植林用の苗木が植栽されている土地についての納税猶予の適用

Q.私が相続した土地には、米や野菜を作っている通常の農地のほかに、植林用の杉やひのきなどの苗木や盆栽用の植木を植えている土地があります。これらを植えている土地についても、今後も継続して耕作するつもりですが、相続税の納税猶予の適用は受けられるでしょうか。

A.植林用の苗木を植え、その苗木の育成のために肥培管理を行っている土地であれば、特例対象農地に当てはまりますので、相続税の納税猶予の適用が可能です。ただし、販売のために育てた植木を一時的に植えておく場合などは、この納税猶予の適用外となります。「農地」とは、労力や資源を投じて作物を栽培するために使われる土地を指し、この場合の「耕作」とは、作物の栽培のために土地に肥培管理を施す行為を意味します。

受け取った義援金

Q.大震災で自宅が全壊したことから、10万円の義援金を受け取りました。雑損控除の申告をしたいと考えていますが、損害額の計算上この義援金の額を差し引かなければならないのでしょうか。

A.雑損控除で考慮する損害額を計算する際は、その資産が受けた損害から保険金や損害賠償金などによって補填された金額を引く必要があります。しかし、あなたが受けた義援金は、災害によって受けた見舞いであり、資産的損害を補填する目的のものではありません。そのため、この義援金は雑損控除の計算において差し引く必要はありません。

土地区画整理事業の換地により取得した土地

Q.土地区画整理事業により換地を受けた土地を相続した場合、納税猶予の適用は受けられるのでしょうか?

A.他の条件を満たしている場合には、納税猶予の適用を受けることができます。土地区画整理事業での換地は、もともとの土地の利用状況を考慮して行われるのが一般的です。そのため、宅地だけでなく、農地も存在することがあります。換地が農地に該当するかどうかは、周囲の状況にかかわらず、土地の実際の状況に基づいて判断されるべきです。

東日本大震災による税制上の措置

Q.東日本大震災により事業用資産や棚卸資産などに被害を受けた個人事業者を対象とする、被災事業用資産の損失に係る取扱い、純損失の繰越控除、被災代替船舶の特別償却などの税制上の措置について説明してください。

A.東日本大震災で被害を受けた個人事業者向けの税制上の措置には以下が含まれます。

1. 被災事業用資産の損失処理: 大震災による棚卸資産や事業用資産の損失は、必要経費として計上可能で、青色申告者は過去の所得に繰り戻し還付請求ができます。

2. 純損失の繰越控除: 損失の一定割合以上を被った事業者は、損失額を5年間繰り越して控除が可能です。具体的には、震災損失額の割合が一定以上の場合、青色申告者はその年の純損失額を、白色申告者は被災事業用資産の損失額と変動所得に関する損失額の純損失金額をそれぞれ繰り越せます。

3. 被災代替船舶の特別償却: 大震災により失われた船舶等を置き換えた場合、その取得価額に対して特別償却を適用できます。この適用期間と償却率は資産の種類によって異なります。

4. 特定事業用資産の買換え等の特例: 譲渡資産を一定期間内に買換え、かつ同時期に買換資産を事業用に供したり、供する見込みがある場合、譲渡所得の課税を繰り延べることができます。また、この特例は相続事業用資産の譲渡や買換資産の取得期間にも適用されます。

相続税の納税猶予を受けている農地の都市計画変更後の対応

Q. 相続税の納税猶予を受けている農地が都市計画の変更等により特定市街化区域農地等に該当することとなった場合、どのような手続きが必要ですか?

A. その農地が都市計画の変更等により特定市街化区域内に含まれるようになった場合、納税猶予の期限が確定しかねません。防ぐためには、都市計画法に基づく「告示」が出された日から1か月以内に「代替農地等の取得又は都市営農農地等該当に関する承認申請書」を提出し、所轄税務署長の承認を得る必要があります。この手続きを行うと、農地等の一部または全部を譲渡する見込みがあり、譲渡後1年以内に譲渡対価で農地等を取得する見込みである場合や、農地が都市営農農地等に該当する見込みがある場合に限り、納税猶予状態を続行できます。また、相続時に既に都市営農農地等であった場合、相続人はその人が亡くなるまで耕作を継続しなければならず、20年間の耕作免除ルールに変更はありません。

震災特例法のあらまし

Q.震災特例法に係る所得税の特例のあらましについて、その主なものを説明してください。

A.平成23年4月27日に公布、施行された「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」(震災特例法)は、東日本大震災で被害を受けた人たちに対して、以下のような特例措置を提供します。

1. 災害減免法と雑損控除の特例:被災した住宅や家財の被害に対して、災害減免法による税の軽減か雑損控除のどちらか有利な適用を選べ、所得税の軽減が可能です。通常は平成23年分の所得税に適用されるものですが、特例により平成22年分の所得税にも適用することができます。さらに、雑損控除でカバーできない損失に関しては、翌年から5年間繰り越すことが可能です。

2. 被災事業用資産の損失の必要経費算入特例:被災した店舗などの事業用資産の損失に対し、平成22年分の事業所得などの必要経費に算入する選択が可能です。

3. その他の主な特例措置として、震災関連の寄附金控除特例、財産形成住宅貯蓄契約の要件に該当しなくなった場合の課税特例、被災代替船舶の特別償却、被災者向け優良賃貸住宅の割増償却、被災した個人の債務処理計画に関する課税特例、特定事業用資産の譲渡所得の課税特例、住宅取得時の所得税額特別控除適用期間特例、住宅借入金の特別控除額特例などがあります。

災害被害者の源泉所得税の徴収猶予及び還付

Q.サラリーマンであり、集中豪雨によって家屋や家財に被害を受けた場合、所定の手続きをすれば給与等に対する源泉所得税の徴収猶予や還付を受けることができると聞きましたが、どのような場合に受けられますか?

A.災害による被害を受けた給与所得者や公的年金受給者が、所得税と復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けられるかは、その年の合計所得金額の見積もりや災害発生の時期などによって異なります。災害によって家屋や家財の損害がその価値の半分以上で、かつその年の所得見積もりが1,000万円以下である場合に、税制上の救済措置が適用されます。例えば、災害を受けてから一定期間内に受け取る給与や公的年金に対する所得税と復興特別所得税の徴収が猶予されるか、支払い済みの税金が還付されることがあります。具体的には、所得額によって救済の範囲が異なり、500万円以下、500万円を超え750万円以下、750万円を超え1,000万円以下の場合に分けられ、災害発生日から一定期間内に支払われる所得に対して、所得税額及び復興特別所得税額の全額または半額が徴収猶予され、既に徴収された税金についても同様の取り扱いがされます。さらに、災害による損害が家屋や家財の価値の半分に達しない、またはその年の所得が1,000万円を超える場合でも、税の軽減免除は受けられませんが、雑損控除の適用で税額が軽減される可能性があります。雑損控除は、災害による損失額から一定の計算により算出され、所得から差し引くことができます。損害が大きい場合、翌年以降3年間に渡って所得金額から控除することも可能です。

納税猶予の対象となる農地

Q.次の土地は、相続税の納税猶予の対象となる農地として認められますか。① 借りている農地 ② 貸している農地 ③ 家庭菜園や一時耕作している土地

A.①の借りている農地は納税猶予の対象となります。これは、他人から借りて耕作していた土地も特例の適用対象に含まれるためです。②の貸している農地は、特定の条件を除いては通常納税猶予の対象外です。これは、農地を他人に貸していた場合、その土地は特例の対象にならないが、営農が困難な場合など特定の貸付をしていた土地は対象になることがあります。③については、家庭菜園や一時的に耕作している土地も納税猶予の対象外です。これには、通常耕作されない土地や一時的に耕作している土地が含まれ、特例の対象にはなりません。

災害減免法による減免措置と雑損控除の選択適用

Q.災害減免法の規定による減免措置を受けているが、確定申告時に雑損控除を選択することは可能ですか?また、どちらを選ぶべきかも教えてください。

A.はい、可能です。災害減免法による減免措置を受けているサラリーマンや事業所得者は、確定申告時に所得税法に基づく雑損控除を適用することができます。これは、納税者にとって有利であれば、災害減免法の適用から雑損控除へと切り替えることが可能とされています。ただし、同一の災害で生じた損害に対して、雑損控除と災害減免法の減免措置を同時に適用する、または部分的に分けて適用することは許されていません。選択はどちらか一方のみとなります。

どちらが有利かは、被災者の所得状況や保険からの補償額、損害の程度によって異なります。一般的に、所得金額が500万円以下の場合は災害減免法が、1,000万円を超える場合は雑損控除が有利となる傾向があります。500万円から1,000万円の間では、損害額が所得に近ければ雑損控除が、少なければ災害減免法が有利となります。

他人に一時耕作させている農地

Q.父が亡くなり、その農地を遺産分割で取得しました。父の生前、体調を崩し農業を営むことができなくなったため、私が代わりに畑仕事をしていました。父は亡くなる日まで農業を営んでいませんでした。この状況で、納税猶予の特例を受けることはできるのでしょうか?

A.お父様が農業を営んでいたとみなされ、納税猶予の特例を受けることができます。この特例を受けるための条件の一つとして、「亡くなる日まで農業を営んでいた者」である必要がありますが、例外として、被相続人が老齢や病弱の理由で農業を継続できない場合、その者と同居し生計を一にする親族が農業経営を引き継いだと認められる場合も、納税猶予の特例を受けられます。