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納税猶予の特例が継続される条件

Q.贈与税の納税猶予の特例の適用を受けている者が農地中間管理事業の推進に関する法律に規定する農用地利用集積等促進計画に定めるところによる賃借権等の設定に基づいて特例農地等を貸し付けた場合で、一定の要件を満たす場合には納税猶予が継続されると聞きましたが、どのような場合ですか。

A.贈与税の納税猶予特例を利用している人が、その特例の対象となる農地を法律で定められた計画に従って貸し出す場合、特定の条件を満たせば、この特例を継続できます。具体的には、貸し出された農地(貸付特例適用農地)に代わる新しい農地(借受代替農地)を同じ法の計画に基づいて借り入れていて、その借り入れた農地の面積が貸し付けた農地の80%以上であること。さらに、この借入れた農地に関する賃借権の設定は、以下の二つの条件を満たす必要があります。一つ目は、借受代替農地に関する賃借权等の設定が、貸付特例適用農地に関する賃借権等の設定から2ヶ月以内になされていること。二つ目は、貸し付けた農地の賃借権等の存続期間が、新しく借りたすべての農地の賃借権等の存続期間が終わる前日までであることです。この条件を満たす場合、届出書にこれらの条件を満たしていることと、貸し付けに関する情報を記載し、関連書類を添付して、賃借権等の設定をした日から2ヶ月以内に所轄の税務署に提出する必要があります。また、この特例を利用した受贈者は、届出書を提出してから毎年、引き続き必要な書類とともに継続届出書を税務署に提出することが求められます。

納税猶予の適用を受けている農地等の使用貸借による権利設定について

Q.昭和60年に父から農地の一括贈与を受け、納税猶予の適用を受けています。今年60歳になり、経営移譲年金の受給資格ができましたので、農業経営の移譲を考えています。経営移譲すると納税猶予が打ち切られるのではないかと心配しています。どうすればいいでしょうか?

A.心配されている納税猶予が打ち切られる問題については、「特例農地等についての使用貸借による権利の設定に関する届出書」に必要な記載をし、必要な証明書を添付し、設定日から2ヶ月を経過する日までに地元の税務署に提出することで、納税猶予の継続適用を受けることができます。納税猶予の継続適用を受けるためには、後継者が18歳以上であり、直近3年以上農業に従事していること、使用貸借権設定後に速やかに農地での農業経営を行うと認められることが必要です。また、納税猶予の適用を受けている農地に対して使用貸借権の設定が全てに行われていることが必要であり、受贈者は特例付加年金の受給のための届出を遅滞なく行い、その農地で農業に従事する予定がある必要があります。

納税猶予の適用を受けた農地の転用

Q.父から農地の贈与を受け、納税猶予の適用を受けていますが、この農地の一部分に温室と農作業場を建てたいと考えています。また、将来この農地を転用して、クリ、ナシなどの果樹園も経営したいと思っています。この場合、これらの土地は農地以外の土地となりますが、農業経営に利用することには変わりありません。既に受けている贈与税の納税猶予はどのようになるのでしょうか。

A.納税猶予は継続して適用されます。贈与税の納税猶予の適用を受けた後、その農地を温室や農作業場の敷地として使用する場合でも農業を続ける目的であれば、納税猶予は続きます(措令40の6⑨)。しかし、その後、これらの敷地を譲渡したり、農作業場以外の用途に変更した場合(農地や草地への転用を除く)、その時点で納税猶予は終了し、納税猶予の期限が確定します。

納税猶予の適用を受けている農地の換地処分後の税務上の取り扱い

Q.贈与税の納税猶予の適用を受けている農地について、土地区画整理事業が施行され、この度換地処分が行われました。税務上何か問題があるでしょうか。清算金の授受はありません。

A.譲渡所得に関しては、この換地処分は行われなかったものとみなされますが、納税猶予の期限が問題になります。もし「代替農地等の取得等に関する承認申請書」を換地処分から1ヶ月以内に提出しなければ、納税猶予の期間は終了となります。土地区画整理の結果、新しい土地を得た場合、その土地の取得は譲渡したことにはならないため、通常の譲渡所得税は発生しません。ただし、納税猶予の条件としては、この換地処分は譲渡に該当し、期限終了の条件と見なされます。そのため、この処分があった日から1ヶ月以内に特定の申請書を税務署に提出する必要があります。

贈与税の申告期限と納税猶予(受贈者が申告期限前に死亡した場合)

Q.今年の2月に長男へ農地を生前贈与しましたが、長男が10月に交通事故で亡くなりました。この場合、贈与税の申告はどのようにすべきでしょうか?また、納税猶予は受けられますか?

A.ご長男が亡くなった場合、ご長男の相続人は相続開始の知った翌日から10ヵ月以内に、必要な贈与税の申告をご長男の納税地の所轄税務署に提出する必要があります。この申告を行い、要件を満たせば納税猶予の特例を受けることができます。具体的には、受贈者が贈与を受けてからその年か翌年の申告期限前に亡くなった場合、受贈者の相続人は相続開始を知った翌日から10ヵ月以内にその贈与税の申告書を提出しなければなりません。申告書が納税猶予の適用要件を満たす場合、特例として納税猶予が適用されます。受贈者が亡くなっているため、納税猶予額は免除される手続きがあります。

納税猶予の適用を受ける場合の贈与税の計算

Q.納税猶予の特例を受けた農地の一部を譲渡した場合、納税猶予を受けている贈与税の取扱いはどうなるか。

A.納税猶予の特例を受けている農地を売却した際、売却面積が特例適用農地全体の20%を超えていれば、その贈与税の納税猶予が全額取消しとなります。20%以下の場合は、売却した部分に該当する納税猶予額のみが取消しとなります。取消しになった贈与税は、その譲渡日の翌日から2ヶ月を経過した日までに、納税と利子税を合わせて支払わなければなりません。あなたが売却した場合、納税猶予が取消しとなる贈与税額は以下の通りです。

1. 第1回譲渡: この場合、納税猶予されている金額のうち、譲渡した価額に相当する部分、223,100円を納付する必要があります。

2. 第2回譲渡: 合計納税猶予打切(納付)税額は357,000円です。

3. 第3回譲渡: この譲渡では、納税猶予打切(納付)税額は計算されません。しかし、仮に譲渡対価の一部だけで代替取得農地を取得していた場合、納税猶予打切(納付)税額は89,200円になります。

4. 第4回譲渡: 合計納税猶予打切(納付)税額は357,000円です。

納税猶予の適用を受ける場合の贈与税の計算

Q.私は農業に従事しており、近く父から農耕している農地全体(80アール)と宅地(300平方メートル)の贈与を受けることになりました。農地について、納税猶予の適用を受けた場合、贈与税の計算はどうなりますか?なお、私は贈与を受けた年の1月1日において30歳です。

A.贈与を受けた農地と宅地の価値は、正式な評価ガイドに従って算出されます。例として、農地が8000万円、宅地が900万円と評価された場合、贈与税の計算は以下のようになります。

まず、農地と宅地の合計価値から基礎控除(110万円)を引いた額が課税対象となります。この例では、農地と宅地の合計価値は8900万円で、基礎控除を差し引いた課税価格は8790万円になります。

次に、この課税価格に対する税率(55%)を適用し、特定の控除額(640万円)を引くことで、納税すべき贈与税額は約4194万5000円と計算されます。

それから、納税期限内に納付するべき贈与税額を計算します。農地の価値から控除後の宅地の価値(110万円控除後の価値)を差し引いた790万円に対して税率(30%)を適用し、特定の控除額(90万円)を引くことで、納付税額は147万円になります。

最後に、納税猶予される贈与税額は、最初に計算した贈与税額(約4194万5000円)から納期限内に納付すべき税額(147万円)を差し引いた金額、つまり約4047万5000円になります。

負担付贈与の場合の納税猶予

Q.父から農地を贈与されることになりましたが、その際父には農機具等の購入代金の未払い分や借入金合計250万円があります。これらの負債を引き継ぐことで、この農地に関する贈与税の納税猶予を受けられますか?

A.負担付贈与によって獲得した農地でも、必要な条件を満たしていれば納税猶予を利用できます。ご質問の状況は、お父様の負債を引き継ぐ条件で農地を贈与される、いわゆる負担付贈与に該当します。このケースでの贈与税の計算基礎になる価額は、贈与を受けた時の市場価格からその負債額を差し引いたものになります。もちろん、贈与された農地の特例に関しては、その面積に負債額が占める割合を適用して算出することはなく、贈与された時の面積がそのまま適用されます。

樹園地について納税猶予を受けた場合の果樹の取扱い

Q.果樹が植えられている農地(樹園地)の贈与に伴う納税猶予を受けたいと考えています。この場合、果樹の贈与税はどうなりますか?

A.農業経営を継承するための贈与において、農地に関する納税猶予を受けたい場合は、「農業の経営委譲に係る果樹についての申出書」を農地のある地域を管轄する税務署長に提出する必要があります。これを行うと、果樹に対する贈与税の申告と納税は、その農地の贈与者が亡くなるまで延期されます。ただし、農地や草地のような納税猶予の対象となる財産には果樹は含まれません。このため、通常は果樹に関しても贈与税が課税されることになります。しかし、贈与者と受贈者が果樹についても納税猶予の扱いを希望する場合、特定の条件を満たした申出書を提出することで果樹に対する贈与税の課税を延期することが可能です。この申出書には、果樹の贈与税留保の希望、贈与者の死後の果樹の相続税評価額の扱い、該当する農地の位置や面積、それに植えられている果樹の種類、年齢、本数、相続税評価額を記載する必要があります。

相続時精算課税と贈与税の納税猶予の関係

Q.昨年、次男に農地の一部を贈与し、次男は相続時精算課税の適用を受けて贈与税の申告をしました。今年は長男に、残りの農地全部を生前一括贈与しようと思っています。長男が農業を営んでいる場合、贈与税の納税猶予の適用は受けられますか?

A.昨年、次男に農地の一部を贈与し、その際に相続時精算課税の適用を受けた場合、あなたが所有する残りの農地を全て長男に贈与する場合であっても、長男は贈与税の納税猶予を適用してもらうことはできません。これは、相続時精算課税制度が導入されたことにより、贈与税の納税猶予に関してもルールが改正され、一定の条件を満たす贈与については納税猶予の適用が受けられなくなったためです。主に、過去に農地を推定相続人に贈与し、その贈与が相続時精算課税の適用を受けている場合、または一定の条件下で農地等の贈与をしている場合には、納税猶予を受けることができません。さらに、相続時精算課税の適用を受けようとする人が特定の贈与者から農地等を贈与された場合には、その贈与についても納税猶予の適用を受けることはできないとされています。