「消費税法」カテゴリーアーカイブ

相続があった場合の納税義務の免除の特例

Q.サラリーマンであり、年間課税売上高が1,000万円以下の免税事業者ですが、令和5年4月に父が亡くなり、2,000万円の課税売上高を持つ食料品小売業を相続しました。この場合でも免税事業者として認められるのでしょうか?

A.相続があった年で、基準期間内の課税売上高が1,000万円以下の相続人が、1,000万円を超える課税売上高を持つ被相続人の事業を継承した場合、その相続があった翌日からその年の12月31日までの期間については、譲渡された資産に対して消費税の納税義務が免除されません。従って、質問のケースでは、あなたが相続した翌日以降、貸家収入も含めた課税資産の譲渡等に対して消費税が課税されることになります。

参考:法10①、基通1-5-1、1-5-4

課税事業者の選択取りやめについて

Q.これまで消費税の課税事業者を選択していましたが、今回これを取りやめたいと思います。その手続きについて教えてください。

A.課税事業者の選択を取りやめたい場合は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を納税地の所轄税務署長に提出します。提出後は、提出があった日の属する課税期間の終了日の翌日から、以前に提出した「消費税課税事業者選択届出書」の効力がなくなります。ただし、この不適用届出書は、選択届出書の効力が発生した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以降にしか提出できません。事業を廃止した場合はこの限りではありません。また、調整対象固定資産の課税仕入れを行い、その仕入れた日の属する課税期間の消費税の確定申告を一般課税で行った場合は、不適用届出書を提出することは、調整対象固定資産の課税仕入れを行った日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければできません。

参考:法9⑤ ~⑦、様式通達第2号様式

新たに法人を設立した場合の課税事業者の選択

Q. 新たに設立した株式会社が消費税の課税事業者を選択する場合、「消費税課税事業者選択届出書」はいつまでに提出すれば良いですか?

A. 設立された法人が消費税の課税事業者を選択したい場合、原則として選択届出書を提出した日から次の課税期間にその効力が発生します。しかし、特例として当該課税期間中に提出した場合、適用される特例の条件によっては、提出した課税期間からすぐに効力が発生することもあります。設立された法人が事業活動を開始した日が属する課税期間内に選択届出書を提出すれば、設立初年度から課税事業者として効力が発生します。つまり、令和5年6月11日から令和6年3月31日までの期間内に提出してください。ただし、基準期間がなく、資本金または出資金額が1,000万円以上の法人は、その事業年度における消費税の納税義務からは免除されません。

参考:法9㈣、12の2㈠、令20、基通1-4-13、1-4-13の2、様式通達第1号様式

課税事業者となるための届出

Q.基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者が消費税の課税事業者となるためには、どのような手続きが必要ですか。

A.基準期間において課税売上高が1,000万円以下である事業者(個人事業主でその年、または法人でその事業年度に、特定期間の課税売上高や給与等の支払額が1,000万円以下の場合も含む)でも、消費税課税事業者となりたい場合は、納税の管轄する地域の税務署長へ「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。この届出は通常、届出書を提出した日が含まれる課税期間の次の課税期間から効力が発生し、一度効力が発生すると、基準期間(前々年または前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えたとしても、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、その効力は失われません。ただし、消費税課税事業者選択届出書を提出した課税期間が、課税資産の譲渡等に関連する事業を開始した期間である場合には、その期間から届出の効力が始まります(この場合でも、事業を開始した課税期間の次の課税期間から課税事業者を選択することも可能です)。 

参考:法9④⑤、9の 2、 令20、 基通1-4-11、 1-4-14、 様式通達第1号 様式、第2号様式

固有事業者と受託事業者の納税義務の免除の判定

Q.法人課税信託の受託者は、固有事業者及び受託事業者がそれぞれ申告することになっているそうですが、小規模事業者に該当し納税義務が免除される条件の課税売上高の判定方法について教えてください。

A.固有事業者についての課税売上高の判定は、固有事業者自身の課税期間における売上高と、その固有事業者に関連する法人課税信託の受託事業者の売上高を合算して計算します。この合算売上高は、固有事業者の課税期間と一致する期間内で終了した受託事業者の事業年度ごとの課税売上高を合計し、これを基にします。12ヶ月を超える事業年度月数がある場合は、合計売上額を事業年度月数で割り、12を乗じて調整します。

一方、受託事業者の課税売上高は、その課税期間の初日に該当する固有事業者の課税売上高として計算されます。ただし、課税売上高が1,000万円以下であっても、課税期間の初日に固有事業者が課税資産の譲渡などについて課税事業者選択届出書を提出している場合は、小規模事業者の納税義務免除の対象にはなりません。

参考:法15

輸出免税取引がある場合の基準期間の課税売上高

Q.当社は、輸出取引を頻繁に行っています。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合は、消費税の納税義務が免除されますが、輸出免税分が1億円、国内販売の課税売上高が1,000万円の場合、基準期間の課税売上高をどう判定し、消費税の納税義務は免除されるのでしょうか?

A.輸出免税分を含めた基準期間の課税売上高は合計1億1,000万円となります。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているため、消費税の納税義務があります。基準期間において、国内で行われた課税資産の譲渡等から得た対価の総額が課税売上高として計算されるため、輸出免税分も課税売上高に含まれます。

参考:法2①九、7①、9C②、9の2、28①、基通1-4-2

基準期間における課税売上高の判定単位

Q.私は、個人で食料品の小売業と駐車場業を営んでいます。令和3年分の課税売上高は、食料品小売業が約800万円、駐車場業が約700万円でした。この場合、それぞれの事業に関する基準期間の課税売上高は1,000万円以下ですが、令和5年は免税事業者になると考えて良いですか。

A.基準期間における課税売上高は、事業者単位で判断します。一人の事業者が複数の異なる種類の事業を行っている場合や複数の事業所を持っている場合でも、それぞれの事業や事業所での課税資産の譲渡などによる対価の合計金額(税抜き)によって基準期間の課税売上高を算出します。ご質問のケースでは、食料品小売業と駐車場業の売上高の合計が約1,500万円となり、1,000万円を超えるため、令和5年は消費税の課税事業者となります。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合も、特定期間(個人事業者はその年の前年1月1日から6月30日までの期間)の課税売上高等が1,000万円を超えるかで課税事業者かどうかを判断します。

参考:歴三董ヨ法9①②、9の2、基通1-4-4

基準期間が1年未満の法人の課税売上高

Q.設立後4か月間の基準期間しかない法人の場合、課税売上高が1,000万円を超えるかどうかの判断はどのように行いますか?

A.設立初年度の課税売上高をその期間の月数で割り、その結果に12を乗じて1年分に換算します。この換算した金額が1,000万円を超えるかどうかで、消費税の納税義務の有無を判断します。基準期間内の課税売上高が1,000万円以下の場合、特定期間の課税売上高等が1,000万円を超えるかどうかで納税義務を判定します。

参考:法9、9の2

個人事業者が法人成りした場合の納税義務

Q.個人事業者が年の途中で法人成りした場合、前々年の課税売上高が1,000万円を超えていたとしても、設立した法人に納税義務はありますか?

A.納税義務の有無は事業者ごとに判断されるため、個人事業者だった期間と法人成り後は別々に考えます。そのため、法人成りした個人事業者の前々年の課税売上高が1,000万円を超えていても、法人成り後の新設法人には特定の条件(資本金が1,000万円以上、特定新規設立法人にかかる消費税の免除規定や高額特定資産を取得した際の規定の適用、または課税事業者選択届出書の提出がある場合を除く)以外では、前々事業年度の売上がないため納税義務はありません。しかし、法人成りした年の個人事業者としての期間は、課税売上高が1,000万円を超えているため、その期間についての納税義務は免除されません。

参考:法 2①三、四、5①、12の 2① 、基通 1-4-6

前々年に事業を開始した個人事業者の基準期間の課税売上高

Q.前々年の中途で事業を開始した個人事業者の「基準期間の課税売上高」は、1年に換算する必要がありますか?

A.個人事業者の場合、基準期間はその年の前々年です。この前々年に事業を開始したとしても、前々年内の実際の課税売上高(税抜き)が1,000万円超えるかで課税事業者となるかを判定します。前々年の事業運営期間が1年未満だったとしても、課税売上高を1年分に換算する必要はありません。ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合は、その年の前年1月1日から6月30日までの期間を特定期間とし、その特定期間内の課税売上高による判定を行います。前年に事業を開始した個人事業者の場合、事業開始日から6月30日までが特定期間になります。

参考:法 2①十 四 、 9②一 、 9の 2、 基 通 1-4-9