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税額計算の特例の適用関係

Q.適用可能な売上税額と仕入税額の計算の特例の組合せを教えてください。

A.適用可能な売上税額と仕入税額の計算の特例の組合せは、以下の通りです。◎は組合せが可能であること、×は組合せができないことを示します。

– 特例適用なしと小売等軽減仕入割合の特例:◎

– 特例適用ありと軽減売上割合の特例:◎

– 一般課税と簡易課税:×

中小事業者で、軽減税率の対象品目の譲渡等を主に行う場合、軽減売上割合や小売等軽減仕入割合の計算が困難であればその割合を50/100とすることができます。

税額計算の特例を用いた税額計算の方法

売上税額の計算の特例の概要

Q.税率が異なるごとに取引を区分することが困難な中小事業者に対する売上税額の計算の特例について教えてください。

A.軽減税率制度が始まったことにより、税率ごとに課税売上を区分することが求められますが、それが難しい中小事業者のために、以下の経過措置による特別な計算方法が用意されています。

1. 小売等軽減仕入割合の特例:卸売業や小売業を営む中小事業者は、それぞれの課税売上(税込み)に、軽減税率対象品目の売上に必要な課税仕入れの割合を乗じて、軽減対象資産にかかる課税売上を計算し、その結果から売上税額を出すことができます。

2. 軽減売上割合の特例:全体の課税売上(税込み)に対し、通常の連続する10営業日における軽減税率対象品目の課税売上の割合を乗じ、その結果から軽減対象資産にかかる課税売上を計算し、売上税額を求めます。

3. 割合の計算が困難な場合:計算が難しい中小事業者は、これらの割合を50%として売上税額を計算することが認められています。

この特例を適用できる期間は令和元年10月1日から令和5年9月30日までです。ただし、「小売等軽減仕入割合の特例」については簡易課税制度の適用を受けていない期間に限ります。

参考:平28改法附38①②④、軽減通達22

Q.令和元年10月以降に実施された軽減税率制度での税額の計算方法を教えてください。

A.軽減税率制度が実施されて以降、売上と仕入れは異なる税率ごとに記帳し、それぞれの売上総額と仕入総額から売上税額と仕入税額を計算します。この制度のもとでの消費税申告では、異なる税率ごとに1円未満の端数処理を行い、これに基づいて消費税額を計算します。具体的な計算方法は、軽減税率は8%(地方消費税率は1.76%)、標準税率は10%(地方消費税率は2.2%)です。納付する消費税額は、課税売上げと課税仕入れに関する消費税額から、地方消費税額を計算し、これらを合計して算出します。一般課税事業者は国内課税仕入れと外国貨物の引取りに係る消費税額を合計し、簡易課税制度を適用する事業者は課税売上げに対する消費税額にみなし仕入率を掛けて計算します。

軽減税率の場合の税率:8%(地方消費税率1.76%)

標準税率の場合の税率:10%(地方消費税率2.2%)

地方消費税の税率計算:消費税額の78分の22

簡易課税制度のみなし仕入率:

第一種事業(卸売業):90%

第二種事業(小売業、飲食料品の譲渡に係る農林漁業):80%

第二種事業以外(農林漁業除く、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業):70%

第四種事業(飲食店業等を除くその他の事業):60%

第五種事業(運輸通信業、金融業及び保険業、サービス業):50%

第六種事業(不動産業):40%

参考:平28改法附34② 、平28改規附12、 軽減通達25

免税事業者からの課税仕入れの取扱い

Q.区分記載請求書等保存方式の下で免税事業者から課税された仕入れに対して、仕入税額控除を適用できますか?

A.はい、区分記載請求書等保存方式であっても、免税事業者からの課税仕入れに関しては、令和元年9月30日までと同じように仕入税額控除の適用が可能です。

令和元年10月以降の税額計算方法

適用税率の判定時期

Q.課税資産の譲渡等の適用税率の判定は、いつ行うべきですか?

A.商品やサービスを提供する時点で、軽減税率が適用可能かどうかを判定します。具体的には、飲食料品を提供する際、その商品が人の飲食用に提供された場合は軽減税率の対象となります。これは、顧客がその飲食料品を他の目的で使用しても変わりません。一方で、飲食用以外の目的で提供された商品については、顧客がそれを飲食用に使ったとしても軽減税率の対象にはなりません。また、飲食店で食事を提供する場合(店内での飲食や持ち帰り販売を含む)、その時点で軽減税率の適用可否を事業者が判断します。例えば、注文時に客の意向を確認し、「店内飲食」か「持ち帰り」かに基づいて税率を決定します。

飲食店での「持ち帰り販売」と「店内飲食」の区分けは、飲食料品の提供時に事業者が行う判断に基づきます。

参考:軽減通達2

映画館の売店での飲食料品の販売と軽減税率の適用

Q.映画館の売店で飲食料品を販売する場合、軽減税率が適用されますか?

A.映画館内の売店で販売される飲食料品は、基本的に「飲食料品の譲渡」とみなされるため、軽減税率が適用されます。しかし、売店の近くに飲食用のテーブルや椅子が設置されていて、それを利用して飲食が提供される場合は、「食事の提供」となり、その場で飲食する場合に限り、軽減税率の適用外となります。持ち帰り販売(商品を持ち帰り用容器や包装で譲渡する場合)の場合は引き続き軽減税率が適用されます。この判断は顧客の意向に基づいて行われます。また、映画館の座席で飲食メニューに基づく飲食の提供や予約制での飲食がされる場合も、「食事の提供」とみなされ、軽減税率の適用外となります。

参考:平28改 法附34①―イ、軽減通達10(注)2、 (4)

遊園地の売店での飲食料品販売と軽減税率の適用

Q. 遊園地内の売店で販売される飲食料品について、遊園地全体が飲食設備に該当するかどうか、また軽減税率の適用について教えてください。

A. 遊園地内で販売される飲食料品に関して、その売店の管理下にあるテーブルや椅子などを顧客が利用する場合は「食事の提供」と見なされ、軽減税率の適用対象外となります。一方で、売店の管理が及ばない場所、例えば園内に散在するベンチで顧客が食事をする場合は、「飲食料品の譲渡」にあたり、軽減税率の適用対象となります。よって、遊園地全体が「飲食設備」に該当するわけではなく、売店の管理範囲内での飲食が軽減税率の適用を決定する重要な要素になります。販売時には、顧客がその場で飲食するかどうかの確認が必要となります。

遊園地の運営事業者と飲食料品を販売する事業者が異なる場合、両者の合意に基づき設備を顧客に利用させる場合「飲食設備」に該当します。

参考:平28改法附34①一イ、軽減通達 8

合意等の範囲

Q.他の事業者が設置する飲食設備の利用に関する「合意等」の範囲について教えてください。

A.飲食設備は、それを設置した事業者に限らず、他の事業者との間で合意がある場合にも、その事業者が顧客に利用させている場合に含まれます。この合意には、書面での明示的な合意だけでなく、黙示の合意も含まれます。黙示の合意とは、設備を設置した事業者が、他の事業者による設備の利用を黙認している状況を指し、他の事業者がその設備を管理し、実質的に自分の設備として運用していることを意味します。具体的には、メニューの設置、顧客への案内、配膳や清掃など、自らが飲食設備として利用している場合がこれに該当します。

飲食設備の利用は、その目的(飲食用、休憩用など)にかかわらず、事業者が顧客に設備を利用させている場合に該当します。

セット商品の一部を店内で飲食する場合の適用税率

Q.当店はファストフード店で、ハンバーガーとドリンクのセット商品を販売しています。顧客からドリンクだけを店内で飲食したいと言われた場合、その税率はどうなりますか?

A.ハンバーガーとドリンクのセット商品は一つの商品とみなされます。そのセット商品の一部であるドリンクを店内で飲食してもらった場合、その提供は「食事の提供」として扱われます。したがって、顧客がドリンクを店内で飲食し、ハンバーガーを持ち帰った場合でも、軽減税率の適用対象外となります。

ハンバーガーとドリンクを個別に販売した場合、ハンバーガーは持ち帰りが「飲食料品の譲渡」として軽減税率の適用対象となりますが、店内で飲食するドリンクは「食事の提供」として軽減税率の適用対象外となります。

コーヒーチケットの取扱い

Q.当店が販売する5枚つづりのコーヒーチケットで引き換えるコーヒーの軽減税率の適用対象について知りたいです。

A.コーヒーチケットで引き換えられるコーヒーは、店内で飲む場合と持ち帰りの場合がありますが、その区分によって消費税の軽減税率の適用が異なります。飲食店での飲食提供は軽減税率の適用外ですが、持ち帰りは軽減税率の対象となります。提供する際、顧客から店内飲食か持ち帰りかの選択確認を行い、その時点で税率の適用を決定します。なお、コーヒーチケットそのものの発行は消費税の課税対象外ですが、店内飲食と持ち帰りを区分しないチケットでは、発行時点での税率適用は判定できません。

参考:平成28年改正法附34①一イ、軽減通達11、基通6-4-5、9-1-22