「所得税」カテゴリーアーカイブ

給与所得の源泉徴収を受けていない者の確定申告書の提出義務

Q.私は外国商社の日本支店に勤務しています。当支店に勤務する日本国の居住者については、外国にある本店から直接本人に給与の支払が行われていますので所得税の源泉徴収がされていません。このように、給与所得について源泉徴収されていない場合でもその年の所得がその商社からの給与と給与等以外の所得金額が20万円以下であれば、所得税の確定申告義務はないと考えてよいでしょうか。

A.お問い合わせの状況では、給与が1箇所からの支給であり給与以外の所得が20万円以下の場合、通常は確定申告が不要とされるため、確定申告の義務がないと思われがちです。具体的には、所得税法では、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、及び雑所得の合計額が20万円以下である場合、給与所得及び退職所得以外の所得金額に限って、確定申告が不要とされています。しかし、この規定は給与の支払いを受ける全てのケースにおいて所得税の源泉徴収が行われる、または行われるべき場合に適用されるものであり、源泉徴収されていない給与については対象外です。そのため、国外から直接給与を受け取り、その給与に対して所得税の源泉徴収がなされていない場合には、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であったとしても、全ての所得に対して確定申告を行う必要があります。

年の中途で開業した場合の確定申告

Q.私は5月31日にA会社を退職し、6月1日より電気器具小売業を開業しましたが、5月31日までの給与については所得税が源泉徴収されていますので、6月1日以後の事業所得のみ確定申告すればよいのですか。

A.所得税は年間を通して得た収入とその収入にかかる税金を自分で計算し、その年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告して支払うというシステムです。確定申告では、その年の全ての収入と、特定の収入に対する税(分離課税など)をまとめて申告します。確定申告書を提出する必要があるのは、税額が調整後の差額を超える時ですが、2022年1月1日以降は、外国税額控除や源泉徴収税額、予定納税額があれば、それを超える場合でも確定申告が不要になりました。あなたの場合、1月1日から5月31日までの給与所得と6月1日から12月31日までの事業所得、さらに退職金(退職所得がある場合は通常申告不要ですが、確定申告をする場合は退職所得も含めます)の合計が、利用可能な所得控除を超えるときはすべての収入について確定申告が必要です。しかし、6月1日に開業した事業の所得が20万円未満で合算しても所得控除を超えない場合、確定申告は必要ありません。それでも源泉徴収された税金が還付される場合は、還付を受けるために確定申告を行い、過払い税金を返してもらうことができます。

年の中途で開業した場合の確定申告

Q.私は5月31日にA会社を退職し、6月1日より電気器具小売業を開業しましたが、5月31日までの給与については所得税が源泉徴収されていますので、6月1日以後の事業所得のみ確定申告すればよいのですか。

A.所得税は、1月1日から12月31日の1年間に得た全ての所得に対する税金を計算し、確定申告書で申告し納税する必要があります。まず、その年の総所得金額、分離課税の対象となる所得などの総額を計算します。もし合計所得控除額を超える場合、余った分が課税所得となります。提出期限は通常、翌年の2月16日から3月15日までですが、特定の条件を満たす場合、電子申告などにより提出を要しない場合もあります。あなたの場合、1月1日から5月31日までの給与所得と6月1日から12月31日までの事業所得、および退職所得の合計が所得控除額を超える場合、全ての所得について確定申告が必要です。ただし、6月1日からの事業所得が20万円未満で、その合計額が所得控除額を超えない場合は、確定申告の必要はありません。確定申告が不要でも、過払いの可能性がある場合は、還付を受けるための申告書を提出して過払い税金の還付を受けることができます。

給与所得者に対する予定納税

Q.給与所得については毎月源泉徴収されている場合でも予定納税はしなければならないのでしょうか。

A.所得税の基本は、一年間に得た収入について、自分で収入額と税額を計算し、納税する申告納税制度になっています。一度に多い金額を納税するのは納税者にとって大変であり、国の歳入も安定しないため、前年の所得に基づいて、その年の予定される所得税額を分けて事前に納税する制度があります。具体的には、7月と11月に前年の所得に基づき計算した税額を前払いする形になります。ただし、予定納税額は前年の所得に基づいて計算されるため、実際の所得が大きく変わる可能性があり、その場合「予定納税額の減額申請」で調整が可能です。予定納税は、前年の所得から特定の収入を除外し、控除を差し引いた額に対する税額から、前年の源泉徴収額を差し引いて計算され、予定納税基準額及び復興特別所得税相当額が15万円以上の場合、納税が必要です。予定納税額は、6月15日までに税務署から通知されます。また、前年の所得に変動があり、予定納税基準額が15万円未満になった場合は予定納税の必要がありません。したがって、前年に確定申告書を提出しており、予定納税基準額及び復興特別所得税額相当額が15万円以上であれば予定納税が必要となります。

予定納税の減額申請が承認される場合

Q.予定納税基準額の通知を受けましたが、4月に妻が入院し手術して多額の医療費がかかりました。この場合、減額申請すれば、予定納税額は減額されるでしょうか。

A.はい、多額の医療費の支払いがあった場合、予定納税額の減額申請をすれば、通常は承認され予定納税額を減額することができます。納税額の減額申請が認められる主なケースには、事業の全または一部の廃止、休止、転換、失業、災害、盗難や横領による被害、または多額の医療費の支出などがあります。これらの状況によって、申告予定の納税額が予定納税基準額を満たなくなると確認できれば、減額の承認が得られます。ただし、あなたの申告納税見積額が予定納税基準額の70%以下にならない場合には承認されませんが、婚姻、出生、生命保険への加入、特定の寄付金支出などによって所得控除額が増え、これにより納税額が予定納税基準額を下回ると認識される場合には、承認が受けられます。

予定納税通知書の到着が遅延した場合の減額申請

Q.洋品雑貨小売業を営んでおり、新築中の店舗が完成して移転しました。このため予定納税通知書が現在の所轄税務署から遅れて到着しました。減額申請の期限は7月15日までにしなければならないと聞いていますが、この場合も7月15日までに減額申請をしなければならないのでしょうか。

A.通常、予定納税の基準額は5月15日の状況に基づいて計算され、6月15日までに納税者に通知されるべきです。しかし、何らかの理由で通知が6月16日以降になった場合は、税務署長が通知書を発送した日から1ヶ月が経過する日までに減額申請をすることが許されます。ですから、あなたの場合では8月9日までに減額申請が可能です。ただし、この期間内でも予定納税額は納付する必要がありますが、通知書発送日から1ヶ月経過する日までは税務署長が未納の予定納税額について督促を行うことはできません。

前年分の所得税が減額した場合の予定納税

Q.令和5年分の予定納税額の通知書を6月12日に受け取りましたが、7月7日付で前年分所得税の再調査決定書と本年分の予定納税額の訂正通知書が送られてきました。訂正通知書の予定納税額は最初の予定納税額より少なくなっていますが、どちらで納付すればよいでしょうか。

A.予定納税額は、その年の5月15日時点で確定している前年の課税所得に基づいて計算されます。しかし、5月16日から7月31日の間に前年の所得税に関する再調査や審査の結果が出て、前年の課税所得が見直されることがあります。もしその結果、5月15日時点で計算された予定納税額よりも少ない金額になった場合は、この新しい金額での納税が求められます。ですから、あなたの場合は7月7日付で受け取った訂正通知書に記載されている金額で納付するのが正しいです。

政治活動に関する寄附をした場合の所得税額の特別控除

Q.今年、ある政党へ政治献金をしました。この政治献金は寄附金控除と税額控除のどちらか有利な方を選択できると聞きましたが、詳細を教えてください。

A.平成7年1月1日から令和6年12月31日までの期間に政治活動に関する寄附金を支出した場合、政党や政治資金団体への寄付であれば、その寄附金を政治資金規正法に基づいて報告されたものに限り、寄附金控除に代わって税額控除の適用を選択できます。税額控除は、その年に支払った政治活動に関連する寄附金の合計金額(ただし、年間所得の40%を超えない範囲)に対して30%を乗じた金額が控除額となりますが、この控除額はその年の所得税額の25%が上限です。また、特定の寄附金控除を受けている場合その金額を考慮した上で、所得金額の40%の制限を超えた部分は寄附金控除の計算から外れます。そして、2,000円を基礎控除額としますが、特定寄附金がある場合は、これを0円または特定寄附金を差し引いた額に調整します。

その年分に納付した外国所得税がない場合の外国税額控除

Q.私は国内の商社に勤務するサラリーマンですが、昨年3月から11月までB国にある海外支店に短期間勤務していました。ところが、本年3月にB国より所得税に相当する税金の課税通知を受けましたので、4月に納付しました。この税金について、外国税額控除の適用はありますか。また、適用があるとしたら何年分についてですか。なお、昨年の私の所得は商社からの給与所得のみで、年末調整により所得税額の納税は完了していますし、本年は海外勤務はありません。

A.外国税額控除は、居住者が外国で所得税を納付する際に対象となる制度で、その年に海外で得た所得に基づいて計算される控除限度額までが適用されます。この制度では、外国での所得税納付が行われる年を基準としていますが、納付方法によってその年の定義が異なります。具体的には、納税申告書を提出した日、賦課決定の通知を受けた日、または源泉徴収対象となる利子や配当などの支払い日がその年とされます。あなたの場合、今年課税通知と納付があったため、今年分に外国税額控除の適用が可能です。ただし、今年は海外での所得がないため、控除限度額はありません。ただし、昨年3月から11月までのB国での勤務による給与は海外所得となるため、昨年分の控除限度額を計算し、これを今年分に繰り越すことで今年分の外国税額控除の適用を受けることができます。昨年の給与収入に基づいて国外源泉所得を計算することになります。

外国所得税の額が減額された場合の外国税額控除の特例

Q.海外支店に勤務していたことから外国税額控除を適用して昨年分の確定申告書を提出しましたが、その基になった外国所得税の額が本年に減額されることとなりました。この場合、外国税額控除の適用及び所得金額の計算はどうなりますか?

A.外国税額控除を受けた年の翌年から7年以内、適用を受けた外国所得税の額が減額された場合、減額された年の所得計算及び外国税額控除の適用方法は次のようになります。まず、減額された年に外国所得税を支払う場合、支払った税額から減額分を差し引き、残りの額に外国税額控除を適用します。もし減額された年に支払う外国所得税がない、または減額分より少ない場合、過去3年間にわたって繰り越された外国所得税から差し引きます。減額外国所得税額を完全に調整できなかった場合、残りの金額を雑所得の計算で総収入金額に加えます。