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役員給与の増額を既往に遡って行った場合

Q.3月31日を事業年度終了の日とする会社で、従業員の定期昇給は毎年4月ですが、昇給率が6月に決定します。そのため、4月と5月の給与の昇給差額を6月に支給しています。役員給与も同様に、6月の支給時に4月と5月の昇給差額を追加して支給した場合、その昇給差額部分は定期同額給与と認められますか?

A.役員給与の支給が1ヶ月ごとに行われ、それぞれの支給額が同額であれば定期同額給与とみなされます。しかし、従業員の昇給率が決まった後に、役員給与に4月と5月の昇給差額を6月に加えて支給する場合、その差額は定期同額給与には含まれず、損金には算入できません。例えば、昇給前の役員給与が月100万円、昇給後が月102万円だとすると、4月と5月は100万円、6月は昇給後の給与102万円に4万円の差額を加えた106万円が支給され、7月以降は102万円が支給されます。このうち、6月の106万円から定期同額給与である102万円を超える4万円は定期同額給与とは見なされません。役員給与の決定は従業員の昇給とは異なり、契約に基づくため、税法上、従業員の昇給期に合わせる必要はありません。支給時期が1ヶ月ごとの役員給与は、会計期間開始から一定期間内に定期同額給与として改定すれば、改定前後で支給額が同額なら定期同額給与となります。このため、従業員の昇給率の決定時期に関わらず、役員給与は4月から改定するか、6月から改定するかを選択すべきです。

役員に支給する諸手当と定期同額給与の関係

Q.役員に対して毎月支給する諸手当(家族手当、皆勤手当、能率給、歩合給、超過勤務手当など)は、定期同額給与に該当しますか。

A.役員と会社の関係は、役員が会社に対して特定の仕事を行う委任関係です。これは、通常の従業員が会社に雇用される雇用関係とは異なります。従業員に支払われる給与は労働基準法などに基づく労働法規の対象であり、過労勤務手当などは法律で定められた支給義務があります。家族手当や皆勤手当のような他の手当は、法律で必ず支払わなければならないわけではありませんが、一般的に労働条件の一部として設定されています。一方で、役員に支払われる報酬は、定款や株主総会の決議によって決められており、通常は給料と手当の区分を設けません。

役員への諸手当が支給された場合、それが税法上定期同額給与に該当するかどうかは税法の定めによります。税法では、1か月ごとなど定期的に同額支給される役員給与は定期同額給与とされています。そのため、毎月決まった額の家族手当は定期同額給与に該当しますが、皆勤手当や能率給など、毎月の額が変わる手当は該当しません。役員の給料が基本給と歩合給等に分かれている場合、基本給は定期同額給与として扱われます。また、使用人兼務の役員に対して支払われる能率給や歩合給は、役員ではなく従業員としての給与の一部として支払われる場合があり、その場合、その金額は会社の経費として認められます。

役員賞与を定期同額給与に含めることの税務上の問題

Q. 当社は従来、年間の役員給与を月々の給与と年2回の賞与に区分して支給し、賞与については事前確定届出給与の手続きを行ってきました。この手続きが煩雑なので、年間の賞与支給予定額を12等分して毎月の役員給与に加算し、定期同額給与に合めることを考えています。税務上問題が生じるでしょうか。

A. 税務上、賞与を損金算入するためには、事前確定給与に関する届出書を期日までに税務署に提出する必要があります。実際の支給額と事前確定額が異なる場合、損金不算入となります。賞与支給予定額を12等分して毎月の役員給与に加算することは、定期同額給与とみなされます。しかし、賞与の一部を毎月支給せずに賞与支給時期まで未払いにしたり、会社が預かり簿外預金としてプールする方法では、損金不算入になります。また、役員給与が過大とされる場合、税法では相当と認められる金額を超える部分は損金に算入しません。毎月の役員給与に年間賞与の月割額を加えると、従業員の給与の支給状況と比較して過大な給与が生じる懸念がありますが、年間を通じての職務執行の対価としての給与額は変わらないため、問題はないと考えられます。

定期同額給与の意義

Q.法人税法第34条第1項で、損金不算入となる役員給与から除外されているものの第1に掲げられている定期同額給与とは、どのような給与ですか。

A.定期同額給与とは、法人が役員に支払う給与のうち、定期的に同じ額が支払われる給与を指します。この給与には、特定の手続きや報告が必要な「事前確定届出給与」や「業績連動給与」とは異なり、申告や記載の要件がなく、比較的手続き上の自由度が高いです。定期同額給与は主に以下の条件を満たすものが該当します:1) 一定期間(1ヶ月以下)ごとに支払われる給与で、各支払い時に同一の額が支払われること。2) 給与の額が改定された場合でも、改定前後の特定の期間において各支払い時に同一の額が支払われること。3) 継続的に供与される経済的な利益で、その提供される利益額が毎月大体一定であること。また、支払額から源泉徴収税や社会保険料等を差し引いた手取り額が同一であっても、定期同額給与として扱われます。

補欠役員と税法上の役員の関連性

Q.会社法第329条第3項の規定により補欠役員として選任された者は、税法上の役員に該当しますか。

A.会社法に基づき補欠役員として選出された方は、基本的にすぐに税法上の役員とみなされるわけではありません。補欠役員は、あくまで実際の役員に空席が生じた場合にそのポジションを埋めるための予備的なステータスであり、役員としての全ての条件を満たしているわけではないからです。ただし、特定の条件下でみなし役員として扱われるケースがあり、その際は税法上の役員として認識されることがあります。通常、補欠役員として選出されるケースは監査役への適用が多く、取締役の空席を補う役割でみなし役員として扱われる事例はそれほど多くはありません。

役員給与に関する法人税法の規定の概略

Q.法人税法第34条に定められている役員給与に関する規定について、その概略を説明してください。

A.法人税法第34条は「役員給与の損金不算入」に関する規定です。これは、企業が役員に支払う給与のうち、特定の条件に該当しないものは、企業の損失として計上できないというものです。具体的には、以下の三つのケースに分けられます。

1. **定期的な同額給与**、**事前に確定した給与**、特定の要件を満たす**業績に基づく給与**以外の役員給与は損金に算入できません。ただし、このケースには、業績に基づかない退職給与や、従業員としての業務も行う役員に対する給与の一部(従業員分)は含まれません。さらに、隠蔽や仮装経理による給与はすべて除外されます。

2. **不相当に高額な給与**の部分は、政令で定める基準によって損金の対象外とされます。これは、前述のケース以外で、会社が役員に支払う過度に高額な給与に適用されます。

3. **事実を隠蔽**したり**偽装**したりして経理処理された役員給与は、どのような状況でも損金に算入できません。

さらに、これらの条件に該当する役員給与には、債務免除による利益やその他の経済的利益が含まれることが明記されています。

退任による欠員が生じた場合の税法上の役員の扱い

Q.退任により欠員が生じた場合の退任取締役又は監査役、登記されていない取締役、執行役又は監査役は税法上の役員に該当するのか。

A.会社法によれば、役員が辞任や任期の満了で退任しても、新しい役員が就任するまでの間、その退任役員は引き続き役員としての権利と義務を持ちます。これは、会社の経営を継続させるためです。税法上では、取締役や執行役の業務は「経営に従事する業務」にあたるため、これらの役職の退任によって欠員が生じた退任取締役はみなし役員に該当します。しかし、監査役が退任して欠員が生じた場合、監査役は経営に従事するとは見なされないため、みなし役員には該当しないとされます。また、裁判所によって一時的に選任された役員も、取締役や執行役の職務を担う場合はみなし役員に該当しますが、会計参与や監査役の職務を担う場合には該当しないとされます。一方で、株主総会等で選任されながら登記が遅れている取締役や執行役などについては、登記の有無にかかわらず、役員としての選任事実のみで税法上役員とみなされます。登記は主に善意の第三者に対する保護手段であり、役員の地位は選任によって確立されるためです。

職務執行停止期間中の取締役、職務代行者等は税法上の役員に該当するか

Q.次に掲げる者は、税務上の役員に該当しますか。① 職務執行停止期間中の取締役 ② 取締役の職務執行停止に伴い選任された職務代行者 ③ 更生会社の取締役及び監査役 ④ 更生管財人

A.①について、職務執行停止期間中の取締役は、民事保全法や会社法の定めにより、職務停止や職務代行の仮処分命令があっても取締役等としての地位は保持されます。税法では、職務を実際に行ってなくても名目上の役員として認めるため、職務執行停止期間中であっても税法上の役員に該当すると理解されます。

②について、取締役の職務代行者は、裁判所によって選ばれるもので、会社の財産管理能力を回復させる目的があり、主に日常業務に限られるため、税法上の役員とはみなされません。

③について、更生手続きが開始された場合、事業の経営や財産の管理などの権限は更生管財人に移りますが、取締役や監査役の職位自体に変更はなく、会社運営に関する一部の権限は残されています。そのため、彼らは税法上引き続き役員に該当します。

④について、更生管財人は更生手続きを行う重要な役割を持ちますが、税法上の役員には該当しません。

経営に従事している

Q.みなし役員の規定の中にある「経営に従事している」とは、どのようなことですか。

A.「経営に従事する」とは、法人の役員として通常想定されるような業務を行うことを指します。具体的には、法人の取締役(理事)として、取締役会のメンバーであること、取締役会に参加し、会社の運営に関する意思決定に影響を与えることです。経営に関わる具体的な仕事には、会社の経営方針の決定、組織構成の策定、販売・調達・生産計画、人事政策、予算や決算の方針立案、資金調達や設備投資計画の決定などが含まれます。ただし、上司から指示された仕事を単にこなしているだけでは、「経営に従事している」とは見なされません。税法上みなし役員とは、法人の経営方針に対してある程度の発言権を持つ者を指し、この判断はその人の年齢、社内での経歴、職務関係に応じて総合的に行われます。また、会社法には取締役会が独自に決定すべき事項を規定し、これを参考に「経営に従事する職務」の判断が行われることもあります。一方で、法人税法に定義された「使用人兼務役員」とは、「経営に従事する」の反対であり、経営ではなく、通常の従業員としての業務に従事する人を指します。最後に、監査役(監事)の職務は「経営に従事する業務」には含まれず、監査役の業務を行っている者がみなし役員となることはありません。

みなし役員の範囲

Q.税法に規定されているみなし役員とは、どのようなものをいうですか。

A.税法では、通常取締役や監査役などの役員に選ばれた人たち以外にも、特定の条件を満たす人々を役員とみなしています。この特定の条件を満たす人々をみなし役員と呼びます。みなし役員には二つの大きなカテゴリーがあります。第一に、社員でないにも関わらず法人の経営に参加している者、例えば名誉職の役員や法人の代表者などがあります。これらは見た目上の役員に近い立場にあるもの、またはその職務内容から経営に実質的に関与している者などが含まれます。第二に、同族会社の社員でありながら特定の条件により役員とは見なされない人々ですが、実際にはその会社の経営に関与している者が含まれます。このようなみなし役員の概念は、税法上の不利益を避けるために intentionally 役員に就任しない者を対象としています。例えば、役員に就任した場合に適用される給与に関する複数の規定を避けるために役員を避ける行為が挙げられます。さらに、法人が特殊な関係にある使用人に支払う給与の一部が税法においては役員に該当するものとみなされ、これもみなし役員の範疇に含まれます。特殊関係使用人としての賞与も、定められた条件を満たさない限り損金不算入とされます。これらの規定は、特に同族会社に多く見られる現象であり、事実上の経営参加を行いながら法的な役員の地位を避ける者に対して適用されることが多いです。