または地域と租税条約または協定を結び、発効させています。この条約や協定は、国際的に二重課税を避けたり、経済の国際化に伴う資本、技術、人的な交流をよりスムーズにすることを目的としています。また、租税に関する情報交換を主な目的とした条約を結んでいる国も11か国存在します。締結している国や地域は以下の通りです。

– ヨーロッパ(33か国):アイスランド、アイルランド、イギリス、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、クロアチア、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポルトガル、ポーランド、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ルーマニア、ガーンジー、ジャージー、マン島、リヒテンシュタイン

– アジア・大洋州(20か国):インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、シンガポール、スリランカ、タイ、中国、ニュージーランド、パキスタン、バングラデシュ、フィジー、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、香港、マレーシア、サモア、マカオ、台湾

– ロシア・NIS諸国(12か国):アゼルバイジャン、アルメニア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、ジョージア、タジキスタン、トルクメニスタン、ベラルーシ、モルドバ、ロシア

– 中東(7か国):アラブ首長国連邦、イスラエル、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、トルコ

– 北米・中南米(15か国):アメリカ、ウルグアイ、エクアドル、カナダ、コロンビア、ジャマイカ、チリ、ブラジル、ペルー、メキシコ、ケイマン諸島、英領バージン諸島、パナマ、バハマ、バミューダ

– アフリカ(4か国):エジプト、ザンビア、南アフリカ、モロッコ

台湾との間では、公益財団法人交流協会(日本側)と亜東関係協会(台湾側)の間の民間取決めと、それを日本国内で実施するための法令に基づいた、租税条約に相当する枠組みが構築されています。

非居住者に対する分離課税

Q.非居住者に対する分離課税方式とは、どのような方式ですか。

A.分離課税方式は、非居住者が受け取る国内源泉所得に対して特定の税率を適用して税額を計算する方法です。この所得には、生命保険契約などに基づく年金も含まれますが、特定の金額が控除されます。税率は、一般的な所得に対しては20.42%が適用され、利子や金融類似商品に関連する収益については15.315%の税率があります。通常、この税金は源泉徴収によって完了しますが、以下のケースでは異なります。

1. 給与や報酬について源泉徴収されない場合、受取人はその給与や報酬の20.42%に相当する税金を次の年の3月15日までに自ら申告し、納税する必要があります。

2. 退職所得に関しては、分離課税の代わりに居住者として扱われる選択肢があります。これにより、非居住者期間中の勤務を含む退職手当の総額に基づいて退職所得が計算され、累進税率が適用されます。この選択を行う場合、関連する情報を税務署に申告する必要があります。