「資産税」カテゴリーアーカイブ

貸付事業用宅地等である小規模宅地等

Q.「貸付事業用宅地等である小規模宅地等」について説明してください。

A.「貸付事業用宅地等である小規模宅地等」とは、亡くなった人(被相続人)やその親族が経営していた不動産貸し出し業や駐車場業等の事業に使われていた土地のことを言います。この土地は、相続によって引き継がれた場合、特定の条件を満たすことで相続税が最大50%減額される対象になります。条件としては、大きく分けて2つあります。

1. 被相続人が使っていた事業用の土地を相続人が引き継ぎ、相続税の申告期限までその事業を続け、その期間中土地を保持している場合。

    1. 被相続人の事業を相続税申告期限まで引き継ぎ、継続していること。

    2. 相続税の申告期限まで土地を保有していること。

2. 被相続人と一緒に生計を立てていた親族が運営する事業用の土地を、相続人が引き継ぎ、同じく相続税の申告期限までその事業を続け、その期間中土地を保持している場合。

    1. 相続開始前から申告期限までずっと自己の事業を行っていること。

    2. 相続税の申告期限まで土地を保有していること。

「準事業」とは、不動産の貸し出しなどを相応の対価を得て継続的に行っているが、正式な事業とは認められない活動を指します。また、相続が始まる前の3年以内に事業用になった土地は、相続開始日まで3年以上特定の貸付事業(準事業を除く)に利用されていた場合に限り、この減額の対象とはなりません。

特定事業用宅地等である小規模宅地等

Q.「特定事業用宅地等である小規模宅地等」について説明してください。

A.「特定事業用宅地等である小規模宅地等」とは、特定の条件を満たす宅地のことを指します。これには以下のような条件があります。

1. 被相続人の事業に使われていた宅地で、被相続人の親族が相続などによって取得した場合。この宅地については、

   – 取得者が相続税の申告期限までにその事業を引き継ぎ、引き続きその事業を営んでいること

   – 相続税の申告期限まで引き続きその宅地を保有していること

が求められます。

2. 被相続人が生計を共にしていた親族の事業に使われていた宅地で、相続人が相続などによって取得した場合。この宅地については、

   – 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、継続して自己の事業をその宅地上で営んでいること

   – 相続税の申告期限まで継続してその宅地を保有していること

が必要です。

3. 相続開始前3年以内に新たに事業用に使われるようになった宅地であってはならないという条件もあります。ただし、例外として、相続開始前3年以内に事業用に使われるようになった宅地でも、特定の条件(建物や特定の減価償却資産が存在し、その価額が宅地の相続開始時の価額の15%以上であるなど)を満たす場合は、特定事業用宅地等である小規模宅地に該当します。

なお、これらの特例の適用と、個人の事業用資産の納税猶予制度は選べる制度になっており、納税猶予制度の適用を受ける特定事業用宅地等や個人の事業用資産を相続や遺贈で取得した場合、この小規模宅地の特例を選択することはできません。

被相続人等の事業の用に供されていた宅地等

Q.「被相続人等の事業の用に供されていた宅地等」の範囲について説明してください。

A.小規模宅地等の課税価格計算の特例が適用される「被相続人等の事業の用に供されていた宅地等」とは、被相続人が亡くなる直前に、被相続人自身または被相続人と一緒に生計を立てていた親族(生計一親族と呼びます)の事業で使用されていた土地を指します。ここで言う「事業」とは、不動産の貸し出しなど継続的に行い、相当な対価を得る活動(準事業とも呼ばれます)も含まれますが、無償または相当な対価を得ていない場合の不動産の貸し出しは特例の対象外です。

この宅地の範囲には、以下のように詳細が定められています。一つ目は、事業と認められる貸し出しで使用された土地。二つ目は、被相続人や生計一親族が所有する建物等が設置され、そのビジネスに使用されていた土地。三つ目は、被相続人以外の親族が所有する建物等を、被相続人や生計一親族が無償または低価格で借りて事業に使用していた土地です。

特に80%の減額対象となる「特定事業用宅地等」には、不動産貸付業や駐車場業などの特定の事業用地は含まれず、これらの土地の減額割合は50%とされています。

小規模宅地等についての課税価格の計算の特例

Q.小規模宅地等についての相続税の課税価格計算の特例制度について説明してください。

A.相続または遺贈によって取得した財産の中で、相続人やその親族が事業や居住のために使用していた宅地等がある場合、その宅地の一定の面積までを通常の評価方法より低く評価して相続税の課税価格の計算時に減額することができる特例の制度があります。この特例を適用するには、相続税の申告期限までに該当宅地等を遺産分割する必要がありますが、申告期限から3年以内の分割や特定の事情で遅れた場合の承認を得た分割もこの特例の適用対象となります。さらに、この特例を受けるためには、宅地等を複数人で相続する場合、全員の同意が必要です。また、所定の書類を添付し、申告書に特例適用の旨を記載する必要があります。なお、相続開始前3年以内にあった贈与や、特定の制度の適用を受ける贈与財産、相続財産についてはこの特例の適用はありません。

特殊な遺産分割(代償分割)をした場合の課税価格の計算

Q.特殊な遺産分割(代償分割)をした場合、相続税の課税価格はどのようになり、贈与税は課税されるのでしょうか。

A.特殊な遺産分割(代償分割)をした場合、弟さんにはあなたから受け取った財産の価値に応じて相続税がかかり、あなたには相続した財産の価値から弟さんに提供した財産の価値を差し引いた金額で相続税が計算されます。贈与税については課税されません。遺産分割では、亡くなった人の財産を分けることが基本で、分割できない財産もあります。そういった場合、一部の相続人が他の相続人に自分の財産を提供することで全財産を得る「代償分割」や「債務負担による遺産分割」が行われることがあります。代償分割で財産の全てまたは一部が分けられたとき、相続税の課税価格は、代償財産をもらった人は相続または遺贈で得た財産と代償財産の合計、代償財産を提供した人は相続または遺贈で得た財産から代償財産を差し引いた金額で計算されます。例えば、あなたが財産を5,000万円で相続し、代わりに宅地(時価2,500万円、相続開始時の評価額2,000万円)を弟さんに提供した場合、あなたの課税価格は3,000万円、弟さんの課税価格は2,000万円となります。このとき、宅地を提供したことで所得税の対象となる譲渡所得が発生し、その時の時価2,500万円が収入金額として計算されます。

遺産が未分割である場合の課税価格

Q.遺産が未分割の場合、各人の相続税の課税価格はどのように計算するのでしょうか?

A.相続税の申告期限内に遺産が分割されていない場合、その遺産は各相続人や包括受遺者が法律で定められた相続の割合に従って獲得したものとみなされ、その割合に基づいて各人の課税価格が計算されます。具体的には、相続分は民法に定める法定相続分、代襲相続人の相続分、遺言による相続分の指定、特別受益者の相続分を指し、これらの割合に従って課税価格が決まりますが、寄与分の規定は遺産が未分割の場合の課税価格計算には適用されません。

遺言書の内容と異なる遺産の分割

Q.遺言書の内容と異なる遺産の分割があった場合には、各人の課税価格はどのように決まりますか?

A.遺言書の内容と異なる遺産の分割が行われた場合、各人の課税価格は相続人全員で合意した分割協議の内容に基づいて決まります。遺言で特定の財産を受け取ることが決められていた場合でも、すべての相続人が遺産の分割について別の合意に達したなら、その合意した内容が課税の基礎となります。遺言での分配とは異なる協議を行い、それに基づいて遺産が分配された場合、その分配された遺産が各人の課税価格の根拠になるのです。

個人立幼稚園等の教育用財産に対する非課税制度の適用条件

Q.私は先祖から幼稚園経営の事業を継承したのですが、この教育用財産に対して相続税の非課税制度の適用を受けるためにはどのような条件が必要ですか?

A.個人が経営する幼稚園などの事業を相続する場合、その教育用財産に対して相続税の非課税制度を利用することができます。この特例を適用するために必要な条件は以下の通りです。

1. 相続する人が、相続開始日の5年前の1月1日以前からずっと、個人経営の幼稚園などを継続して運営しており、税務署長に届け出た教育用財産を引き続き事業用に使用することが確実であること。

2. 相続開始日の5年前の年から、以下の条件を満たしていること。

   a. 経営者は、幼稚園等の事業から得た資産を自身の報酬に使用する金額が、相続開始の少なくとも5年前に、同じサイズの法人立幼稚園と比べ適正水準であると税務署長に認定されており、この金額が相続開始前の少なくとも5年間、認定された金額以下であること。

   b. 経営者が幼稚園等の事業以外への支出をしていないこと。

   c. 経営者や特別関係者の労働の程度や同様の法人立幼稚園の給与状況などを踏まえた給与が妥当であることを認められること。

   d. 経営者が相続税、贈与税、または所得税において過去に申告漏れ等のペナルティを受けたことがないこと。

   e. 青色申告をしていること。

   f. 幼稚園等の経営に関する所得と他の所得が明確に分けられており、支払い給与など必要な情報が記載された帳簿を正しく保管していること。

   g. 幼稚園等の施設をその事業以外に使用しておらず、担保にも使っていないこと。

申告期限後に支給された退職手当金を公益法人に寄附した場合の非課税規定の適用

Q.申告期限後に支給された退職手当金を公益法人に寄附した場合、非課税規定の適用は受けられるか?また、退職手当金の非課税規定との関係はどのようになるか?

A.退職手当金を受け取った後、修正申告書を提出するまでの間に公益法人へ寄附した場合、その寄附金は非課税になります。さらに、退職手当金の非課税規定と相続税法との関係では、まず租税特別措置法に基づき500万円までが非課税になり、その後、2,500万円までの金額を基に退職手当金の非課税額を算出します。相続や遺贈による財産として退職手当金などを受け取り、国などに寄附した場合、特定の条件が満たされることで非課税とされます。この非課税規定の適用は、相続税の申告期限後に退職手当金などの支給額が確定され、国などへの寄附が相続税の修正申告書提出までに行われた場合にも可能です。

相続財産を公益法人設立のために提供した場合

Q.被相続人Aが生前慈善事業のための公益法人設立を望んでいましたが、亡くなった後、相続人がその遺志に従い遺産の一部を新たに設立する公益法人に提供した場合、相続税の非課税規定の適用は受けられるでしょうか?

A.被相続人Aの亡き後、相続人が遺志に従って提供した相続財産をもって新規に公益法人を設立した場合でも、租税特別措置法第70条の非課税規定は適用されません。この規定は、既に設立されている公益法人への寄付のみに適用され、新規設立のための寄付には適用されないからです。ただし、例外として、公益法人の設立許可申請が相続開始前または相続開始後に行われ、特定の条件を満たす場合には、正式な遺言による遺贈と同じ扱いを受け、非課税の特例が適用されることがあります。これらの条件に該当しない場合は、相続人や公益法人に対し、所得税や贈与税の課税が生じる可能性があります。