「法人税」カテゴリーアーカイブ

役員に対する年俸、期間俸を損金算入するための要件

Q.当組合は、理事長を含む非常勤役員に、6か月に1回給与を支給することにしています。このような給与は定期同額給与に該当しないため、事前確定届出給与として納税地の所轄税務署長に届出する必要がありますか?

A.ご質問の6か月に1回支給される給与は、1ヶ月以下の定期的な支払いではないため、法人税法における定期同額給与ではなく、異なる種類の給与に該当します。しかし、定期給与を支払わない役員に対して支払われる給与で、同族会社に該当しない法人が支払う場合は、「事前確定届出給与に関する届出書」の提出なしに損金算入できます。ただし、不当に高い部分があるなど、他の規定により損金算入できない場合を除きます。これは、非常勤役員に6か月に1回支給される半年俸でも同じで、特別な届出をせずとも、特定の条件に該当しなければ全額を損金に算入できます。

事前確定届出額どおり支給しなかった場合

Q.令和5年12月11日と令和6年6月17日に役員Aへそれぞれ200万円の給与を支給すると株主総会で定め、事前確定届出給与の届出を行ったが、実際の支給額が予定と異なる場合、どのように取り扱われますか?具体的には、(1)令和5年12月11日の支給額が150万円、令和6年6月17日の支給額が200万円、(2)令和5年12月11日の支給額が200万円、令和6年6月17日の支給額が150万円の場合はどうなりますか?

A.事前確定届出給与とは、役員にその職務執行期間に支払う給与の額を事前に定めて届け出る制度です。もし届出した給与額と実際に支給した額に違いがあれば、その支給額の全額が損金に算入できなくなります。特に、複数回にわたって支給がある場合は、その期間全体で見て届出どおりに支給されたかが評価の対象となります。

具体的に、質問の(1)では、第一回の給与支給額が届出額と異なるため、その時点で職務執行期間を通じて届出額通りに支給されていないと判断され、令和6年6月の給与も損金に算入できなくなります。

一方で、(2)の場合、令和5年12月の給与支給は届出どおりですが、令和6年6月の支給額が届出額と異なるため、結果的に職務執行期間を通じて届出額通りに支給されていないと判断されます。ただし、この場合令和5年12月の給与は損金に算入可能ですが、令和6年6月の給与は損金に算入できません。これは、令和6年6月の給与支給が令和6年3月期の課税所得に影響を及ぼさないからです。実際に令和6年3月期では届出通りに支給されているため、税務上の弊害はありません。

特定譲渡制限付株式による給与の会計処理と申告調整

Q.特定譲渡制限付株式を交付した場合、会計処理はどのようにすればよいですか。また、これが事前確定届出給与に該当するときの申告調整についても説明してください。

A.特定譲渡制限付株式を交付した場合の会計処理と、事前確定届出給与に該当する際の申告調整について、以下の設例をもとに説明します。なお、この説明において決算日は3月31日と仮定します。

設例1では、取締役に3600万円の報酬債権を支給し、これを現物出資として3000株の特定譲渡制限付株式を交付します。株式の払込金額は1株あたり12,000円。株式付与日はX1年7月1日、譲渡制限の解除日はX4年7月1日で、条件は3年間の継続勤務です。取締役が条件を満たしたため、譲渡制限が解除され、その時点での株価は1株15,000円です。

設例2では、3年間の職務執行の対価として、取締役に特定譲渡制限付株式3000株を無償発行し交付します。交付時の株価は1株12,000円。株式付与日はX1年7月1日、譲渡制限の解除日はX4年7月1日で、条件は3年間の継続勤務です。取締役が条件を満たしたため、譲渡制限が解除され、その時点での株価は1株15,000円です。

会計処理について、X5年3月期までの処理は以下の通りです。設例1では株式の交付時に前払費用として3600万円、報酬債務として3600万円が計上されます。X2年からX4年にかけて、各年度に株式報酬費用が発生し、X5年3月期に最終的な調整が行われます。設例2では株式の交付時に会計処理はなく、X2年からX5年にかけて株式報酬費用が計上されます。譲渡制限解除時には両例とも会計処理はありません。

申告調整については、法人税での損金算入時期は譲渡制限解除時であり、損金算入額は設例1の場合報酬債権の額、設例2の場合交付時の価額となります。従って、X2年からX4年は株式報酬費用を加算し、X5年には減算する必要があります。役員の所得税の計算では、譲渡制限解除時の株式の価額が収入金額とされます。

この会計処理は、経済産業省が公表している資料と企業会計基準委員会の実務対応報告に基づいたものです。

事前確定届出額 どおり支給しなかった場合

Q.事前確定届出給与の届出額が100万円のときに、150万円を支給した場合、若しくは80万円を支給した場合、損金不算入額はそれぞれいくらになりますか。あるいは、業績が思わしくなかったので、事前確定届出給与の届出は行ったものの、実際にはまったく支給しなかった場合はどうなりますか。

A.法人税法に基づき、事前確定届出給与とは、役員に対して事前に定めた時期と金額で支給する給与のことを言います。この給与には、事前に届け出た支給額と実際の支給額が同額である必要があります。届け出額と実際に支給した金額が異なる場合、事前に支給額が確定したとは見なされず、支給された給与全額が経費に算入できない損金不算入扱いになります。つまり、150万円支給した場合も80万円支給した場合も、それぞれ支給額全額が損金不算入となります。また、事前に届け出を行なったものの、実際には給与を一切支給しなかった場合、支給額が0であるため損金不算入額は発生しませんが、支給を行わないことについては株主総会などで正式な決議を行う必要があります。事前確定届出給与は役員ごとにその適用が異なるため、一部の役員に対しては届出額どおりの給与が支給され、別の役員に対しては届出額と異なる額が支給された場合、後者の役員の給与のみが損金不算入となります。

親会社株式を特定譲渡制限付株式として交付する場合

Q.持株会社制度を採用している企業グループで、子会社の役員に親会社の株式を譲渡制限付株式として交付した場合、これは特定譲渡制限付株式による給与としての取り扱いの対象になるでしょうか。

A.持株会社制度を取り入れている企業グループの場合、関連する法人の株式を交付することも、税法上、特定譲渡制限付株式として認識されます。これにより、親会社からの株式交付が可能ですが、この間、親会社が支配関係を維持することが求められます。親会社から子会社の役員に株式を交付する際に考慮される方法には二つあります。一つ目は、子会社の役員が親会社に報酬債権を実物出資する方法で、これにより親会社は子会社に対する債権を得ることになります。二つ目は、子会社が役員に対して持つ債務を親会社が引き受けた後、子会社の役員等が親会社に実物出資する方法です。

特定譲渡制限付株式の意味と税法上の取扱い

Q.譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)とは何ですか。また、税法上特別な取扱いが定められている特定譲渡制限付株式の意味と税法での取扱いを説明してください。

A.譲渡制限付株式とは、役員などに与えられた会社の株で、一定期間や特定の条件が満たされるまで売却することが制限されている株のことです。この制度があるのは、役員等に会社の長期的な価値向上に貢献する動機を与えるためや、株主としての責任ある経営を促すため、さらには優秀な人材が他社へ移るのを防ぐためです。会社法及び税法の制約により日本では長らく普及していませんでしたが、改正がされてからは利用する企業が増えています。

会社法上は、株式を発行する場合、金額やその算出方法を決めなければならないとされており、無償での株式発行や労務の出資は認められていませんでした。しかし、役員等の報酬債権を使って株式を発行する方法が可能になりました。

税法においては、平成28年の改正で、特定の条件を満たす譲渡制限付株式を「特定譲渡制限付株式」として、特定譲渡制限付株式による給与が、事前確定届出給与として損金算入が認められるようになりました。その取り扱いについては、損金算入時期や額、税務上の課税時期や収入金額が定義されています。特定譲渡制限付株式をもらった役員は、その株の売却制限が解除された日に課税され、その時の市場価値が所得税法上の収入と見なされます。退職時の制限解除では、所得区分が退職所得に分類されます。

事前確定届 出給与の意義

Q.法人税法第34条第1項で、損金不算入となる役員給与から除外されているものに掲げられている給与のうち、事前確定届出給与とはどのような給与ですか。

A.事前確定届出給与は、会社の株主総会や取締役会で役員に支払う賞与の金額と支払日を決めて、その決定から1か月以内に税務署へ報告して、報告通りに支払われる給与のことです。この給与は、あらかじめ金額が決定しているので、会社が利益を意図的に操作することを防げるため、税務上の損金として認められます。事前確定届出給与は、定期的に同じ金額の給与や業績に応じた給与以外で、あらかじめ決められた金銭、株式、新株予約権などを支給する場合に限られます。この給与を支給する場合、いくつかのルールがあります。たとえば、この給与を金銭で支払う場合、その役員に定期給与を支払っていない場合などに限ります。さらに、株式や新株予約権を支給する場合は、市場価格があるものに限ります。事前に給与の詳細を税務署へ報告し、その通りに支給することで、この給与が認められます。

損金不算入額

Q.当社(決算日3月31日)は取締役Aに対して、前年度から毎月70万円の給与を支給しており、令和5年5月29日開催の定時株主総会後の取締役会で、Aの給与を据え置く旨の決議をしています。しかしAの担当部門の上半期の営業成績が優れていたため、11月27日開催の取締役会で給与改定を決議し、12月分からの給与を90万円としました。令和5年4月から同年11月までは毎月70万円、令和5年12月から令和6年3月までは毎月90万円となりました。この場合、税務上どのように取り扱われますか?また、Aの担当部門の上半期の営業成績が劣っていたため、令和5年12月分から給与を60万円に減額した場合はどうなりますか?

A.期中に給与の増額または減額が行われた際、その改定が事業年度の開始から3か月以内、または特別な改定事由や業績悪化に基づく改定であれば、定期同額給与と認められます。しかし、質問で挙げられたケースでは、これらに該当せず、定期同額給与に含まれないため、損金には計上できません。具体的な処理方法については、国税庁が公表している役員給与に関するQ&Aで解説されています。例えば、給与が70万円から90万円に増額されたケースでは、増額前の70万円が定期同額給与とされ、その上で12月から20万円が上乗せされています。この20万円が損金不算入となり、計算上は20万円×4カ月=80万円が損金不算入額になります。反対に、70万円から60万円に減額されたケースでは、減額後の60万円が改定後初の給与とみなされ、それ以前の10万円上乗せ分が損金不算入となります。その結果、計算上は10万円×6カ月=60万円が損金不算入額になります。

役員給与の未払計上について

Q.毎月の役員給与が前月21日から当月20日までの期間で計算され、支給日が当月25日と定められている場合、3月31日(事業年度の終了日)にその月の21日から31日までの役員給与相当額を未払計上できるかどうか。会社は役員給与を定期的な同額給与として損金計上しています。

A.役員に対する給与は、役員(受任者)が会社(委任者)から受ける報酬とみなされます。民法では、報酬請求権は委任された業務を終えた後、または報酬を定めた期間が終了した後に生じると定められています。このルールに基づくと、質問のケースでは3月21日から31日までの役員給与については、3月20日を過ぎるまでは請求権が発生しないため、その期間の給与相当額を確定債務として未払いで計上することはできません。税務上、期末の計算期間が終了した後の役員給与相当額の未払計上は認められていません。なお、雇用契約に基づく報酬請求権に関しても、民法に類似した規定があり、期間経過後に雇用者である法人の債務が成立することが税務で認められています。

不況のため役員給与を減額した場合

Q.役員給与の減額について定期同額給与の規定の適用はどうなるか。

A.役員給与が減額される場合、以下の点に注意する必要があります。

1. 業界の不況などで経営状況が大きく悪化し、役員給与を減額する必要が生じた場合は、減額前後の期間で支払われる給与の額が同じであれば「定期同額給与」として扱われます。ただし、一時的な資金繰りの問題や単に業績目標に達しなかった等の理由では、減額が認められない点に注意が必要です。具体的には、業績や財務状況の悪化、信用維持の必要性による計画への給与額の減額の盛り込みが典型的な例です。役員給与の変更を利益操作に使わないようにこれらのルールがあります。

2. 役員に過失の責任を取らせるため、または病気で職務が一時的にできない場合の給与減額も、事実上の給与受け取りが続くとみなすことができるため、「定期同額給与」として扱われます。特に病気で職務ができなくなった場合は、その期間の給与減額も、入院前と同額の給与に戻す改定も、全て「定期同額給与」に該当します。

以上のガイドラインは、役員給与の適切な減額手続きを実施する際の参考になります。